その理由は
元プロ野球選手それも異次元の成績を残した選手がベンチに居ることで安心感を与え、更に試合では的確な指示により結果を残し自信に繋がっていた。
しかし、逆に言ってしまえば
『入りましたーッ! マリナーズ
「相変わらずハイテンションな実況だな」
マリナーズ戦のテレビ中継をスマホで見ながらベンチに座る
「
「
イヤフォンを外して、
「私に、コーチの
大きく深く頭を下げて
同じストレートでも回転数の違いでノビやキレに影響が出る。特に
しかし、それは
事実大筒高校の試合では
「あんなもん覚えたところで役に立たねぇよ」
「......でも、武器が欲しいんです。今の私の力じゃあどうしても四回以降に掴まってしまうんです......」
「ふーん、武器ねぇー」
実は、
『
「なんだよ。ずいぶん慌ててるじゃねぇか」
『見つけちまったんだ。お前が
「さて、さっそく見せてもらおうじゃねぇか。致命的欠点ってヤツをよ」
マウンドにあるのは、彼が
「行くぞ、
「ああ、頼む」
「(構えは普段と変わらないな)」
マリナーズの三番を打つ走攻守三拍子揃った助っ人外国人――トマスが、マシーンを作動させると練習場にモーターの回る音が響く。
ボールが発射される直前に
「フッ......!」
強制的に頭の位置が下がるこのフォームであれば、向かってくるボールを斜めから引きぎみに見ることができ、ボールの軌道に奥行きが生まれ、球筋を見極めてからバットを振りだすことが出来る。マシーンから放たれる
そして、最後の一球も球場であれば、確実にホームランであろう大きな当たりをライトへ放った。
「ふーん、まさかこんな打ち方があるなんてね」
「正直、この打ち方を見つけたのは偶然だった。マシーンの調整を行っている時にふと閃いたんだ。お前のボールは端からみたらなんの変鉄もないボール。だったら、
「前の攻略法。周辺視を利用したバスターからのヒッティングは、バッターによって不得意の差が大きかったが。クローズドスタンスや、最初から外側に立って踏み込むバッティングフォームなら、お前のボールを大の苦手としていたトマスも、この通りだ。ただ、センターから逆方向へしか強い当たりが打てないと言う欠点もあるが......」
「シフトを敷いたところで遅いボールを引っ張り、シフトで空いた穴を突くことは容易い」
「ああ、そうだ。引っ張るには当てるだけいい」
両目でしっかりとボールを捉え、ボールの軌道を見極めてから打つ正攻法とは、まったく正反対の攻略法。
「この攻略法がもっと早く見つかっていたら、オレたちが優勝してただろ?」
ベンチに座る
「関係ねぇよ。お前らのバッティングフォームをぶっ潰すのが少し早まっただけだ。しかも一度じゃなく、気づかないほど徐々に崩し、復調の兆しさえ与えず引退を意識させる程にな」
「鬼か!」
「当たり前だ、それが勝負の世界だろ。甘っちょろい考えじゃあ死ぬぞ?」
二人は、
「それでどうする? 低回転ボールを......お前の投球術をマスターすることが出来れば、高校生相手にならそう簡単には打たれないと思うけど。持っていくか?」
「ああ、持っていく。教えるかどうかは別としてもキャッチャーのキャッチング技術の向上にはもってこいだからな。コイツは」
「そうか、オーケー。じゃあ、配送業者を手配する」
「まあ確かに、オレも捕球は苦労した。初日で完璧に対応できたのは、
――
北海道フィンガーズに所属する日本を代表する大打者。来たボールに柔軟に対応出来る天性のバッティングセンスを持つ。
特注のピッチングマシーンを千葉から東京の恋恋高校へ持ち帰り以降、練習後の
「低回転ボールは、打者の心理を読み裏を突く必要がある」
「大丈夫です。私、練習後のカードゲームで一度も負けていません」
自信あり、と
二人はグラウンドへ移動し、他のナインが帰り仕度をしている中照明を灯しマウンドにピッチングマシーンを設置して、特訓が始まった。
「
「はい!」
ベンチから
「今から
「わかりました! 準備してきます!」
プロテクターを着けている間にピッチングマシーンの設定を変更する。
「とにかく全部振れ。行くぞ」
「はい、お願いしますっ!」
ピッチングマシーンから
「感想は?」
「......スゴいです。まるでボール生きているみたいに自分からバットを避けるみたいな感じ......」
「まあ悪くない感性だ。でだ、何球まともに捕球できた?」
「うっ......、よ、四割......?」
「三割にも届いちゃいねーだろ、くだらん見栄を張るな。別に怒りゃしねえよ。初見じゃ、マリナーズのトマスやフィンガーズの
リーグトップクラスの実力者も自分とほぼ変わらないことにほっとした
「
低回転ボールとは、特定の球種を表すモノではない。例に上げれば120km/hの球速で20~3回転、110km/hでも20~3回転、100km/hでも20~3回転と言うように、ありとあらゆる球速で回転数を投げ分けるボール。
つまり同じスピードのストレートでもホームベースに届くまでの間にまったく違う軌道を描くことがバッターの予測した軌道に反し、強烈なまでの打ちにくさを生んでいた。
「相手の狙いの裏をつく以前に、狙い通りに投げられなければ成立しない。指先の感覚を身に付けることが最重要課題だ。だが、これは教えて出来ることじゃない。お前自身が、自らの身体で覚えるしかない。それでもやるか?」
「......はい、やります!」
「そうか。なら、これを持っていけ」
「硬球?」
「寝転がった状態で回転を意識させながらボールを天井へ向かって投げる。家で出来るボールコントロールのトレーニングだ」
「はいっ」
グラウンド整備をしてナインたちは帰宅の途につく。いつもの交差点で別れ、あおいと
「ねぇ、
「なに?」
「実際にボールを受けて見てどんな感じだったの?」
「うーん。とにかく捕り難いかな? 予想外の軌道で飛んでくるし」
「そっか~。でも、それって――」
あおいは、受け取ったボールに目を落として手の中で転がす。
「打ちにくいってことだよね?」
「うん、そうだね。じゃなきゃ120km/h前後のストレートだけでプロで戦うなんて無理だよ」
「......だよね。
グッと力を入れてボールを握り投球フォームに入る。
「だから、ボクも......!」
アンダースローから放たれたボールは綺麗な軌道を描きながら
「
「あおいちゃん......」
決意を口にしたあおいを見た