黒い時雨と提督のお話。

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黒い時雨を思いついたので欲望のままに書いた作品です。どうぞ。


雨の日の時雨と提督

雨の音。それは誰しもが聞いたことがあるであろう音。

 「雨、か……」

 俺はいつもこの音を聞くと、ある行動をしてしまう。

 「おや。また来たのかい? 提督も暇だね」

 「そんなこと言わないでくれ。仕事はもう終わったんだから」

 そう、俺は雨が降るといつも時雨の部屋に行っている。

 「ふむ……それは失敬」

 「ところで時雨。何か飲みたいものはあるか?」

 「いや、今はいいや」

 時雨は手をひらひらとさせて答える。

 「そうか……」

 雨の降る日は会話があまり弾まない。

 「「…………」」

 一度沈黙が始まってしまうと、どうしようもない感覚に陥ってしまう。

 「なあ、少し話そうか」

 「いきなり改まってどうしたんだい? 気持ち悪い」

 「気持ち悪いはないだろ……」

 うちの時雨はたまに口が悪くなる。

 「いやー、雨の日ってのはじめじめしていて嫌になるな」

 「そう? 僕は雨の日は好きだよ」

 時雨は結露している窓に指で絵を描きながら続ける。

 「落ち着くんだ。こう……しっとりと肌に吸い付く空気が好きでね。もっとも晴れの日が多いからそんなことを言えるんだろうね」

 「ふーん……」

 私はテーブルに肘をつけながら聞く。

 「提督は雨の日になると、いつも僕の部屋に来るよね」

 「ん。なんか時雨に会いたくなってな……」

 別に目的はない。純粋に会いたいだけ、それだけなのだ。

 「それは僕を口説こうとしているのかい?」

 時雨は小さく笑いながら馬鹿にしてきた。

 「僕を口説くならもう少しロマンチックな文章を考えてくれないか? それじゃ相手にされないよ」

 「べ、別に口説くわけじゃないんだけどなぁ……」

 嘘である。俺は時雨が好きだ。みんなもよく聞くだろ? 男子は好きな女の子にちょっかい出したがるって。

 「もう少し演技を上手くしないとねぇ」

 「じゃあ時雨は好きか?」

 勢いあまって私はとんでもない質問をしてしまう。

 「そうだね……仕事熱心な人は好きだよ」

 「?」

 仕事熱心? 俺とは全く縁のない言葉だな。

 「提督も頑張ろうよ。怠けているとカビどころかキノコまで生えちゃうよ?」

 「いや、キノコならすでに生えているが……」

 「あー……」

 時雨の目線は私の下に向かう。

 「増えるよ?」

 「増えるのは勘弁だな……」

 「じゃあ仕事しようね?」

 確かに増えたらいろいろ困る。

 

 

     ◆

 

 

 「時雨」

 「なんだい提督。告白なら取り下げてもらおう」

 「違うぞ。せっかくの雨だから読書でもしないかってな」

 俺は時雨に一冊の本を渡す。

 「読書か、急にどうしたんだい?」

 「活字離れしている艦娘が多くてな……そこで、本の素晴らしさを時雨に説明してもらおうと思うんだ」

 時雨は俺から受け取った本をぱらぱらとめくる。

 「そう……『イキすぎJ〇危機一髪』ねぇ……」

 「!?」

 その呪文を聞いた瞬間、背筋が凍った。

 「ふむ、確かに女性の心境をよく捉えた作品だね。この作品を真面目なカバーで隠して渡すとはいい度胸をしているじゃないか?」

 「まて! 渡した本は確かに真面目な本の筈だが……」

 「疲れていたんじゃないのかい? ハッスルでもしてね」

 いや、落ち着こうか俺。確かに連日の残業で疲れていたとしても、それだけはない筈だ。そこまで注意力が散漫していたわけでもないのだから。

 「いやいや……嘘だな」

 そうだ時雨はこういうお茶目な嘘をしてくる子なんだ、それにしても手の込んだことを……。

 「嘘じゃないよ。試しに提督の机の鍵の掛かった引き出しを開けてみると良い」

 「ま、まさか……!」

 俺は慌てて自室に戻り鍵を回して引き出しを空ける。ちゃんとそこには俺の秘蔵のコレクションがあった。

 「よ、よかった……」

 「では、これは没収だね」

 時雨は手の中の本と引き出しの中にあった本を取り上げた。

 「な!?」

 「いやいや噂は本当だったようだね」

 時雨はニコニコとしながら続けた。

 「他の艦娘たちから色々相談をされてね。提督の好きそうな作品名を言ったら、ここまで事が運ぶとは思わなかったよ」

 どうやらはめられたようだ。

 「ちなみに提督から貰った本は真面目な本だよ」

 「なっ!?」

 完全にはめられた。時雨の方が一枚上手であった。

 「それはともかく、こんな本があったらほかの子には悪影響だ。こういう本を買うことは今後一切やめるように」

 そう言うと時雨は本を『燃えるゴミ』と書かれた袋に入れる。

 「嗚呼……俺のお宝がぁ……」

 「提督もこういう本に集中するぐらいなら、仕事の方に熱を入れて欲しいものだよまったく……」

 時雨は頬を膨らませながら喋る。

 「そうすれば僕だって……」

 「ん? 今なんか言ったか?」

 「何でもない。今日は遅いからもう寝るといい、明日の仕事に影響が出てしまう」

 時雨は俺を睨むような顔で見る。

 「…………」

 「そんなに駄々をこねるのなら一緒に寝ることはできないね」

 「添い寝!?」

 時雨と一つのベットで……。その瞬間俺は一瞬で睡魔に襲われた、これが欲のなせる業なのだろうか。

 「一緒に寝るぐらいなら良いよ。提督はよくセクハラしてくるけど守るべきところは守る人だからね」

 「時雨……」

 俺はこの後時雨と『一緒』に寝た。ベットと布団がある『一緒』の部屋で……布団に入っていた俺の目からは一滴の汗が流れていた。




今回は時雨でした。こんな時雨も良いなぁって思いながら書いたら、あれ? これなんか違くない? って思うぐらいの作品になりました。

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