第1話 ここ、は
意識を取り戻した龍燕は寝台に寝かされていた。
身体には所々に固定器具が付けられ動き難かった。
「ここは一体何処だ?」
龍燕は無理矢理半身を起こし、周りを見渡した。武己が小棚に置いてあるのに気付いた。
すると扉が開き、女性が入って来た。
「あ、目を覚ましたのか。まだ起き上がらない方がいい。医者の話だと数ヶ所に骨折があると言っていたからな」
「骨折?ああ、それで固定器具が付いていたのか。骨折は問題ない。これを外してはもらえないか?」
「問題ない?外すと辛いぞ?」
「骨折があったのかもわからない程回復している」
「何?」
女性は龍燕に近づき、右腕に付けられた固定器具を外し、骨折が回復している事に驚いた。
「何をしたんだ?」
「回復力が高いだけだ」
そう言って、龍燕は楽になった右手で他の器具を外し始め、軽く動かし解す。
「助けてくれた、と思っていいのかな」
「そのつもりだ。大体一週間前に空から私の丁度目の前に落ちてきた。コンクリの道に減り込んでいて、正直死んでいるかと思ったがな。私は織斑千冬。ここ、IS学園で教員をしている」
「IS学園?」
龍燕は聞いた事のない単語を復唱した。
「お前はIS学園を知らないのか?」
「知らない。ここの国は何て言う?」
「日本国だ」
龍燕は悩むように黙り混む。
「お前の出身国と名を教えてくれ」
「
「眞羅暁……に、課長か。お前の話も理解しにくいな」
織斑は腕を組んだ。
龍燕は全ての固定器具を外し終え、小棚に置いてあった自分の武己である籠手を身に付けた。
「俺の胴着と羽織りは知らないか?」
「その小棚の中に畳んで入れて置いた」
龍燕は胴着を小棚から取り出した。
「胴着を着るので、悪いが…」
「あ、あーそうだな。廊下で待つから終えたら呼べ」
そう言い、織斑は廊下へ出た。
龍燕素早く着替え、特務機動隊課長用の羽織りを羽織った。
「着替え終えた」
「そうか」
織斑は部屋に戻った。
「立派な羽織りだな。相応な地位だったようだな」
「課長だからな」
すると龍燕は下を向き、黙り込んだ。
「どうした?」
「自分の仲間達を思い出して…な」
「仲間、か」
「しかし、互いに話し、互いに知らないとなるとここは、俺から言えば異界となるのか。信じ難いが……」
織斑は再び腕を組んだ。
「帰り道が見つかるまでこの学園に身を置かないか?」
龍燕は少し思考し、口を開いた。
「いいのか?」
「住める場所の提供や食事等、ここなら提供できる。実を言えば、上からお前を調べろと言われていたんだが、こそこそそんな事をするのも私にはどうも出来なくてな。だからそれを理由にお前はここにいるという事にすれば先に言ったことは出来る」
「わかった。それでいい」
織斑の言葉に龍燕は承諾する。
「それと、先程思ったのだがIS学園の『IS』とはなんだ?」
「ISとは…簡単にいえば数に制限のある、パワードスーツ的なものだ」
「パワードスーツ?……強化服のようなものか」
「言い方を変えればそうだな」
龍燕は頷き、口を開いた。
「そのISと言うのを見せてはくれないか?」
「見たいのか?構わんが」
龍燕は立ち上がった。
「これからか?」
「ああ。見てみたい。駄目か?」
「いや、いい。ついて来い」
千冬は龍燕を格納庫に案内した。
――― 格納庫
「これがISだ」
格納庫に置かれた一機のISを見る龍燕。
「触れてもいいか?」
「いいが……それは女性にしか反応せんぞ」
ISに触れた途端、ISは起動した。龍燕の頭に操縦方法等が流れ込んで来る。
「これは……」
龍燕は混乱した。その隣で千冬は目を見開き、驚いた。
「龍燕お前……まさか女性だったのか?」
「俺は男だ」
千冬の言葉に龍燕は反論する。
「しかし、これは面白いな。俺の使っている武装兵装と比べると物凄く差があるが」
「武装兵装?」
「強化服というより、甲冑に近い様なものだ。設定を変えれば多様に使える」
ISから手を離すと千冬を見た。
「まさか…女性にしか反応しないはずのものを俺が使えるとはな」
「龍燕」
千冬は腕を組む。
「元の世界に戻れるまでIS学園に通わないか?」
「通う?まぁ行く宛てが見当たらないし、お願いするよ」
龍燕は千冬にお願いした。
そして二日後。千冬が試験官を務めた試験では、龍燕は本気を一瞬見せて圧勝し、合格した。「君は……規格外の強さだな」と試験後に龍燕は言われた。
試験からさらに一週間が過ぎた。龍燕は千冬にIS学園に案内された。
制服は指定のものを改良してもよいと言われ、龍燕は羅暁の役員の制服に近い着物風にしてもらった。着物風にしてもらった理由は簡単で、着たり脱いだりするのを楽にしたかったからだ。
案内されたIS学園に入って最初はすごく驚いていた龍燕だったが、ISは女性しか反応しない。そのISを習う学園なら周りが女性だけでも驚く事でもないか。そして、教室前で龍燕以外のもう一人の男性が目に入った。
「俺以外にもいたのか」
「お前も?」
二人で話をしていると、千冬が龍燕ともう一人とを出席簿の角で叩いた。龍燕はそれくらいなんともないが、もう一人は涙目で頭を抱えていた。
「話してないで教室に入って席につけ」
「…わかった」
「了解した」
二人は教室に入り、空いていた席に座った。教室にいた女子達の目線が二人を突く。
「全員揃ってますねー。それじゃあSHRを始めますよー」
黒板の前でにっこりと微笑む女性副担任の山田真耶先生(先程自己紹介していた)。
「それでは皆さん、一年間よろしくお願いしますね」
「……」
先生は言うが、教室内は妙な緊張感に包まれ誰からも反応がない。
「じゃ、じゃあ自己紹介をお願いします。えっと、出席番号順で」
『あ』から始まり、何人目かでもう一人の男性が呼ばれた。
「えー………えっと、織斑一夏です。よろしくお願いします」
一夏は儀礼的に頭を下げて、上げて、座った。
そしてまた、何人目かで龍燕が呼ばれ、皆の方を見て立ち上がる。
「灼煉院龍燕です。よろしく」
龍燕は礼をして座った。
皆の自己紹介が終わり、授業が始まった。
一時間目はISの基礎理論の授業だった。龍燕は三日前に教科書を千冬から受け取ったが分厚い本だった為、武己に読み取って内容を整理し、空間モニターを使って読んでいたが、頭ではまだ理解仕切れていなかった。
授業を終えると龍燕は女子から色々と質問責めにあった。龍燕は質問のほとんどを大体で返して休み時間を過ごした。
二時間目では龍燕は一夏の言葉でつい笑ってしまった。きっかけは千冬の言葉だ。
「……織斑、入学前の参考書は呼んだか?」
千冬が織斑の前で言う。
「古い電話帳と一緒に間違えて捨てました」
言葉を言い切ったと同時に教室内にパアンッと乾いた音が響いた。
「必読と書いてあっただろうが馬鹿者」
千冬は一喝する。
「あとで再発行してやるから一週間以内に覚えろ。いいな」
「い、いや、一週間であの分厚さはちょっと……」
「やれと言っている」
千冬は腕を組み、織斑を睨みつけた。
「……はい。やります」
織斑は体を震わせて言った。