【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0235話『防空埋護姫との戦い』

 

 

西村艦隊のみんなが海峡夜棲姫を倒した翌日に私のもとへと集まって話し合っていた。

 

「提督……あの深海棲艦はなんなのですか……? 海峡夜棲姫を倒しただけじゃ終わりじゃないのですか……?」

「そうだな……あの深海棲艦は通称『防空埋護姫』と呼ばれている」

「防空埋護姫……防空棲姫の姉妹みたいなものかな……?」

「大方その認識で合っていると思うよ時雨」

 

先行隊の情報によれば海峡夜棲姫だけがあそこのボスではないというのは分かっている。

つまり、そう言う事だ。

 

「今回は二段階でのボス仕様になっているみたいだな。どうしても深海棲艦たちはスリガオ海峡を突破させたくないらしい」

「くっ……どうしてそこまで!」

 

山城がそう言って拳を握りしめている。

その気持ちはわかる。

やっと倒したと思った海峡夜棲姫がただの前座でしかなかったのだから。

 

「まぁみんなの気持ちも分からなくもないが、それでもまたみんなに頑張ってもらいたい。なに……まだ西村艦隊として戦えると思えばいいじゃないか?」

「司令さーん? みんなで戦えるのは嬉しいけどー……でもー余計な戦闘はこりごりよー?」

「あははー……山雲は手厳しいな」

 

そう言って場の空気を和ます。

こうでもしないとやっと倒したと思っていたのに暴動が起きかねないからな。

 

「提督……それではあの深海棲艦を倒せば今度こそ今回の作戦は終わりなのですね……?」

「そうだ扶桑。だから最後まで頑張ってもらいたい」

「そうですか……みんな、それでは後少しの辛抱ですから頑張りましょう……? そしてみんなでスリガオ海峡を突破しましょう」

「そうね……こんな中途半端なところで降りるのもなんか嫌だしこの際どこまでも着き合ってあげるわ」

「満潮は相変わらず素直じゃないなぁ……」

「ちょ!? それどういう意味よ!?」

 

満潮がギャーギャー吠えている中で最上が話しかけてきた。

 

「それじゃ提督。最後の戦いに行ってくるよ。大丈夫、今度も必ずみんなで帰ってくるからさ!」

「頼んだぞ」

「うん! それじゃ行こうかみんな!」

「「「はい」」」

 

それでみんなはまた出撃準備をし始めていた。

そんな中で、

 

「それでは提督……私達の勝利を祈っていてくださいね」

「わかった山城。帰ってきたら盛大にお祝いをしないとな」

「ふふ……提督、そう言うのをフラグと言いませんでしたっけ?」

「あっそうだな。でもそんな事は関係なく勝ってくるんだろう?」

「当然です。必ず乗り越えてみせますから……」

「ああ。行って来い」

「はい!」

 

山城はそれで笑みを浮かべながら出撃していった。

 

《よかったのですか提督? もっと話しておく事があったのでは……》

「大丈夫さ榛名。みんなはきっと無事に帰ってくる。私達はただ待っているだけでいいんだ」

《そうですね……》

 

 

 

 

 

 

 

 

僕たちは提督に見送られながら出撃していった。

道中の敵は特に変化は見られないので気を付けて行けばもう大丈夫だしね。

そして海峡夜棲姫を倒した場所にもう一度到着してみれば昨日に出会ったあの深海棲艦……防空埋護姫が僕たちを待ち構えていた。

僕たちという存在に気づいたんだろう。防空埋護姫は長身の砲をこちらに向けながら、

 

「……ワタシガ……オアイテ……シマス…………」

 

低音の声で呟きながら随伴艦の深海棲艦の群れとともに攻撃を始めてきた。

 

「みんな! やる事は変わらないわ! できるだけ夜戦で沈めるわよ!」

「うん!」

 

山城の号令で戦闘は始まった。

それから僕たちは何度も戦闘を繰り返しながらも少しずつだけど防空埋護姫の体力を削っていった。そして、

 

「ワタシガネ……? マモッテイクノ……ッ!」

 

防空埋護姫はそう言いながらももうボロボロの砲身を構えて砲撃してくる。

彼女がなにを守りたいのか分からない……けど、僕たちにだって守りたいものがある。

その行き先を邪魔するのなら、僕たちは君達を倒すよ!

 

「これで終わりよ! てぇっ!!」

 

扶桑の渾身の一撃が防空埋護姫に直撃した。

それで防空埋護姫は少しずつ沈んでいきながら、

 

「ウソ……ワタシガ……ッ……モドルウミ…ナンテ……ソンナ……モドレナィ……エッ……? ウデ……ガ、ジユウ……ニ」

 

今の今まで防空埋護姫の腕を拘束していた鎖が外れていた。

それがなにを意味するのか僕たちには分からない……。

それでも、

 

「もど…れ、もどれる……カエレる、のね? わたし、もういちど……自由に……海を、駆けて……!」

 

最後に笑みを浮かべながら防空埋護姫は海へと沈んでいってもう浮かんでこなかった。

そして今度こそ海域を突破したのだろう海が赤から本来の水色へと戻っていく。

山城が提督に涙を浮かべながら報告をしている。

 

「みんな……提督からすぐに帰ってくるように言われたわ。さ、帰りましょう……!」

 

山城も少しだけ興奮しているのが分かる。

笑い泣きをしているようで僕も一緒に泣きたい……でも、提督の前まで我慢だね。

そうして僕たちは鎮守府へと帰ってきて、

 

「みんな……よくやってくれた。これで私達の任務は終了。無事スリガオ海峡を突破できたわけだな。悲願が叶ったんだな」

 

提督がそう言った瞬間だった。

もう山城が嬉しそうに、

 

「ね、姉様……第一遊撃部隊、第三部隊……一戦隊がスリガオ海峡を突破しました! フフフ……やったわ!!」

「山城! 私達、ついにスリガオを越えたのよ! あの海峡を越えたのよ……提督、ありがとう」

 

山城と扶桑がそれで抱き合っていた。

僕ももらい泣きしながらも、

 

「扶桑、山城、最上……そして満潮、朝雲、山雲も……みんな、本当にありがとう……。よかった……提督、止まない雨はない、ね……ありがとう……」

 

僕はここまで連れてきてくれた提督に感謝をしながらもそしてみんなで整列して、

 

「「「西村艦隊、成し遂げました。提督、ありがとう……」」」

 

僕ら七人で全員で提督に感謝の言葉を贈った。

それに提督は笑顔を浮かべながら、

 

「よかったな……これでもう不幸だなんて言わせないからな?」

「もう……でもそうね。私達はもう不幸じゃないんだわ。ね? 姉様……」

「そうね山城……」

 

それから僕たちはそれぞれに騒いだのであった。

そして明日には大本営から報酬艦として涼月が来る……楽しみだね。

 

 

 




これで戦闘は終わりです。
後は涼月を迎えればこれで作戦は終了ですね。




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