僕が読みたいと思う二次創作『インフィニット・ストラトス』   作:那由他01

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 打鉄のOSとラファールのOSの互換性は低いからどうしてもシステムエラーが生じてしまうのか、整備士さんから貰っていた最低限の修復プログラムとバックアップ、前者ならギリギリ次の試合に出せるかもしれないけど、指令系統が破損したらバックアップを使用しても使えない可能性が出て来る。雪影Bが使えないなら、ボーデヴィッヒさんとの戦いは絶対に勝てないだろうから、後者を優先した方がいい。

 

「これは……わたしが決断するべきことなのかな……」

「学園側の打鉄、修復完了。ワイヤーも巻き直したよ」

「わかった……今から雪影Bを外してバックアップを使うね」

「了解、葵が到着の使用許可が出次第に三綾重工機に取り付けるよ」

 

 礼遇くん、絶対にボーデヴィッヒさんとの戦闘までに間に合わせるから、更識さんとの戦闘、絶対に勝ってね……。

 

 

 時間が遅く感じる。そして、緊張感が静かに心を蝕んでいく。零落白夜に支えられた戦闘、それが出来たからこそ多くの試合で勝利を飾ることが出来た。だが、今はそれが存在しない。俺の体には、零落白夜を使用した一撃離脱の戦法が染み付いてしまっている。今更、この戦法から離れて、通常の第二世代ISを使用した戦闘が出来るか? わからない……。

 振るえている右手に箒ちゃんの左手が置かれる。

 

「そんなに緊張していたら左手の出血も酷くなる。少し眠ったらどうだ……次の試合まで一時間はある」

「箒ちゃん……ありがとう……」

 

 箒ちゃんがパンパンと自分の膝を叩く。そして顔を赤らめた。こういうのは一夏にさせたいんだけど、今日だけは甘えさせてもらおう。

 

「ゆっくりと眠れ、そして、目覚めたら冷静になるんだぞ……」

「うん、わかった……」

 

 箒ちゃんに膝を借りて静かに目を閉じる。

 

 

「弱気になるな小僧、おまえの弱気なところは見ていて面白くない」

 

 狐が語りかける。やはり、俺に憑いていたのか。

 

「弱気にもなりますよ、ここまでの劣勢を突きつけられたら」

 

 神様の前だ、弱音の一つや二つ吐き出したい。だが、狐は嫌な表情を見せて、ケケケッと笑ってみせた。そして歩み寄り、睨む。

 

「人間は決まって劣勢の時に光を放つ。おまえの何十倍、何百倍と生きた存在だ。人間のことは人間より理解している。おまえは輝こうとしているぞ、見える、見えるんだ。俺は神だぞ、わからないはずがない」

 

 尻尾を揺らめかせ、薄気味悪い笑みと笑い声を見せ、聞かせる。

 劣勢に光を放つが人間か、確かにそうだ。今までの足取りも酷く劣勢な状態からのスタートが多かった。それでも切り抜けて、出し抜いて、泥臭い勝利を手に入れてきた。華々しい勝利は似合わないが、泥臭い勝利は酷く似合う。

 

「神様、貴方の言葉――信じて疑いませんよ」

「狐の言葉を信用する哀れな人間よ、化かされぬようにな」

 

 狐の姿は静かに消え去る。

 

 

「礼遇、起きろ」

 

 箒ちゃんの声によって意識が覚醒する。静かに起き上がると今までよりもくっきりと目が見えるように感じた。不思議と肩の違和感も消え去り、左手の鈍痛も柔らかくなっている。心が軽い、心が軽いのだ。緊張していた体が柔らかくなり、そして、心が決まった。

 

「目覚めはどうだ?」

「最高だ。万全の状態で戦える」

「よかった……」

 

 静かに立ち上がり、背伸びをしてみせる。

 重々しい足取りで広瀬さんが現れる。手には待機状態の俺の打鉄と箒ちゃんの打鉄が握られていた。

 

「雪影Bは……」

「大丈夫。雪影が無くても戦える」

「礼遇くん……そうだよね、礼遇くんは強いから」

「強くはないんだが、今回ばかりは強くあってみせる。約束する」

 

 弱いからこそ虚勢を張ってみせる。弱いからこそ――強い背中を見せてみせる。

 男、宮本礼遇――劣勢に花を咲かせてみせる。心強い戦友とともに。

 

「箒ちゃん、作戦なんて回りくどいことは考えない。互いに互いを助け合って勝利を拾う」

「託された思い、ここで散らすつもりは微塵もない。さあ、戦場に華々しく咲こうではないか」

 

 戦況は始まる前から劣勢、だが、与えられた絆は強く結びついている。

 

 

 打鉄も機敏に動いてくれる、

 傷の痛みも和らいでいる、

 心も決まっている、

 向かうは勝利の道、

 咲かすは戦の華、

 友は心強く、

 勝利は近い。

 

「箒ちゃん、俺は逃げないよ」

「男が逃げてどうする? 女の前だ、男らしく戦え」

「そう言われると痛いね。でも、男らしく戦うつもりだ」

 

 ピットから飛び立ち、中央に鎮座する。更識さんのペアも到着し、互いに物言わず一礼を交わす。

 箒ちゃんと目線を合わせる、そして、互いに頷き合う。

 試合開始の合図が鳴り響いた。

 ――刹那、葵を居合で構えて布仏さんに斬りかかる。

 肩を痛めているという情報が巡っている中で初手の居合、これは意表を突く攻撃にあたる。肩の調子は悪くない。視界も開けていて、何よりも心が軽い。

 

「(初手に近接戦!? 硝煙で間合いを取って中距離戦闘に持ち込むと踏んだのが仇になったかも……)」

 

 更識さんが焔火を構える。だが、その攻撃は通らない。心強い相棒が守ってくれるから。

 箒ちゃんの焔火から轟音が響く、俺を布仏さんから引き剥がそうと集中したのが仇、この戦いはタッグマッチ、そして、俺と箒ちゃんは気心知れた幼馴染だ。わかっている、行動なんて、友だから!

 

「箒ちゃん、俺がそっちの相手をする。布仏さんを全力で落として」

「わかった!」

 

 瞬時加速を駆使して一気に更識さんに接近、ゼロ距離から居合で斬りつける。だが、相手も代表候補生、焔火で攻撃を防ぎ、腹部に蹴りを入れる。だが、俺が斬りかかるだけで終わるような奴じゃないことを知らないのだろうか。彼女の目の前に設置された空閃、それが起爆する。

 ズタズタになったシールドと更識さんの苦い表情、我が方有利。

 硝煙ヘビーを構えて弾幕を張る。箒ちゃんの方は善処できている。あっちのチームの機体は少しばかり気怠い動きを見せている。うちのクラスのように丁寧な整備が間に合わなかったのだろう。なら好都合!

 

「箒ちゃん、二人をアリーナの中央に誘き寄せる。そこで一気に決着を付ける。相手も代表候補生、動きに慣れたら手の施しようがなくなる」

「雷閃だな、承知」

 

 弾幕を張りつつ雷閃を二発アリーナの中央に投げて設置、爆炎で更識さんには悟られていない。箒ちゃんに任せている布仏さんも箒ちゃんに集中し過ぎて前しか見えなくなっている。チャンスは一回、二機を叩き下ろす。

 瞬時加速を駆使して組み付く。葵を使用しての居合だと勘違いした更識さんは咄嗟に焔火でガードしようとするが、逆に組み付きやすくなる。そのまま組み付き続け、箒ちゃんがワイヤーブレードで布仏さんを拘束したと同時に方向転換、雷閃の方向に向けて瞬時加速。

 

「(……さっきの試合と同じ!?)」

 

 響き渡る爆裂音、布仏さんは目を回して戦闘不能。更識さんの方はギリギリの状態で踏みとどまっていた。そうか、シールドを背面に移動させて爆破の衝撃をカバーしたのか……。

 刹那、鋭い太刀が箒ちゃんを抉る。

 

「箒ちゃん!」

 

 鋭い一太刀、ギリギリどうにかエネルギーは残っているようだが、連撃がくる!

 瞬時加速を駆使して二人の間に割り込み、更識さんの攻撃を受け止める。思っていたより重々しい攻撃だ……体の軸を使うのが上手いのか……。

 

「武道経験者なのかい?」

「……少しだけ」

 

 剣術は箒ちゃんの方が上だろうが、ISを身に纏っている状態での剣術は彼女の方が数段上だ。なんとか目で追いかけることは出来るが、こっちは使えない右腕を無理矢理従わせているようなものだ。どのタイミングで近接戦を放棄しなければならなくなるか……。

 箒ちゃんがワイヤーブレードを駆使して拘束を試みるが、一太刀で弾かれ瞬時加速で間合いを詰めてくる。

 

「させるか!」

 

 シールドを移動させて一撃を受け止めるが、即座に鋭い蹴りが腹部に向けて飛んでくる。

 箒ちゃんに後退するようにハンドサインをだし、そして親指と人差し指をたてる。箒ちゃんは支援射撃の位置に移動し、静かに射撃の機会を伺う。だが、箒ちゃんの射線に入らないように俺との近接戦の間合いを崩さない。この距離だと誤射が入る可能性がある。

 俺を落とせばこの戦いに勝利できると踏んでの行動だな。確かに、練度を見る限り箒ちゃんだけで彼女に勝てる可能性は本当に低い。だが、彼女の打鉄のエネルギーは雷閃の一撃で酷く削られている。追い詰めている。だが、まるで追い詰められているようなこの雰囲気、苦手だ……。

 探りの一太刀をいなし、鋭い一太刀が飛来する。それをシールドで受け流し、蹴りを入れるが距離を離して回避される。

 箒ちゃんの援護射撃が入るが、即座に俺の前に移動し、誤射を誘発させる。

 

「……撃てない」

 

 彼女には単純さがない。煮詰められた技量、そして、型に囚われない柔軟な対応と慣れ。それらが戦う時に生じる癖のようなものを完全に併殺している。それに付け加えてあの表情、追い詰められている。味方は落とされている。そんな状態でも顔色一つ変えないで真剣に俺と向き合って、そして、箒ちゃんへの警戒も怠っていない。これが代表候補生、ISを作った国、日本の代表候補生の実力か!?

 

「礼遇、距離を離して射撃戦に持ち込むのはどうだ? あっちは一丁、こっちは二丁だ」

「いや、逆にそっちに移った方が自殺行為だ。あっちはセシリアやシャルルと同レベルの射撃の腕を持っていると考えていい。俺みたいな器用貧乏とは格が違う。俺が近接戦で、箒ちゃんが援護射撃。これがベストだと思う」

 

 あれを使うしかない。箒ちゃんに射撃準備のハンドサインを見せ、即座に高速で移動する。箒ちゃんの支援射撃で尻に食らいつかれることは免れた。空閃を二発、これで仕留められなかったら俺の、俺達の負けだ。

 

「(地雷の次は空中機雷……二発だけなのが救いだけど……)」

「箒ちゃん、出来る限り空閃の近くで戦闘をする。だけど、相手の射撃で破壊され、爆風でダメージを受ける可能性もある。適切な距離で戦闘してくれ」

「わかった!」

 

 箒ちゃんと合流し、葵を構える。

 

「(撃って壊すことも出来るけど……武器を切り替えた瞬間に……)」

 

 あっちも近接戦で渡り合う準備は出来てるみたいだな……好機!

 瞬時加速で一瞬で間合いを離す。飛んでくる太刀はそのままバリアで受け、組み付く。が、返される。そして、それも返す。柔道の類も習得しているのか、才女だな……。

 

「(まずい……機雷が……)」

「もう遅い!」

 

 手動で空閃を爆発させる。強い爆風が背中を襲い、体を、機体を地面に叩きつける。

 

「礼遇!?」

「へへ、無茶しすぎたぜ……」

 

『勝者、宮本・篠ノ之ペア!』

 

 

 静かに立ち上がると更識さんが静かにこっちにくる。

 

「ISが可哀想……」

「ごめんなさい」

 

 彼女は溜息を一つ吐き出して、優しい笑みを見せ、頑張ってね、そう、小さく呟いてくれた。




 PCが壊れて色々と心が折れてしまいました。今は古いデスクトップPCでどうにか執筆中でございます。
 遅れてごめんなさい!
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