僕が読みたいと思う二次創作『インフィニット・ストラトス』   作:那由他01

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31:終わりよければ

 金の卵を産み落とす鶏だとは思ったが、金を通り越してもっと高価なプラチナを産み落とす鶏と表現してもいい。頭が切れて、他者からの信頼も厚い。若い頃の私に似ている。奇跡を起こして何かしらの道に足を踏み入れたという部分、また、似ている。

 最初は親の脛を噛じる親不孝者だった。自由気ままに生きることに価値観を見出していた。高校なんて場所には行かず、自分が好きなことに打ち込めるように、軽くバイトと呼ばれる行為をしていただけで、それ以外は何もない、ダメ人間だ。

 人生の転機は倒れている老人を借金背負って買ったボロ車で病院まで送り届けたことだった。

 

「代表……今、自分、社長になってしまいましたよ」

 

 三綾重工の代表取締役社長を助けたというだけで、コネ入社した私は、どうせ直ぐに首を切られると思いながらも、与えられた労働を淡々とこなしていく毎日を送っていた。そして、入社から五年、ある程度の地位を与えられて、新しい車を買い、両親に新しい家を建てた。その時思ったのは、親不孝者が親孝行者になってしまったんだな、なんて、そんな軽いものだった。

 その二年後、新しい転機が訪れた。代表の死、それが自分をこの地位に立たせる一歩になる。

 会社は揉めた。権力争いという醜い行為を見せられるのは心苦しかったが、自分には関係がないとタカをくくっていた。だが、代表の死は飛び火して、私を酷く偉くさせた。

 

「代表には、子供が居なかった。奥さんは早くに亡くなり、一人っ子という特性上、相続人は遠い親戚になる予定だった。気まぐれだったのかもしれない」

 

 遺言、それが書かれた紙には、しっかりと私の名前が記されていて、すべての財産の譲渡を約束していた。

 確かに、十八の時に拾ってもらって、暇があれば家に出入りして、あの人の子供のような立ち振舞をしていた。それだけで、全財産を相続させるのだろうかと自問自答を繰り返したが、あの人の、代表の、笑顔が走馬灯のように駆け巡ったから、私は権力を受け継いだ。

 だが、私はその頃まだ二十代の青二才、学がない自分が即座に社長の席に座ることは出来ない。だから、信頼できる上司に社長になってもらい、会社を回す学問、帝王学というものを学がないなりに学んだ。

 そして、四十代後半になろう頃に社長の席に座った。あの人が座っていた世界は酷く広く、そして、狭く感じた。

 

「似た者は惹かれ合う……彼もまた、私と同じような驚く何かをやらかしそうだ。長生きしないとな」

「社長! デュノア社との交渉の席設けました!」

「よくやった! さあ、搾り取るぞ……」

 

 礼遇くん、君は君らしく、君の才能を伸ばすんだ。私と同じように、才能を伸ばすんだ。

 

 

「はい、終わりましたか!?」

 

 携帯電話から聞こえる社長さんの声はとても明るく、温かいものだった。話を聞くと想定していたとおりに事が運んでいて、デュノア社の子会社化とフランス政府との密約に成功と。暗殺者の類が送り込まれる可能性は1%より低い数字になったとも。

 

「シャルロット、明日から男装から解放されるぞ」

「ほ、ほんとうなんだね……すごい……!」

 

 二人して抱き合い、飛び跳ねる。これで悩みのタネがすべて消え失せて、肩の荷が下りるってやつだ。ああ、これで夜中に眠れなくなることはなくなった。よかったー。

 

「よし、織斑先生に報告しに行くか」

「うん」

「でも、寂しくなるなぁ。女の子に戻ったら、俺、一人部屋になるわけだし。大きなテディベアでも買うかな」

「え……」

 

 シャルロットの目から光が消え失せたのがわかる。何か悪いことでも起きたのか? いや、流石にデュノア社とフランス政府からの圧力は消え去ったわけで、それが無くなった今、目から光が消え失せるような出来事が起こりうるのだろうか?

 

「僕! 男の子のままでいい!!」

「え? 何言ってんの……」

 

 少し考えてから、やはり寂しさがあるのだろうと察する。だが、男と女がひとつ屋根の下で生活することなんて出来るわけがない。今までは色々と特異な環境の影響があってだな、えっと、うん、無理。

 

「シャルロット、確かに同室じゃなくなるが、会えないわけじゃないだろ。いつでも遊びに来ていいから」

「やだ……礼遇と一緒の部屋がいい……」

「わがまま言うと嫌いになるぞ」

「……それもヤダ」

 

 少しの無言の空間、彼女はわかっているが、わからないふりをする方が自分にとって幸せなのではないかと自問自答しているようにも思える。だが、色々と成功して、一段落ついた状態なのだ。これ以上ゴネる必要はもうない。

 

「礼遇……僕と今までどおり仲良くしてくれる?」

「何言ってんだ、俺とシャルロットは友達なんだから、仲良くするのは当たり前だろ」

 

 シャルロットは勢いよく胸に飛び込んできた。頬を掻いて照れ隠しをするが、今更照れてどうすると言い聞かせ、優しく頭を撫でてやる。色々と、終わったんだな。でも、次も色々とある。そう言い聞かせるのである。

 

 

 さて、一年三組は今日も元気がよろしい。教卓の前に立ち、全員を見渡す。今日から新しいクラスメイトが登場するわけだ。担任の田辺先生は織斑先生から粗方の事情を教えてもらっていたのか、普通の表情をしている。さて、一年三組に転入生が入ってくる。ブロンドヘアをひとつ結びにして、優しい笑顔で。

 

「騙してごめんなさい、僕、女の子でした」

「名前を言いなさい」

 

 俺はクスッと笑って、彼女に名前を告げるように促す。

 

「シャルル・デュノア改め、シャルロット・デュノアです!」

 

 笑顔ってのは、いいものだ。

 

 

 今日も学食ルンルン気分で足を運んでいる。シャルロットはクラスメイトや他のクラスの女子達に囲まれ、色々と忙しそうにしていたから誘うことを躊躇った。まあ、女の子なんだから、女の子同士で会話に花を咲かせるというのも悪くないだろう。今日からの一歩ずつが彼女を大きく成長させる。

 

「今日は何食べようかなぁ、パスタ食べようかな」

 

 ――刹那、青い腕が顔面を捉えようとしていた。

 俺は勢いよく左に飛んでその攻撃を回避する。多分、この時の俺の表情は酷く唖然としたものだろうが、その表情になりえる事態が起こっているのだから仕方がない。セシリア・オルコットという代表候補生の女の子がにんまりと笑って、こっちに銃口を向けている。さて、これはどういうことだろうか、さっぱり見当がつかない。

 

「礼遇さん、どうしてわたくしに話してくださらなかったのですか?」

「……え、なんのこと?」

「デュノアさんのことですわ」

「……クラス違うからさ、そういうのいらないと思って」

 

 壁にISの腕部が突き刺さる。これ、やばいやつだと心の底から思えた。

 さて、こういう状態で出来る限りの威力を発生させる言葉が一つある。これはシャルロットがゴネた時にも使ったのだが、良好な友人関係を構築しているセシリアと俺なら相手の方が折れてくれると確信する。

 

「セシリア、あんまり乱暴なことをすると嫌いになるぞ」

「――ッ!?」

 

 セシリアはISを展開することをやめ、シュンとうなだれる。俺は彼女の肩を叩いて、ちゃんと冷静になれた、えらいと告げる。そのまま手を引いてご飯食べに行こうぜ、そう言うと彼女はパッと明るい笑顔を見せた。

 その時、一人の生徒に足を引っ掛けられてセシリアが転ぶ。咄嗟の事態だったので、彼女を支えることも出来ず、顔面から倒れた。

 

「済まない、引っ掛けやすい足があったものでな」

「おお、ラウラ、もう大丈夫なのか……って、何してんだ!」

 

 セシリアを慌てて抱き上げると幸せ過ぎる報いなのですわねと目を回していた。攻撃的にはなっていないようなので、ラウラの方に視線を向ける。腕を組んで仁王立ちしている。

 

「ラウラ、なんでセシリアを転ばせたんだ。怪我するだろ」

「少し、気に触ってな」

「……まあ、いいや、飯食いに行くから一緒に行こうぜ」

「……構わないぞ」

 

 頬が赤いような気がする。

 

「礼遇! なんで置いていくの!!」

 

 シャルロットが駆け足でこちらにくる。

 なんか、ハートフルですね。

 ――色々と一段落ついたんだな。




 一年ぶり、おまたせ。

 Twitterを確認したら偶数パイセンからDM来てましてね。二次創作から足を洗ったつもりだったんですが、俺は復活したぞ、なんて言われると流石にこっちも逃げ出してばかりじゃいけないと思いました。

 俺が読みたい二次創作、相性が良ければ楽しんでください。
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