僕が読みたいと思う二次創作『インフィニット・ストラトス』   作:那由他01

20 / 45
15:休息

 三匹の餓鬼がこの神社の敷地内にある道場に通っていた。この道場はそんなに古い歴史はない。そうだな、二回目の大きい戦争が終わった後くらいに作られたものだ。作った理由は、たしか、戦争孤児に剣道を教えたり、飯を食わしたりする理由だったか。

 昔は腹を空かせた餓鬼が多く剣を振るっていたが、今では三人か、時代の流れは人を裕福にして、神様を痩せ細らせやがる。まあ、面白そうなのが一匹だけ居るのが救いか。

 良い面構えをしてる。他の餓鬼とは違う、覇気を纏っている。だが、嫉妬に近い殺意が向けられているな、この殺意、この神社の長女からのものか、ケケッ、あいつは好き嫌いが激しいからな。

 太刀筋は愚直だが、筋は良い。両隣の餓鬼の成長速度に悩みを抱え込んでいるようだが、この二人は早熟型だ。そして、おまえは晩成型。早熟型の二人よりも容量は広い。その代わり、得られる成果が少ない。晩成型でいいんだ。年老いて偉業をなす者は多い。少しずつ、自らを高めていけ。

 

 

 ケケッ、この餓鬼は諦めが悪いようだ。篠ノ之の者が消え去っても愚直に前だけを見つめて突き進んでいる。これでこそ、偉人の卵だ。おまえは世界を揺るがす何かになる。低級の神の俺でもわかる。気持ちがいいくらい、高みに向かって突き進んでいる。

 おっと、もう一人の餓鬼の到来か、だが、殺意を持っているな。ケケッ、こりゃ、何かしらの障害になりそうだ。

 おお、肩を壊したか、面白い展開だ。だが、その程度の挫折で終わるなら、俺の見込み違いだ。

 

 

 餓鬼が来なくなって、掃除をしに来る篠ノ之の者の親戚しか現れない。時折、小さい餓鬼が集まるが、あの餓鬼のように覇気を感じられない。つまらない。酷くつまらない。あの餓鬼はどんな風に成長しているのだろうか、そればかり気になって仕方がない。

 肩を壊された時に着いていけばよかったか、こんな場所で信仰途切れて消え去るくらいなら、あの餓鬼の成長を見守っていた方が面白かったかもしれない。

 いや、この場所に舞い戻ったか。

 ――なあ、宮本礼遇?

 

 

 目が覚めると同時にクローゼットの中を漁って洋服の準備をする。

 今頃の若者が好むラフなファッションに身を包んで、財布の中身を確認、三綾の企業代表をさせてもらっているから財布の中身に福沢諭吉が大量に詰まっている。こんな大金、何に消費したらいいのだろうかと頭を悩ませているが、あって困るものじゃない。今日みたいな日に散財するのが一番だろう。

 外出の申請は学園側にも、企業側にも出している。胸を張って街に出ることが出来る。

 扉を開いたと同時に箒ちゃんが私服で歩いていた。

 

「あ、箒ちゃん。お出かけ?」

「あ、ああ……礼遇も出かけるのか……」

「うん、篠ノ之神社に行こうと思って……箒ちゃんの方は買い物?」

「いや、わたしも……実家の方に……」

 

 箒ちゃんが実家に出向く? そういえば、数ヶ月後に神社で祭りが開かれるよな、もしかすると、それの神楽の打ち合わせか何かだろうか。そういう予定があるなら、俺は他の場所に出向いた方がいいか……?

 

「えっと、忙しくなる? それなら日程を変えるんだけど」

「い、いや、そんなに長話をするわけじゃない。軽い打ち合わせ程度だ。どうだ、礼遇も一緒に行くか?」

「いいの? えっと、一夏を誘えば……」

「一夏は腐れ縁の友人の家に出向いているらしい。一人で行くのはバツが悪くてな、一緒に来てくれたら嬉しい」

 

 確かに、何年も帰っていない実家に顔を出す。それに付け加えて、その実家には両親ではない、親戚が住んで管理をしている。そうなってくると一人で行くのは心細いよな、じゃあ、お言葉に甘えて一緒に行動させてもらおう。互いに故郷を小さい頃に離れた者どうし。

 

 

「都会だな……遠くから見ても、近くから見ても……」

 

 駅に到着して静かに箒ちゃんが呟いた。東京の町並みはゴミゴミとしていて、住み慣れた長崎なんて話にならないくらい、ビル群が立ち並んでいた。

 

「……何でだろうか、不思議と懐かしさを感じない。両親と一緒にこの辺りを練り歩いたこともあった。それなのに、懐かしくない、初めて見た場所のように感じる」

「IS産業で日本は色々な意味で活気づいたからね。でも、東京には技術者は居ても土地がない、地方に研究所を建てる企業も増えているけど、結局のところは東京の一点集中。五、六年だけど、ここまでになるのも頷けるよ」

「見たことのない店が増えた。覚えているのはコンビニ程度だ……」

 

 箒ちゃんは酷く悲しそうな表情になっていた。この風景に変えたのは、IS産業、そして、それを作り出した人間は――篠ノ之束、箒ちゃんのお姉さんだ。間接的には、自分が関わっているのではないのか、そう考えているのだろうか?

 箒ちゃんの手を取る。

 

「れ、礼遇!?」

「知ってる店、探しに行こう。二人なら、一杯見つけられるさ」

「……ああ!」

 

 俺も同じ気持ちだ。故郷を離れて、東京に戻ってきた時、懐かしさなんて微塵も感じなかった。ただ、東京という街に住んでいて、それだけ、そんな感じだった。彼女も、そんな気持ちなのだろう。一緒に懐かしめる場所を探せば、何か変わる……。

 

「このケーキ屋、まだあったのか!?」

「お、ここのハンバーガーショップまだあったのか」

「……ここに服屋があったのにな」

「……ああ、ここのおにぎり屋さん先月閉店したのか」

 

 互いに懐かしい店を見て、苦笑いを見せ合う。確かに自分達はこの場所で生活していた痕跡、それが確かに残っていた。忘れたわけじゃない、覚えている。ただ、変わり果てたこの街並みに違和感を覚えていただけだ。だからこそ、今、懐かしさを覚えている。

 

「確か、正月のお年玉で大人ぶってこのケーキ屋に入ったよな……三人で……」

「入ってみよう! 今は二人だけど、次は一夏も誘ってさ」

「ああ」

 

 箒ちゃんの手を引いてケーキ屋に入店する。

 

「カプチーノとミルクレープ」

「抹茶ラテを……そうだな、モンブランも頂こう」

 

 箒ちゃんが財布を取り出そうとするが、それより早く財布を引き抜き、諭吉を店員さんに渡す。

 

「いいのか?」

「いいよ、三綾から貰ってるから」

「……ありがとう」

 

 女の子に財布を出させるのは、まあ、男の恥だ。少しばかりの意地だけど、この意地を通さないで男といえるだろうか?

 ケーキと飲み物を持ってテラスに移動する。夏が近づいていることを感じさせる気持ちがいい風が吹き渡っていた。

 

「変わってないところは変わってない。少し、安心した」

「五年近く、故郷を離れていた。それがよくわかったよ。でも、懐かしいと思える場所も沢山残ってて、安心した部分もある」

「ああ、そうだな……」

 

 カプチーノを一口含んで青空を見上げてみる。少し霞んでいるが、綺麗な大空だった。

 長崎も東京も、空が青いのは、共通している。日本という国に住んでいることには変わりない。

 

「良い天気だな……」

「そうだな……」

 

 

 少し寄り道をしてしまったが、互いに互いの目的地に到着した。箒ちゃんの方は、親戚の夫婦に会いに行き、俺は社に続く階段を登り進めた。

 木々の木漏れ日が涼しさを感じさせ、長い階段も苦に感じなかった。

 

「坊主、久し振りだな……肩の調子は大丈夫か……?」

 

 一匹の狐が目の前に現れた。

 

「……喋る狐?」

「見守る存在が喋りかけてきて面食らってるな。まあ、無理もない。俺はこの神社の神様だからな。半分妖怪みたいなものだが」

 

 篠ノ之神社は狐を祀る神社だ。

 

 

  この神社の信仰は地に落ちた。篠ノ之の名を持つ人間がこの神社を世話しないおかげで、俺の力も年々衰えていっている。全盛期の力なんて、もう振るえない。いやはや、時代の流れは神物の力を弱める一方だ。祭り事を開いたところで、信仰してくれるバカは誰も現れない。

 もうそろそろ、神様を辞めて妖怪に戻ろうとも思っていたさ、だが、面白い男を見つけてしまったのが運の尽きだ。名前は宮本礼遇だったか? 三匹の餓鬼の中で一番面白みがある。今はISとかいう天狗になれる機械を使って空を飛び回っているらしいが、こいつは面白い。

 

「おまえに付いて行っていいか? 暇なんだよ、こんな場所に後百年も居たら自然消滅しちまう」

「神様が不在の神社なんて誰が求めますか」

「今時の人間が正月と祭り事以外の時に神様に懇願することがあると思うか? 無いぜ、今時の人間は都合の良い時に懇願する。それを叶える身になってみろ、それに付け加えて、俺は狐だ。人間を馬鹿にするのが仕事。馬鹿にする人間が現れないんじゃ、退屈で死んじまう」

 

 退屈は猫を殺すというが、殺す猫すら現れないこの状況に何をして遊べばいい? 暇潰しに人間を現人神にして遊ぶのも悪くない。それに、こいつからは偉人の覇気と殺意の念を感じられる。ここまで強い殺意、どんな馬鹿が送っているのか、面白そうだから見守ってやりたい。

 

「俺なんかより、見てて楽しい人は居ると思いますよ?」

「けっ、謙遜するなや白々しい。おまえは神様の俺から見ても見て楽しめそうな存在だ。神に見られている人間は、色々と運が良くなる。悪い話じゃない、楽しませてくれ」

 

 了承も得ないで肩に飛び乗る。すると少年は俺の存在を探し出す。ケケッ、おまえの成長を見ていてやろう。まあ、正月と祭りには戻ってきてやるか。

 

 

 狐に化かされるとは、このことだろうか? 周りを見渡しても、あの狐は見当たらない。

 俺に付いてこず、元の場所に戻っていってくれればいいが……。

 

「……不思議だな、俺、霊感とか皆無なのに」

「れい……ぐう?」

「あ、箒ちゃん」

 

 箒ちゃんが俺のことを見た瞬間に目を見開いた。

 

「狐?」

「え、狐が居たの」

「いや……一瞬だが、おまえが狐の神のような姿に見えて……」

「……化かされたんだろうさ、狐は化かすのが仕事だし」

 

 俺に取り憑いているのか……あの狐は……。




 最近スランプ状態で文字数が伸びません、本当にすいません。
 誤字脱字あったらオナシャス!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。