【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0094話『海外空母の暑さ対策』

 

 

 

グラーフ・ツェッペリンとアクィラは空母寮であまりの暑さに参っていた。

 

「暑いな……」

「グラーフー……それは何度目の暑いですかー?」

「さぁな……私としては鎮守府に来てから二回目の夏だがこうして実際に暑さを体験するのは初めてだからさすがに参るな」

「それを言ったらアクィラだって二回目の夏ですけど、なんとかやっていますよー……」

「まぁお前は脇が開いている服を着ているからな。さぞ涼しかろうな」

「まぁ! グラーフったら酷いわ。これでも暑いものは暑いんですよ?」

「すまない。少し暑さにやられているようで感情が制御できていないようだ」

「まぁ仕方がないですよね。ただでさえ異常気象ですからー……そんなグラーフはよしよししてあげますね」

 

それでグラーフの頭を撫でてあげようとするアクィラだったがグラーフの「止さんか」というセリフでシュンッとなってしまい結局よしよしできずに消化不足なアクィラだった。

 

「そうだ! 提督の執務室に行ってみませんかグラーフ? 提督だったら多分クーラーをつけていると思うわ」

「いや、アトミラールの事だ。ウチワかセンプウキで我慢していると思うぞ。節約しているだろうからな」

「とにかく行ってみましょうよ。少しは気を紛らわすことが出来ると思うわ」

「そうだな。気休めだが行ってみるか」

 

それでグラーフとアクィラは二人して執務室へと向かっていった。

それで執務室へといく道中でふとグラーフはある事を言い出した。

 

「しかし……アトミラールと初めて過ごす夏だが、意外といいものだな」

「突然どうしたの、グラーフ……?」

「いや、今まで画面越しでしか会った事がなかったアトミラールとこうして直接会えるというのは実はすごい事なんだぞ?」

「確かにー……それはわかります。提督は実際に会ってみて気さくないい人でしたからね」

「そうだな。鎮守府の他の仲間たちも平等にそう思っている事だから最初期からいるであろうコサンの者達は余計に嬉しいだろうさ」

「そういうグラーフだって提督と会うたびに笑顔を浮かべているじゃないですか。さすがクーデレじゃなくってデレデレね」

「その、デレデレというのはよしてくれないか? 私だってそこまでアトミラールと親密な関係という訳ではないぞ?」

「ふふふ……知らぬは本人ばかりなりって言葉が似あいますねぇ~」

「ほう……敢えて私に喧嘩を売っているのかアクィラ? 高値で買ってやるぞ?」

「いやー! 怒らないでグラーフー!」

 

そんな漫才じみたやり取りをしながらも二人はいつの間にか執務室へと到着していた。

そしてグラーフが扉をノックすると少しダルそうな感じの榛名ボイスで「どうぞー」というセリフが聞こえてきたために、

 

「グラーフ・ツェッペリンだ。入るぞアトミラール」

「アクィラもいますよ!」

 

二人はそんな言葉を発しながら執務室へと入っていった。

瞬間、感じる熱気にグラーフとアクィラは思わず険しい顔つきをする。

そこにはクールビズの恰好をしながらも扇風機だけで暑さに耐えている提督の姿があった。

 

「あー……グラーフにアクィラか。いらっしゃい」

「うむ。ところでアトミラール、大丈夫か……?」

「大丈夫だ。心頭滅却すればなんとかなるからな。普段は畑仕事もやっているからこのくらいの暑さならなんとかなっているよ」

「日本の諺ですね。えらいです、提督。よしよし♪」

 

そう言って暑そうな提督の頭を撫でているアクィラがいた。

それで幾分癒されているのだから効果はあるのだろう。

 

「ハルナ、アトミラールがダメそうだったらすぐに言ってくれ。我らがなんとかしよう」

 

それで榛名が出てきて、

 

《はい、お願いしますグラーフさんにアクィラさん。今日は提督はちょっとこの暑さの中で働き過ぎですから見ていて冷や冷やしていたんです。クーラーをかけてくださいと言っても「節約だ」で済まされてしまいますから……》

「そうか。アトミラール、無理は良くないぞ。休む時には我慢せずに休むのも鎮守府の長としての仕事だからな」

「ああ。そうさせてもらうよ。ありがとうな、グラーフ」

「いや、アトミラールが分かっているならそれでいいんだ……」

 

それで少し頬を赤くして視線を逸らすグラーフ。

そこにアクィラが目ざとく気付いて、

 

「グラーフー? 顔を赤くしてどうしたんですか……?」

 

チャシャ猫のような笑みを浮かべながらグラーフを弄り倒そうとしているアクィラの姿がそこにあった。

だけどそうは問屋が卸さないというべきかグラーフが少しムッとしてアクィラにデコピンを食らわせていた。

それで当然アクィラは「あいたー!?」という叫び声をあげていた。

手加減はしただろうがグラーフの馬力でデコピンは相当痛いだろう。

 

「アクィラ? お前のその手には乗らないぞ?」

「痛いですよグラーフー!」

 

それでプチ喧嘩をしだす二人。

そこに提督が無粋かなと思いながらも、

 

「ところで二人はどうして来たんだ……?」

「あ、そうだったな。なに……アクィラの奴がきっとアトミラールはクーラーを使って涼んでいるだろうと言い出したんであやかりに行こうと言い出したんだ。私はセンプーキで耐えてるだろうと思っていたのだが、正解してよかった」

「なるほど……。まぁ確かにそうだけど冬でもない限り耐えられる間はクーラーは使わない事にしているんだ。自家発電設備もあるけどそれだけじゃ限界だしな」

「さすがだアトミラール。……アクィラ、こういうアトミラールの姿を見習ったらどうだ?」

「もうっ、わかっていますよー。でも少しは涼しくなりたいじゃないですか。暑いんですから!」

 

そこでとうとうアクィラが開き直ってしまった。

それでグラーフがどうしたものかと悩んでいると、

 

「そうだな……。だったら二人とも、スイカでも食べるか? 今ちょうど冷水で冷やしてあるから食べごろだと思うけど。冷たくて美味しいぞ?」

「はい! 食べたいです!」

「アクィラ。少しは遠慮をする精神をだな……」

 

グラーフがそんな事を言っているがアクィラは少しでも涼しくなれればという思いでグラーフの小言を全然聞いていなかった。

まぁそれでグラーフも結局は着いていくことになった。

中庭に出ればそこにはタライに氷が張ってあってスイカが冷やされていた。

 

「少し待っていてくれ。人数分にカットするから」

 

提督がそう言って包丁を取りに行こうとするがそこで赤城がちょうどよくやってきて、

 

「はい、提督。包丁です、どうぞ」

「あ、ありがとう赤城……。ところでどうしてこんなばっちりなタイミングで持ってこれるんだ?」

「いえ、提督がスイカを冷やしているのを知っていましたからなんとなく待ち伏せしていたらちょうどよく来てくれたんで……」

「つまりアカーギも食べたいんだな?」

「はい、グラーフさん。提督、いいでしょうか……?」

 

それで提督はその表情にやれやれという感じの笑みを浮かべながらも、

 

「わかった。それじゃ四人分にカットするよ」

 

それで提督が四人分にカットして四人で木陰に設置してある長椅子に座ってスイカを食べている。

アクィラは初めてスイカを食べたのか、

 

「冷たくてそれに甘いです!」

「そうだろう? 夏に備えてスイカも畑で作っていたんだ」

「それではまだまだあるのですね提督?」

「まぁね。だけどみんなにも上げたいから食べ過ぎないでくれよ?」

「分かっていますよ」

「アカーギのその言葉は果たしてどこまで信じられるものなのか……」

 

素直に頷いている赤城を見て、だけどグラーフは一途の不安を感じたのであった。

スイカが均等に配られるのを切に祈るばかりである。

そんな事をグラーフは思いながらもスイカにかぶりついて、

 

「……うむ。確かに美味しいな」

 

スイカを味わっていたのであった。

夏のそんな一幕……。

 

 

 




今回はアクィラとグラーフを出してみました。
最後に赤城が出てくるのは狙っていたからです。

サラトガも出すべきだったと思いますけど暑さには慣れていると思ったので。出番も多分近くであるでしょうし。




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