【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0098話『鉄骨番長』

 

 

 

「提督提督ッー!」

 

朝一番でいきなり誰かが私の寝室のドアを叩いてきた。声からして明石か……?

 

《ふぁー……提督、何事でしょうか……?》

「さぁな」

 

榛名の眠さのボイスで癒されて覚醒しながらも突然の対応に困っていた。

それで私達は少し訝しみながらもドアを開けて明石を中に入れる。

 

「提督! 榛名さん! おはようございます!」

「ああ、お早う」

《おはようございます、明石さん。ところでこんな朝早くからどうしました……?》

「まさか夜の哨戒をしている川内達になにかあったのか……?」

 

それで少し心配になる。

なにか異変があればすぐに誰かが知らせに来るものなのだがとうとう何かが起こったのかと不安になっているが、明石はそんな事など一切知らないようで、

 

「いえ? なにもありませんでしたよ? 自室に眠りに行く川内さんの姿なら見ましたけどね……」

「そうか。何事もないならそれでいいんだけど……」

「ところで提督? 私、どこか違うような感じしません……?」

 

明石がそんな事を言い出してきた。

ふむ……明石の恰好がどこかいつもと違っているな……そう、

 

「瑞雲祭りの法被、か……?」

「そうです! ついにうちでも瑞雲祭りでの恰好が許可されたんですよ!」

 

それで明石は嬉しそうな顔をして喜んでいる。

 

「そうか。明石もついに瑞雲教に入ったんだったな」

「いえいえ。そんなことはありませんよ? ただ私は楽しめればそれだけでいいんですよー」

「そんな事を言って後で日向に聞かれてみろ。すごい目つきで睨まれるぞ?」

「そこは御安心ください。日向さんには悟られないようにしますから!」

 

そう大見得を切っているけど大丈夫かなと思っている矢先に、

 

「それよりちょっと見てくださいよ! 衣装に合わせてどういう原理か分かりませんけど私の艤装も少し変化したんですよ!」

 

そう言って明石は艤装を顕現させる。

光りがおさまるとそこにはいつもの艤装とは異なった形のものがあった。

そう、それはいわゆる『鉄骨番長』と呼ばれるアトラクション……その艤装バージョンである。

前にも話したと思うけど明石のその艤装で妖精さん達を遊ばせることも可能なのである。

その目的が遊んでいる妖精さんを見れる提督候補の人材を探る事にも含まれているために一部ではあまりお勧めはされていない。

なぜかって……妖精さんが見れるだけで将来がほとんど決められているもののようなら提督になりたくないという子も強制的に海軍に入れられてしまうかもしれないという親の心配もあるからである。

そこら辺は私も危惧している事だけど、もしかしたら近場で言えば七海ちゃんが見れるかもしれないな。

目的は変わったとはいえ将来は提督を目指している七海ちゃんだからぜひ適性検査もあるこの艤装を試してみるのもありかもしれないな。

 

【明石さん、その……乗せてもらってもよろしいでしょうか……?】

 

そこで榛名の恰好をした私達の艤装の妖精さんがおずおずと出てきたために表に出てくるのは久しぶりだなという感想を持ったのは内緒だ。

 

「いいですよー。ぜひ乗ってみてください!」

【ありがとうございます!】

 

それで妖精さんはせっせと明石の鉄骨番長へと乗り込んでいってシートベルトを装着し、

 

「それでは動かしますよー」

【お、お願いします!】

「はい。それではグングングルグル!」

 

それが掛け声なのかどうかはわからないけど明石のその言葉の後に鉄骨番長が稼働し始めて回転を始めだす。

次第に早くなっていく回転で乗っている妖精さんはというと、

 

【きゃーーーーー♪♪】

 

実に楽しそうな悲鳴を上げているのであった。

 

《妖精さん、楽しそうですね……》

「ああ。普段は冷静な子なんだけどやっぱりどこかでゆとりもないとな」

「提督達にも乗せてあげたいんですけど本場の場所までいかないとさすがに無理ですから、すみません……」

 

それで明石がぺこりと頭を下げてきた。

 

「いや、明石が謝る事じゃないよ。だいたいこれでも一応は海軍に身を置いているんだからそんな簡単に遊びに行けるとは思っていないし……だから気にするな」

「はい……」

 

明石とそんな話をしながらもいつの間にか鉄骨番長は終了していたために動きが停止していた。

 

「妖精さん、どうでしたか……?」

【はぁー……楽しかったです。もっと乗りたいと具申します】

「ふふ。わかりました。それじゃ後で妖精さんの集まりにも言っておきますね。榛名妖精さんの感想は乗り心地はよかったって」

【はい。こんな楽しい乗り物は私だけが独占するのは気が引けます。他の皆さんにも楽しんでもらいたいものです】

「そこまで気に行ってくださるなんて……嬉しいです。それでは明石の工廠へとまた来てくださいね。順番待ちにもなりますが期間中はいつでも乗れるように私も手配しておきますので」

【はい。よろしくお願いします】

「それでは提督、榛名さんもまた工廠へと来るのをお待ちしていますね。それと……」

 

最後に明石が何かを言いかけて取り出したのはカメラであった。

何をする気かな?

私がそう思う前に明石は私に向けてパシャリ!と写真を撮った後に、

 

「提督の寝間着の姿、頂きました。では失礼します!」

「まっ!? その写真をどうする気だ!?」

「安心してください。悪用はしませんから―……」

 

明石の声は次第にフェードアウトしていった。

それで私は油断していた事を迂闊に思いながらも、

 

「明石にはしてやられたな。まさか青葉みたいに使われないよな……?」

《多分大丈夫じゃないでしょうか……? 明石さんの事ですから青葉さんみたいに……ならないといいですね》

「榛名。声が上ずっているから自信がないなら無理に言わなくてもいいからな?」

《はい……すみませんでした。でも、提督と一緒なら榛名は大丈夫です!》

 

そこで榛名の決め台詞を言われたらどうにも大丈夫そうに聞こえてくるのは謎だけど、大丈夫だろうと思ってしまう効果がある。

 

「ま、なるようになるか。さて、それじゃさっさと着替えて食事を摂った後に今日の任務をやりにいこうか」

《はい、今日も榛名は提督のお役に立ちますね!》

 

それで私は着替えて執務をしに元気に今日も頑張っていこうという気分になっていた。

 

 

 

 

 

……ちなみに提督の写真は提督LOVE勢に高値で取引されていたとかなんとか……。

そして工廠では非番の妖精さん達が結構な列を成していたと記載しておこう。

 

 

 




鉄骨番長modeの明石さんから書いてみました。
明日は速吸にでもしましょうかね?



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