僕が読みたいと思う二次創作『インフィニット・ストラトス』   作:那由他01

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26:緊急事態

 一夏とシャルロットとの戦闘が終了し、ISを待機状態に戻し、ピットに戻る。すると一年三組の全員が集まっていた。そして、胸を撫で下ろす。

 

「……よくやったよ、礼遇くんも篠ノ之さんも」

「ありがとう。打鉄を任せられるかな」

「わたしは傷ついていない。このまま」

「篠ノ之さん、ISは精密機器だから一度使ったら何かしらの不具合を起こすのよ。だから、そっちも預けて」

 

 高垣さんは二機の打鉄を受け取って数人のクラスメイト達を引き連れて整備室に向かった。

 左手を確認すると包帯から鮮血が滲んでいる。

 

「礼遇くん、ごめんね……わたし……」

「いいよ。広瀬さんの言ってたことも正しかった。俺が弱いから」

「……ありがとう。百合ちゃんの手伝いに行ってくるね!」

 

 問題がある作戦だった。だけど、問題があるからこそ、この試合に勝つことが出来たんだ。非道を使ってでも、勝ち進む理由があった。箒ちゃん、クラスの皆、自分自身にも……害を及ぼしてしまったか……。

 他のペアが打鉄とラファールを搬入し始めた、箒ちゃんとクラスメイトを引き連れて一旦外に出る。

 

「礼遇……包丁で深く切ったにしては、血が酷くないか? 何かあったんじゃ……」

 

 左手に巻かれた包帯、そして、そこに滲む血液を見て箒ちゃんが心配そうな表情になる。

 流石に包丁で切ったという嘘は通用しなくなったか、それでも、嘘を通さないとこの大会には……。

 事前に用意しておいた新しい包帯とガーゼを取り出して、巻き直す。が、傷口を箒ちゃんに見られた。いや、見せたのかもしれない。

 

「……銃痕、おまえ」

「すこしあったんだ……心配しないで、見た目より酷くない」

「……戦えるか、それだけ問わせてくれ」

「問題ない。肩よりマシさ……」

 

 次の試合は多分、二時間後、その間に血を止めるんだ。それに、次の対戦カードは代表候補生でもなければ、企業代表でもない一般入学の生徒、即座に仕留めることが出来る。大丈夫、手にも、肩にも負担はかからない。焦らなければ大丈夫の筈だ。

 

「礼遇……」

 

 一夏とシャルロットが暗い表情でやってきた。あれだけの姑息な作戦を使ったのだ、文句の一言でも言いたいのだろうか、言い返せない立場だからな、心苦しい。

 

「礼遇……おまえの気持ちはわかった。普通のおまえならあんな作戦は考えない。親友を名乗らせてもらっているんだ、わかるさ」

「一夏……」

「……不本意だが、託す。俺が、託されるべきことなんだろうが、負けた俺にはどうすることも出来ない。言えることは頑張れとしか……」

「こっちもすまない。俺は、ボーデヴィッヒに言わないといけないことがある。それも、戦っている時にしか言えないことなんだ」

「おまえは堅いよな、意思も、行動も。頑張れよ……応援してる……」

 

 一夏は静かにその場を去った。悲しい背中を見せつけて。

 シャルロットは何かを言い放とうとしたが、押しとどめる。そして、

 

「礼遇……僕は何も言わないよ、それが君の決意なら」

「わかってくれてありがとう。絶対に戦い抜く、そして――勝つさ」

「うん……頑張って……」

 

 彼女は静かに頷いて、一夏と同じように悲しい背中を見せて去った。

 負けられない理由が強い意味を持つ。

 

 

 礼遇の決意は堅い、それを弟との戦いで見抜くことが容易にできた。彼の取った戦術は確かに非道としか言いようがない、だが、高い難易度を誇る織斑一夏、シャルル・デュノアのペアを打ち倒すには仕方がない作戦とも取れる。少々強引な作戦だったが、絶対に使用してはいけない行為ではない。教師として、彼を咎めることは出来ない。

 

「宮本くんも強引な手段を取ってきましたね」

「宮本は一年生で一番完成された生徒だ。負傷していたとしても、策を練って突破する。嫌な話だが、うちのクラスの男子とは、方向性が真逆で、まるで策士のようだ」

 

 私から言わせてもらえれば、この大会で一番の障害は一夏とデュノアだった。それを平然と突破した当たり、宮本は第二、第三の作戦を平然と考えているだろう。だが、肩がどこまで持つか、それが気掛かりだ。それに、昨日、食堂で彼を目にした時に包帯を左手に巻きつけていた。

 考え過ぎるのもいけないことだが、彼の体の状態は芳しくない。一生の傷を作らないように――止める準備は整えておかないといけないな……。

 

 

 血はなんとか止まったが、すぐに傷口は開くだろう。左手に違和感が残る。肩にも違和感があるのに、左手にも違和感があったら本格的に戦いにくい。でも、ボーデヴィッヒとこの対戦カードで当たるには、あと二勝が必要になる。次の対戦は軽く突破出来るだろうが、その次、確実に更識さんが上がってくる。

 

「……四組のクラス代表、打鉄を使っているな」

「……機体の調整が間に合わなかったのか」

 

 モニターに映し出される戦闘、一年一組のペアと更識さんと布仏という生徒のペア、戦いは圧倒的だ。日本の代表候補生の実力の高さを示すように、一般入学の生徒を倒している。だが、どちらも使用しているのは通常の打鉄、装備も葵と焔火という標準的なものだ。唯一付け入ることが出来る部分はそこだろう。箒ちゃんのワイヤーブレードに三綾重工機の雪影B、片方を落として、二人で叩く。大丈夫だ。出来る筈だ……。

 

「礼遇……大丈夫だ、心配するな――助けられる部分は絶対に助ける」

「……箒ちゃん」

 

 今更弱気になってどうする。俺は一夏とシャルロットを倒し、二人の意思も受け取った。ウジウジしていても、ボーデヴィッヒと対戦することは出来ない。勝つことだけ考えろ、何人が、俺に期待していると思ってるんだ。自分の背負っているものを思い出せ――宮本礼遇!

 

 

 予備のシールドの設置が終了し、箒ちゃんの方の打鉄の微調整は終わっている。高垣さんは静かに頷いて俺達を送り出した。そして、第二戦、二組のペアとの戦闘になる。相手が使用している機体は打鉄とラファール、多分、打鉄で近接戦闘、ラファールで援護して第二戦まで勝ち抜いてきたのだろう。

 

「よろしく頼む」

「うん、よろしくね」

 

 互いにIS越しに握手を交わして所定の位置に陣取る。

 ラファールを一瞬で落とす。箒ちゃんにアイコンタクトを送ると静かに頷いた。そして、ワイヤーブレードを一撫でする。

 試合開始のブザーが鳴り響き、そして、ラファールから鉛玉が飛来する。最初の攻撃はそうなるとわかっていた。

 シールドを展開し、弾の雨を防ぎ、箒ちゃんに合図を出す。

 ラファール目がけて飛来するワイヤーブレード、だが、それに割って入った、打鉄が巻き付く。戦いの要をラファールと決めた行動か、だが、一機でも脱落したら後の戦闘が苦しくなる。この戦い、もらった!

 雪影Bが展開されない、こんな時に故障だと!?

 雪影Bを使用することをやめ、即座に硝煙を展開、六十発すべてのマガジンを打鉄に向けてゼロ距離で発射する。だが、削れたシールドエネルギーは半分、六十発でも口径の差が出てしまうか……。

 刹那、ラファールの右手に握られたショートブレードが打鉄に乗る少女を拘束しているワイヤーブレードを断ち切る。拘束が解けた打鉄は、即座に蹴りを入れて戦線を離脱、焔火を構えた。

 

「箒ちゃんカバー!!」

「わかった!!」

 

 焔火を構えた箒ちゃんが打鉄とラファールの間に割って入る。セシリアの指導のおかげで着弾は安定している。雪影Bが使えないなら、あれを設置しておびき寄せるしかない!

 

「箒ちゃん、二人を頼む、下準備をする」

「雪影が故障したのか」

「ああ、でも、他に武装はたんまり積んでる。大丈夫だから、時間を稼いで……」

「わかった」

 

 雷閃を地面に設置して、ジリジリとエネルギーを削られている箒ちゃんの援護に入る。

 

「もらった!」

 

 ラファールに組み付き、瞬時加速を駆使して雷閃を設置した部分に誘導する。そして、一本背負いで投げ飛ばし、センサーに反応した雷閃が起爆、ギリギリエネルギーが残って、回避運動を取ろうとした隙に硝煙ヘビーの偏差射撃で撃墜する。

 

「箒ちゃん! 十字砲火!!」

「了解!」

 

 打鉄を囲むように飛び回り、焔火と硝煙ヘビーの射撃で確実に打鉄を落とす。

 雪影Bの故障、次の試合までに修復できるか……。

 

 

 ピットに戻ると高垣さんが慌てて駆け寄ってくる。そして、雪影Bを確認し、即座に待機状態に戻して整備しに行くと宣言する。

 

「どのくらいで治る?」

「……急いで三時間、次の対戦カードまで時間がないのに」

「吉村さん! 学園側から葵の使用許可をもらってきて! あと、高垣さん、空閃も二つ詰め込んでおいて」

「了解、全部任せて」

「使用許可もすぐに取ってくるから!」

 

 三綾重工機と学園側の打鉄を預けた。

 本格的に危なくなってきた。雪影Bが使用できないとなると……代表候補生の更識さんの突破が……。

 

「礼遇、おまえは劣勢に立たされても勝ち進んだ実力者だ。落ち着け……」

「箒ちゃん……」

「いいか、使えない物に後ろ髪を引かれて勝てるわけがない。今あるものを駆使して戦うんだ」

「わかってる。ただ、箒ちゃんへの負担が……」

「わたしのことは気にするな。相棒だろ」

 

 静かに頷く。

 ないものねだりをしている状態じゃない。今できることを、すべて……。




 四組クラス代表更識簪と布仏本音ペア、酷く劣勢に立たされる礼遇。はたして……。
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