婀嗟烬我愛瑠〜assassin girl〜魁!!男塾異空伝   作:大岡 ひじき

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関係ないが、アタシの中での月光のイメージは、完全にマイク・ベルナルド。


13・For The Brand-New Dream

 煙幕が徐々に晴れてきて、私たちの側からも目で状況が把握できるようになった頃には、勝負は既についていた。

 

「ど、どうやら貴様の言うとおり、俺に微笑んだのは死神だったようだな。」

 そう言う羅刹の身体に、柱の足場のひとつが背中から突き刺さり、先が腹まで抜けている。

 

「気付くのが遅かったな、羅刹……。

 俺と拳をあわせた時から、貴様はすでに死神に魅入られていた。」

 その光景に歓喜する一号生たちとは裏腹に、私は頭の中でこの後の救命プランをシミュレーションしていた。

 とりあえず、火傷の即時回復は私でなければできないから、虎丸は間違いなく私が担当することになるだろう。

 羅刹のあの傷もほぼ致命傷だから、ある程度まで一刻も早く塞いでしまわなければ命にかかわる。

 ちょっと言いたいこともあるしちょうどいいだろう。

 ディーノは出血が多いが、見たところ急を要する感じじゃないから、あちらは他のスタッフに任せても平気だろう。

 残る伊達は…。

 

「ヘタに動かん方がいい。

 手当てをすれば命だけは助かるかもしれん。」

 そこまで考えたところで、まるで私の脳内シミュレーションを覗き見たかのような伊達の言葉に、私は我に返る。

 

「フッ。

 死天王のひとりこの羅刹も舐められたもの。

 此の期に及んで惜しい命などあると思うか…!!」

 羅刹は呼吸を荒くしながらも、背にしている柱に手をかけると、気合声とともに、自らを貫いている柱からの脱出をはかった。

 

「な、なに──っ!!

 羅刹の野郎、まだやる気だ──っ!!」

 一号生の誰かが叫んだ言葉の通り、指拳を構えながら伊達に突進する。

 だが、肉体のダメージが蝕んでいるのだろう。

 その動きは先ほどまでの、空を泳ぐような動きからは程遠いものだった。

 伊達は羅刹の攻撃を躱すと同時に、その喉元に手刀を突き付ける。

 それは確実に羅刹の喉を突き破れる鋭さを持っていたにもかかわらず、その寸前で止められていた。

 

「な、何故、拳を止めた…?

 何故とどめをさして殺さぬ。

 俺の息の根を止めぬ限り勝負はつかんのだぞ。」

 もはや己の敗北を、嫌という程思い知らされたであろう羅刹が問う。

 

「勝負は既についている。

 それは貴様が一番よく知っているはず。

 ヘタな面子たてるより、早いとこ手当てをすることだ。」

 言いながら手刀を引く伊達に、毒気を抜かれたように羅刹が笑いかけた。

 

「フッ…負けよ。この羅刹の完敗だ…。

 お前の相棒を盾にするなど、見苦しい真似を見せちまったが、許してくれ。」

 そう言った羅刹の表情はむしろ晴れやかだった。

 見苦しい真似をした、というのは、一応自分でもわかってたんだと、少しホッとする。

 ようやく私の知っている羅刹が戻ってきてくれた。そう感じたのもつかの間。

 

「貴様のような男と闘えた事を誇りに思うぞ、伊達臣人よ……!!」

 先ほどまでの動きと同じくらいの鋭さで、羅刹は伊達から離れたかと思うと、そのまま落下する。

 

「羅刹っ!!」

 伸ばした伊達の手が空を掴み…羅刹は燃え盛る炎の海に飛び込んだ。

 

 ・・・

 

「さすが男塾死天王のひとり……最後に男を見せたな。

 伊達がとどめをささぬと知って自ら命を絶ち、伊達の勝利を完全なものとするとは……!!」

 桃が感嘆したように呟き、王先生が高らかに宣言する。

 

「大威震八連制覇第三闘、燦燋六極星闘(さんしょうろっきょくせいとう)!!

 男塾一号生、伊達・虎丸組勝利──っ!!」

 先ほどから徐々に弱ってきていた炎の勢いがほぼ完全に鎮火してきて、一号生たちは闘士たちを迎えるべく、いそいそと船の用意を始めた。

 柱の上では、伊達が虎丸を引き上げて、抱えたところだった。

 

「終わったぜ…虎丸。」

 

 ☆☆☆

 

「たいした奴らよ……男塾三号生、死天王のうち三人までも、ことごとく打ち破り…とうとうここまで来おった。」

「申し訳ありません。

 第四闘に於いてこの影慶、必ずや…。」

「フッ、おまえが謝る必要はない。

 奴等を甘くみたこの邪鬼に誤算があった。

 …第四闘で奴等を待とう。

 もっともそう簡単に奴等、たどり着けんだろうがな。」

 

 ☆☆☆

 

 さて。一号生たちが伊達と虎丸を船に乗せて岸まで渡ってくる間、救助組がディーノと羅刹の身柄を回収していた。

 ディーノの方は救命組の一班が救護スペースに運び、少し回収に手間取った羅刹が、今ようやく担架に乗せられている。

 また一号生側でも「一緒に行く」と暴れる虎丸を縛り上げて無理矢理担架に乗せて運ぼうとしていた。

 気持ちはわかるけど無理でしょ。

 とりあえず気付かれないようにそっと虎丸に近づいて首筋に指を当てる。

 いつかやったのと同じようにして氣の針を撃ち込んでやると、虎丸は一瞬『してやられた』という表情を浮かべて覆面の私に目を向けた後、意識を失った。

 

「俺は大丈夫だ。

 貴様の勝負、この目で見届けてやるぜ。」

 と、後ろの方で、そんな伊達の声が聞こえてきて、心の中で舌打ちした。

 治療はさせてもらえないぽい。ならば、せめて。

 とりあえずの応急処置を施されている伊達と、桃にも気付かれないように戻り、月光の袖をちょいちょいと引いた。

 

「伊達は、後から強い疲労が来ると思います。

 これ、渡してあげてください。」

 私は早口でそう告げて、振り返った月光の手に、懐から取り出したものを握らせた。

 それから急いで虎丸の担架の後を追う。

 とっておきだったんだけどなぁ。仕方がない。

 

 ☆☆☆

 

「伊達殿…。」

「…なんだ、月光。」

「今、この場を離れた覆面の一人が、伊達殿にこれをと。

 奴が言うには、後から強い疲労が来るだろうからと。」

「………?」

 そう言って月光が俺に手渡してきたのは、アメ玉の四角い缶だった。

 …俺にどうしろってんだこんなモン。

 そう思った途端に、全身になんとも言えないような厭な怠さを感じた。

 恐らくは気張禱を二度も使った反動だろう。

 …なるほど。そういうことか。

 俺はその缶の蓋を開けて、中から数個振り出すと、それを口に放り込んだ。

 …クソ甘え。耐えきれずにガリガリと噛み砕いてすぐに飲み込む。

 口の中が甘くて閉口したが、気のせいか少しだけ、身体が楽になった気がした。

 誰かは知らねえが、その心遣いには感謝しとこう。

 …そういや、やけに目につくくらいくるくる動き回ってた、一番小さい覆面が居ねえな。

 

「進めいっ!!

 これより大威震八連制覇、最終闘へ向かう!!」

 そこに王大人の声が響き渡り、俺たちは最終闘場へと歩き出した。

 

 ☆☆☆

 

 虎丸の全身火傷をある程度治療した後、三号生側の救護スペースへ向かった。

 私が着いた時、ディーノが全身包帯ぐるぐるで、恐らくは例の救護車の方に運び込まれるのだろう、再び担架でそこから移動させられるところだった。

 簡易ベッドに横たえられた羅刹を横向きにしてもらい、背中の方から傷を塞ぐ。

 火傷もしていたが思ったほどでもない。

 恐らく火の中に飛び込んだ時点で、鎮火しかかっていたタイミングだったからだろう。

 命に別状ないくらいの範囲までの治療に留め、自身の氣の残量を確認する。

 思ったより大丈夫そうだ。

 道々糖分を補給すれば、残りの4人全員が物凄い重傷で即時治療を施さねば死ぬとかいう状況にでもならない限りは最後まで保つだろう。

 そう思いながら懐に手をやって…あ、そうか。ドロップ、伊達にあげちゃったんだった。

 

「…何か、甘いもの持ってませんか。」

 他の治療スタッフを振り返り、そう声をかけたところで、簡易ベッドの方からプッと吹き出す声が聞こえた。

 振り返ると、横たえられたままの羅刹が、喉の奥でくつくつ笑っているのが見えた。

 

「…その声は、光だな。」

「気がつかれましたか。

 もう少し眠っていてくださればよかったのに。」

 言いながら羅刹の手を取り、潰された拳を治療する。

 おとなしくそれを受けながら、自嘲のように羅刹が呟いた。

 

「…助かっちまったか。いや、助けられたんだな。

 まったく、みっともねえにも程がある。」

 …他のスタッフが、気をきかせるようにその場から去る。

 最後に退出した一人が、軽く手を上げて会釈して出て行った。

 

「…おまえが見ていると知っていれば、人質をとるような、あんな情けない真似はしなかったものを。

 失敗したな。…軽蔑したろう?」

 …黒煙に遮られていたから見えてはいなかったけど、声は聞こえていたので、正直幻滅した。

 赤石が信用していた人だし、私も若干の交流を持って、卑怯な真似はしない人だと勝手に思っていた。

 確かに動揺しやすい人だとは知っていたけど、冷静さを失ったら、ここまでなりふり構わなくなるとは思わなかった。

 けど、それは本人もわかっているようだから、それ以上責めるのはやめる事にする。

 

「ほんの少し。二度とやらないでくださいね。

 でないと…あなたの事、嫌いになります。」

「フッ、それは大変だ。」

 治療の終わった手を離すと、羅刹はその手を伸ばし、私の覆面を跳ね上げた。

 私の顔を改めて確認して…何故か驚いたように目を見開く。

 

「…まずいな。

 光を泣かせたなどと、知られたら俺は赤石に殺されるかもしれん。」

 は?なんでそうなる。

 涙はギリ出てない。筈だ。多分。

 

「…いや、泣いてませんから。」

「そうか?

 目が赤いが、ならそういう事にしておこう。

 この埋め合わせは何がいい?」

「だから、泣いてませんってば!」

 全然そういう事にしてなさそうな羅刹に、私は思わず声を荒げる。が、

 

「若い娘だし、チョコレートパフェでも奢ろうか?

 …俺が、動けるようになってからの話になっちまうが。」

 ぴた。その言葉に、反射的に動きが止まる。

 

「……ホントですか!?それ、食べた事ないんです。

 一度食べてみたいと思っていました!」

 私は同年代の同性の友達など居なかったし、また、ターゲットとデートをする際にそういう店でお茶を飲むことくらいは何度もしたが、メニューを見て気にはなっても、実際に注文するのは憚られた。

 どんな女性像でも役割として演じきれる自信はあるが、私に割り振られるターゲットの特性上、大抵が大人の、或いはそれに近い落ち着いた女性像が求められたから、イメージを崩すような真似は敢えてしなかった。

 そもそも、甘い物を口にしてしまうと、自身の素が出てしまう危惧が、自分の中に少しあったし。

 でも実はちょっと憧れてたんだよね。

 

「決まりだな。

 これで、諸々のことを含めて、赤石には言わずにおいてくれると助かる。」

「了解しました!楽しみにしています!!」

 …あれ?

 なんか、色々誤魔化された気がするんだが。

 まあいいか。

 

 ☆☆☆

 

 羅刹のそばを離れ救護スペースを出ると、私が出てくるのを待っていたのだろう担架が入れ替わりに入っていった。

 これから救護車に羅刹を運ぶのだろう。

 ふと、前方から手招きされ、そこまで駆け寄ると、

 

「この後また塾生たちへの試練に入るから、オレ達は別ルート。

 あと、これは光ちゃんの注文の品ね。」

 と言われ、渡された小さな袋には、多分数人が少しずつ分けてくれたのであろう、飴やらチョコレートやらキャラメルといった、ひと口サイズのお菓子が幾つか入っていた。助かる。

 

「ありがとうございます!」

 早速チョコレートをひとつ口に含む。

 これで今回は最後まで立っていられる、筈だ。

 

 ・・・

 

「ところで、試練って今度はなんですか?」

 案内されてたどり着いた塔の内部で、ふたつめのチョコレートを口に入れつつ、階段を登りながら私が問うと、

 

「最終闘場は、この塔のてっぺんにあるんだけど、塾生たちはこの外側の、螺旋状の道を歩いていくんだ。

 途中で外の様子が見える箇所があるから、覗いてみるといい。

 多分、もう少ししたら始まると思う。」

 と、よくわからない答えが返ってきた。

 それ以上は教えてもらえなかったので、仕方なく黙って登っていくと、恐らくは塔のちょうど中間あたりで、広間のような場所に出て、先行して登っていたスタッフと、王先生が待っていた。

 

「よし、間に合ったようだな。

 ここの小窓から外が見えるから、貴様も見ておくといい。」

 私の姿を確認した王先生は、そう言って私をひょいと持ち上げると、壁の際に30cmほどの高さに積まれた石の上に乗せた。

 いや、この程度の高さなら、言ってもらえれば自分で乗れますから。

 ちなみに王先生も結構背が高いので、この状態でようやく目線が同じだ。

 なるほど、王先生からは、世界はこのように見えているというわけか。滅べ。

 若干敗北したような気分になりつつも、示された小窓を覗いてみると、なるほど、丸く抉られたような形の道を、一号生たちが歩いて登ってくるのが見える。

 と、突然地震のように、床に物凄い振動が走った。

 石から落ちそうになって、思わずそばにいた王先生にしがみつく。

 王先生は微動だにせず私を抱えると、「見よ。」と一言言って、もう一度小窓の方に私を寄せた。

 …振動は、地震ではなかった。

 塔の上の方から、一号生たちが登っている道を伝って、巨大な鉄球が転がってくる、それが為の振動。

 

「中腹よりやや手前にこの仕掛けの機動スイッチがあり、あの人数で歩いておれば、必ず誰かがそれを踏む。

 止めるには、球が充分な距離を転がり落ちてから、同じスイッチをもう一度押せばよく、つまりある程度まで逃げ切れれば再び誰かが踏むか、最悪鉄球が勝手にスイッチを押すことになり、自然に止まる。

 とはいえ、その前に鉄球に轢き潰されるようなら、その時点でそいつは最終闘場へ行く資格はないという事よ。

 最終的には、冷静な判断力、そして闘士たちを他の仲間が守りきれるか否か、それが試される試練というわけだ。」

 いやちょっと待て。

 という事は、スイッチの存在に気付かず、または逃げきれなければ、そこで終わりって事?

 

「まあ、それ以外の方法で生きてここを通り抜けられるならば、それでも良い。

 前回の一号生は全員で押さえて鉄球を止め、闘士たちを先に行かせる事でこの試練を終えたが、残り全員力尽きて、鉄球の下敷きになった。

 それでも正解という事よ。」

 だから待て──っ!!

 

 ・・・

 

「に、逃げろ!全員轢き潰されるぞ──っ!!」

「うわああ!すげえ速さだ──っ!!」

「よ、横へ逃げて側壁にぶら下がったらどうだ──っ!!」

「だ、駄目だ、鉄球と道の縁との間には隙間がねえ──っ!!

 そんなことをしても指が潰されて、結局は真っ逆さまに下へ落ちてしまう!!」

 塾生達は逃げながらも、対処方法を考えてはいるらしい。

 

「ここはこのまま麓まで逃げ切るしかねえ!」

「馬鹿言うな!

 麓までたって五、六キロはあるぞ!

 そこまで保つと思うのかーっ!!」

「だったらどうすればええんじゃ──っ!!」

 …うん、一応はそれが正解。

 現時点では怪力王の虎丸も、壊せないもののない拳を持つJ(あ…どっかで聞いた台詞、ここにも居たわ)も、自称頭脳派の田沢もいないから、奇を衒わずに全速力で、スイッチのある場所まで逃げ切れば助かる。けど。

 

「ぐえっ!!……うわああ──っ!!」

 最後尾の椿山が転んだ。

 その身体のすぐそばまで鉄球が迫る。

 

「つ、椿山──っ!!」

「全員、つづけい!!」

「お、おう!!」

 桃が号令をかけて、全員が鉄球を押しとどめる。

 何とか止めたものの、いつまでも耐えきれるものでもない。

 

「人バシゴで玉の上登って、向こう側に移ることはできるかもしれねえぜ!!」

「桃、伊達、月光!おまえらは先に行ってくれ!!」

 誰かが提案したそれは多分、前回の一号生が取った手段。

 だが、桃の性格上、その提案を受け入れる事はできないのだろう。

 その言葉を聞いても、彼が動く事はなかった。

 恐らく三人が向こう側に渡ったくらいのところで、残り全員は鉄球の下敷きになる。

 それが明らかである故に動けないのだ。

 と、その時一号生たちの後方で、月光が動いた。

 

「ここは、わたしに任せてもらおう。」

 制服の上着を脱ぎ捨て、地面を蹴って跳躍する。

 190cmはある大きな身体で、ひとっ飛びで鉄球の上に降り立った月光は、その上に片膝をついて、指先で何かを探り始めた。

 やがて何かを見極めたように指を止めると、どこからか取り出した(つっこまない、私は絶対につっこまないぞ)突起のついたナックル様の手甲を右手に装着する。

 それで鉄球に一撃するも、それはわずかに穴を穿つだけに終わった。

 だがそれで月光は、「これでいい…!!」と立ち上がる。

 一号生達からその行動に文句が出るのも構わず、月光が球の上から告げた。

 

「次のわたしの合図で全員、鉄球から手を離し、全速力で下へ駆け抜けてくれ。

 全速力でだ……!!」

 その言葉にも一号生達から不信の声があがる。

 だが、

 

「やめろ。ここは月光の言うとおりにするんだ。

 奴を信じるしかない。」

 桃がそれを制し、皆がそれに頷いた。

 

「行けい!!」

 月光が叫び、同時に全員が、言われたとおりに駆け出す。

 支えを失った鉄球は再び転がり始め…上に乗った月光が、なぜかその上で静止していた。えっ!?

 

「な、何で月光、あの上から振り落とされずに立ってられるの!?」

「ただ静止しているのではない。

 あの男、球の上で小刻みに跳ねておる。

 球の上に完全に体重が乗る前にもう飛んでおる故、常にその上で浮いている状態となっておるのよ。」

「まじか。」

 理屈はわかったが人間業じゃねえわ。

 その月光は、鉄球の転がるスピードが上がり始めたタイミングで、その上から大きく飛び立ち、その前に立ちふさがった。

 そのままその場所で、先ほどの手甲で拳を構える。

 次の瞬間。

 

辵家(チャクけ)核砕孔(かくさいこう)!!」

 繰り出された月光の右の拳が、巨大な鉄球を粉々に砕いていた。

 

 ・・・

 

「大した事ではない。

 鉄球のヘソを見切り、転がり落ちる玉のスピードを利用し、拳の威力を倍加したまでのこと…。」

 いや、『大した事じゃない』って言葉の使いどころ、完全に間違ってるし、見切ったっても、あなた目が見えない筈だし、これはアレか。

 つっこんだら負けとわかっていてもつっこませる、私に対する巧妙な罠か。

 ともあれ危機を脱した一号生達は、月光に対する賞賛を叫びながら、再び頂上へと歩き始めた。

 目指すは最終闘場。

 気付けば、空には雷雲が立ち込めてきていた。




長年の疑問が、「暁」の悟空対雷電(次世代)戦を見て、ようやく解答を得られた。次世代雷電にできることが、この世代の月光にできないはずがない。多分。

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