game45 ~試練~
「ベスト8か......」
「ん?」
激闘の末、聖ジャスミン学園を敗り恋恋高校史上初のベスト8進出を成し遂げた、その帰り道。ぼそっと呟いた
「あ、いや、なんて言うか、あんまり実感がわかないって言うか......」
「実感?」
二人の前を並んで歩いている
「ああ~、確かにねぇー。あたしも口では“めざせ甲子園!”って言ってたけど、正直、ベスト8まで来れるだなんて思ってなかったし」
「そう? 私は、最初から行けると思っていたわ」
「そりゃあ
「それだよ」
「それって、なによ?」
「......ああ、そういうことね」
「だからなによっ?」
「簡単なことよ、だって私たちはまだ――」
――自分たちの力だけで勝ったって言える試合がないんだもの......。
* * *
「自信?」
「そうだ。アイツらはまだ、自分たちの
学校でナインを見送ったあと
「その理由は単純だ。自分たちの力だけで勝ったと言える実績がないからだ」
「......たしかに」
ジャスミン戦もナインたちに考えさせたとは言え、
「失敗から学ぶと言う言葉もあるが、だが成功は失敗以上に成長させる。それは自信に繋がり、自信がつけば勝負処での
「フローと言われる心理状態ね。無謀すぎる大きな目標じゃなく、ギリギリ越えられる小さな目標を少しずつハードルを上げて達成していくことで喜びを覚える。その達成感が成長を促す高循環を作り出す。成功の理論、フロー理論のひとつ」
「アイツらも成長は実感している。だが、今のままではいずれ滞る。上へ行くためには殻を破る必要がある」
「ええ。でも、どうするつもりなの? 規定で大会期間中は練習試合は組めないわよ?」
「フッ......問題ないさ」
アルコールが注がれたグラスを持ち、口に運びながら答えた。
――簡単な方法があるじゃねぇか、と。
* * *
「あ、
リカオンズ球団事務所内の室内トレーニング施設の一室、ミーティングルームのテレビで東京都予選の中継を見ている
「また
「
「誰でしたっけ?」
「おいおい、
「ははっ、冗談ですよ。えっと、今日で確か......」
「準々決勝、勝てばベスト4だ」
「マジで行くかもですね、甲子園」
「......どうだろうな」
やや険しい
「確かに良い試合はしている。だが、なにか物足りない。抽象的な言い方になるが雰囲気と言うかどこか迫力に欠ける」
「ああー、それ、なんとなく分かりますよ。去年の俺たちみたいな感じっすよね」
「ああそうだ、そんな感じだ。
「ええ、本当の意味で勝負に向き合えたと実感したのは、シーズン中盤くらいからだった気がします」
ペナントレースは、日程通りに消化できれば三月末から十月初旬までの半年余り。それは
「まあ
「ん?
「なにッ!? 本当か!」
両校のベンチが紹介がされている映像の中に、
* * *
両校ともに練習が終わり試合前のミーティング。
「さあ、今日勝てばベスト4よ。いよいよ甲子園が見えてくるわ、ガンバりましょ!」
「ちょっとみんな、
「は、はい......」
返ってきたのは、覇気のない返事。彼らが
「ねぇ、
「あ、はい。普段の率はあまり良くないですけど、チャンスの場面は強いです」
「典型的なクラッチヒッタータイプなのね。だそうよ、
突然、話を振られて
「しっかりしてくれる? 集中できないのなら
「ふぅ......ごめん、もう大丈夫!」
大きく深呼吸をして彼女の目を見て答える。
「そう。じゃあちゃんとリードしてよね」
そんな
「けど、よくそんな冷静でいられるわね」
「当然でしょ。私、こんなことで不安になるような練習をしてきたつもりはないわ。みんなは、そうじゃないの?」
「(さすが
「みんな、聞いて!」
「俺たち、今までずっとコーチに頼ってきた。不安じゃないって言えば嘘になる......でも、これはチャンスだと思う。コーチ頼りじゃなくて、自分たちの力で戦って、この試合を勝とう......!」
「おうよ、当然だぜ! なっ!」
「あったりまえでしょっ。あたしをなめんじゃないってのっ」
「オイラも、今日は本気を出すでやんす!」
「はい、それじゃあスタメンを発表するわよ。先ずはバッテリー......」
――この子たち大丈夫よ、私もしっかりしなきゃいけないわ。
* * *
『さあやって参りました、甲子園予選東東京都大会準々決勝! ノーシードから快進撃を続ける恋恋高校対甲子園出場経験もある強豪――関願高校との一戦を。わたくし、
『
『おっと、グラウンドの
映像がアナウンス室からグラウンドへ。
『はい、お伝えしますっ。私は今、恋恋高校のベンチ前に来ているのですが、
『そうですか、わかりました。続報が入り次第お願いします。グラウンドリポーターの
「やっぱり
「そうみたいだな」
「――ったくアイツ、いつも大事な時にいなくなるんだからよ」
「しかし、
「意味、ですか?」
「アイツは無意味なことはしないからな。よく見てみろ」
テレビには今、恋恋高校のベンチの様子が映し出されていた。
「おっ、全然気落ちしてる感じはないですね。それどころか......」
「ああ、むしろ今までの試合以上に気合いが入ってる感じだ。もしかして
「ご明察」
不意にかけられた声に、二人は同時にドアの方へ顔を向けた。そこに立っていたいたのは――。
「と、
「どうしてお前が――!」
「なに、ちょっとした野暮用さ」
突如、リカオンズ球団事務所に現れた
「野暮用って球場へ行かなくていいのかよっ?」
「今から行ったってどうせ間に合わねーよ」
「いや、そりゃそうかも知れねぇけどさ......」
「
「フッ、まあ見てりゃわかるさ」
その
「なるほど、そう言うことか。試練と言ったところか」
「......まあな」
「だが荒療治過ぎないか? 相手は強豪なんだろ?」
「この程度の相手にやられるようなヤワな鍛え方はしちゃいねぇよ」
* * *
「ナイスピッチ!」
「次、曲げるわ」
「オッケー」
試合直前、後攻の恋恋高校は練習を行っている。
投球練習をするバッテリーは、
「行くでやんすよー」
「はい。
「おっしゃ、ナイスコントロール! ほい、
「オーライでやんす」
「(思ったより気負ってはなさそうね。まあ、一回先発登板してるんだから当然かしら)」
今日ライトスタメンの
その元チームメイト同じ一年でありながら強豪関願高校のエースナンバーを背負う、
「――ライトでスタメンか......フンッ!」
帽子をかぶり直し、キャッチャーへ向かって投げた。そのボールはベース手前で大きくワンバウンド、キャッチャーの脇を抜けていく。
「おいおい、スゲー荒れてるな。相手の投手」
「ずいぶんと四死球が多いようだな」
「うわぁ......デットボール上等のケンカ投法かよ。つーかよく勝ち上がってこれたな」
「ふむ、しかし、四死球の割りに失点は少ない」
「点には繋がらないってことっすか。あ、始まるみたいですよ」
キャッチボールに使っていたボールはすべて戻され、球審から新しいボールがマウンドの
先攻の関願高校の先頭バッターが打席に入り足場を整え、球審がプレイボールの合図を送ると球場にサイレンが響きわたった。
『恋恋高校対関願高校。さあいよいよプレイボールです!』
2018版で恋恋高校アップロードしました。
条件検索「セブンゲーム」で出ると思います、興味があるかたはどうぞです。