【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0042話『敷波の焦り』

 

 

 

 

私達の鎮守府は一応今回の作戦は完了できたけど、まだ深海棲艦は攻勢を止めていないという。

どうやら私達が倒した北方水姫の個体が上位で強い部類のものだったらしく、今現在はなんとか戦況は有利に進んでいるという。

それで私達でも役に立てたという事を実感できて良かったと思う。

だけど大本営の報告によると他の鎮守府では私の艦隊の例で行けば大和型は育てれば強いという当たり前の結論に至った鎮守府もあるらしくて関心が高まっている。

けど、まだ今回は現状は大和型を壁役にして使い潰す鎮守府がまだまだあるらしい…。

嘆かわしい話だけどみんながみんな私のようにうまく大和型を扱えるわけでもないのかという結論に至って溜息を吐くしかないかった。

深海棲艦が攻めてこなくなりこの作戦が終わったらもしかしたら艦娘の効率のいい練度上げというお題目でどこかの鎮守府に派遣するかもしれないな…。

そんな事を考えながらも日常業務に移行した仕事を終わらせながら、午後はなにをしようかと考えていた。

畑の手入れもしようかと思っているんだけどそこは天龍とか武蔵がやってくれているのでなんとかなっているんだよな。

天龍が、

 

『なぁ提督。俺にも畑仕事手伝わせてくれよ。この間、やっと練度がカンストして遠征番長から解放されてから暇していたんだ』

 

そう、天龍はこの鎮守府が稼働し始めてからほぼずっと遠征をやり続けていたために遠征だけでついに練度がカンストしてしまい、遠征は龍田に譲り渡したのだ。

そんな事もあって今度から天龍もイベントがあったら使っていこうかなという気にはなっているのだ。

それで畑仕事はローテーションを組んでやっている。

雨も適度に降っているので夏にはいい具合に育っているだろうしね。

 

次におそらくそろそろ宴会の準備もしないといけないな。

今回の大規模作戦での功績で給料も結構入った。

その額を見た時には思わず目が飛び出そうになったのは秘密だ。

やっぱりこういった提督業だと命も張っていることからお給金がいいのだ。

それは艦娘達にも同様に入っているので鈴谷とかこれを気にお洒落なものを買いにいくとか張り切りそうだ。

だけどあまり羽目は外し過ぎないようにと注意はしておかないとな。

あくまで私達は軍隊の人間だ。

だからという訳でもないけど一般人からそう言った軽い行動を見られたら批判を受けるかもしれないからね。

そんなわけであまり騒ぎ過ぎずに宴会を開かないとな。

羽目を外している時が一番危険なのだ。

もしそんな時に深海棲艦が狙いすましたかのように攻めてきたらやられてしまう。

 

「…っと、そうだな」

《どうしましたか、提督…? なにか考え事でもあったのですか》

「いや、今の演習スケジュールを考えてな」

《今の演習スケジュールですか。確か大鷹さんを旗艦にアイオワさん、ガングートさん、天城さん、敷波さん、鹿島さんでしたね》

「そうだ。それで鹿島に聞いた話なんだけどな。大鷹とガングートは順調に練度を上げていっているから心配していないというんだけど、ただ気になる点があると言っていたんだ」

《気になる点、ですか…?》

「うん。敷波の動きが少しおかしいらしいんだ。なにやら焦りに駆られているようだとか何とかで…」

《敷波さんが…提督、それでしたら敷波さんと一度話をしてみませんか? きっと提督なら解決できると思うんです》

「そうか?」

《はい!》

 

それで榛名は笑顔を浮かべているのでそうだな、と思って午後の演習が終わったら敷波に話しかけてみるか。

その前に綾波にも話を通しておこうか。

綾波型では敷波とは一番仲がいいからな。

それで綾波に連絡を入れる。

 

『はい、なんでしょうか?』

「あ、綾波か。ちょっと午後の演習が終わったら付き合ってもらってもいいか?」

『私で良ければいつでも構いませんよ。それでどうされました?』

「うん。敷波の事なんだけどな。綾波から見て敷波の様子はどうだ…?」

『そうですねー…。最近なにか焦りに似た感じがしますね』

「綾波もそう思うのか」

『はい。でも司令官。多分これは敷波に限る話じゃないんだと思います』

「それはどういった…?」

『はい。綾波も感じているんですけどまだ練度の低い子たちが特にその傾向が強いんですよ』

「やっぱりか…」

 

それで思い当たる節はいくらでもある。

育てている子はちゃんと育てているんだけど育てていない子は改になった状態で止まっているんだよな。

最近は演習でこの鎮守府に着任順に練度の低い駆逐艦の子達を練度70を目安に育てているんだけどまだ40人くらいはいるからな。

 

「わかった。とにかく折を見て敷波に接触してみるのでついてきてもらっていいか」

『わかりました』

 

それで綾波と約束をした後に電話を切って、午後の演習が終わるのを待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから演習が終わったのを見計らって私は綾波と合流していた。

 

「あ、司令官。こちらです」

「待たせたか?」

「いえ、大丈夫です」

「そうか。それじゃ行くか」

「はい」

 

それで綾波を連れてまだ帰ってきていないので港へと向かうと、

 

「あ、提督さんに綾波さん」

「鹿島、少しいいか?」

「はい、なんでしょうか?」

「敷波は今どうしてる…?」

「敷波さんですか。そうですね、もう演習は終わったんですけど自主練をすると言ってまだ一人で残っていると思いますよ」

「そうか。わかったありがとう」

「いえ、それでは私は戻りますね」

 

鹿島を見送った後に、

 

「やっぱり敷波は焦っているんだと思います。

司令官にはツンとした態度を取っていますが心では司令官のお役に立ちたいと思っていると思いますから」

「そうか…」

 

それ以上は聞かない事にした。

敷波にも隠したい思いとかあるものな。

しばらく歩いて練習場へと足を運ぶとそこでは一人海の上を滑りながらも的に狙いを定めている敷波の姿があった。

 

「いっけー!」

 

敷波が連装砲から演習弾を放つ。

それはいくつもある的に当たっていく。

だけどいくつか外してしまっている。

それで少し悔しそうな顔になっている敷波。

 

「まだ…こんなんじゃ実戦じゃ通用しない。このままじゃ司令官の役に立てないよ…」

 

敷波は私と綾波の存在に気づいていないのか本音から来る言葉を発して必死に何度も演習弾を撃っている。

でも焦りから来る砲弾は照準を鈍らせて終いには疲労からか当たらなくなっていた。

その姿が少し悲しく見えてきた。

 

「綾波、止めて来てもらっていいか…? 見ていられないから」

「わかりました」

 

それで綾波が艤装を出して敷波の方へと出ていった。

 

「敷波。もうその辺で止めましょう。為にならないわ」

「綾波姉…でも…このままじゃ司令官にも期待外れの目で見られちゃうよ」

「司令官はそんな人じゃないっていうのは知っているでしょう? だから今は焦らずにゆっくりとでもいいから確実に練度を上げていきましょう」

「だけど…」

 

まだなにかを言いそうな気配だったので私は敷波に向けて声を上げた。

 

「そうだぞ敷波!」

「うぇ!? 司令官、いたの!?」

 

そこで敷波は初めて私がいたのを気付いたのだろう慌てている。

私はそれに構わず私も艤装を出して敷波に近寄って行って、

 

「敷波。私は練度が低いからって君の事を役立たずとかそんな扱いはしないぞ。

それに私のために頑張って練度を上げている姿は何度も見ているから期待もしているんだ」

「そ、そうかよ…」

「だからさ、焦らず自分のペースでやっていかないか? いつか敷波の努力は実を結んで活躍できる日が来るさ」

「本当…?」

「ああ。だからもう無茶な練習は無しな。わかったか?」

「うん、わかった。司令官がそう言うんだったらもう無茶はしない。だけど約束してね。いつか敷波も活躍させてね」

「うん。約束するよ」

 

それで敷波はやっと笑みを浮かべてくれてそれを見た綾波がほんわかな表情になって、

 

「はぁ…敷波の笑顔、癒されます。感謝ですね~」

「ばっ! 綾波姉、あんま見ないで!」

 

そんな姉妹のやり取りを見てもう敷波も大丈夫だろうという思いになった。

 

 

 




今回は敷波の焦りに関して書きました。
やっぱり綾波のセリフはこういう時に使わないとですね。



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