7Game   作:ナナシの新人

54 / 113
game54 ~成長~

 東東京予選大会、対そよ風高校戦。

 五回裏ツーアウトながら三塁一塁とこの試合初めてのチャンスを作った恋恋高校。この場面でバッターボックスに立つのは、一番センターで先発出場の藤堂(とうどう)。第一打席は、低めのアバタボールを見逃し三振。第二打席は、高めのアバタボールを打ち上げて内野フライと、ここまで二打席続けての凡退で迎えた第三打席。丁寧に足場を慣らし、球審に頭を下げて、左のバッターボックスで構える。

 

『ツーアウト三塁一塁! この場面、どう打つか、どう凌ぐか! ンンーン、目が放せませンッ! さあ、注目の初球――初球、真ん中からアウトコース低めへ変化するアバタボール! しかし、わずかに外れましたー!』

 

 指示通り低めを見逃して、ワンボール。

 

「ふぅ......」

 

 ひとつ息を吐く、藤堂(とうどう)

 

「オッケー、いい変化してるぞ!」

 

 阿畑(あばた)にボールを投げかえしたキャッチャーは、腰を下ろし、藤堂(とうどう)に目を向ける。

 

「(それにしても、きわどいコースだったのに簡単に見逃したな。つーか、みんなそうだ。高速ナックルにはほとんど手を出さない、そう言う作戦なのか......?)」

「おーい、はよサインだしてーな!」

「あっ......ああ、悪い」

 

 急かされたサイン交換は一回で決まり、阿畑(あばた)はセットポジションに入る。ツーアウトと言うこともあって、ファーストランナーのことは気にせずに、ややゆったりとモーションに入った。

 

『アバタボールを連投、今度は決まりました! ワンエンドワン!』

 

 二球目は、外のボールゾーンからストライクゾーンへ滑るようにして低めへ食い込んできた。これも見逃して、ストライク。そして三球目も、アバタボール。

 

「ボール!」

 

 球審は首を横に振る。これでツーエンドワン、打者有利のカウント。出されたサインに一度首を振って、次のサインに頷いた阿畑(あばた)、セットポジションから四球目を投げた。

 

「(――来た、高め!)」

 

 ここで、狙っていた高めのアバタボール。

 低めに比べると変化が小さい高速ナックルを決して当てにはいかず、確実に振り切った。インパクト寸前でややインサイドへ食い込んできた。打ち上げないように上から叩く、やや詰まった打球がサードの前へ転がる。

 

『サードが前へ出てきて打球を捕球、そのままランニングスローでファーストへ! しかし、これはきわどいぞー!』

 

「セ、セーフッ!」

 

 一塁塁審が腕を横に伸ばす。

 

『セーフ、セーフです! 藤堂(とうどう)、持ち前の俊足を活かして内野安打をもぎ取りました! そして、その間にサードランナーはホームイン、下位打線で作ったチャンスで一点を返しましたー! なおもツーアウト二塁一塁と、同点・逆転チャンスが続きます!』

 

 打ち取られていた当たりではあったが、逆に詰まったことが幸いし、送球がグラブへ収まる前に俊足を飛ばして、ファーストベースを駆け抜けた藤堂(とうどう)は、膝に手をついて上がった息を整える。

 

「めっちゃ速いなー、アイツ。自分より速いんとちゃうか?」

 

 そう言ったのは、この試合をスタンドから観戦している青を基調とした「あかつき大学附属高校野球部」のジャージを身にまとい、葉っぱを口にくわえた長髪の男子――九十九(つくも)宇宙(そら)。彼は、ひとつ前の席に座る同じジャージを着た男子――八嶋(やしま)(あたる)に問いかけた。

 

「さあ~? まあけど、おいらなら右中間に弾き返して三塁打にしてたぜ」

「ほぅー、そらまたエラい自信やな」

「まあな~」

「まったくお前たちには、緊張感と言うものがないのか? オレたちは、ただ試合観戦している訳ではないんだ。どちらが勝ち上がって来てもいいように、しっかりとデータを集めなくては――」

 

 苦言をていしながらメガネに軽く触れ、ノートパソコンを操作するのは――四条(よじょう)賢二(けんじ)

 

「相変わらず堅いやっちゃな。力抜くときは抜かんと試合前にへばるで?」

「お前が軽すぎるんだ。それにオレの計算では、今日の試合の勝率は100パーセントだ」

「自分の方が自信過剰ちゃうか? 油断しとると足すわれるで」

「フッ、心配無用だ。データは嘘をつかない、不安要素など微塵もない......!」

「それが自信過剰って言うんや」

「二人とも、その辺にしておきなよ。もう試合は再開されているんだよ。ちゃんと観ておかないと」

 

 試合をそっちのけで言い合う二人をなだめたのは、六本木(ろっぽんぎ)優希(ゆうき)。セカンドの四条(よじょう)と共に、ショートとして鉄壁を誇る二遊間の一角を担っている。そして九十九(つくも)はライト、八嶋(やしま)はセンターのレギュラー選手。

 

「む......そうだな。無駄な争いは止めて、データ収集に戻るとしよう。で、九十九(つくも)

「なんや?」

「あの投手とは、顔馴染みだと言っていたが――」

 

 四条(よじょう)は、マウンドの阿畑(あばた)に顔を向ける。

 

「その頃から、高速ナックルを投げていたのか?」

「いーや、中学ん頃は投げとらんかったで。親友(ダチ)のオレが言うんやから間違いない。けど、よう変化球の研究はしとったな。『いつか、自分だけのオリジナル変化球を生み出したる!』言うてな」

「ふむ、最後の大会を前にその努力が実を結び、強力な武器を手に入れたということか。なかなか厄介な相手になりそうだ」

「はっはっは! 四条(よじょう)よ、そう案ずるな! あの程度のボール、ワシのパワーで粉砕してやる!」

 

 豪快に笑って言ってのけたのは、チームの中軸を打つファースト、三本松(さんぼんまつ)(はじめ)。チームいちのパワーを誇るホームランバッター。

 

「お前もそうだろう? 七井(なない)

 

 ――七井(なない)アレフト。三本松(さんぼんまつ)と共にあかつきの中軸を担うレフト。そして奥居(おくい)と並んで現本塁打王。タイプも奥居(おくい)と似ており、狙って広角に打ち分けられるバッティングセンスを持っている。

 

「オレは、どちらかと言えば恋恋の方がやりやすいネ」

「むぅ......どうした? いつになく弱気だな、お前らしくない」

「ただ事実を言ったまでヨ」

 

 多少芯を外しても腕力で飛距離を伸ばせるタイプの三本松(さんぼんまつ)と違い、ボールを芯で捉えて飛距離を伸ばすタイプの自分とでは、阿畑(あばた)との相性が悪いと感じたからだ。

 

『見逃し三振ッ! フルカウントまでいきましたが、最後は低めのアバタボールで葛城(かつらぎ)を見逃しの三振で打ち取り、一打同点・逆転のピンチを凌ぎ切りましたー!』

 

 あかつきナインたちが話し合っている間も試合は進み、五回の攻防が終わった。そして、五回の終了後のグラウンド整備が職員たちによって行われる。

 

「15個のアウトのうち11個が三振、見事な殺られっぷりだな」

 

 ベンチに座って、まるで他人事のように愉快そうに笑う東亜(トーア)

 

「もう、あなたの指示でしょ?」

「クックック、そう目くじらをたてるな。エサは撒き終えた、もう必要ない。おいお前ら、次の回で阿畑(アイツ)を沈めるぞ」

 

 ナインたちは『はい!』と、声を揃えて返事。

 

「そこでだ、片倉(かたくら)。先頭バッターの初球、その一球だけは思い切りストレートを投げ込め。コースは度外視でいい、必ず本気で投げろ。なんなら140km/hを出すくらいの気持ちでいけ」

「あ......はい、わかりました!」

「そのあとは、お前たちの好きにすればいい。なんかあるんだろ?」

 

 東亜(トーア)の言葉に、顔を見合わせる片倉(かたくら)新海(しんかい)の一年生バッテリー。そこへ、試合再開を知らせる場内アナウンスが流れた。

 

『大変お待たせいたしました。間もなく試合再開となります――』

 

「さあ時間よ、急いで準備をなさいっ」

 

 理香(りか)に促された出場メンバーたちは、急いで守備の準備を済まし、グラウンドへ駆け出していった。

 

 

           * * *

 

 

「やっちゃん、ナイスピッチや!」

「おう、サンキュー」

 

 同点・逆転のピンチを凌いだ阿畑(あばた)は、ベンチに座って、マネージャーの(あかね)から受け取ったタオルで額の汗を拭い、スポーツドリンクで渇いた喉を潤す。

 

「ハァ、さすが準決勝や。控えもしぶとーてかなわんわ」

「やっぱり占い通り苦労しそうやね。でも、最後は三振に取ったやん。五回で三振11個やで、今までにないハイペースやっ」

「ワイの“アバタボール8号”は魔球やからな!」

 

『大変お待たせいたしました。間もなく試合再開となります――』

 

「あ、グラウンド整備終わったみたいやね。みんな、追加点とってやっちゃんを楽にしてあげてなーっ」

「おおっ!」

「任せとけ、(あかね)ちゃん!」

 

 ナインたちが声をかける中、この回の先頭バッターの五番だけは、どこか気負った様子で準備をしていた。

 

「(......さっきの失点は、俺のミスだ。バッターの鋭いスイングに惑わされて一歩目(スタート)が遅れた。普通にやっていれば防げた失点だった)」

 

『六回の表そよ風高校の攻撃は、五番――』

 

「(ミスはバットで返してやる......!)」

 

 球場に流れたアナウンスを聞き、強い気持ちを持ってバッターボックスへ向かった。

 

『グラウンド整備が終わり、試合は六回の攻防へと入ります。そよ風高校は、五番からの攻撃。恋恋高校のマウンドには片倉(かたくら)が立ちます。前の回二点を失いましたが、この回も続投するようです!』

 

「なんや、ピッチャーかわらんのかいな。さっきブルペン準備しとったのに」

「でもこれ、うちらにとってはチャンスと違うん? あのピッチャーから、さっき二点取ったんやしっ」

「まあ、せやな。もう三順目やし、目も慣れてきた頃や。こら行けるで!」

 

 片倉(かたくら)の続投は、そよ風に取っては嬉しい誤算だった。しかし、その認識は初球に改められることとなる。

 五番がバッターボックスで構えて、球審がコールすると、間髪入れずに投球モーションに入った。

 

「(ストレートを思い切り――投げる!)」

「(えっ? もう投げるのか?)」

 

 ストレートを投げ込むと最初から決まっていたため、サイン交換の時間がなかったことに若干戸惑ったバッターを後目に、初球が投げられる。高めボールゾーンのストレート。

 

『指にかかった勢いのあるストレート! ボールゾーンでしたが、バッター、思わず手を出してしまい空振り! そして今のが、140km/h! ここで今日の最高速を記録しましたーッ!』

 

 バックスクリーンに表示された球速に、両校のベンチ、そして球場全体から少しどよめきが起こる。

 

「あの子、本当に投げたわ......140キロを!」

「別に驚くことじゃない。トレーナーからの報告書には140キロを投げられるだけポテンシャルは十分にあると記述されていた。ただ、ひとつだけ不幸なことがあった」

 

 東亜(トーア)の言う「不幸なこと」とは、片倉(かたくら)の手本となれる選手が近くに居なかったと言うこと。

 あおいと瑠菜(るな)は、タイプは違えど抜群の制球力を武器にするタイプ。同期の藤村(ふじむら)は、対左打者に特化した変則の左サイド。チームで唯一140km/h以上の速球をコンスタントに投げられる近衛(このえ)は、元々からの強肩。それもキャッチャーからコンバートされたため、投手としての経験値は他の四人と比べると遥かに劣る。ストレートと変化球のコンビネーションとコントロールで勝負する本格派の片倉(かたくら)の参考にはならない。

 さらに、あおいと瑠菜(るな)の安定感のあるピッチングに少なからず影響を受け、制球力を重視する方へ自然と意識が向いてしまっていたことも要因のひとつだった。

 

「俺は、130キロ出るか出ないで精一杯だったからな。速いボールの投げ方なんて教えられない。だから片倉(アイツ)自身が、一度自分で体感・経験し、その感覚を掴むしかない」

「140km/hという明確な数字を出したのは、コントロールという概念を一度頭の中から外させるための言葉。大きな壁を乗り超えて、ひとつ成長してもらうために」

「それだけじゃねーよ。今の一球は、今後の試合展開に大きな意味を持つ」

 

 球速140km/hを計測した効果は、もうすでに現れていた。今までの最速は「138km/h」上がったのはたったの「2km/h」だけ。だが、130キロ台と140キロ台では、やはり数字の見映えとしてのインパクトが違う。当然バッターは、それを意識してしまう。

 

「(ヤバい、思わずボール球を振っちまった。それに140キロって......)」

 

 今までもより速いストレートに対応するためややバットを短めに持ち直したのを、新海(しんかい)は見逃さなかった。ストレートを意識していたところへ、ストライクからボールになる外のカーブを振らせて、二球で追い込む。今度は短く持ったため届かなかったアウトコースのボールにも対応するため、ほんの少しだけ内側へ寄った。そこへインコースのストレートを要求。片倉(かたくら)は、そのキャッチャーミットへめがけてストレートを投げ込んだ。

 

『インコースのストレートに窮屈なスイングを強いられ、空振りの三振! 一年生バッテリー、ここは三球で仕留めて見せました、ワンナウト! そして今のも、140キロを計測しましたーッ!』

 

「また140キロっ? でも今の、そんなに力入ってなかったみたいに感じたけど」

「ええ、片倉(かたくら)くんの普段のピッチングフォームだったわ」

 

 突然の球速アップに疑問を抱く、あおいと瑠菜(るな)

 

「実際に経験したからだ。どういうワケか人ってのは、一度超えてしまうと今までの苦労が嘘だったかのように続けざまに力を発揮することが少なからずある」

「そう言うものなんですか?」

「お前、自分で経験したじゃねーか」

「ボクが?」

 

 東亜(トーア)に指摘されたあおいは、小さく首をかしげる。

 

「あれだけ投げられなかったインコースを、もう気にせず投げれるようになっただろう」

「――あっ!」

 

 対ジャスミン戦において、復活した太刀川(たちかわ)のピッチングをきっかけに内角への投球恐怖症を乗り越えたことを思い出した。

 

片倉(かたくら)くんにとって『140km/h』と言う明確な数字を提示されたことが、あおいさんにとっての太刀川(たちかわ)さんのピッチングだったと言うことよ」

「まあ、そう言うことだ。さてと、ここからが見物だな」

 

 先頭バッターの五番を打ち取ったが、ここから左バッターが続く。左バッターに若干苦手意識を持っている片倉(かたくら)にとって試練が続く場面。

 しかし、この回は違った。

 六番バッターを、自信をつけたストレート攻めて内野ゴロに打ち取ると。七番バッターも、ストレート二球で追い込んだ。

 

『ファール! 三球目、仕留めにいったアウトコースのストレートをカットしました!』

 

「(当てられたか。でも、必死に当てに来てるだけ。今の調子ならストレートで押しきれる。まっすぐで勝負しよう)」

 

 しかし片倉(かたくら)は、新海(しんかい)の出したストレートのサインに首を振った。

 

「(あれ? ストレートにこだわらないんだ。じゃあ、これで――)」

 

 二回目のサインはあっさりと頷いた。

 それは五回の攻撃の最中ベンチで話していた、一回でも長いイニングを投げるため対左バッターへ対策。

 

『さあ足が上がった。ピッチャー片倉(かたくら)、第四球を投げましたー!』

 

「(――緩い、ストレートじゃない、カーブだ!)」

 

 勝負球に選択したのは、左から空振りを奪えないことを悩んでいた、カーブ。やや内よりに来た。速いストレートに合わせて、短めにバットを握っていた左バッターにとって当てやすいコース。

 

「(もらった――えっ?)」

 

 狙って振ったにも関わらず、バットは空を切った。

 

『空振り三振ーッ! この回は三者凡退で退けましたー!』

 

「よっし!」と、マウンド上で小さくガッツポーズを見せる。

 

「おい、アイツ、縦のカーブなんて投げれたのか?」

「私、投げ方を聞かれたことがあります、左バッターへの武器が欲しいと。学校の昼休みとかに練習はしていました」

 

 打ち取った球種は、瑠菜(るな)に教わった新しい変化球――縦のカーブ。従来の横に曲がるカーブよりも、鋭く縦に落ちるため苦手としていた左からも空振りを奪える確率が高い新しい武器。この場面でさらに成長を遂げた。

 

「ふーん」

「それがどうかしたの?」

 

 東亜(トーア)は、新海(しんかい)とグラブタッチをしてベンチへ戻ってくる片倉(かたくら)に目をやりつつ、理香(りか)の疑問に答える。

 

「狙って投げたのなら別にいい」

 

 そう言うと東亜(トーア)は、ナインたちを自分の前へ集めた。

 

「さっき言った通り、この回で沈めるぞ」

『はい!』

片倉(かたくら)近衛(このえ)鳴海(なるみ)、お前たち三人で逆転してこい」

「三人でって......それは、さすがに無茶なんじゃないの?」

 

 理香(りか)の懸念は当然。六回裏は三番片倉(かたくら)が先頭バッター。つまりホームランが出てもソロ一本ではダメ、三人のうち二人がソロホームランを打つか、ランナーを出してのツーランホームラン。あるいはランナーを溜めての長打が必要になる。

 しかし誰ひとりとして、今まで阿畑(あばた)から長打を放っていないと言う事実がある。

 

「心配するな、撒いたエサに食いつく。片倉(かたくら)、初球は必ず首を振ってストレートを投げてくる。そいつを見逃さずに狙い打て」

「......はい!」

 

『六回裏恋恋高校の攻撃は、三番片倉(かたくら)くん』

『さあバッターボックスに片倉(かたくら)が向かいます! 自らのピッチングから流れを掴めるでしょうか? 注目してまいりましょーッ!』

 

 球審のコールのあと、そよ風バッテリーはサイン交換を行う。ここで東亜(トーア)の読み通り、阿畑(あばた)はサインに一度首を振った。そして投げられたボールもまた、読み通りのストレートだった。

 片倉(かたくら)は、力まずにやや甘く来たストレートを弾き返した。完璧に捉えた打球はセカンドの頭の上を越えて、右中間の深いところでワンバウンド。回り込んだセンターからの送球が返ってくる間にバッターランナーの片倉(かたくら)は、楽々二塁へ到達。

 

『初球打ち、ノーアウト二塁! 片倉(かたくら)乗っています! 自ら同点のチャンスを作り出しましたーッ!』

 

「本当にストレート......! どうしてわかるの?」

「単純なことだ。ベンチで面白くなさそうな顔をしていたからな。片倉(かたくら)に完璧なピッチングをされて対抗心に火がついたのさ。だから、必ず初球にストレートを投げてくる。140キロなんて自分でも簡単に投げられるってな」

 

 東亜(トーア)の言った通り、阿畑(あばた)のストレートは140km/hを超す球速だった。しかし、狙ったコースよりも若干甘く入り、元々ストレートを狙っていたことで不規則に変化するアバタボールよりも遥かに打ちやすいボールになってしまった。差を見せるどころか、裏目にでてしまった一球になった。

 

「さて、次は点を奪うぞ」

 

 東亜(トーア)は、ネクストバッターの近衛(このえ)を呼びつけ指示を与えてバッターボックスへ送り出した。

 そしてベンチへ戻ると、不敵な笑みを浮かべながらグラウンドに目を戻した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。