幼馴染がガチ勢だったので全力でネタに走ります   作:銀鈴

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もう5月も終わりか…
と、急いで書いたから少し雑かも?


第12話 すてら☆あーく

 低い草が生える草原を、俺はのんびり歩いていく。

 空ではよく分からない鳥っぽいモンスターが旋回してる中、敵にエンカウントしないのは幸運値が関係してるに違いない。そんなことを思う俺の手元には、数枚のウィンドウが開きっぱなしになっている。ファンタジーなんて、すべて壊すんだ(違

 

「とりあえず、第2の街に着いたらこのスキルを買うとして……あぁ、アイテム類も補充しておかなきゃ」

 

 幸運に頼るだけではなく聖水を使い、敵との遭遇率を下げながら歩く俺が見ているのは【UPO】の攻略まとめサイトだ。本当はあまり頼りたくないのだけれど、目的地である第2の街の品揃えや、出現するモンスターは調べるのには活用させてもらう。さっきあの鳥の不意打ちで死んだし。

 情報集めは重要、ながら歩きは危険、はっきり分かんだね。備えよう。

 

「ということは、また暫く金策中心かぁ…」

 

 目の前のサイトに書かれている品物の相場と、今の俺の所持金を考えてみる。結果、頭の中でソロバンが弾き出した結果は赤字。余裕のよっちゃんで予算オーバーであった。今ばかりは火力が欲しい、切実に。

 まぁ、そんな愚痴は一先ず置いておいて。

 

「ここが第2の街の……えっと、メフテルか」

 

 始まりの街から北にまっすぐ(俺の足で)1時間。そこに第2の街である【メフテル】は存在している。

 そんなことを考えつつ開いていたウィンドウを全て閉じ、どの街も共通しているであろう街を覆う壁を抜ける。するとそこには、始まりの街とは全く違った景色が広がっていた。

 

 それを一言で言うのであれば、和風。

 城がないのに城下町という感じが一番しっくりとくる。時代は江戸時代くらいだろうか? 実際に団子とか和菓子とかもあるそうなので、結構人気の街らしい。ゲーム内なら誰でも最低限は美味しく作れるし、いくら食べてもリアルのお腹は膨れないしね。

 ただしここでも付き纏う金の問題。同情するなら金をくれ。やっぱ虚しいからなしで。

 

「で、ここがセナのギルドホームか……」

 

 そんなことを考えつつ街に入り歩いていくこと数分。俺は一軒の建物に到着する。

 外観が寺子屋というか、和風な喫茶店。それが、ギルド名からは全く想像さえできなかったセナのギルドであった。なんだかんだ言ってたが、俺がこの街にきた一番重要な理由がこれ。セナのギルドへの挨拶だ。

 因みに、第2の街にギルドホームを構えた理由はセナの独断らしい。始まりの街は味気なさすぎて、第3の街は無駄に近代的すぎて、第4の街は水路が多くてお気に召さなかったらしい。

 

 

 そんな現実で聞いた小話を思い出しつつ、『喫茶すてら☆あーく』という看板がかけられたお店?に入ってみる。

 そこは、外観通りお店のような空間だった。一番手前にレジのような物が置いてあり、長いテーブルと座布団が数個置かれている座敷席が一箇所存在している。

 

「いらっしゃいませー! 何か御用でしょうか?」

 

 意外としっかりしてるんだなぁ…と立ち尽くす俺の前に出てきたのは、群青色の髪をした活発そうな女の子。

 手にはメニュー表を持ってることから察するに、ここは見た目だけではなく普通に営業してるようだった。というか、和服とメイド服が合体したような制服がなんかヤバイ。製作者さんとは、一度ゆっくりお話がしたいものである。

 

「あ、じゃあ三色団子を二本」

 

 メニュー表は読めなかったので、勘でありそうな品物を注文する。そしてそのときにふと思った、これって話す話題としてはいい機会なんじゃないのかって。思い立ったが吉日ともいうし、丁度いいタイミングなのでギルド加入に関して話してみることにする。

 

「それと、セナ…さんの紹介で、暫くの間このギルドにお世話になるユキといいます。短期間かもしれませんが、よろしくお願いします」

 

 普段通りセナと呼び捨てしそうになったが、ギリギリ踏み止まり失礼のないようさん付けする。そうして俺は、失礼のないように頭を下げた。第一印象はとても重要なのだ。

 

「れーちゃん、三色団子2本――って、え?」

 

 指示を出し終えた女の子の動きがピタリと止まった。そしてこちらを向いた薄緑色の目が、俺のことを足元から観察していき、最後に目があった。メトメガアウ-いやなんでもない。

 

「ん」

 

 何かを言おうとしてるのか口をパクパクさせて固まってしまった女の子と、何ができるわけでもなく固まってる俺が作り出していた空気を壊してくれたのは、団子を持ってきてくれた小さな影だった。

 セナより小さいこの子が、多分れーちゃんなのだろう。差し出された団子を受け取った俺をジッと見つめ、踵を返しすぐにお店の奥へと戻っていってしまった。

 

「えっと…立ち話もなんだし、ギルドで話さない? ここに辿り着いたってことは、どうやってかボスを倒したみたいだし」

「そうですね。折角のお団子ですし」

 

 硬直した奇妙な空気を壊してくれたれーちゃん? に心の中でお礼を言いつつ、俺はその誘いに乗る。立ち食いは行儀が悪いし、何より変な空気のままイベントに参加はしたくないからな。

 

 

「それでですね、もう残りアイテムもMPも少ない状況なのにギルマスが『へーきへーき、本気でやればいけるって! もっと熱くなろうよ!』とか言って暴走し始めて…」

「うわぁ……いかにも言いそう。セナがいつもすみません」

「いえいえ、ユキさんが謝る必要はありませんよ。それにあのときは結局多数決で行くことになりましたけど、みんな本気でやったらどうにかなったので大丈夫でしたし」

 

 あの衝撃的な出会いから30分程度、意外なほど簡単に俺はこのギルドに打ち解けることができていた。話題は勿論セナのこと。どうやら俺がさっきから話しているサブマスのつららさんも、相当苦労してきたようだった。

 因みに、俺のボスの突破方法は「流石ギルマスの幼馴染。頭おかしいですね」と言って笑われた。解せぬ。

 

「ユキさんこそ、大変なんじゃないんですか? ギルマスがいつも楽しそうに話してくれますけど、聞いてる限りユキさんの被害がとんでもない気がするんですけど……ほら、例えばフィールド引き摺り回し事件とか」

「あー…アレは俺の不注意とセナのテンションが重なった事故ですね。それに小さい頃からの付き合いですから、いつの間にか慣れちゃいました」

 

 具体的な部分こそぼかしているが、俺がこうしてリアルの話を持ち出してるのにも理由がある。

 セナの言っていた通り、このギルドは俺を含めても5人でかなり人数が少ない。その中の女子3人で、攻略に出ないときは所謂ガールズトーク的な話で盛り上がってることも多いらしい。無論そこではリアルの話も出る。なら俺が既に明かされてる情報を利用しても問題はないだろう…? ということだ。

 

「お互い、随分と苦労してるみたいね…」

「そうですね……セナにはもうちょっと落ち着いてもらいたいです…」

 

 はぁ…とお互いのため息が重なった。けれどそれは完全に嫌というものではなく、呆れを含みつつもどこか…こう、上手く表現ができないけれど、決して悪いものではないのは確かだ。うん、沙織は随分良い人に恵まれてるみたいだ。安心安心。

 

「あ、そうそう。ギルマスから幸運極振りって聞いてるけど、ユキさんってどんなスキル構成なんですか? 私はヒーラー兼水と氷の魔法で攻撃する後衛なんですけど…」

 

 一瞬それはタブーなんじゃないかと思ったけれど、向こうもある程度明かしてくれたうえ、極振りなんて大体似たようなものだから別にいいか。

 

「投擲とサバイバルで命中率を限界まで底上げして、Luk値に頼ったクリティカルですね。まあ付加魔法がメインなので、多分バッファーですかね」

 

 状態異常をかけまくったり、相手の攻撃を潰したり、固定ダメージを与えたり、パーティを組むなら付加魔法で補助したり……ほら、どこからどう見ても支援役だ。『スキル取得チケット』でゲットしたヤツを含めそうだから、俺は何も間違ってない。

 

「バッファーかー。聞いてた限りまだ変化してないみたいだけど、どういう方向性にするつもりなのかな?」

「方向性とは?」

「ふふん、折角だからお姉さんが相談に乗ってあげようか?」

「それじゃあお願いします」

 

 そっち方面に関しては、正直何も考えていなかった。ネットで調べるよりは確実だし、話をしてもらう方がいいだろう。

 

「付加魔法で支援役を選んだ人はね、大体3つの方向に分かれるみたいなのよ。デバフと攻撃に特化した呪術、広域化と繊細化に特化した紋章術、一点集中の多重付加術って感じでね」

「なるほど」

 

 もしその3つなら呪術は却下だな。当たらない火力がない怯まないとか、無い無い尽くしの現状を悪化させるだけだ。多重付加は…火力こそありそうだけど、一点特化型とか事故の予感しかしない。となると、使うとしたら紋章術とかいいのかも?

 

「それが効率良いってだけで、どういう風に育てるかは個人の自由だから、参考にしてくれるだけで大丈夫かな」

「色々便利そうなので、一先ずは紋章術の取得を目指しますかね」

 

 全体強化、全体弱体、(多分)無属性爆発(メギドラオンでございます)。一番俺の戦い方にマッチしている気がする。無論、それより良さげな物が見つかったのなら話は別になるけれど。

 

「なるほどなるほど……イベント後に居残ってもらうのもあり…かな?

「何か言いました?」

「何も言ってないですよ?」

 

 考え事をしてたせいか何かを聞き逃した気がしたけれど、何も言ってないならきっとそうなのだろう。もしくは、聞き逃しても問題がないこと。それなら今更聞き返す必要もないだろう。

 

「それじゃあ、今日は長々とありがとうございました」

「うんうん。新しいメンバーさんには……あっ」

 

 そこまで言ってから、つららさんは何かに気がついたようでピタリと停止した。そして改めてこちらに向き直り言った。

 

「遅くなっちゃったけど、ようこそ『すてら☆あーく』へ。しばらくの間、宜しくね」

「こちらこそ、宜しくお願いします」

 

 こうして俺は、ギルマス(セナ)がいない状況ではあるものの、ちゃんとギルドに合流することができたのだった。

 さて、今日の残りは金策金策っと。

 

 イベント開始まで、後は6日。

 




構成人数4人というほんと極小ギルドでした。
セナ Lv 36
??? Lv 33
つらら Lv 32
れー Lv 28
ユキ Lv 12

ユッキーの運命や如何に

もう書く事ないし、ダイジェストでイベントまで飛ばすのもあり…かな?

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