アンドロメダ学園との試合が終わりグラウンド整備後
「みんなおつかれさま、今日の部活はこれで終わりよ。
「はい。全員整列、礼!」
――ありがとございました!
声を揃えてグラウンドへ頭を下げて解散。
「
「ありがとう。ごくろうさま」
「いいえ、それでは失礼します」
試合の配信に使っていたパソコンやカメラを受け取り、部室に片付けてからベンチに戻る。
「お待たせー」
「いえ、それで何の用事でしょうか?」
部室から紙袋を持って戻ってきた
「ふふっ、これよ!」
「お、おおーっ」
紙袋からビニールに包まれた真新しいユニフォームとアンダーシャツをベンチに並べて置いた。
「みんなのユニフォームよ。あなたたちも明日からは、このユニフォームで練習に参加してね」
パチッとウインクをした
仮入部から一週間、練習という名の過酷な基礎体力強化(筋トレ)に耐え抜いた新入部員たちは、ようやく恋恋高校野球部の一員と認められた事に感動した様子で新しいユニフォームを手に取った。
「ダサいユニフォームだよな」
「いきなり冷や水かけないであげて」
「あはは......」
白地に高校野球では珍しいピンクを基調とした個性的なユニフォームに素直な感想を述べる
「失礼します!」
「はい、おつかれさま」
新入部員たちは挨拶をして帰宅。
ベンチには
「あのもう一着は?」
「ああ、これ?
「んなもん着ねえよ」
「あら、テレてるの?」
「さて、今日の総括といくか。打撃は70、守備は40ってところだな」
「40点ですか......」
最終回のドタバタ劇にある程度厳しい評価を覚悟していた
「4点目は要らない点だったな。あの場面で左に打たせサードランナーを無視するのであれば、一つ前の牽制はファーストへ投げるべきだったな。お前、楽な方を選んだだろ?」
「うぐっ......」
図星を突かれて顔をそむけた。
最終回サード牽制を入れた場面。
各ランナーのリードが大きく牽制を投げると決めた
その理由は二つ。
一つはサードランナーの存在価値。ヒットは勿論、暴投、ボーク、エラー、四死球でも失点に繋がる。さらにリードが大きければ内野ゴロを打たせた場合であっても失点の確率が上がる。そのため牽制を挟みホームに近いサードランナーのリード小さくさせる狙いがあった。
そして二つ目は、
ショートは基本的にファーストセカンドへの送球が多くサードへ投げる事は稀で中継プレー以外では一試合に一度有るか無いかくらいの割合。
この送球方向を捕手のポジションに当てはめた場合セカンドサード方向への送球には慣れているが、ファーストへの送球はショートからサードへの送球に近い感覚になるためサードランナーと送球が重なるリスクをおかしてまで送球に自信のあるサードへの牽制を選択した。
「あの場面の牽制は本気で刺す必要は無い。ファーストに投げリードを小さくさせておけば、あのやや深めの位置での捕球でも
やや厳しく言った
「だが、あれでいい」
「えっ?」
「お前は、余裕のある5点目をやらなかった。結果を出した、それでいい。
「はいはい。
「キャッチャーミット?」
「お前には本格的にキャッチャーへコンバートしてもらう」
「キャッチャー......」
「部の備品じゃ手に馴染まないでしょ? 因みにそれ、
「え!?」
手に持ったミットを見つめていた
「フッ......」
「期待されてるわね」
「えっと、ありがとうございます」
「じゃあ先に行ってるわ」
一人ベンチに残った
「お前から見てどうだ? あいつは」
返事の代わりにベンチの裏から恋恋高校の制服を身にまとい髪をツインテールにまとめた少女が姿を現した。
「才能はあると思います。正直、あの回はもっと点を取られると思いました」
少女は最終回の
「あの状況であそこまで開き直れる人はそうは居ないですから」
「まあな。でだ、賭けは俺の勝ちなわけだが」
「......わかってますよ。野球部でお世話になります」
少し納得いかない
「素直じゃあねぇな、まあいいさ。そう言えばまだお前の名前を聞いてなかったな」
「
「勝負?」
「一打席勝負。俺が勝てばお前は野球部に入る。俺が負けたら......まあ何でもいい。値段を問わず好きな物をくれてやるよ」
「わかりました」
二人はバッティングセンターを出て、近くの公園へ場所を変える。
「で、どっちでやる?」
「えっ?」
「お前、投手だろ?」
一瞬で見抜かれた
「バッターで、お願いします」
「オーケー」
プロ野球の並み居る強打者を手玉に取り勝ち星を積み上げた伝説の投手との勝負を選んだ。
「ハンデをくれてやる」
「いりません!」
「そう言うなよ。勝負を成立させるためだ」
元プロと素人との差を埋めるため提案。
バント以外でインフィードに飛ばせさえすれば
「さあ行くぜ」
「............」
大きく振りかぶる
タイミングが合わず見逃してストライク。
二球目は110km/h程のストレートを真後ろへのファウルで追い込んだ。
「ふぅ~......。んっ!」
「ふーん」
――こりゃあ打たれるな。
空振りを取る予定だった二球目にタイミングを合わせてきたのを見て、細かいコントロールが出来ない今のままでは打たれると、
それでも構わず振りかぶる。
「――か」
「っ!?」
コーンッ!
「俺の勝ちだ」
「............」
頬を染めて
「まあ今のは無効にしてやる」
笑みを見せた
それは週末のアンドロメダ学園との試合に勝利することだった。
* * *
「そのミットどうしたの?」
「コーチに貰った」
いつもの十字路で四人と別れ、あおいと二人で歩いていた
「......本格的にキャッチャーになれって言われたよ」
「ふーん、そっか~」
「俺、キャッチャーなんて......」
あおいは数歩先に歩いてから振り返る。
「でもボクにはショートの時より楽しそうに見えたよ、マスクを被ってる時の
「えっ?」
うつむいていた顔を上げると、あおいは笑顔を見せた。
「さあ帰ろっ?」
「あ......うん。そうだね」
二人は、最終回のリードについて話をしながら家路を歩いた。
* * *
「
「ああ、明日から練習に参加する」
「そう。それにしても無謀に思えたけど本当にコールドで終わらせられるなんて......」
今日も
「ふぅ、おいしい。そうだ、キミの狙い通りさっそく試合の申し込みが多数きてたわよ」
「そうか」
これが
この宣伝効果は抜群。
他校の野球部関係者の目に止まりさらに一年生相手とは言え、春の覇者アンドロメダ学園にコールドで勝利したことで狙い通り練習試合の申し込みが殺到した。
「他県の強豪校からもきてるわよ」
「そうか。毎週末土日に試合を組め」
投手が二人になったことで連戦を組めるようになったことが今回の試合の一番の収穫とも言える。
「日曜は遠征でもいいわよね」
「ああ。対戦校の選定はお前に任せる好きにしてくれ」
「オッケー」
「ところで
「あいつはライトと抑えの二刀流で行く。
「納得してくれるかしら?」
「させるさ。それよりも問題はお前だ」
「わたし?」
なんのことか分からず首をかしげる。
「練習試合は
「......契約、8月まで延長しない?」
「公式戦一試合につき100万で引き受けてやるよ」
「はあ~、意地悪ね。一雇われ保健医師に700万円も払えるわけないじゃない」
「なら必死に身に付けることだな」
頬杖をつく