生徒会の仕事も終わり、一段落した放課後の生徒会室
「・・・・・おーい・・・・ーーってば」
ヒツギ「ーーー・・・・・オリ・・・・・コオリ、聞こえてる?」
心ここにあらずといった親友に自身の椅子の背もたれに体重をかけ、伸びをしながら何度目かの声をかける。
コオリ「・・・あ、ご、ごめんねヒツギちゃん。ちょっとぼーっとしちゃってた」
神妙な面持ちで見ていたPCの画面から眼を離し、ヒツギに向き直る。
コオリ「どうしたの?」
ヒツギ「生徒会の仕事も終わったし、PSO2に行こう って話よ」
コオリ「PSO2・・・うん・・いこっかっ」
ヒツギ「・・・・・コオリ、あんたどうかした?今日はいつにもまして、特にぼーっとしてる事が多いじゃない」
コオリ「い、いつにもましてって、私いつもはそんなにぼーっとしてないよっ」
ヒツギ「ぼーっとしてることは否定しないのね・・・」
ヒツギ「全く、いつも仕事してるかと思えばアルの画像見てニヤニヤしてるし」
やれやれ、といったようにため息をつきながら頬杖をつきコオリに避難の視線を向ける
ヒツギ「かと思ったら急にぼーっとして、またニヤニヤ」
コオリ「だ、だってぇ、アル君があんなに可愛すぎるのがいけないんだよっ」
コオリ「それにー、ずっと生徒会の仕事ばっかで疲れちゃうし、息抜きは必要だと思いまーすっ」
右手をビシっと上に掲げ、自慢げな視線を向けるコオリ。
コオリ「うへへ~、アル君かわいいよ~、もう私の子にしちゃいたいよ~」
PCのモニターに写っているアルの画像を見ながら、椅子から立ち上がり、両手で肩を抱きくねくねと奇妙なロビーアクションをするコオリ。
ヒツギ「あんたは明らかに仕事より息抜きのほうが多いじゃないの・・・」
ヒツギ「まったく、まーたアルに引かれるわよ」
コオリ「そんなことにはならないからだいじょーぶでーす」
奇妙なロビーアクションをしたまま、どんな妄想をしているのだろうか、左右に体を振ったりくるくるとまわったりを繰り返している。
ヒツギ「・・・その自信はどっから来るんだか・・・」
ヒツギ「・・・で、何かあったの?」
その一声で、ぴた、とコオリのロビーアクションがとまる。
コオリ「・・何って、別になにもないよ?」
肩を抱いたポーズで、ヒツギに背を向けたまま返事をする。
ヒツギ「嘘、絶対なんかあったでしょ」
さっきよりも強めに、確信を持っているような口調を向ける。
コオリ「本当になんでもないよー?ヒツギちゃんの気のせいだよ?」
ヒツギの言葉を否定するように、コオリもまた強めの口調でかえす。
身体は相変わらず背を向けたままだ。
ヒツギ「嘘よ。何年あんたの親友やってると思ってんのよ」
椅子から立ち上がりコオリの側へと歩み寄る。
コオリ「本当になんでもないよ。ほらっ、そろそろPSO2に向かおうよ」
いつもの、いつものようにコオリは明るい声を出す。
ヒツギ「コオリ」
動こうとするコオリよりも早く、コオリの前に立ちコオリの顔を見る。
ヒツギ「ほら、また 笑ってる なにもないわけ・・・ないじゃない」
ヒツギ「もう・・・あんたにそんな顔させないって決めたのに・・・」
いつものように笑っているコオリ。その顔を泣きそうな顔で見つめるヒツギ、しかしその眼は決して彼女を離さない。
コオリ「ちが、違うの・・・!ヒツギちゃんのせいじゃないの!・・・わたしの、わたしのせいなの・・・」
コオリ「こんな事・・・思っちゃだめなのにっ・・・でも・・・わたしっ・・・・・」
ヒツギから視線をずらし、地面を見つめる。
ヒツギ「・・・コオリ・・・何があったのか・・・教えて?」
身体を落とし、コオリの顔を覗こうと顔を傾ける。
コオリ「言えないよ・・ヒツギちゃんに、ヒツギちゃんには絶対言えない・・・」
ヒツギの視線から逃れるように、首を横に向ける。
ヒツギ「誰かに、ひどいことされた?」
コオリ「ううん、そうじゃないの」
ヒツギから目線はそらしそれでもしっかりと首を振り否定する。
ヒツギ「それなら、どうしたの?」
コオリ「・・・・・」
その言葉には答えず、また、コオリは視線を落としてしまう。
ヒツギ「・・・・・」
コオリ「・・・・・」
ヒツギ「・・・・・」
ヒツギ「・・・・・ねえ、コオリ?」
コオリ「・・・・うん・・・・」
落とした視線そのままにコオリは聞こえるか聞こえないかのか細い声をだす。
ヒツギ「あたし、ちゃんと謝ってなかったよね」
コオリ「・・・え?・・・」
言ってる意味がわからず、顔を上げヒツギを見る。
ヒツギ「あたしのせいでたくさん迷惑かけたのに、ちゃんと謝ってなかったから」
ヒツギ「あんたが操られてるときだって・・・」
コオリ「そんなことないよ!ヒツギちゃんはいつもわたしを助けてくれてたよ!」
ヒツギ「でも、一歩間違えてたら失ってたかもしれない・・・あたしの大事な、大事な親友を」
コオリ「・・・え?」
ヒツギ「今まで言えなかったんだ、なんか・・・あたしのキャラじゃない気がしてたんだ」
ヒツギ「馬鹿だよね。それで大事な親友を失うところだった」
コオリ「そんなっ」
その台詞を言う前に、ヒツギがコオリを正面から抱きしめた。親友の感触を確かめるように。
コオリ「ヒツギちゃん・・・」
一瞬驚いた顔をし、身体をこわばらせていたがすぐに力を抜き、腕を重力に任せる。
ヒツギ「今までごめんね、コオリ。あたしと一緒にいてくれてありがとう・・・」
ヒツギ「これからも、よろしくね」
ヒツギの肩に乗せていた顔がその一言で一気に破顔していく。
コオリ「ヒツギちゃ、う、うう、ヒツギちゃあああああああああん!!」
コオリ「うわあああああああん!、わたしっ、わたしっ!」
ヒツギの背中に両手を回し、力いっぱい抱きしめ返す。コオリもまた親友の感触を確かめるように。
ヒツギ「うん・・・大丈夫、大丈夫だよ」
そのままコオリの嗚咽を聞きつつ自身も涙を流し、お互いの感情をさらけ出す。
数十分のあと、2人はお互いが思っていたこと、言えなかったことを、涙とともに語るのであった。
ヒツギ「コオリ」
コオリ「何?ヒツギちゃん」
ヒツギ「あたしに遠慮なんかしなくたっていいんだからね」
ヒツギ「あたしだって遠慮なんてしないからさっ」
ヒツギ「何があったって、あたし達 は あたし達よ だから大丈夫」
コオリ「・・・うんっ!」
いつからだろう。こんな気持を抱いたのは。
何度も助けられてるうちに?相談に乗ってもらったり、気にかけてもらってるうちに?
自分でもよくわからない。気づいたら、好きになっていた。そんなありふれた答えなのかもしれない。
今まで、ずっと我慢してきた。でも、日に日に募っていくこの思いを、もう隠すことができない。
だから、伝えよう、きっと大丈夫だから。
地球 東京エリア3
コオリ「今日も色々ありがとうございました!すごく助かっちゃいました!でもこれ私いらなかったような・・・」
ヒツギ「自信持ちなさいよ。それにこれからもまだまだ振り回すんだから、これくらいでへばってちゃやってけないわよ」
コオリ「ううー、やっぱり引っ張りまわされちゃうんだね!でも、ヒツギちゃんにならもっと強引に!引っ張ってもらっても!」
ヒツギ「はいはい・・・」
東京での任務も終わり具現武装を消し、いつもの制服姿に戻る2人。
守護輝士であるあなたを2人が見据える。
ヒツギ「今日もありがとう。手伝ってもらって助かったわ」
コオリ「やっぱり、本当に強いんですね。憧れちゃいます」
コオリ「それでですね・・・」
コオリ「お疲れのところ、本当に申し訳ないんですけど。少しだけお時間いただけますか?」
今までの、穏やかな空気を払い、少しだけ緊張した空気にかわる。
その変化とコオリとヒツギの面持ちの変化に少し疑問に思いながらも大丈夫、と声をかける。
コオリ「ありがとうございますっ」
ほっとしたような顔をうかべこちらにお辞儀をする。
コオリ「・・・・あのっ・・・・」
コオリ「・・あのですね。あなたとヒツギちゃんに大事な話がありまして」
ヒツギ「あなたにも 色々 関係のある話だから、聞いてほしいの」
そういい、横目でコオリに視線を送る。
その視線をうけ、コオリも頷く。
そう言われ、コオリの言葉を待つ。
コオリ「・・・・・・」
両手を胸に当てこちらをまっすぐ見つめていた瞳を閉じ、2、3深呼吸をする。
コオリ「・・・・・・・・」
閉じていた両目を開き、まっすぐにこちらを見つめる。確かな覚悟と、少しだけのゆらぎを秘めた瞳を。
コオリ「わたしは・・・」
コオリ「鷲宮氷莉は・・・・・あなたのことが好きです・・・・」
コオリ「色々!ほんとーに、色々迷惑をかけちゃって、こんな事迷惑かもしれないですけど」
コオリ「こんな気持ち初めてで・・・。でもどうしても、伝えたくて」
コオリ「あ、でも、あなたに好きな人がいたらわたしは潔く身を引きますっ。でもでも!もしよかったら二号さんでもっ!」
ヒツギ「コオリ、少し落ち着きなって、またとんでもないこと言ってるわよ」
コオリ「だ、だってこんなこと始めてでぇ」
身体を左右に揺らし不安げな声を上げる。
ヒツギ「まあ、コオリの気持ちは本当だから、今までの言動でわかりづらいだろうけど」
コオリ「あの、今すぐ答えを出さなくてもいいので。わたし、待ってますから」
ヒツギ「それで・・・まああたしからも話があって・・・」
そういうヒツギの表情は、今までに見たことがないものだった。
左腕を掴み、視線を右往左往に動かし、右足のつま先を地面に2度、3度と叩く。
ヒツギ「・・・・・」
ヒツギ「・・・・その・・・・」
ヒツギ「・・・う・・・・・」
その動きのまま、ちらりとコオリに視線を向ける。
コオリ「ヒツギちゃん頑張ってっ」
ヒツギ「うううう、わ、わかってるってのっ。こ、こんなに緊張するなんて思っても見なかったわ・・・」
ヒツギ「すー、はー、すー、はー、よし、言うわよ」
ヒツギ「あたし、あなたに本当に助けてもらって。感謝してもしきれない。こうしてコオリとみんなと笑ってられるのも、あなたのおかげ」
ヒツギ「ほんとうに、ありがとう」
ヒツギ「私、八坂火継は、あなたのことが好きです」
ヒツギ「急に2人に告白されて大変だと思うけど、あたし達の気持ちは本当よ」
ヒツギ「・・・気長に待ってるから、返事くれると嬉しいな」
コオリ「くびをながーくしてまってます!」
コオリがヒツギの両肩に手を置き横から身体を傾ける。
ヒツギ「あたし達のどちらかになったり、あたし達以外の人でも気にしないからね」
ヒツギ「それくらいじゃ、あたし達の関係は変わらないから!」
コオリの右手に自身の左手を重ねながら、笑顔で答える。
コオリ「うん!」
コオリ「でも」
ヒツギ「ん?」
コオリ「ヒツギちゃんとわたし、二人一緒に・・・なんてのもそれはそれで」
今までヒツギに体を預けていたコオリが、ヒツギとあなたの間に立ち左右に視線を交互に向け、前かがみであなたを見上げる。
ヒツギ「ちょ、ちょっとコオリ!あんた何言ってんのよっ」
間に立ったまま、特に気にならない、と言った様子で小首を傾げるコオリ。
コオリ「英雄色を好むって言うしっ。それにオラクルでは一夫多妻OKかもしれないよ?」
ヒツギ「・・・い、いやそれはそうかもしれないけど・・・」
コオリ「やっぱり、ヒツギちゃんも一緒にいてくれたほうが嬉しいし、3人だったらもっと楽しいと思うんだ。ヒツギちゃんは?」
ヒツギ「そ、それはあたしもそうだけど・・・。でも色々と倫理的に・・・」
コオリ「それじゃあわたし1人でがんばっちゃおうかなー、ヒツギちゃんはいないんだー?」
右腕に抱きつきつつヒツギの方に挑発するような目線を向ける。
ヒツギ「あー、もう!あたしだってコオリと、あなたと一緒にいたいわよ!これでいいんでしょ!?」
そんな視線を振り払うようにヒツギは声を張り上げる。
コオリ「うんっ!」
それを受けたコオリは笑った。
心から、嬉しさが溢れ出ているような、そんな笑顔だった。
コオリ「これからも、よろしくおねがいしますね?」
コオリ「わたしの気持ちはずっとかわらないですからねっ」
抱きついたまま、見上げるようにこちらに目線を向けるコオリ。
ヒツギ「あ、あたしだって貴方のこと・・・その、す、好きだから。だから、これからも付き合ってもらうわよ!」
同じように、空いてる左腕に抱きつき、ヒツギもこちらに目線を向ける。
コオリ「ふつつかものですが!よろしくお願いしますっ」
ヒツギ「・・・それはまだちょっと違うんじゃない?」
コオリ「ええっ!?そうかなぁ・・・」
はしゃぎあう2人、これからのことに少しだけ不安を抱えながら、それでも、以前とは違う賑やかな未来に胸を膨らませるのだった。