僕が読みたいと思う二次創作『インフィニット・ストラトス』 作:那由他01
朝食を済ませて教室に入ると頬を膨らませた新聞部所属、セシリアのブルー・ティアーズの情報を持ってきてくれた新井さんが席に座り、静かに鎮座していた。そして、俺の顔を見るやいなや、ズカズカと歩み寄り、そして、顔をしかめ、
「なんで織斑くんのクラス代表祝いのパーティーに来なかったの礼遇くん! 部長に怒られたんだから……」
「あ、ああ! なんか、そんなの言ってたね。いやはや、行かないといけないと思ってたんだけど、医務室で貰った痛み止めの副作用でぐっすりと眠っちゃって……」
セシリアとのお茶会の後、そのまま自室に帰って、痛み止めを飲んだんだ。飲んだ直前にはパーティーのことは思い出してたんだが、副作用で眠くなるタイプの痛み止めで、睡魔に勝てないで轟沈。やっぱり一夏にお祝いの言葉の一つや二つ投げかけた方が良かったのだろうか……。
「あ、そっか、授業で傷がぶり返したし、薬飲んだら眠くなる人っているもんね……うーん、じゃあ、一年一組の二人を倒した感想を聞かせてくれないかな? 部長は最低でもそれだけは聞いてきてって言ってたから」
「まあ、運が良かった。クラスの皆で色々作戦を練って、それが通用したのもある。だけど、やっぱり運が良かった。セシリアに関しても、一夏に関しても」
「運も実力ってやつだね、よしよし、部長にこれを報告したらお仕事完了! ごめんね、怒鳴ったりして」
「まあ、互いに色々と事情があったんだ。何も言わないよ」
新井さんはメモ帳に俺が言った運も実力なんていう打鉄で第三世代機二機を倒した恐ろしい奴の言葉とは思えない言動を記録する。まあ、色々と色を付け足しているだろうが、そこまでぶっ飛んだ何かを付け足すこともないだろう。
「あ、そうだ、一年二組に転校生が来たらしいよ、なんでも中国の代表候補生」
「代表候補生?」
「うん、第三世代機を専用機として持ってる代表候補生。機体の情報はまだまだ未入手だから、クラス代表戦で当たったら作戦が立てづらいねぇ、まあ、その頃には情報が入ってくると思うけど」
クラス代表戦か、
一年一組は第三世代機の白式に乗る一夏、
一年二組はどこかの国の代表候補生の少女、
一年三組は言わずもがな俺、
一年四組は日本の代表候補生の少女だった筈。
いや、待て、一年四組のクラス代表も専用機を持っていた筈。でも、情報を耳にしたことがないな、表立った行動をしていないためか? いや、それでもクラス代表、それに付け加えて代表候補生であり、専用機を持ち合わせている。それの情報が頻繁に飛び交わないのが可笑しい。
「あらあら、礼遇くんが作戦計画に移行しちゃったよ。吉村ちゃんを呼ばないとかな」
「いや、少し気になったことがあってさ。一年四組のクラス代表って、専用機持ってるよね? でも、あんまり噂聞かないし、アリーナでデータ収取してるってことも聞かない」
「ああ、更識簪さんね。あの子の専用機は完成してないんだ。あるにはあるし、使えるには使えるんだけど……第三世代特殊兵装が完成していないんだ。一応は情報を収集して、それを掲示する新聞部に所属してるから、機体の情報は提示できるけど、見ても意味は無いよ。だって、彼女が乗ってるのは礼遇くんと同じ――打鉄なんだから」
――打鉄、その子も打鉄に乗っているのか……? いや、打鉄は第二世代だ。第三世代の兵装を取り入れるとすると、俺の打鉄の雪影のようなものを積んでいるのか? いや、打鉄をベースに新規の機体を作っている最中だとすれば、わからないことはないが……それだと、その機体を製造しているメーカーはどうなる? 打鉄という名前を使っているんだ、倉持が開発しているもの、入学と同時に粗方の整備調整は終わらせているはずだ。それなのに何で……。
「これ、あんまり言いふらしちゃいけない情報なんだけど、織斑くんの白式を仕上げるために倉持が、第三世代型にチューンしていた打鉄の近代化改装のプランを蹴っちゃったらしいのさ。それで第二世代程度に動くその打鉄を毎日整備調整、そして、特殊兵装の開発を行ってるらしいよ。部長が何回かインタビューに行ったみたいなんだけど、収穫は零、どこまで進んでるかもブラックボックス。だけど、ほぼ毎日整備場に向かってるってことは、完成してないんだろうね……」
「確かに、一夏よりは何かしらを練って戦わなくて良いことはわかる。だけど、その子も代表候補生、ISを動かすことに関しては、プロさ。完成していなくても、確実に食らいついてくる。敵になった時が末恐ろしい限りだ」
第三世代にチューンされている打鉄か、ガワだけでも見てみたい。俺も打鉄に乗っている人間だからこそ、何かしらのシンパシーを感じている部分があるのだろうか。でも、今月は色々と予定が混み合っている。顔と打鉄を見に行くのは当分先のことになるだろう。
「まあ、戦略会議を開く時は三人分の資料まとめて持ってくるから心配しなさんな、わたしの情報収集能力は低いけど、先輩達は凄いから、ちょちょっと情報漁ってきちゃうし」
「頼もしい限りだ。お願いするよ、新井さん」
「うんうん、わたしを頼りなさい!」
クラス代表戦、それまでに右腕を使えるようにしておかないとな。少なくとも、硝煙を撃てる程度に回復させないといけない。
2
時刻は昼休み、昼飯時で多くの生徒が食堂に向かって歩みを進めている。アリーナの使用日も近いし、それでいてクラス代表戦も近いので、それらの話の意見を聞くために智将吉村さんを誘って昼飯を取りに行っている。吉村さんも作戦を組み立てるのには賛成してくれていて、早けれは早いほど思いつかなかった案が時間が経つにつれて浮かび上がってくると喜んでくれた。
食堂の数メートル前で一夏と箒ちゃん、そして、セシリアと遭遇する。
「お、丁度良かった。一緒に飯を食おうぜ」
「いや、ちょっとクラス代表戦の作戦とアリーナで行う練習メニューを練らないといけないからなぁ。隣で食べるのは構わないが、そっちの会話に進んで入り込んでいけないぞ?」
一夏は少し考えて、まあ、喋らなくても一緒に食べられるのは嬉しいことだし、一緒に食べようと言った。俺も吉村さんも了承して一緒に食事を摂ることを決めた。
「礼遇は偉いな、こっちのクラス代表は何も考えないで周囲に流されている感がある」
「ひでぇな箒」
「まあ、事実ですし、仕方がないのではなくて?」
「セシリアもひでぇ……」
「まあまあ、人によって得意なこと違うし。少しずつ積み重ねればいいじゃないか」
「そう言ってくれるのは礼遇だけだぜ……とほほ……」
それに、一夏は俺が作戦を練ったり、一年三組との友情を育んでいる間に自分の実力を向上させている。俺はリハビリを兼ねた軽いトレーニングくらいしか現状やっていないからな、このまま成長されたら追い抜かれるのも時間の問題。どうにか、一夏の半分の量のトレーニングでいいから、積まないといけないよな……。
そんなことを考えつつ食堂に入ると、食券販売機の前に見慣れないツインテールの少女が仁王立ちしていた。
「待ってたわよ一夏!」
「あ、鈴」
「誰だ? 一夏、おまえの友達か」
「いや、まあ、幼馴染かな……?」
「幼馴染……こんな子居たっけ……」
箒ちゃんの顔を見てみるが、無言で知らないというジェスチャーを見せるだけだ。少なからず、小さい頃にこんな子を見た覚えはないし、こんなに一夏と親しくしていた奴は弾と数馬くらいしか覚えていない。ある意味、女っ気なかったんだよな、一夏……。
一夏は鈴という少女を華麗にあしらって食券を購入しておばちゃんに手渡し、食事が来るのを待っている。この関係を見る限り、結構長い付き合いに見えるよな、俺が知らない時代の一夏の友人か、まあ、それくらい会ってなかった仲ということだ。俺も一夏も。
財布の中から千円札を取り出して五百円のカツ丼セットを購入して、お釣りの五百円を吉村さんに手渡す。
「誘ったのは俺だからさ、俺が奢るよ」
「かたじけない」
吉村さんは中華料理セットを注文して、俺の後ろに並ぶ。
「一夏、そっちの子と積もる話があるんだろ? やっぱり俺と吉村さんは二人で食べるよ」
「いや、いいんだ。メールのやり取りとか頻繁にやってたし」
「ちょ、あたしの気持ちも察しなさいよ!」
一夏は鈍感だからなぁ。まあ、俺も鈍感と言われることはあるから何も言えないが、それでも、男の俺から見る一夏の姿は結構鈍感。
一夏に誘導されて今いる全員が座れる広いテーブルに座る。順番は、
吉村さん、俺、セシリア、
箒ちゃん、一夏、鈴という子、
こんな風になっている。
「カツ丼うめぇ、出汁が美味いわ」
「中華、中華、やっぱり中華はいいねぇ」
俺と吉村さんは話に関わらないで黙々と食事に専念する。が、一夏から助け舟を要求されてしまう。なんだったか、この鈴とかいう子は一夏の幼馴染だったか、話を聞く限り……。
「一夏、幼馴染ってどういうことだ。俺はその子を知らない。どのくらいから知り合ったんだ」
「えっと……箒と礼遇が転校して……二ヶ月か三ヶ月くらいだったか? 小学五年生の頃だから……あれ、幼馴染になるか……?」
「なるわよ!」
なるほど、俺と箒ちゃんと入れ替わって幼馴染になった少女か……。
「まあ、俺と箒ちゃんが知らない幼馴染が居ても可笑しくはないか。転校して何年も経ったわけだ。そういう関係の子が現れても可笑しくはない。箒ちゃんもあんまり喧嘩腰で話すのは駄目だと思うよ」
「……わかった」
「というわけで、俺達は色々と作戦を考えないといけないから、適当に積もる話を重ねてくれ」
カツ丼に箸をつけながら、一枚の紙を吉村さんに手渡す。箸を放し、静かに目を通す。そして、静かに頷いてみせた。その紙には、アリーナで行う練習メニューが書かれている。まあ、授業で行った内容を復習するような内容で、過剰な何かを盛り込んだつもりはない。
「初歩的なことを積み重ねるのが一番だと思うよ。礼遇くんは授業中に肩を痛めて医務室に向かったけど、うちのクラスにちらほらと飛行するのが苦手だった子も居たし、その子達に重点を置いて練習させるのが一番だと思うな。礼遇くんは三綾の方で色々と学んでるんでしょ? それを他の子に教えてほしいな」
「わかった。じゃあ、練習内容はそれで決定でいいかな」
「クラス代表戦の作戦だけど、流石に戦うかもしれない人の前で行うのはね……」
一夏の方を見る。日々成長している一夏だ、流石に作戦の内容を漏らすのはダメだ。やっぱり吉村さんと二人で作戦会議を行った方が良かったか? まあ、一夏にも悪気があるわけがない、放課後にでも誘えばいいか。
「あんた、一組と二組のクラス代表がいる時に作戦会議しようとしたわけ? バカじゃないの」
「ん? 二組のクラス代表は居ないだろ」
「はぁ、情報がまだ回ってないのね……あたしが新しい二組のクラス代表、凰鈴音! 代表戦であたったら捻り潰してあげるわ」
「「……いや、無理だろ(ですわ)」」
俺の正面に座る一夏と隣のセシリアが無表情で否定の言葉を投げる。すると凰は何でよ! と、大きな声で反論するが、二人は苦笑いを見せて、打鉄で第三世代機を倒せる人って知ってるか、そう尋ねた。凰はIS学園の先生くらいでしょ、と、普通の返事を返すが、二人の顔は俺の方向に向かう。
「……倒したんだぜ、礼遇は。俺は初心者だからわからなくはないが、代表候補生のセシリアも」
「いや、別にすんなりと倒したわけじゃないし、また戦ったら負ける方が多いと思うぞ」
「打鉄で第三世代機を……いや、嘘でしょ」
二人は静かに否定する。そして、俺の顔を見て、侮れない存在なのね、と、ギリギリ聞こえるか聞こえないかの声で呟いた。まあ、第二世代に乗る相手でも侮るなかれということだ。だが、警戒されたら対処が難しくなる。慢心している状態で戦った方が簡単だということだ。
カツ丼とセットのうどんとサラダを平らげて水を飲み干す。
「まあ、クラス代表戦で当たった時は本気で戦わせてもらう。油断するなよ。一夏も凰も」
吉村さんも食事を終えたところで、静かにその場を去る。
誤字脱字あったらオナシャス!