教員用の『打鉄』の改造許可を得た龍燕は早速改造に取り掛かろうと自室で空間モニターを複数展開させた。とその時、呼び鈴が鳴り龍燕は誰かなと思いながら出てみる。
「誰かな?」
『セシリアです』
「セシリア?」
龍燕は扉を開けた。
「どうしたんだ?」
「教員用のISを織斑先生から頂いたと聞きましたので」
「情報が早いな」
早朝に織斑先生からもらってまだ一時間と経っていない筈だがと龍燕は思った。
「今朝ランニングをしていましたら龍燕さんが織斑先生からISを頂いてるところをたま
たま見まして」
「見ましてって格納庫内でもらったんだがな。まさか途中で俺に気づいて、格納庫まで入って来たのか?」
「あ、えとその……すみません」
セシリアは素直に謝る。以前のセシリアなら想像がつかない光景だ。
「いや別にいいが。時間があるなら見ていくか?」
「はい?」
「これからいや、朝食を終えてからISを改造しようと思っているんだが」
「改造ですか?是非見てみたいですわ。あと朝食もご一緒させてもらっても宜しいかしら?」
「構わない。食事は賑やかに食べる方が旨いからな」
そう言うと龍燕は台所に立った。
「あれ、食堂の方ではないのでですか?」
「俺が作るんだが…嫌かな?」
「いえ、少し意外でしたので」
「そうか?まぁすぐに出来るから座って待っててくれ」
「はい」
龍燕は手慣れた手つきで武己内に収納していた二匹の川魚を捌いて炎焼で焼き、皿に盛り付け、おかずの完成。そしてわかめの味噌汁を作り、武己から炊きたての御飯を出して装った。
「よし」
それらをそれぞれの膳に載せ、一方をセシリアの前に置いた。
「召し上がれ」
完成まで約五分。セシリアは凄く驚いていた。和食にあまり詳しくないセシリアでも有名な御飯は、米を炊くのには時間が掛かると聞いた事があった。
「あの…随分早く出来ましたね」
「ん、ああ」
「御飯は炊くのに時間が掛かると聞いた覚えがあったのですが、前もって炊いていたのですか?」
「まぁそんな感じだ。けど時間を止めていたから炊きたてと変わらない」
そうでしたのと、セシリアは言うと次に二本の棒…箸を見た。箸と言うのは話に聞いた事があったが使い方がわからなかった。
「その…すいません龍燕さん」
「ん」
龍燕は未だにセシリアが御飯に手をつけていない事に気づき、ハッとした。
「あすまない、魚はダメだったか?」
「い、いえ…その……これが使えないので」
セシリアは目線を箸に移し、龍燕はそうかと武己からフォークとスプーンを出し、セシリアに渡した。
「ありがとうございます」
お礼を言い、フォークを手に魚を食べた。
「……美味しい。骨も食べれる」
「口にあって良かった」
セシリアも食べ終わり、龍燕は料理が上手なんだと料理をしたことのないセシリアは凄く思った。
龍燕は空間モニターを操作し、窓のない方の壁に入口を作った。壁側の畳二畳分のスペースが少し紅帯びた白に光る。
「あの龍燕さん」
「どうした?」
「打鉄を改造するんですよね?」
「ああ。だがここではなく、“城”でな」
「城?」
セシリアは光っている部分を見る。
「よし。後はこれを置いてと」
武己から出した四角く紅色の箱を光るところに置いた。紅色の箱の表面には『眞守羅士(マスラオ)』の字が刻まれている。
「何か書いてありますわね。なんて読みますの?」
「マスラオと読むんだ。じゃあ立ってくれ」
「え、あはい」
龍燕に続き、セシリアも並び紅い箱の前に立つ。丁度光っている部分だ。
龍燕空間モニターに大きく表示された『入城』に触れた。そして同時に二人を紅帯びた光の粒子が包み込む。
「我が隊舎、眞守羅士(マスラオ)にようこそ」
「隊、舎?」
目を開けたセシリアの目の前には高さ五メートル以上ある門があった。
「ここはどこですの?先程まで龍燕さんの部屋にいて」
「簡単に説明するとあの中にいる。正確には微妙に違う様だがな。俺は使う側でそういうのの仕組みとかはあまり詳しくはない」
「そうなんですか?でもすごいですね。こんなものを持ってるなんて、あの服を着たISみたいなものも……一体何処の国から着たんですの?」
龍燕を見ながらセシリアは聞く。
「すまんが織斑先生から教えない方がいいと言われててな。言えるとすれば帰還できるかわからないと言うことだ」
「帰還?」
「まぁ中に入ってくれ」
そういうと龍燕は門を軽々と片手で押し開けた。
───第一多目的訓練室
「龍燕さん。この何もないところはなんですの?」
「ここは多目的訓練室だ。擬似立体空間を作り出す事が出来るからここでISに眞羅暁の技術を使って改良する」
「しんらぎょう?」
「ん、あ…」
龍燕は不意に口にしてしまった。また今のようにいつかはボロが出る、という言葉があるし、別に誤魔化す事もする必要も無いだろうと龍燕は思った。
「眞羅暁は俺の祖国、眞羅暁帝王国の事だ」
「眞羅暁帝王国?聞いたことのない国名ですわね…ん、そういえば帰還できるかどうかってさっき……まさか龍燕さんて」
「それ以上は言わなくていい」
気づいたセシリアは口にしそうになるが、龍燕は止めた。
「わかりましたわ。この事はクラスの皆さま方にも内緒にしておいた方がよろしいですわね」
「そうしてくれると助かる。この話は織斑先生にあまり言わない方がいいと言われていてな」
「そうですね、わかりましたわ」
龍燕は作業に入る。
ISを出し、空間モニターを操作して読み取る。読み取ったISを表示し、武装兵装と比べてみる。核となる、ISのコアというのと武装兵装のメンタルは全くと言えるほど違うものだった。
また、装甲素材は比べるとやはり武装兵装の方がかなりの高性能だった。まず武装兵装は装甲というが間接部は柔らかく、動きやすくなっている。ISの種類に全身装甲というのが教科書に載っているのを思い出したが全く違うものだった。
「さて、まずは核以外から創るか」
「システムやステータスを弄ったりではなくて?」
「すていたす?よくわからないが、まず装甲から選び、形を整えておおまかな仮組。それから調整。その次に核をつける」
「随分と大掛かりな感じにやりますのね」
セシリアは少し驚くように龍燕の制作行程の感想を述べた。
「まぁ、装甲素材はもう決めてあるし、形も大体だが決めてある。難しいのは核かな」
「核……コアですわね」
「そこは少し難しいな。読み取ってみたが俺にはよくわからん。難しすぎるな」
「まぁ……ですよね」
龍燕は一から順に行程を一つ一つ終えていった。
「龍燕さん。気になったのですがこの装甲素材は何なんですか?いろいろと多様化しているようですけど」
「これはスタウトネス装甲と言って、加工方法も多い装甲素材だ。布みたいに柔らかくなっているのはスタウトネスを繊維状にして編んだものだ」
龍燕は武器からスタウトネスを繊維状にして編んだものを出し、セシリアに手渡した。
「これが……スタウトネスですか。凄いですわね。丈夫で、それに肌触りもとてもいいですわ」
頬に擦らせながらセシリアは微笑む。
「……完成した」
「え、もう完成したんですの?」
作業を初めて三時間弱。龍燕は試作を完成させた。
見た目は日本の甲冑で大鎧に近い。顔を覆う面もある。ISと比べると小さく、ほっそりとしている。それから鎧に羽織が羽織られているのが特徴的だ。
「龍燕さんの、あの武装兵装を元にしたのがよくわかりますわ」
「まぁ、武装兵装のを元にしたからな」
龍燕は満足そうに微笑んだ。
「よし、訓練室で動かしてみるか」
「この施設には色々と備わっているのですね」
龍燕の後をセシリアは追った。