【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0233話『西村艦隊、スリガオ海峡深部に突入せよ』

 

 

 

ついにやってきたな。

ボスへの道はすでに開かれている。

西村艦隊の編成任務も終わらせた。

七人とも気力は十分でまだかまだかという感じでそわそわしている。

私は執務室に七人を招集して口を開く。

 

「……さて、とうとうここまで来たな。みんな……」

「「「………」」」

 

七人とも緊張からか無言で私の言葉を聞き入っている。

それだけ決戦が近づいていることに対してそれぞれ思う事があるのだろうな。

 

「まずは敵深海棲艦の第一陣は海峡夜棲姫だ。昨日に山城だけにはもう伝えたがこの深海棲艦は山城と扶桑に似た姿をしている事はもう分かっている」

「……ッ!」

 

時雨の表情が険しくなったのを確認できた。

もう驚くこともないけどやはりこれだけで少しだけ悔しい思いがあるのだろうな。

時雨にとっては一人だけ生き残ってしまった無念の残る戦いだったからな。

そんな時雨の気持ちも汲んで上げたいけど今は我慢しておかないとな。

 

「そして道中も夜戦だらけのエリアで大破してしまう可能性があるだろう……もう言わなくてもいいだろうが気を付けて挑んでくれ。そして願うのならみんな無事にスリガオ海峡を乗り越えてほしい」

 

私は最後に少し顔を俯かせながらそう言葉を紡ぐ。

 

「……提督。大丈夫ですよ。この扶桑……満潮や時雨、山雲、朝雲、最上……そして山城がいてくれれば百人力です。必ず乗り越えてみせます」

「扶桑姉さまの言う通りです。ここまで来たらもう全員生きて帰ってくることをお約束します……提督が愛してくれるのですから頑張ります!」

「ふふ……素直になった山城も可愛いね。僕も、必ず力になるよ」

「そうだね! もう時雨だけを残して沈んだりはしないからね」

「当り前よ! もう時雨には悲しい思いはさせないんだから!」

「当然ね! だからこれまであたし達は頑張ってこれたんだから!」

「そうね~。山雲も朝雲姉ぇとなんとか練度は戦えるまでには鍛えたんだから頑張るわ~」

 

みんなが口々に鼓舞する言葉を言っている。

やっぱり結ばれている絆は素晴らしいものだな。

 

「みんなの気持ちはわかった。もう後は言う事は特にはないが暁の水平線に勝利を刻んできてくれ」

「「「了解!」」」

 

西村艦隊の面々はそれでスリガオ海峡へと出撃していった。

私は港までみんなを見送りながらも思う。

 

「今までの頑張りが無駄になるものか……きっと乗り越えてくれるさ」

《そうですね提督。特に山城さんを信じましょう。私も信じます……》

「榛名……そうだな」

 

榛名と山城はライバルだけど同時に仲はいい方だから私としても頑張ってもらいたいと思う。

 

 

 

 

 

 

 

「みんな! 旗艦の私にしっかりと着いてきてね!」

「「「おう!」」」

 

 

私は一番前方で進みながらも水偵を飛ばしながら深海棲艦がいつ現れるか警戒していた。

制空権に関しては戦闘機を積んでいる最上に一任しているから私達は攻撃に専念できる。

 

そして何度かの夜戦を突破している時だった。

 

「イー! イー!」

「キャハハ!」

 

夜戦での戦闘でPT小鬼の艦隊が私達の前に出現してきた。

出たわね……。海峡夜棲姫と戦う前の最大の壁ともいえる敵深海棲艦。

だけどこんなところでつまずいているわけにはいかないのよ。

だから!

 

「邪魔だぁぁぁ! どけぇぇぇぇっ!!」

「山城、落ちついて! 確実に落としていきましょう!」

「みんな、警戒陣で守りに徹するよ!」

「そして反撃でとどめね!分かりやすいわ!」

「やっちゃいましょ~」

 

みんながみんな冷静に対処しているのをみて私も冷静にならないといけないと思ったので一かい深呼吸をした後に、

 

「やりましょう!」

そしてPT小鬼も殲滅する事ができてその後もなんとか潜り抜けていき、とうとう私達は海峡夜棲姫との邂逅を果たすことになる。

 

「ココ…ハ…トオレナイシ……。……トオサナイ……ヨ……ッ!」

「ッ!?」

 

提督の言っていた事は本当だった……。

あれはまさしく私と扶桑姉さまとうり二つの姿。

本当に私と扶桑姉さまの負の側面が実体化したようなその姿に私は一瞬狼狽えてしまう……。だけどそこで、

 

「山城! 狼狽えてはダメよ! あんななりだけど私達の敵なのよ! 今は覚悟を決めなさい!!」

 

扶桑姉さまのそんな叫び声が聞こえてきた。

思わず見れば扶桑姉さまの表情も辛いものになっているのを見て「ああ……辛いのは私だけじゃないのね……」という思いを持った。

 

「すみません、姉様……。みんな、たとえあれがなんであろうと立ちふさがるのなら殲滅あるのみです! 参りましょう!」

「「「おう!」」」

 

そして私達の戦いが始まった。

夜戦からの戦闘だから打つ手は決まっている。

砲撃戦の純粋な殴り合い。

提督が必死になって考えて現状で一番いいであろう最適解の装備で必ず抜けてみせます!

そこからはお互いに砲撃戦の応酬が繰り広げられていった。

 

「くっ!?」

「時雨!? 大丈夫!?」

「僕の事は気にしないで! みんなは砲撃を続けて!」

 

大破しながらもそう言ってくる時雨に感謝しながらも私達は海峡夜棲姫を残すのみとなった感じで昼戦へと移行していった。

そこで提督から通信が入ってきた。

 

『航空基地隊の到着だ! 頑張ってくれ!』

「ありがとうございます、提督!」

 

航空基地隊の攻撃によってさらに海峡夜棲姫にダメージが入っていき、

 

「これでも、くらいなさい!! てぇっ!!」

 

私の渾身の砲撃が直撃したのだろう。海峡夜棲姫はそれで一度は悔しそうな表情をしながらも撤退していった。

だけどそこで私は思いがけない光景を目にする。

扶桑姉さまに似ている片割れが撤退している最中で海に沈んでいく光景を……。

 

「ア、アァ……」

 

おそらく私なのだろう片割れはそれで悲しみの声を上げて、撤退しながらも私を一睨みしてきた。

その眼差しが私には忘れられないものになったのは言うまでもない事だった……。

おそらく次が海峡夜棲姫との最後の戦い……。

追い詰められたからには相応の反抗をしてくることは予想できる。

私達も覚悟を決めないと……!

 

 




まずはけずりだけの段階だけ描写しました。
次回は海峡夜棲姫‐壊‐との戦闘になります。





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