【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0072話『工廠での一騒ぎ』

 

 

 

 

本日は先日の瑞雲祭りの余波で艦娘達が各地で賑わっているが今では一応終了したために落ち着きを見せている。

七夕で瑞雲浴衣祭りを開くとかいう話があるがそれはそれである。

また日向達が騒ぐことを見越しておいた方がいいだろう。

そんな感じで私はまだ雨が降っていないために榛名とともに中庭を歩いていた。

べ、別にさぼっているというわけではないのだけれど本格的な雨の降りが始まる前日の唯一の晴れ模様だという予報を聞き、それならばという感じで羽を伸ばしていたのだ。

 

《提督…? 本日はどうされますか? 金剛お姉さまたちの所にでも参りますか?》

「そうだなー。榛名がそう言うんだったら今日は金剛達の所へと向かってみるか」

 

私と榛名がそんな会話をしている時だった。

突然工廠の方で小規模な爆発の音が響いてきたのは…。

 

「な、なんだ!?」

《あ、提督。工廠の方で煙が上がっています!》

「なに!?」

 

それで私も工廠の方へと目を向けてみると確かに黒い煙が上がっていた。

これはただ事ではないと思ってすぐに私は向かう事にした。

そして到着してみればすでに数名かの艦娘達が煙が上がっている工廠をおそるおそる覗いているところだった。

それで近くにいた最上へと話を振ってみた。

 

「最上。この件はどうしたんだ…? 火は上がっていないようだけど工廠の中から煙が上がっているようだけど…」

「あ、提督。うん。ボクも爆発の音で駆けつけてきたものだからどういったことかまだ分かっていないんだ」

「そうか。とりあえず中に入ってみるか…? 中で明石や夕張がなにかの実験に失敗した可能性があるかもしれないのだし」

「そうだね」

 

それでみんなが見守る中、私と最上が中へと入っていこうとした時だった。

中から少し黒く焦げた格好をしている明石と夕張の姿が現れた。

 

「ケホッ…夕張ちゃん、平気…?」

「ゴホッ…ゴホッ…明石さん、なんとか平気よ」

 

二人はなにかしらの爆発をもろに喰らったのか咳き込んでいた。

それで私は二人に近寄っていき、

 

「おい二人とも。その、大丈夫か…?」

「あー、提督。はい、大丈夫ですよー」

 

明石がそう答えるがどうにも大丈夫そうには見せないんだよな。

それで夕張の方へも視線を向けてみると、

 

「うっ………提督。そんなに怖い顔をしないでくださいよー。別に悪い事なんてしていませんからぁ…」

 

なにやら自覚があるのか反省の言葉を述べている夕張。

いったい二人はなにを工廠でしていたんだ…?

 

「結論から聞くが二人はなにをしていたんだ…?」

「…はい。その、怒らないでくださいね?」

「わかっている」

 

明石に念の一言を言われたので一応まだ怒らないで内容を聞くことにした。

 

「実は、私と明石さんで花火の製造を行っていたんです」

「は、花火!? またなんで…」

「はい。来月から色々と催しが増えるじゃないですか。瑞雲浴衣祭りとか…七夕とか…夏本番とか…」

「それで明石さんと夏に向けて色々な花火の準備をしていたんですけどちょっと手違いが発生して一つの火薬に引火してしまったんですよ」

 

その夕張の発言にゾッとする。

下手したら工廠が使い物にならなくなるかもしれない事態だったわけだ。

それはもう不安になる事だろう。

だけど明石は私の表情を察したのか、

 

「あ、安心してください。引火したのは小規模の一つの火薬玉だけです。

ですので連動して他のものに爆発が起こっているわけではありません」

「それなら大丈夫…なのか? 私ははたして二人を怒るべきなのか?」

 

そこに状況を見守っていた最上が口を出してきた。

 

「とりあえず提督。みんなには大丈夫だと言っておいた方がいいと思うんだ。

そろそろ長門さんとかが消防器具とかを持って工廠へとやってきちゃうかもしれないから…」

 

それを聞いて明石と夕張は焦りの表情を浮かべて、

 

「まずい! 今工廠に水をかけたら用意していた花火一式がダメになってしまいます!」

「早くこの騒動を収めないと…!」

 

それで二人は機敏に行動を開始して片づけを始めだす。

それを私は一応手伝いながらも反省文を二人に書かせることを頭に入れておいた。

 

「明石ー! 大丈夫か!? この長門が来た以上すぐに鎮火してやるぞ!」

 

最上の言ったとおりに長門が消防のホースを持ってやってきた。

それで仕方がないので私が長門の対応に当たる事にした。

 

「すまない長門。消防ホースまで準備してもらって悪いと思っているがもう火は消えているんだ」

「なに…? そうなのか提督?」

「ああ。今は全員で工廠の中を清掃中だ。長門もよかったら手伝ってくれ」

「わかった。この長門に任せてくれ」

 

それでズンズンと長門は中に入っていく。

そこに明石の声が響いてきて、

 

『長門さーん! 今は危険物が並べられていますから注意してくださいね!?』

『危険物とは何だ!? お前たちは一体なにを作っていたんだ!?』

『えっと、その…花火を…』

『花火だと!?』

 

という長門達のやり取りが工廠の中から聞こえてくる。

それで案の定というか長門の怒声が響き渡ってきたのは言うまでもないことだろう。

それからしばらく工廠内の片づけをしていって、

 

「…しかし、どうしていきなり花火なんて作ろうと思ったんだ…?」

 

私は一応理由は聞いたけどその動機が分からなかったので二人に聞いてみた。

すると二人は少し恥ずかしそうにしながらも、

 

「そのですね。提督を喜ばそうと思いまして…」

「私を…?」

「はい。最近提督は精力的に私達のために頑張ってくれています。

だけど私達はなにかを提督に返していないんです。だから少しでも恩返しにと提督を喜ばせるものをと考えていたらいつの間にか花火を作成していたわけでして…」

 

それ以上は二人も面と向かって話すことが出来ずに顔を俯かせてしまっていた。

おそらく私に怒られるのかなと思っていたのだろう。

内容はともかく危険なものを作っていたのは確かな事だから叱らないといけないだろう。

だけど、

 

「…ありがとうな二人とも。私のために色々と考えていてくれて」

「「提督…」」

 

それで二人は俯かせていた顔をパッと上げて嬉しそうに顔を綻ばせる。

だけどただで許すわけにはいかないから、

 

「まぁ、それはそれとして反省文は書いてもらうぞ二人とも」

「はい。わかっています…」

「うん。しょうがないですよね…」

 

それで二人は素直に反省文を書くことにしたのであった。

 

「だけど花火は楽しみにしているよ。もう失敗はしないようにな」

「わかりました」

「了解です」

 

私から花火作成の継続の言葉が出たのが嬉しいのか二人は反省文を書きながらも嬉しそうだったのは言うまでもないことだろう。

 

 

 




今回は明石と夕張の実験を書いてみました。
自由意思がありますから勝手に花火を作っていますがこれも夏に備えてのものですのでイベント事の時に使わせてもらおうかと…。

しかし、夕張の梅雨グラ関連を書こうと思ったのになんだこれ…?



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