僕が読みたいと思う二次創作『インフィニット・ストラトス』 作:那由他01
さてはて、一年三組の大会出場希望者の殆どが練習会に参加している。三機の打鉄じゃあ足りなく感じるが、それでも彼女達の熱意で効率良く機体を回していこう。それに付け加えて、今日は心強い仲間も助っ人として参加してくれている。
「わたくしが来たからには授業より早くISの基礎を覚えられますわ!」
「まあ、色々と借りがあるし、一夏は箒と剣道があるわけだから暇してたし」
「僕も大会に出る予定だし、皆のことを教えられる良い機会だからね」
三人の代表候補生と一人の企業代表、コーチとしては百点満点を通り越して百二十点だ。この三人は俺よりISの搭乗時間が長いし、大雑把な俺の教えより的確なアドバイスを飛ばしてくれると期待している。借りた三機の打鉄に関しても、高垣さんとその他機械に強いクラスメイト達の手によって綺麗に動くようにセッティングしている。持つべきものは友だ。
「「「「(礼遇くんと大会に出るために頑張らないと!)」」」」
「(礼遇さんと共に戦うのはわたくしです! ここでリーダーシップを見せてポイントを……)」
「(一夏も来ればよかったのに、でも、一夏にも一夏なりの理由があるわよね……)」
「(礼遇くんと一緒に大会出たいけど、ハードル高そうだなぁ)」
「全員元気が良くて非常によろしい! じゃあ三班に別れる。一つは近接格闘戦、ここは鈴さんが適任だね。一つは中距離射撃、ここはシャルルくんとセシリアに一任するよ。そして最後に回避運動、ここは俺だ。二時間の使用だから、三十分で交代、最後の三十分で大会で行うようなコンビでの戦闘を代表候補生三人と企業代表の俺が行う。見て覚えることも戦いだ」
「「「はい!」」」
最初に回避運動を行う班の前に立ち、先列に立っている向坂さんに打鉄を装着するように指示を出す。彼女は色々と行動が早くて飲み込みが早い。腕の方も応急救護で早い段階から治っている。傷は残るが……。
適正も高垣さんに次いで高くて、二年生に上がる頃には代表候補生になっているかもしれないな。
「まず最初に回避運動とは何かを説明するね。簡単に説明するから時間は取らないよ」
「「「うん」」」
「ほぼ全てのISは射撃武器を装備している。第一世代でも、第二世代でも、第三世代でも、本当に一部の例外以外は射撃武器を装備している。俺が教えるのは射撃武器からの攻撃を回避し、攻撃に転じるための行動だ。ISで戦闘を行うことにおいて、五本の指で数えられるくらい重要な行為だ。まあ、装備によって弾速や破壊力、炸裂弾、貫通弾なんかの種類も変わってくるから、実戦に出てからのお楽しみみたいな部分もある。でも、基本的な回避運動はある程度統一されている。それを一緒に学んでくれ」
軽い説明を終了させて回避運動の練習を開始する。
「向坂さん、銃の弾はどういう風に移動する?」
「直線的です」
「そうだ、だから基本的に動き回れば被弾する確率は減少する。まず最初に上昇、相手が一定の位置から射撃するとして、即座に上昇を行う。銃というものは反動が絶対に付き纏う。それを吸収するために構える。が、がっちりと構えている場合、正面の敵に弾を当てるのは比較的簡単だが、上昇する敵を撃つのは結構難しい。何故ならホールドしているストックの部分をずらして上方向に射撃を行わなければいけないからだ。この時点で照準が酷くブレる」
硝煙ヘビーを取り出して構える。
「撃ちはしないけど、俺が合図を出した瞬間に上昇回避をしてみてくれ。そして上空で焔火を展開、照準を合わせる」
「わかりました」
「はじめ!」
向坂さんは即座に上昇する。そして最もこっちからの射撃が出来にくい部分で焔火を展開、照準を合わせた。
「合格、次の人に変わってくれ」
「はい、わかりました」
効率良く回していこう。
2
「まず最初に近接格闘戦は相手の懐に入ることが基本。どんなに長いブレードでも、ギリギリ届く位置じゃ避けられて当たり前、確実に攻撃出来る位地に入り込んで斬りつける。これが近接戦の初歩よ」
「「「なるほどぉ~」」」
それにしても、すんなりとISを装着した辺り、他のクラスより練度が高いわね。頻繁に練習会を開いてるみたいだし、結構差を広げられてるかも。うちのクラスもこういった練習会を開かないといけないのかしら。
「じゃあ、接近して確実に斬りつけられる位置からあたしを攻撃しなさい。距離を把握できているって感じたら次の人と交代ね」
「「「はい!」」」
最初の人がブレードを構えて懐に入り込んでくる。双天牙月で攻撃を防ぎ、距離を確認する。
「ギリギリ合格、あと一歩踏み込めたら九十点。多分三周くらい回ると思うから他の人の攻撃の距離感を見て点数を上げていきなさい」
「はい」
一般入学の生徒なのにすごく機体の扱い方が上手い。やっぱり差をつけられてるのね……。
3
「まず最初に射撃武器は直線的な攻撃しか出来ないんだよ。だから、偏差射撃、相手が移動するであろう部分を予測して少しズレた部分を撃ち抜く。実戦で頻繁に使う技術の一つだね」
「ISの射撃武器はセミオートとフルオート、口径が大きい物にはボルトアクションもありましてよ。ですが、殆どの機体に搭載されている射撃武装はセミオートかフルオート、セミオートの場合は出来る限り相手の速度を把握し、適切な偏差射撃を行うことが重要ですわ」
「フルオートの場合は距離が近くても、離れていても、ある一定の着弾が見込めるよ。ただ、セミオートの射撃武器より口径が小さくてダメージが蓄積しにくい点に注意。それに無闇矢鱈に撃ち過ぎると弾切れになってリロードを挟まないといけなくなるし、弾薬の管理がシビアな点があるかな」
まず最初にお手本として動く標的を出現させてセシリアと一緒に偏差射撃を見せてみる。
セシリアは一発、僕は五発で標的を撃ち抜いた。
「こんな風にセミオートとフルオートでは扱い方が違ってくるんだよ」
「打鉄に装備されている焔火はフルオートですわ、デュノアさんのような偏差射撃を基本に練習していきましてよ」
「「「はい!」」」
4
一時間半、全員の生徒に近接戦闘、中距離射撃、回避運動の練習が終了する。
これからコンビでの戦闘なのだが、一時間半の張り詰めた練習のせいで尿意が襲っている。
「すまない、タッグマッチはトイレの後でいいか?」
「あ、僕も……」
「早くしてきなさいよ、時間限られてるんだし」
「生理現象ですわ、ごゆっくりと」
ISを待機状態に戻し、シャルロットと一緒にアリーナのトイレに向かう。
「ふぅ……人に教えるって疲れるね……」
「そうだなぁ、まあ、俺の場合は三十人を一人で回したこともあるし、あの時よりはマシかな」
「こういう練習会を何回か開いたの?」
「そうだな、こういう全体での練習は今日を合わせて二回目だけど、五六人の練習は六回やってる。それに、クラス全体で作戦会議開いたり、情報収集したり、結構俺が主軸になって行動することが多かったからさ、不思議と疲れないんだ。逆に使命感が沸いて心地が良いまである」
トイレに到着する。女性用と男性用に分かれている。
「誰も居ないだろ、女性用に入ったらどうだ」
「う、うん……そうする」
互いにお手洗いを済ませるために自分の性別にあったトイレに入る。まあ、傍から見たら男子生徒が女子トイレに入っている珍事なのだが、事情を把握している俺は、彼女が可哀想で仕方がない。女子トイレに入りたくても入れないジレンマ、可哀想だ。
用事を済ませて綺麗に手を洗い、備え付けられている手拭き用の紙を数枚引き抜いて手を拭う。
トイレから出るとまだシャルロットは出ていないようだ。少し待っていたら三人のISスーツを着た少女が用を足しに現れた。運が悪いな、シャルロット……。
壁を三回叩いて人が着たことを告げる。するとトイレの方から三回扉が叩かれる返事が帰ってきた。把握できたようだ。
「あれ、シャルルくん大きい方?」
「そうみたいなんだ。だから待ってる。タッグマッチの時間が一分でも欲しいんだがなぁ」
三人は少し恥ずかし気に女子トイレに入り、数分後に出ていった。壁をまた三回叩いて安全だということを告げるとシャルロットは苦笑いを見せながら女子トイレから出てきた。
「危なかったぁ……」
「まあ、でも、バレなかったんだから良いだろ」
「あの三人、壁に寄りかかってる礼遇くんを見て、壁ドンしてほしいとか言ってたよ」
「壁ドン? あれ、まだ流行ってんのか」
「少女漫画の定石だからね」
時間をそれなりに使用してしまったので、早歩きでアリーナに戻る。だが、破裂音が聞こえた。シャルロットと視線を合わせて全力疾走でアリーナに戻ると黒いISに乗ったボーデヴィッヒがセシリアと鈴さんを嬲るように痛めつけていた。
「ようやく来たか、待ったぞ」
「おまえ……何考えてんだ……」
「ただ、おまえを叩き潰したくてな。その余興だ」
装甲がズタズタで、シールドエネルギーも尽きている。ここまでする必要があるのか……。
「目的は俺との戦闘だろう……二人を開放しろ……」
「いいだろう、受け取れ」
投げつけられる二人をシャルロットと一緒に受け止める。
「セシリアすまない……俺のせいで……」
「大丈夫ですわ……かすり傷です……」
「何がかすり傷だ……すぐに医務室に連れて行ってもらえ。俺は、やるべきことをやる」
深呼吸を一回、そして恐ろしげに震えている三組を確認する。怪我人は二人だけか。
「シャルルくん、三組のみんなと一緒に二人を医務室に……俺一人でどうにかする。俺が蒔いた種だ」
「でも……」
「行ってくれ……今、珍しく怒ってるんだ……!」
シャルロットとセシリア、鈴さん、そして三組の全員が退避した後に硝煙ヘビーを展開する。
相手の武装は肩のレールカノン、両腕部に装備されているプラズマ手刀、ワイヤーブレード。確認できるのはこの三つだ。だが、第三世代機だ、特殊兵装を装備している筈。どんな装備だ……。
「……お前、俺に恨みでもあるのか!」
「あるさ、あるからこそ、こうする!」
レールカノンの鉛玉が飛来する、ギリギリ回避運動が間に合い、硬直した瞬間に引き金を引く。だが、信じられない光景が飛び込んでくる。弾が、不思議な何かによって受け止められている……。
「
「ほう、情報は入っているようだな」
「そういう情報に強いクラスメイトが居てね……」
分が悪い。相手の練度を見る限り射撃武器は基本的に通用しない。だが、近接格闘戦も受け止められたらレールカノンの餌食になる。どう戦えばいい……。
「焦っているようだな、所詮は第二世代、第三世代との差を感じているのだろう」
「焦るに決まってるだろ、楽しく自主練して実力向上をしてたらさっと台風のように現れて、コーチ達を叩き潰して、第二世代に乗ってる俺に本気で喧嘩をふっかけてきているんだ。その行動の理念が一グラム単位でわからない!」
「わからなくていいさ、おまえはここで負けるのだから」
射撃攻撃は基本的防がれる……中距離で戦闘をしたらワイヤーブレードで絡め取られる。虚弱性を探し出すしか無い!
「どうした、当たってないぞ」
「当てさしてくれないんだろうが……」
AICを駆使されて硝煙の攻撃が一切通らない。弾が切れた瞬間にレールカノンが飛んでくる。近接戦もAICの前では無力だろう。八方塞がりだ……。
「遊ぶのも飽きた、決めさせてもらうぞ」
ワイヤーブレードが飛来、右腕に巻き付く。
「吹き飛べ……」
「うがぁぁぁ……」
右肩が……クソッ……。
鋭い痛みが体を巡る。だが、負けられない。俺は、負けたくない……!
体勢を立て直し、瞬時加速、左の雪影Bで突き刺す。だが、AICが展開される。
「どうした? 届いてないぞ……」
「届かせてくれないんだろうが……」
踏み込んで出来る限り――踏み込める? AICに阻まれた雪影Bは動かない、揺るがない。だが、脚は動く、右腕も揺れている。AICが阻めるのは、展開している部分だけなのか?
だが、右腕が使えない状態だ。これ以上戦っても傷が増えるだけだ。
「降参だ……右肩を負傷した……」
「それがどうした? 負傷しても戦えばいい」
「悪魔が……」
レールカノンの銃口が向けられ、そして、放たれる。
衝撃で吹き飛ばされる。右肩にダメージが入らないように左で受け身を――ワイヤーブレード!?
左足に巻き付くワイヤーブレードが俺のことを振り回す。シールドを駆使してどうにか右肩を守るが、装甲がジワリジワリと剥がれていく。
「おまえは所詮はその程度なんだ。その程度で教官に気に入られるだと? 笑わせるな!」
「……ぐがぅああ」
「あの男も、おまえも、教官に気に入られる資格なんて無い!!」
プラズマ手刀がシールドを抉る。
「おまえは……存在する意味すら無い……」
「……壊れた人形が、ご主人様が居なくなったら寂しくて泣いてしまうのか?」
「黙れ!!」
レールカノンの銃口が向けられる。エネルギーはもう無い……万事休すか……。
「消えろ!」
「――小娘が……馬鹿なことを!」
「……千冬さん」
「大丈夫か礼遇……肩を負傷したか……」
打鉄を身に纏った千冬さんが俺とボーデヴィッヒの間に入ってレールカノンを防いでくれた。
「おまえは……いや、もう何も言わない。厳罰は追って伝える……」
「教官……私は、こいつを倒そうと……!」
「無抵抗な人間を攻撃する馬鹿が居るか! 恥を知れ!!」
「ぐっ……」
千冬さんに抱きかかえられる。
「すぐに医務室につれていく。安心しろ」
「千冬さん……ごめんなさい……」
「馬鹿者、生徒、弟の友人を守るのは――教師として、一夏の姉として、当たり前だ……」
苦笑いを見せたと同時に意識が途切れる。
番外編を除いて20話目にして敗北、ただ、情報入手完了。
こんな自分の読みたいだけの物語にお気に入り登録してくれてありがとナス!