「提督からの呼び出しか…。何事だろうな。しかし、この時期だからこそだな」
私、那智は本日は提督に執務室に呼び出された。
深海棲艦が攻めてくるだろう時期に呼び出しを食らうという事は、おそらくそう言う事なのだろうな。
少し気分がよくなってきたな。
すると執務室にいく道中でおそらく私と似た感じで呼び出されたのだろう奴を発見する。
「おい、足柄。こんなところでどうした…?」
「あ、那智姉さん。うん、提督に呼び出しをもらったんで向かっているところなのよ」
「なんだ、お前もか」
「そういう那智姉さんもなの?」
「ああ。だからおそらく今回の戦いは…」
「そうね、少し楽しみになってきたわ」
それで思う。
提督はこの世界に来てからよくやっているものだなと。
あの衝撃的だった再会を目にして私の目に狂いはなかったと思わされたからな。
普通ならあそこまでできるものなどいないだろうさ。
だから信じてもらうために土下座までした提督の事はとても良く思っている。
………榛名の体で土下座をした事については後に言及しておかないといけないだろうけどな…。
そしてもし提督がもとの性別のままだったのなら背中を預けてもいいと思えるほどには私は信頼を置いている。
「足柄…」
「なに、那智姉さん?」
「今回も勝ちに行くぞ」
「当然よ!」
そんな話を足柄としながらも執務室へと足を踏み入れる。
そこには思った通りの奴らが招集されていた。
多摩に木曾、そして第一水雷戦隊の長である阿武隈が執務室に集まっていた。
「お、来たか。足柄に那智」
「待たせたか…?」
「いや、他の三人も先ほど来たばかりだからちょうどいいよ」
「そうか。……で、提督? 私達五人を集めたという事は今回の作戦名は…」
「ああ。大本営から発令されてきた事だが、今回の作戦名は『出撃! 北東方面 第五艦隊!』だ」
提督の言葉を聞いて私は加賀ではないが気分が高揚するのを感じた。
志摩艦隊を再結成するのかという気持ちにさせられる。
「深海棲艦が北東方面へ集結しているという…だから今回はおそらく君たちの活躍があると思う。
また辛い戦いになるだろうが、今まで何度も勝ちを拾ってきた私達なら大丈夫だろう」
「ふっ…余裕だな提督」
私が不敵な笑みを浮かべながら提督にそう問う。
それに対して提督も少し苦笑を浮かべながらも、
「そうでもないさ。でも、ゲームと違って今回からは日本を守らないといけない。
だから君たちにとっては本懐だろうと思ってな」
さすが、私達の事を分かっているな提督。
そう、かつての戦船だった頃の敗戦の記憶。
それを繰り返すわけにはいかない。
だから私達はこうして人の形をとって戦ってきたのだ。
「…提督。今回も姉さん達と一緒に暴れさせてもらうぜ」
「うん。任せろにゃ…」
「期待をしている」
木曾と多摩もやる気のようで木曾は不敵に笑い、多摩は軽くジャブをしていた。
「提督。それじゃ第一水雷戦隊のみんなにはあたしが伝えておきますね」
「任せる。ちょうどよくというのも言葉が悪いが第一水雷戦隊所属の駆逐艦のみんなは練度は全員70以上で十分戦力になる。
だから阿武隈。みんなに作戦に向けて色々と指示を与えておいてくれ。期待しているとも伝えておいてくれ」
「わかりました! あたしに任せて!」
阿武隈もそれで承諾していた。
普段、頼りなさげな印象がある阿武隈だがいざ戦場に出れば本当に軽巡か?というほどの戦果を上げるのはもう鎮守府では知らない者はいない。
だからこそ頼りにさせてもらう。
そしてそんな阿武隈の鍛えた第一水雷戦隊も屈強な奴らばかりだ。期待できる。
「それじゃ提督! 私と那智姉さんにも期待しておいてね! 頑張っちゃうんだから!」
「ああ。異名を轟かせてきてくれ」
「あらやだ…。異名だなんて…」
足柄。そこで照れるところか…?
足柄の異名と言ったら『飢えた狼』だぞ?
まぁ、足柄がそれでいいのなら私も何も言わないが…。
「とにかく、おそらく今夜か明日には作戦が開始されるだろう。
それまで鋭気を養っておいてくれ」
「「「了解!」」」
それで私を含めた五人で提督に敬礼をする。
しかしそこでまだ軍隊形式に慣れていない提督は苦笑気味に、
「恥ずかしいから普段通りでいいぞ? 別に私は本物の軍の人間じゃないんだから…まぁ、今は特務少佐とか肩書きはあるだろうけどさ」
「それでも貴様は私達の提督だ。だから貴様以外には決して従わない。貴様だからこそ私達は安心して背中を預けられるんだ」
私が捲し立てるようにそう告げる。
それで提督も心が決まったのだろう。
「わかった! みんな、勝ちにいくぞ?」
「「「はい!」」」
それで執務室での話は終わり、私達はそれぞれの部屋へと向かっている途中で足柄が少し不安げに、
「…でも、やっぱり提督も心配でしょうね。今回から責任も背負わないといけないんだから」
「そうだな。だが私は心配してはいないぞ」
「どうして? 那智姉さん」
「確かに提督はまだ情けない所はあるだろうよ? だがそこを私達が支えてやればいいだけの話ではないか」
私は足柄にそう言い切ってやった。
すると、
「もう! 那智姉さんってばやっぱりイケメンね!」
そう言って足柄は私に抱き着いてきた。
それでポンポンと肩を叩いて安心させてやった。
まったくこいつは…。
いつも勝気な癖にこういう時に限って甘えてくるのだからな。
そんなところも可愛い妹であるがな。
さて、私も気合を入れるとしようか。
今回は那智視点で書いてみました。
早くて今夜からイベント開始ですね。楽しみです。
イベント開始時間によりますがもしかしたら一日開くかもしれませんがご容赦ください。
どういうイベント内容かによって分からずに話が書けない状態でしたので。
それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。