【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0249話『榛名の進水日ととある薬』

 

 

 

 

「司令! 少しよろしいでしょうか!」

 

なにやら霧島がいきなり執務室に入ってきてそう叫んでいた。

何事だろうと思っていると、

 

「司令はご存知でしょうけど本日は榛名の進水日です。ですから少しお祝いでもしましょうか」

「それはいいな。私も金剛達と一緒に榛名のお祝いをしたかったからな」

《霧島、ありがとうございます……》

「うぅ……榛名がやはり提督と一緒というのは少しやりにくいですね。ですがこの霧島、めげません! それでは妖精さん!お願いします!!」

 

すると突然家具妖精さん達を呼び寄せたのかぞろぞろと執務室に入ってくる。

そして執務室の内装は瞬く間に『金剛の紅茶セット』とそれに準じたものに変化していたのであった。

 

「相変わらずの仕事の速さ、ありがとうございました!」

【いいってことですよー! それではまたお呼びくださいねー】

 

家具妖精さん達はいい仕事をしたと言わんばかりに退散していった。後でまた直しておかないとな……。

その後に霧島が執務室の電話を使って金剛と比叡を呼び出していた。

しばらくして、

 

「ヘイ、テートク! それに榛名も。元気にしてイマスカー」

「比叡も参りましたよー」

「よく来たな二人とも。それじゃこれからみんなでお茶会でも開こうとするか。でもやっぱり榛名が飲めないのが悔しいところだな……」

「ソーデスネー。まだ明石とバリィの発明はうまくいっていないようデース」

《ですが雰囲気だけでも味わえるだけでも満足です……》

「そう言うわけにはいかないわよ榛名」

「そうですよー! もっと榛名は欲を出してもいいと思うんです。そうじゃないと榛名が可愛そうなんですから!」

《霧島に比叡お姉さま……》

 

そう言われて少し申し訳ない表情を浮かべる榛名。

うーん、こんな顔はあんまり見たくないものだな。

それでどうしたものかという話題になっていた時に電話が鳴り響く。誰だろうと思ったら、

 

『提督! こんな時のために試作ですが開発に成功しました!』

「明石? なんの開発に成功したんだ……?」

『ふっふっふー! 今からそちらに向かいますからしばしの間、待っていてくださいね!』

 

明石はそう言って電話を切った後にこちらへと向かうという。

 

「テートク? 明石はなんて言ってマシタカー?」

「うん。なんでもとある薬の開発に成功したとかなんとか……」

「まさか……このタイミングで?」

「ヒェー……さすがの私もびっくりかもです」

《何の薬でしょうか……?》

「いや、榛名……さすがに予想は出来ると思いますデースよ?」

《……?》

 

榛名はまだ分からないような感じの表情を浮かべているけど私はなんとなくだけど予想は出来た。

それで私は事前に買っておいた榛名のお祝いの品を机から出してきて、

 

「まさか、明石はやってくれるとはな。買っておいて正解だったかな?」

「テートク。それは榛名のための……?」

「ああ。渡せないから無駄に終わってしまうかもと危惧していたんだけどな」

 

そんな感じで話をしていると明石が執務室に入ってきた。

 

「お待たせしましたー! 明石、到着です!」

「まってましたヨー、明石! それでクスリというのは本当デスカー?」

「はい。まだ試していないので結果はどうなるか分かっていないんですけど妖精さん達と色々と話し合いながらも開発をしたこの『分離薬』を提督に試してもらいたいんです!」

 

明石の手には七色に光っている薬が一錠握られていた。

 

「うわっ……またすごい色の薬が出てきましたねー?」

「まだ秘薬の関係で色までは拘れませんでしたから許してください。でも、かなりの一品ですよ?」

「これを飲めば、榛名とまた分かれる事が出来るのか……?」

「理論上は……ですが、まだ試作ですのでせいぜい約二時間が限度だと思います。この薬も結構なお値段を費やしましたので複数量産の目途も立っていませんから大事にご使用くださいね?」

「わかった……」

《て、提督……無理そうでしたらすぐに吐き出しても構いませんからね?》

「大丈夫だ。良薬口に苦しだから我慢してみるよ」

 

それで明石から薬を貰って少し覚悟を決めながらも一気に口に入れて水で流し込む。

そして、

 

「「「…………」」」

 

みんなが無言で見守る中、まだ変化は起きないけどどうなのだろうか?だけど次の瞬間に、

 

「あ、提督の身体が光りだしましたね!」

 

比叡の言う通りに私の身体が光りだしていたのだ。

光が次々と私の横に集まっていって、そしたら榛名との繋がりが無くなったのを自覚した。

その感覚は五か月前の時と同じであった。

そして光が収まるとそこには榛名の姿があった。

 

「私は……」

 

閉じていた瞳を開く榛名。

それから何度か拳を開いたり閉じたりしている中で、

 

「やりました! 明石さん、分離できました!」

「よかったです……」

「榛名ー! 良かったデース!」

「比叡も嬉しいですよ!」

「明石さん、ナイスです!」

 

四人がそれで久しぶりに抱き合って喜んでいたのを見ていると明石がこちらへと振り向いてきて、

 

「それで……提督? なにか身体に異常とかはありませんか? 一応榛名さんが身体に戻るまでは経過観察しておきたいんですけど……」

「今のところは、ないかな……? 榛名との繋がりが切れている状態なのは確かだけど」

「そうですか。ですが薬の副作用があるかもしれませんので一応異常があったらすぐに言ってくださいね?」

「わかった。明石、色々とありがとうな……こうして榛名と対面できたのは明石の努力があったわけだからな」

「はい。榛名も感謝します。ありがとうございます明石さん」

「いえいえ! こんなことならお安い御用ですよ」

「それじゃ明石もせっかくだからお茶会を楽しんでいってクダサーイ!」

「ありがとうございます!」

 

それからみんなで楽しくお茶会の時間を過ごして榛名にも新たにプレゼントを渡したりと時間を忘れて楽しんでいた。

そしてきっちり二時間経過した時だった。

榛名の身体が光り出したのは。

 

「あっ……やっぱり時間切れみたいですね……」

「ふーむ……やっぱり試作品ですからこれが現界ですね」

「でも……よかったです」

 

榛名はそれで光の粒子となって私の身体に入っていった。

そして、

 

「おかえり、榛名」

《ただいまです、提督》

 

こうしてまた榛名は私の中で一緒になって繋がりも感じられるから薬の副作用もないようだしよかったよかった。

 

「残念デース……でも、これからもっと開発を頑張ってほしいデース!」

「お任せを。提督、まだ油断はできませんから薬の副作用があったらすぐに言ってくださいね?」

「わかった」

 

それで無事にお茶会は終わったんだけど、まさか翌日に面白おかしい副作用が起きるとは思いもしなかったんだよなと、後に思うのであった。

 

 

 




榛名と一時的に分離が出来ました。
明日の更新で副作用の話を書きますね。




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