婀嗟烬我愛瑠〜assassin girl〜   作:大岡 ひじき

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…あけましておめでとうございます。
昨日から突然もうひとつ連載中の『小石』の閲覧数が増え、お気に入り数がこっちの二倍近くに届かんとしており、少しショックを受けております。
春から連載してた『あさしん』が、たかだか二ヶ月ちょいしか連載してない作品に抜かれるなんて…!
まあそれ言うなら『モブだった件』は実際の連載期間なんて一ヶ月にも満たなかったけどさ!
これはきっとヒロインに魅力がな「やかましいわ」バシュ!

…それはそれとしてとんでもないことに気づいてしまった…ケンタロウ戦は闇夜の戦いだったのに、聖紆塵戦はいつの間にか太陽の下での戦いに…!
ということで、ここでは月明かりに変更してます。月明かりも元々は太陽の光よ…!というこじつけ。


6・King's Boogie

 聖紆塵(ゼウス)も邪鬼先輩も一歩も後に退かず、二人は凄まじい勢いで拳を繰り出し続けていた。

 互いに一通りの攻撃を、全力でぶつけ合った後、同じタイミングで一旦間合いを取り直す。

 やはり二人の実力は互角。

 このままでは蛇血誓闘(スネークブラッドコントラクト)の蛇の毒が、全身にまわり相討ちになる…!!

 その時、それまで吹き荒れていた嵐が突然止み、眩しいほどの月明かりに、闘場一帯が照らされた。

 

「貴様の負けだ、邪鬼。

 どうやらこの勝負、天も俺の勝ちを望んでいるようだ。」

 聖紆塵(ゼウス)はまたも老人を呼び、老人は物凄い速度でまた、何か箱を持って聖紆塵(ゼウス)の足元に跪く。

 

「これぞ我が淤凛葡繻(オリンポス)に三千年の古来より伝わる、戦いの神器。

 幸せ者よ、このような栄誉ある死を与えられるとはな。」

 そう言って老人が開けた箱から取り出したものは、異様な輝きを放つ手甲型の刺突武器だった。

 

淤凛葡繻(オリンポス)シャイニング・ゴッド・ハンズ!」

 それは伝説の超合金で、ダイヤモンドの数十倍の硬度を持つのだという。

 

「オリハルコンだろうがなんだろうが、当たらねば意味がない。」

「そうだ。

 ただ硬いだけなら路傍の石と変わりない。

 だがこのオリハルコンには、もうひとつの特質がある。

 それを今、教えてやろう。」

 そう言って向かってくる聖紆塵(ゼウス)に向かって、邪鬼が万全の構えを取る。

 その向かってくる聖紆塵(ゼウス)の武器が眩しく輝きを放ち、それが邪鬼の脇腹に、浅くない傷を負わせていた。

 

「オリハルコンは光を反射し、一条の強烈な光を発する性質を持っている。

 その眩しさゆえに、見切ることは不可能だ。」

 二人の頭上には、遮るものとてない、煌々とした月明かり。

 これが先ほど聖紆塵(ゼウス)が、天に味方されていると言っていた意味か。

 邪鬼先輩は一旦間合いを取って場所を移動するが、オリハルコンはどんなにわずかな光も収束して増幅するらしい。

 攻撃の瞬間に目を眩まされ、その度に邪鬼の身体に傷が増えていく。

 とどめに向かってきた聖紆塵(ゼウス)の輝く拳を、一旦目を閉じてその光を遮る。

 そして纏っていたマントを脱ぐと、それを聖紆塵(ゼウス)の拳に絡みつかせた。

 光が遮られたと同時に間合いを詰め、攻撃に転じる。

 だが次の瞬間マントの、ゴッド・ハンズに触れていた部分が燃えて穴が開き、そこから再び現れた輝きの拳に、向かっていった邪鬼の肩が貫かれた。

 

「これだけの光を収束すれば、高熱を発し、マントなど燃やしてしまうのはたやすいこと。

 勝負あったな、邪鬼。」

 だが、邪鬼先輩の目はまだ、戦いを放棄してはいない。

 

「誰にものを言っている…。

 お、俺の名は大豪院邪鬼……。

 三号生筆頭…男塾の帝王といわれた男よ…!」

 言いながら、肩の傷口を手で押さえる。

 立ち上がる気配はない。

 

「フッ、流れ出る血をおさえるのに精一杯か。」

 …それでも、あれだけの負傷をしてなお、その氣が膨れ上がった気がしたのは俺の気のせいだろうか。

 二人にはもう時間がない。

 蛇の毒が全身にまわり始めている。

 その戦いに終止符をうつべく、聖紆塵(ゼウス)がシャイニング・ゴッド・ハンズを振りかぶった。

 刹那。

 

「勝負を焦ったな聖紆塵(ゼウス)

 この邪鬼が、これしきの傷をただ意味もなく庇っている男だと思うのか!!」

 言うや邪鬼は肩の傷から手を離し、そこから噴き出させた血で、光を遮った。

 どうやら傷口を押さえていたのは、血を圧縮させていたという事のようだ。

 邪鬼は聖紆塵(ゼウス)に拳を引く間も与えず、手刀で聖紆塵(ゼウス)の手首に一撃を加えた。

 聖紆塵(ゼウス)がその手から武器を取り落す。

 邪鬼はそれを爪先で蹴り上げそれを自身の手に握ると、続けて振りかぶってきたもう片方残った拳を、カウンターで合わせた。

 オリハルコンでできたゴッド・ハンズが、粉々に砕ける。

 

「オリハルコンがこの世で最強の硬度をもつというのなら、それを打ち砕くのもオリハルコンしかあるまい。」

 だがそれは、同じ力でぶつかり合った場合のみだ。

 同じ硬度の同じ武器を持つ場合、どちらかの力が優っていれば、砕けるのは力が劣る方だけ。

 互角の力を持つ者同士だからこそ、両方が砕ける事態となった筈。

 

「この勝負、我が大豪院流必殺の秘術を見せねばなるまい。」

 そう言って邪鬼先輩が、先ほど脱ぎ捨てたマントを拾い上げる。

 それは例のゴッド・ハンズにより穴を開けられた筈だが、邪鬼がそれを一振りすると、その中から何か、白いものが無数に、周りの空間に広がった。

 

「大豪院流奥義・風舞殃乱鶴(ふうぶおうらんかく)!!」

 あれは……折り鶴!?

 

 ☆☆☆

 

「まじか…うわあ、これ、残りの全塾生と一緒に、映像で見たかったなあ。」

「…ん?」

「江戸川は、あなたには頼まなかったと思いますが、元々は彼の発案で、二号生が邪鬼様に持っていった千羽鶴なんです。

 それを三号棟で三号生に見せたら、自分たちもって急遽作ってくれて。

 だから今、この塾に残っている一般二号生と三号生が、邪鬼様と一緒に戦ってるんですよ。

 …なんだか、感激しました。

 そんな素敵な事をしてくださるなんて。」

 邪鬼様の部屋で見せていただいた、あのメルヘンファンタジーな光景を思い出して、思わずうっとりする。

 そういえばあの後、帰ろうとした私にも、

 

『ついでだ、貴様も一羽折って置いていけ。』

 と紙を一枚渡して折らせたので、私が折った分も、その中に入っているのだろう。

 そう思うと、なんだか胸が熱くなった。

 

 ☆☆☆

 

「あれは、塾に残った一般塾生が、邪鬼様の為に折ったという千羽鶴だ。

 思いのほか喜ばれていたので驚いたが、まさか、戦いに使われようとは。」

 影慶先輩の説明によれば、光が預かって持っていったものらしい。

 いわば塾生たちの心を一緒に連れてきていたわけか。

 男塾(おれたち)の帝王は、思ったよりずっと粋なことをする。

 そんな邪鬼の手の動きに従って、折り鶴の群れが意志を持っているが如く、一斉に聖紆塵(ゼウス)に襲いかかっていく。

 これは真空殲風衝(しんくうせんぷうしょう)の応用だ。

 そして鶴一羽一羽の羽根に、ちいさな刃が仕込んであるらしい。

 聖紆塵(ゼウス)はワンショルダーの上衣を引きちぎり、それを使って自身に襲いかかる鶴を、一羽残らず叩き落とした。

 

「どうやら蛇の毒が全身にまわりきったようだ。

 次の一撃が万が一にも相討ちならば、続きは地獄でというところだな。」

 そう言う聖紆塵(ゼウス)が、どこかそれを期待しているように見えるのは気のせいだろうか。だが、

 

「力の均衡は既に崩れた。貴様の負けだ、聖紆塵(ゼウス)

 ベラミスの剣……!!

 貴様も淤凛葡繻(オリンポス)の闘士なら知っていよう。」

 

 ベラミスの剣…

 古代ギリシャ神話時代、永遠のライバルといわれた闘いの神ベラミスとマルスは、その実力においてまったく互角であり、幾多の死闘を経ても決着はつかなかった。

 ある時 マルスは一計を案じ、試合前密かにベラミス愛用の剣を、そっくり同じ形ながらほんのわずか重い剣に取りかえた。

 それと気づかぬベラミスは、ふだんよりわずかに重い剣のためおくれを取り、敗れ去った。

 極限まで互角のふたつの力が競い合う場合、どんなにささいな事であれ狂いを生じれば、そこに優劣が出来てしまうということである。

…太公望書林刊「ギリシャ神話に見る現代人への教訓」より

 

「何をたわけたことを!!死ぬのは貴様だ──っ!!」

(はん)っ!!」

 二人が同時に拳を繰り出す。

 次の瞬間、相手の胸を貫いていたのは、邪鬼の手刀の方だった。

 聖紆塵(ゼウス)の拳は寸前で、邪鬼の身体には届いていない。

 

「な、なぜ…!?拳の速さは全く互角だった筈……!!」

「違う、互角ではない。

 貴様の背には、ベラミスの剣が刺さっている。」

 見ると聖紆塵(ゼウス)の右肩後部に、折り鶴が一羽、嘴部分で突き刺さっている。

 

「その一羽にだけ、嘴にも刃を仕込んである。

 その嘴で貴様の腕の主動筋を突き、拳の速さを鈍らせたのに気づかなかったようだな。」

 邪鬼先輩がそう言って手刀を引く。

 

「な、なるほどな。

 俺のうち落とした鶴はすべて、その為の囮だったというわけか……!!

 ふ、不覚をとったな…。」

「眠れい、聖紆塵(ゼウス)……!!」

 聖紆塵(ゼウス)の身体がゆっくりと、仰向けに倒れた。

 

 

 だが。

 

「お、俺の名は淤凛葡繻(オリンポス)十六闘神主神・聖紆塵(ゼウス)……!!

 これしきの傷で……!!」

 聖紆塵(ゼウス)はまだ、立ち上がってきた。

 だが、万全の状態ならいざ知らず、致命の一撃を受けたその身体に、もはや戦う力は残されていない。

 繰り出す攻撃はすべて防がれ、邪鬼先輩はそのすべてに、悉く全力で反撃する。

 側近の老人が止めるのも振り払い、命と引き換えにしてもと、まだ聖紆塵(ゼウス)が向かってくるのを、邪鬼先輩はその頭上を飛び越え背後に回り、両足でその首を極めた。

 両足をつかみ回転して、頭を地面に叩きつける。

 

「大豪院流・驚天回旌杭(きょうてんかいしょうこう)…これで決まった…!!」

 伊達が、誰に言うともなく断言した。

 

 ・・・

 

「き、貴様、よくも聖紆塵(ゼウス)様を──っ!!

 勝負は既に見えていたというのに──っ!!」

「や、やめろ蜒琉菲(デルフィ)…そうではない…!!」

 老人が邪鬼に食ってかかっていくのを、聖紆塵(ゼウス)が声だけで制する。

 

「わからんのか…最後の死力をふりしぼり、立ち向かっていく俺に、情けをかけ手加減することが、どんなに屈辱感を与えるか…そ、それは俺にとって、死よりも辛いことだ……!!

 だから、あいつは全力を尽くして、俺と戦ってくれた。

 そういう男なんだ…じゃ、邪鬼という男は…。」

 いい勝負だった、そう言って笑う聖紆塵(ゼウス)に邪鬼は、自身が飲むことを許された解毒剤、グリーク・ティナコンダの血清を聖紆塵(ゼウス)の前に突き出す。

 

「飲むがいい、聖紆塵(ゼウス)

 出血はひどいが、急所はすべて外してある。

 今すぐこれを飲み、手当をすれば命だけは助かるだろう。

 …俺のことなら心配いらん。

 この体、蛇の毒ぐらいではくたばりはせん。」

 …俺には邪鬼の気持ちがわかる…気がする。

 今、邪鬼の心にあるのは、勝利の喜びではなく悲しみだ。

 戦いの中で育まれた友情。

 互いの生命を握り合ったもの同士にしか判らない、魂の絆。

 長い死闘の中で二人は互いに認め合っていた。

 そんな友の死を前に、どうして自分だけが助かることができようか。

 …ここに光が居たら、泣きながら怒るところだろうが。

 それは巨象でさえも殺すという毒。

 いかに邪鬼とはいえ、無事で済もう筈がない。

 

「じゃ、邪鬼…貴様という奴は……!!」

 聖紆塵(ゼウス)は立ち上がり、一度唇に笑みを浮かべると、

 

「これでも飲まぬと言うか、邪鬼ーっ!!」

 叫んで、自身の手刀で自らの胸を撃ち抜いた。

 

「これで、俺には血清など必要なくなった……!!

 フッ、よもやこれでも飲まんとは言わんだろうな。

 …さあ、早く飲め!!

 この目でそれを見届けぬ限り、死ぬことはできん!」

 友の魂の叫びを無碍にする事は出来ず、邪鬼は手渡されたそれを飲み干した。

 

「れ、礼を言うぜ、邪鬼。

 貴様こそ、淤凛葡繻(オリンポス)十六闘神主神、この聖紆塵(ゼウス)の、最大の宿敵であり…友だった……!」

 安心したように瞳を閉じ、その場に斃れる聖紆塵(ゼウス)

 

聖紆塵(ゼウス)。貴様の命、この邪鬼と共にある。」

 そう言って邪鬼は杯を割った拳を握りしめ、この先の勝利を亡き友に誓う。

 その背に老人が跪いた。

 

「この先の、あなた達の御武運をお祈り申す!!」

 

 ☆☆☆

 

「お察しします、邪鬼先輩。」

 無言で我々のもとに戻ってきた邪鬼様に、剣が一言声をかけた。

 邪鬼様はその場の全員を一度見渡してから告げる。

 

「次はいよいよ決勝戦。心してかかれい!!」

「…押忍ッ!!」

 一号生達が姿勢を正して答えた。

 

 

 傷の治療の為にヘリに向かう邪鬼様の背に、俺は誰にも気づかれぬよう、小さく声をかけた。

 

「邪鬼様…ひとつ、お伺いしても?」

「…なんだ?」

「あの、『ベラミスの剣』となった最後の一羽…。

 あれは、あの時光に折らせたものでは?」

 俺の問いに、邪鬼様はふんと鼻で笑った。

 

「全部色違いにしてあるならともかく、そんな一羽だけ見分けがつくか。

 考え過ぎだ。」

 …だが、俺はあの時見て知っている。

 あの時光が置いていった鶴が、他のものより一回り小さかった事を。

 渡された紙をただ折っただけだったから、折った本人は気がつかなかっただろうが。

 

 次は決勝戦…俺はそこで、最大の茶番を演じることになる。

 貴方様をも欺くことになる俺を、どうかお許しください、邪鬼様…!

 

 ☆☆☆

 

『ピックアップバトル』を実況し終えた解説者が、二人の死闘と友情に息を詰まらせて一旦休憩に入る。

 ちなみに放送する側は、ここで本当に死者が出ている事を知らない。

 一応世間的には大怪我という形で知らされて、その後情報は藤堂財閥の方でもみ消されるのだ。

 実際に命と命のやり取りである事を知っているのは、この大武會になんらかの援助をしている大物と、出場闘士だけだ。

 

「…次で、ようやく決勝戦か。」

「このペースでは、朝には出発できそうにありませんね。

 一旦寝ておいてください、赤石。

 必要になったら起こしに行きますから。」

 赤石の耳からイヤホンを回収して、私は彼にそう告げた。

 

 ☆☆☆

 

「予選リーグは各会場のほとんどが戦いを終え、各代表が出揃いましてございます。

 あとは第一会場を残すのみ。

 ただいま男塾チームが準決勝を制し、これから決勝戦へのぞむところであります。」

「ほう、男塾……。

 確か、大武會初参加の新参者であったな。

 して、その男塾の決勝での相手というのは…!?」

「はっ……うっ!?

 ………お、おい。

 これは何かの間違いじゃないのか?」

「い、いえ、決してそのような事は…!!」

「貸せい。

 こ、これは……!!

 まさか、奴等がこの大武會に参加しておったとは……!!」

 天挑五輪大武會を主催する藤堂財閥。

 その総帥である老人は、そこに書かれてある団体名を見て、驚きと期待に満ちた目を輝かせた。

 その膝の上で、黒い小柄な猫が、撫でるのを忘れている主人に向かってにゃあと鳴いた。




全部終わるまでリアル連載期間で10ヶ月はかかってる予選リーグは、ここでは多分長くてもトータル1日半くらいの時間経過。
てゆーか原作、何日ぶっ続けで戦い続けてんのよ…食事も睡眠も無しで。
ウソみたいだろ?予選なんだぜ、これで。
ここではそんな事はありません。ヘリの中にトイレもベッドもお弁当も用意されてます。
1日のみの話なんで、お風呂はさすがにありませんけど。
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