僕が読みたいと思う二次創作『インフィニット・ストラトス』 作:那由他01
知略と戦術、そして、高い戦術性で勝ち進んできた宮本礼遇と篠ノ之箒。注目こそされていたが、ここまで勝ち進んでいくとは誰も思っていなかっただろう。だが、奴は勝ち進んだ。一夏とデュノア。日本の代表候補生更識簪を打ち破って、次はドイツの代表候補生、一度敗れたボーデヴィッヒともう一度、向かい合っている。
「宮本くんも篠ノ之さんもよくぞここまで勝ち進んできましたね」
「宮本も篠ノ之も機体の性能、武装の性能を把握し。そして、それに似合った作戦を組み立て、ここまでやってきた。戦略性がずば抜けている。熟練された操縦者のそれだ」
「確かに、熟練された操縦者のそれを見せていますからね。篠ノ之さんも初戦こそぎこちない動きをしていましたが、勝ち進むごとに動きにキレが増しています」
幼馴染ゆえの連携なのだろうか、宮本は完全に篠ノ之に背中を任せている。見ていればわかる。少しでも不安感を感じていれば、背中を完全に任せるなんて行為はしない。だが、宮本は任せている。ハンドサイン一つで的確な行動をしてくれると確信している。
「次の試合、確実に荒れる。宮本が何か奇策を仕掛けてくるだろう」
「宮本くんならありえますね」
宮本……いや、礼遇、おまえならラウラをどう倒す?
2
「箒ちゃん、手短に作戦を教えるよ」
「今更か……いや、話してくれるだけでも喜ばしい」
銀色に輝く打鉄が二機、ピットで試合が始まるのを待ちわびている。ようやく、ここまで辿り着いた。作戦も作った。箒ちゃんなら信用できる。勝てる。筋は見えている。
「箒ちゃん、隙を作るからボーデヴィッヒのレールカノンを破壊して。それだけで俺達は勝てる」
「武器を壊すだけで勝てる相手なのか?」
「確かに、武器を一つ壊すだけで勝てるなんて笑える話しはしないさ。だけど、AICの虚弱性を突破するにはあのレールカノンが邪魔なんだ。だから先立ってそれを潰したい。それ以降は十字砲火でどうにかなる」
ボーデヴィッヒの機体はAICに頼りすぎている。だからこそ、一つでも攻撃手段を奪えば相手の手数が著しく減少する。そして、ワイヤーブレードは箒ちゃんのワイヤーブレードで牽制され、近接武器のプラズマ手刀がメインになる。近接戦だけで倒せる相手だと思うなよ。俺達はここまで勝ち進んできたんだ。
「いいだろう、任せておけ」
「ありがとう」
戦の時は来た。
「……待っていたぞ」
先陣を切ってアリーナの地を踏みしめているボーデヴィッヒとペアの少女。俺は笑みを浮かべ、全力で戦おうと告げる。ボーデヴィッヒは眉間に皺を寄せるが、隣の少女はオドオドと震えている。
試合開始のブザーが鳴り響き、レールカノンの照準が定められる。それを左に飛び回避し、硝煙ヘビーを構えて弾幕を張る。だが、AICによって弾は受け止められる。
――シールドを一枚パージして瞬時加速で一気にボーデヴィッヒとの間合いを詰める。
「バカが! AICを突破できると思ったか!!」
「残念だが、突破する」
シールドをAICに突き刺し、踏み台にして飛躍する。
「なにっ!?」
AICの弱点は面展開の時に発生する。AICは攻撃を無効化するが、それはAICが発動されている部分だけ、それ以外の行動は比較的自由に行うことができる。そこで見つけ出したAICを突破する一つの方法――AICが発動されていない上空から侵入し、鋭い一撃を加える。これが俺が敗北から見出した弱点突破だ。
「侮るな!!」
AICが解除され、レールカノンの銃口が向けられる。だが、俺が一人で戦っていると思っているのか? 残念だが、俺は一人じゃない。心強い相棒が隣に立ってくれているんだ。
――刹那、レールカノンにワイヤーブレードが巻きつけられ、銀色に渋く輝く刃がそれを切り裂いた。
「壊したぞ、礼遇」
「ナイスタイミング」
箒ちゃんがにこやかに笑っていた。
3
そうか、そういう突破方法があるのか。チームでの連携を駆使してAICを無効化してくると踏んでいたが、その逆、一人でAICの弱点を突破してきた。確かにAICは最強の盾だが、それが全体を守っているわけではない。そこでAICにシールドを突き刺し、跳躍、そしてAICが展開されていない部分からの攻撃。実に鮮やかだ。
「一度の敗北でここまで虚弱性を見出すとは」
「そうですね。それにボーデヴィッヒさんはレールカノンを破壊されて射撃武器がなくなってしまいました。これまでの試合は単独での戦闘を主にしていましたし、ペアの方の援護も期待できません。宮本くんと篠ノ之さんが非常に有利です」
「ああ、それにワイヤーブレードも篠ノ之が装備しているワイヤーブレードがあるため打ち出すタイミングが難しい」
だが、ラウラも代表候補生の意地がある。どう出る。
4
AICにこんな虚弱性が隠されていたとは……だが、私は負けない。血反吐を吐いて積み上げてきた地位。そして、教官との思い出。こんな男に踏みにじられてたまるか! 私は、負けられないのだ!!
「来いよ、俺は逃げない。全力でかかってこい!」
「この!!」
二番目の懐に回り込みプラズマ手刀で斬りつけるが、そのすべてが躱される。不味い、この距離は奴の零落白夜が入る距離、いや、逆に好機!
二番目が零落白夜を纏わせた武装を振りかざした瞬間にAICを起動させる。
「こいつを攻撃しろ!」
「は、はい!!」
「じゃあ、わたしはお前を攻撃させてもらう」
「――ッ!?」
胴体に巻き付くワイヤーブレード、そして、それを巻取り高速で接近してくる二番目のペア。瞬時にプラズマ手刀でワイヤーを切り裂き、退避する。
――刹那、ペアの奴が変則的な機動で私を切り裂いた。
「ぐっ……」
「わたしを礼遇の取り巻きの一人だと勘違いしていないか?」
「そうか……二番目のシールドを蹴って軌道を変えたのか……」
あのまま行けば二番目と正面衝突していた。だが、二番目が咄嗟にシールドを私の方向に向けて展開し、それをあの女が蹴って軌道を変え、全速力で切り裂いたのか……。
「わたしは宮本礼遇の幼馴染であり、相棒だ。お前達のような付け焼き刃のペアではない」
「この!」
「おいおい、標的は俺じゃなかったのか?」
プラズマ手刀を展開し、二番目の攻撃を捌こうとするが、零落白夜を使用していない。そう、奴はただ、私に蹴りを入れただけだ。だが、その蹴りが酷く重く、吹き飛ばされる。
ワイヤーブレードを二番目に巻きつけようとするが、奴は私のペアに組み付き、ワイヤーブレードが飛来したタイミングに彼女を投げつけ、ワイヤーブレードに絡ませる。このままこいつを巻きつけたまま戦闘は出来ないと踏み、ワイヤーを切断するが、刹那、奴の顔が間近に迫る。
「ぐっぅ……うぅ……」
どうにか奴の左手を掴み投げ飛ばすが、そこには私のペアが倒れていて、ついでにと言わんばかりにそれを零落白夜で攻撃し、戦闘不能に追いやった。
「射撃武器の喪失とパートナーの戦線離脱。最新鋭の技術と開発費を投じて作られたAICの突破。あの時と比べたら天と地の差だな。ボーデヴィッヒ」
「……まだ、勝負は終わっていない!」
「そうだな。最後までわからないのが勝負だ。だが、そっちの武装は無いに等しい。それでも、おまえは強く戦えるか?」
「当たり前だ! 誇り高きドイツ軍人を舐めるな!!」
もう、勝ち負けじゃない。一発でも多く、拳を届けるのが私の役目だ!
5
「ちょっとちょっと、礼遇もボーデヴィッヒの方も武装使わないで殴り合いを始めちゃったわよ!?」
礼遇らしいと言えば何も言えない。ラウラの方はもう勝ち負けを考えないで、ただ、一発でも多く攻撃を当てようとヤケになってる。礼遇はそれに付き合ってるんだ。箒の方も苦笑いを見せて、いつでも援護を入れられるように銃を構えている。
「礼遇さんは何を考えて……有利なのは明らかなのに……」
「いやはや、礼遇らしいと言えばそれまでだ。ラウラはもう勝ち負けを考えてない。ただ、殴りたいから殴ってる。礼遇もそれに付き合ってる。見ろよ、二人して笑ってる。いつも顰めっ面だったラウラが笑いながら殴り合ってる。礼遇も楽しそうに」
「こういうのって、男の子同士がやるもんじゃないの?」
「そうかもしれないが、もう、二人共対等な立ち位置に立ってることを自覚してしまってるんだ。だから、男女とかの垣根を超えた、何かがあるんじゃないのかね。俺はそう思う」
羨ましいな、俺も、こういう試合をしてみたい。
6
ISは本来殴り合いなんて想定されて作られていない。規格にあった武装が取り付けられ、本当に武装が消失した場合の奥の手として近接格闘戦が行われる。だが、俺達は武装を消失させてはない。攻撃手段は殴り合いなんて泥臭いもの以外にも多く存在している。だが、俺達はただ、自分の意地を自分の正義を叩きつけるために殴り合っている。
――鋭い右を避けて左を腹部に叩きつける。
――全力の蹴りが飛んでくる。それをバックステップで回避する。
――掴みかかってくる彼女に思い切り膝を叩きつける。
「グッ……クソッ……」
「そらそうだ、生身の戦闘ならギタンギタンにやられているだろうが、ISを身に着けた状態での近接格闘術は俺の方が慣れてる。どうだ、悔しいか? 俺もあの時、そういう気分だった」
「笑える、笑えるぞ……宮本礼遇、おまえは私を酷く楽しませてくれる!!」
鋭い右が俺の顔を抉った。だが、一瞬の硬直、それは投げ飛ばしてくださいと言ってるようなものだ。そのまま腕を掴み一本背負いで投げつけた。
「ああ……私は負けるのか……」
「まだ戦えるだろ、意地張れよ、付き合うさ、いや、付き合えよ、最後の最後まで……」
「暑苦しい男だ……だが、悪く……う、あがぁぁ……」
「どうした!?」
言うならば異変としか言いようがない光景だった。彼女が乗るシュヴァルツェア・レーゲンがドロドロに融解し、そして、姿を変えていく。魔物に呑み込まれるように、彼女は機体に呑み込まれていく。そして、彼女は俺に手を伸ばした。俺はその手を掴もうと一歩踏み出すが、機体は完全に姿を変え、そして、暮桜の姿をしていた。
けたたましく鳴り響くブザーと降り注ぐと表現できる教師達が乗るラファールが現れる。何が起こっているのか検討が付かなかったが、それでも、この状況は非常に不味いことになっているということは容易に理解できた。
「礼遇!!」
振り返ると一夏が雪片弐型を構えてシュヴァルツェア・レーゲンを睨みつけていた。そして、挑んだ。
鋭い太刀筋が一夏を抉り、吹き飛ばされる。俺達に負けて最低限の補給しか出来なかったのだろう。白式は解除され、地面に叩きつけられる。
「く、くそ……」
「……一夏、引っ込んでろ。俺がやる」
「でも、礼遇……あれは……」
「彼女が手を伸ばしたのは俺だ。おまえじゃない」
箒ちゃんに一夏を運ぶようにアイコンタクトを送る。すると箒ちゃんは静かに頷いて一夏を離れた場所に移動させる。俺は溜息を吐き出して、苛立ちを見せつけながら、一歩、二歩と彼女に歩みを進めた。
「おい、俺がやりたいのは――さっきと同じ殴り合いだ。機械に呑まれたおまえとは、殴り合いができないじゃないか。その中から叩き出してやる。そして、また、殴り合うぞ」
振り下ろされる太刀を右腕でいなし、左の雪影Bで腹部を切り裂いた。
7
「なぜ、おまえは強い?」
「早く起きろ、まだ勝負は終わってないぞ」
平手打ちの音が響く。
「……何をする」
「何ボケッとしてんだ、まだ意地の張り合いは終わってないぞ。早く起きろ、そして、殴り合おうぜ。どっちか意識失うまで」
「……おまえは……馬鹿なのか?」
「馬鹿で構わない。だが、俺はおまえと殴り合いたいんだ。俺もおまえも意地を張って喧嘩してる。現在進行形でだ。俺とおまえの正義の味方ごっこはまだ終わってない。早く起きろ、構えてるからよ」
ラウラの意識が覚醒し、そして、生身の体で構えている礼遇が目の前にいた。彼女は高らかに笑い、そして、同じように拳を握りしめて、構えた。
その場に居合わせた全員が唖然とした表情で身動きが取れないでいた。一人の少女と一人の少年が手加減なんて言葉を忘れてただ、生身で殴り合っている。互いに口からは血が流れ、頬は腫れ、傷を作っている。だが、二人は笑っていた。正義の味方ごっこをする子供のように、遊ぶように、そんな笑顔で二人は殴り合っているのだ。
「楽しいだろ! 正義の味方ごっこは!!」
「楽しいさ! こんなに心が踊るのははじめてだ!!」
互いの右の拳が頬を抉り、互いに地面に崩れ落ちる。そして、膝をつきながら、二人は立ち上がり、血反吐を吐き、また、拳を握りしめた。この二人を見ている全員はこの二人の姿に不思議と爽快感を覚えていた。二人の少年少女の意地の張り合いは見るものすべてを魅了していた。
「倒れろ!」
「ぐあっ!?」
ラウラのラリアットが礼遇に首を抉る。ダウンした瞬間に彼女は彼に跨り、鋭い拳を何度も叩きつける。だが、礼遇の意識は途切れず、彼女を持ち上げ、そのまま地面に叩きつける。が、瞬時に受け身を取り、足払いでまた、彼を転倒させる。そのまま腹部に向けて思い切り踏み込むが、その脚を捕まれ、投げ飛ばされる。
「ああ、こんなに楽しい正義の味方ごっこははじめてだ!」
「そうだな、私は正義の味方ごっこというものをはじめて体験するが、こんなにも楽しいとは思わなかった!」
二人は思い切り助走をつけて互いの頬に拳をめり込ませた。そして、二人同時に地面に突っ伏し、意識を手放す。
夢の中で自分が設定を書いていたキャラクターが登場して、俺の物語を記してくれと言ってきたんです。それで必死になってそのキャラクターが主人公の小説を書いていたらこっちを書くのが疎かになってました。すいません!
でも、まだまだ一万五千文字程度ですが、キャラクターの個性が醸し出す雰囲気がとても素晴らしく、本当に自分が書いたオリジナル作品なのかと疑う程です。近々、出版社の応募が来たら一巻分仕上げてエントリーしたりして。
ということで、遅れてすいませんでした!!