婀嗟烬我愛瑠〜assassin girl〜 作:大岡 ひじき
昨日から突然もうひとつ連載中の『小石』の閲覧数が増え、お気に入り数がこっちの二倍近くに届かんとしており、少しショックを受けております。
春から連載してた『あさしん』が、たかだか二ヶ月ちょいしか連載してない作品に抜かれるなんて…!
まあそれ言うなら『モブだった件』は実際の連載期間なんて一ヶ月にも満たなかったけどさ!
これはきっとヒロインに魅力がな「やかましいわ」バシュ!
…それはそれとしてとんでもないことに気づいてしまった…ケンタロウ戦は闇夜の戦いだったのに、聖紆塵戦はいつの間にか太陽の下での戦いに…!
ということで、ここでは月明かりに変更してます。月明かりも元々は太陽の光よ…!というこじつけ。
互いに一通りの攻撃を、全力でぶつけ合った後、同じタイミングで一旦間合いを取り直す。
やはり二人の実力は互角。
このままでは
その時、それまで吹き荒れていた嵐が突然止み、眩しいほどの月明かりに、闘場一帯が照らされた。
「貴様の負けだ、邪鬼。
どうやらこの勝負、天も俺の勝ちを望んでいるようだ。」
「これぞ我が
幸せ者よ、このような栄誉ある死を与えられるとはな。」
そう言って老人が開けた箱から取り出したものは、異様な輝きを放つ手甲型の刺突武器だった。
「
それは伝説の超合金で、ダイヤモンドの数十倍の硬度を持つのだという。
「オリハルコンだろうがなんだろうが、当たらねば意味がない。」
「そうだ。
ただ硬いだけなら路傍の石と変わりない。
だがこのオリハルコンには、もうひとつの特質がある。
それを今、教えてやろう。」
そう言って向かってくる
その向かってくる
「オリハルコンは光を反射し、一条の強烈な光を発する性質を持っている。
その眩しさゆえに、見切ることは不可能だ。」
二人の頭上には、遮るものとてない、煌々とした月明かり。
これが先ほど
邪鬼先輩は一旦間合いを取って場所を移動するが、オリハルコンはどんなにわずかな光も収束して増幅するらしい。
攻撃の瞬間に目を眩まされ、その度に邪鬼の身体に傷が増えていく。
とどめに向かってきた
そして纏っていたマントを脱ぐと、それを
光が遮られたと同時に間合いを詰め、攻撃に転じる。
だが次の瞬間マントの、ゴッド・ハンズに触れていた部分が燃えて穴が開き、そこから再び現れた輝きの拳に、向かっていった邪鬼の肩が貫かれた。
「これだけの光を収束すれば、高熱を発し、マントなど燃やしてしまうのはたやすいこと。
勝負あったな、邪鬼。」
だが、邪鬼先輩の目はまだ、戦いを放棄してはいない。
「誰にものを言っている…。
お、俺の名は大豪院邪鬼……。
三号生筆頭…男塾の帝王といわれた男よ…!」
言いながら、肩の傷口を手で押さえる。
立ち上がる気配はない。
「フッ、流れ出る血をおさえるのに精一杯か。」
…それでも、あれだけの負傷をしてなお、その氣が膨れ上がった気がしたのは俺の気のせいだろうか。
二人にはもう時間がない。
蛇の毒が全身にまわり始めている。
その戦いに終止符をうつべく、
刹那。
「勝負を焦ったな
この邪鬼が、これしきの傷をただ意味もなく庇っている男だと思うのか!!」
言うや邪鬼は肩の傷から手を離し、そこから噴き出させた血で、光を遮った。
どうやら傷口を押さえていたのは、血を圧縮させていたという事のようだ。
邪鬼は
邪鬼はそれを爪先で蹴り上げそれを自身の手に握ると、続けて振りかぶってきたもう片方残った拳を、カウンターで合わせた。
オリハルコンでできたゴッド・ハンズが、粉々に砕ける。
「オリハルコンがこの世で最強の硬度をもつというのなら、それを打ち砕くのもオリハルコンしかあるまい。」
だがそれは、同じ力でぶつかり合った場合のみだ。
同じ硬度の同じ武器を持つ場合、どちらかの力が優っていれば、砕けるのは力が劣る方だけ。
互角の力を持つ者同士だからこそ、両方が砕ける事態となった筈。
「この勝負、我が大豪院流必殺の秘術を見せねばなるまい。」
そう言って邪鬼先輩が、先ほど脱ぎ捨てたマントを拾い上げる。
それは例のゴッド・ハンズにより穴を開けられた筈だが、邪鬼がそれを一振りすると、その中から何か、白いものが無数に、周りの空間に広がった。
「大豪院流奥義・
あれは……折り鶴!?
☆☆☆
「まじか…うわあ、これ、残りの全塾生と一緒に、映像で見たかったなあ。」
「…ん?」
「江戸川は、あなたには頼まなかったと思いますが、元々は彼の発案で、二号生が邪鬼様に持っていった千羽鶴なんです。
それを三号棟で三号生に見せたら、自分たちもって急遽作ってくれて。
だから今、この塾に残っている一般二号生と三号生が、邪鬼様と一緒に戦ってるんですよ。
…なんだか、感激しました。
そんな素敵な事をしてくださるなんて。」
邪鬼様の部屋で見せていただいた、あのメルヘンファンタジーな光景を思い出して、思わずうっとりする。
そういえばあの後、帰ろうとした私にも、
『ついでだ、貴様も一羽折って置いていけ。』
と紙を一枚渡して折らせたので、私が折った分も、その中に入っているのだろう。
そう思うと、なんだか胸が熱くなった。
☆☆☆
「あれは、塾に残った一般塾生が、邪鬼様の為に折ったという千羽鶴だ。
思いのほか喜ばれていたので驚いたが、まさか、戦いに使われようとは。」
影慶先輩の説明によれば、光が預かって持っていったものらしい。
いわば塾生たちの心を一緒に連れてきていたわけか。
そんな邪鬼の手の動きに従って、折り鶴の群れが意志を持っているが如く、一斉に
これは
そして鶴一羽一羽の羽根に、ちいさな刃が仕込んであるらしい。
「どうやら蛇の毒が全身にまわりきったようだ。
次の一撃が万が一にも相討ちならば、続きは地獄でというところだな。」
そう言う
「力の均衡は既に崩れた。貴様の負けだ、
ベラミスの剣……!!
貴様も
ベラミスの剣…
古代ギリシャ神話時代、永遠のライバルといわれた闘いの神ベラミスとマルスは、その実力においてまったく互角であり、幾多の死闘を経ても決着はつかなかった。
ある時 マルスは一計を案じ、試合前密かにベラミス愛用の剣を、そっくり同じ形ながらほんのわずか重い剣に取りかえた。
それと気づかぬベラミスは、ふだんよりわずかに重い剣のためおくれを取り、敗れ去った。
極限まで互角のふたつの力が競い合う場合、どんなにささいな事であれ狂いを生じれば、そこに優劣が出来てしまうということである。
「何をたわけたことを!!死ぬのは貴様だ──っ!!」
「
二人が同時に拳を繰り出す。
次の瞬間、相手の胸を貫いていたのは、邪鬼の手刀の方だった。
「な、なぜ…!?拳の速さは全く互角だった筈……!!」
「違う、互角ではない。
貴様の背には、ベラミスの剣が刺さっている。」
見ると
「その一羽にだけ、嘴にも刃を仕込んである。
その嘴で貴様の腕の主動筋を突き、拳の速さを鈍らせたのに気づかなかったようだな。」
邪鬼先輩がそう言って手刀を引く。
「な、なるほどな。
俺のうち落とした鶴はすべて、その為の囮だったというわけか……!!
ふ、不覚をとったな…。」
「眠れい、
だが。
「お、俺の名は
これしきの傷で……!!」
だが、万全の状態ならいざ知らず、致命の一撃を受けたその身体に、もはや戦う力は残されていない。
繰り出す攻撃はすべて防がれ、邪鬼先輩はそのすべてに、悉く全力で反撃する。
側近の老人が止めるのも振り払い、命と引き換えにしてもと、まだ
両足をつかみ回転して、頭を地面に叩きつける。
「大豪院流・
伊達が、誰に言うともなく断言した。
・・・
「き、貴様、よくも
勝負は既に見えていたというのに──っ!!」
「や、やめろ
老人が邪鬼に食ってかかっていくのを、
「わからんのか…最後の死力をふりしぼり、立ち向かっていく俺に、情けをかけ手加減することが、どんなに屈辱感を与えるか…そ、それは俺にとって、死よりも辛いことだ……!!
だから、あいつは全力を尽くして、俺と戦ってくれた。
そういう男なんだ…じゃ、邪鬼という男は…。」
いい勝負だった、そう言って笑う
「飲むがいい、
出血はひどいが、急所はすべて外してある。
今すぐこれを飲み、手当をすれば命だけは助かるだろう。
…俺のことなら心配いらん。
この体、蛇の毒ぐらいではくたばりはせん。」
…俺には邪鬼の気持ちがわかる…気がする。
今、邪鬼の心にあるのは、勝利の喜びではなく悲しみだ。
戦いの中で育まれた友情。
互いの生命を握り合ったもの同士にしか判らない、魂の絆。
長い死闘の中で二人は互いに認め合っていた。
そんな友の死を前に、どうして自分だけが助かることができようか。
…ここに光が居たら、泣きながら怒るところだろうが。
それは巨象でさえも殺すという毒。
いかに邪鬼とはいえ、無事で済もう筈がない。
「じゃ、邪鬼…貴様という奴は……!!」
「これでも飲まぬと言うか、邪鬼ーっ!!」
叫んで、自身の手刀で自らの胸を撃ち抜いた。
「これで、俺には血清など必要なくなった……!!
フッ、よもやこれでも飲まんとは言わんだろうな。
…さあ、早く飲め!!
この目でそれを見届けぬ限り、死ぬことはできん!」
友の魂の叫びを無碍にする事は出来ず、邪鬼は手渡されたそれを飲み干した。
「れ、礼を言うぜ、邪鬼。
貴様こそ、
安心したように瞳を閉じ、その場に斃れる
「
そう言って邪鬼は杯を割った拳を握りしめ、この先の勝利を亡き友に誓う。
その背に老人が跪いた。
「この先の、あなた達の御武運をお祈り申す!!」
☆☆☆
「お察しします、邪鬼先輩。」
無言で我々のもとに戻ってきた邪鬼様に、剣が一言声をかけた。
邪鬼様はその場の全員を一度見渡してから告げる。
「次はいよいよ決勝戦。心してかかれい!!」
「…押忍ッ!!」
一号生達が姿勢を正して答えた。
傷の治療の為にヘリに向かう邪鬼様の背に、俺は誰にも気づかれぬよう、小さく声をかけた。
「邪鬼様…ひとつ、お伺いしても?」
「…なんだ?」
「あの、『ベラミスの剣』となった最後の一羽…。
あれは、あの時光に折らせたものでは?」
俺の問いに、邪鬼様はふんと鼻で笑った。
「全部色違いにしてあるならともかく、そんな一羽だけ見分けがつくか。
考え過ぎだ。」
…だが、俺はあの時見て知っている。
あの時光が置いていった鶴が、他のものより一回り小さかった事を。
渡された紙をただ折っただけだったから、折った本人は気がつかなかっただろうが。
次は決勝戦…俺はそこで、最大の茶番を演じることになる。
貴方様をも欺くことになる俺を、どうかお許しください、邪鬼様…!
☆☆☆
『ピックアップバトル』を実況し終えた解説者が、二人の死闘と友情に息を詰まらせて一旦休憩に入る。
ちなみに放送する側は、ここで本当に死者が出ている事を知らない。
一応世間的には大怪我という形で知らされて、その後情報は藤堂財閥の方でもみ消されるのだ。
実際に命と命のやり取りである事を知っているのは、この大武會になんらかの援助をしている大物と、出場闘士だけだ。
「…次で、ようやく決勝戦か。」
「このペースでは、朝には出発できそうにありませんね。
一旦寝ておいてください、赤石。
必要になったら起こしに行きますから。」
赤石の耳からイヤホンを回収して、私は彼にそう告げた。
☆☆☆
「予選リーグは各会場のほとんどが戦いを終え、各代表が出揃いましてございます。
あとは第一会場を残すのみ。
ただいま男塾チームが準決勝を制し、これから決勝戦へのぞむところであります。」
「ほう、男塾……。
確か、大武會初参加の新参者であったな。
して、その男塾の決勝での相手というのは…!?」
「はっ……うっ!?
………お、おい。
これは何かの間違いじゃないのか?」
「い、いえ、決してそのような事は…!!」
「貸せい。
こ、これは……!!
まさか、奴等がこの大武會に参加しておったとは……!!」
天挑五輪大武會を主催する藤堂財閥。
その総帥である老人は、そこに書かれてある団体名を見て、驚きと期待に満ちた目を輝かせた。
その膝の上で、黒い小柄な猫が、撫でるのを忘れている主人に向かってにゃあと鳴いた。
全部終わるまでリアル連載期間で10ヶ月はかかってる予選リーグは、ここでは多分長くてもトータル1日半くらいの時間経過。
てゆーか原作、何日ぶっ続けで戦い続けてんのよ…食事も睡眠も無しで。
ウソみたいだろ?予選なんだぜ、これで。
ここではそんな事はありません。ヘリの中にトイレもベッドもお弁当も用意されてます。
1日のみの話なんで、お風呂はさすがにありませんけど。