7Game   作:ナナシの新人

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game60 ~葛藤~

 二回裏三点を追う、あかつきの攻撃。

 この回先頭バッター五番二宮(にのみや)が、鬼気迫る表情(かお)でバッターボックスへと向かう。

 

「(八番への初球、簡単に行っちまった。四条(よじょう)たちデータ班に警告されてたってのに。あの失点は、オレたちバッテリーのミスだ。借りは返させてもらう......!)」

 

 足場を慣らし、右バッターボックスで構え、球審のコールで試合再開。

 

「(気合いは入ってるけど、(リキ)みのない構えだ。ここは慎重にボールから入ろう。今日は、セーブする必要はないからね)」

「(ええ)」

 

 サイン交換が終わり、瑠菜(るな)は投球モーションに入った。初球は、アウトローのストレート。

 

「(――外。ここは、ボールだ。けど、オレにはストライクゾーンだぜ......!)」

 

 鋭いライナー性の打球が、一塁側の外野スタンドへ飛び込んだ。塁審は両手を広げる。

 

二宮(にのみや)、ボールゾーンのストレートを上手く逆方向へ押っ付けて打ちましたが、これは大きく切れてファール! ワンストライクです』

 

 すぐさま打席を外した二宮(にのみや)は、バックスクリーンを確認する。

 

「(120キロに届いてねぇーのか。球速の割に差し込まれた、タイミングが遅れた。少し始動を早めるか? いや、んなことしたら三本松(さんぼんまつ)の二の舞になる。ここはまず、きっちりタイミングを合わせることに神経を注ぐ......!)」

 

 どうも、と球審に礼を言って、バッターボックスへ戻る。

 恋恋バッテリーのサイン交換は一度で決まって、二球目。

 

「――チッ!」

「ストラーイクッ!」

 

 今度は、甘いコースだが初球よりも速いストレートで見逃しのストライクを奪った。恋恋バッテリーは、好打者二宮(にのみや)をたったの二球で追い込んだ。

 

「(ほぼ真ん中のストレート......やってくれる。まるでオレの考えを見透かしてるみてーだ。ああ......なるほど、そう言うことかよ)」

 

 今の一球でバッテリーの配球の意図を察した二宮(にのみや)は、三球目のきわどいコースのストレートを平然と見送った。球審の判定はボールで、カウント1-2。

 

「オッケー、ナイスボール! バッター、手が出なかったよ!」

 

 ボールを受け取った瑠菜(るな)は、鳴海(なるみ)からのサインで一度プレートを外し、指先でロジンバッグに触れて間を取った。

 

「(今の一球、簡単に見送られた。狙いを読まれたかな? 同じ攻めは通用しないか。まあ今のは、手を出してくれたら儲けものだったけど。さすが名門あかつきの正捕手、少し攻め方を変えていこう......)」

 

 考えを巡らせる鳴海(なるみ)二宮(にのみや)は、素振りをしつつさり気なくに目をやった。

 

「(甘いコースを見せて、『今のを打てばよかった』と思わせたところで、手元で沈む打ちごろの球速のボール球に手を出させる。良い性格してやがるな、コイツ)」

 

 瑠菜(るな)が戻り、合わせて二宮(にのみや)も打席へ戻る。

 

「(さて、どう出るよ?)」

 

 サインにうなづいて、第四球目。内角高めのストレート。

 

『ファール! これまたきわどいインコースのストレートでしたが、二宮(にのみや)、どうにかカットしました! 変わらず投手有利のカウント』

 

「(アウトローの球速を抑えたストレートから一転してインハイの速いストレート。それもストライクとも、ボールとも取れる絶妙なコースだった。この出所の見難いフォームと抜群の制球力と緩急を駆使して抑えてきたって訳か。こりゃリードする捕手はおもしれーわな。けどな――)」

 

 五球目をファール、六球目のボール球を見極め、カウント2-2の平行カウント。

 

『さあバッテリーのサインが決まりました。十六夜(いざよい)瑠菜(るな)、プレートを踏んで足を上げます! 平行カウントから第七球目を――投げた!』

 

 今までの明らかに違う軌道で高めに来た。

 

「(ほら来た! そう何球も続けて完璧にコントロールなんて出来る訳がねぇ!)」

 

 外角やや高く甘いコースへ半速球のボールが浮いた。この甘いボールを逃さまいと迷わず狙いにいく。だがしかし、バットから快音を響かず、空を切った。

 

「ストライク! バッターアウトッ!」

 

『空振りーッ! 先頭バッター二宮(にのみや)を、空振り三振に打ち取りましたー!』

 

「ふぅ......」

 

 空振り三振に打ち取られた二宮(にのみや)は、バッターボックスでひとつ息を吐いてベンチへ戻る。帰り際、ネクストバッターの猪狩(いかり)と、すれ違いざまに言葉を交わす。

 

「変化球、縦のカーブだ。データじゃ前半はほとんど変化球を使わないって話しだったけど、今日は、普通に使って来るみてーだぞ。頭に入れとけ」

「フッ、仕留め損ねた言い訳かい?」

「うっせーよ」

「しかしキミが、空振りを奪われるほどのボールなのか?」

「とにかくタイミングが取り難い。腕を振り終わってから急にボールが飛び出てくる感じだ。実際に立って見りゃわかる」

「そうか」

 

 それだけ言うと猪狩(いかり)は、バッターボックスへ向かった。

 

「最後のは、変化球か?」

 

 ベンチへ戻ってきた二宮(にのみや)千石(せんごく)は、さっそく問いかけた。

 

「はい。それから八嶋(やしま)が言っていたチェンジアップですが、変化球と言うよりストレートに緩急を付けて投げ分けているように感じました」

「そうか、わかった」

 

 グラウンドへ顔を戻した千石(せんごく)は、マウンドの瑠菜(るな)へ目を向ける。

 

「(あの投手は、渡久地(とくち)東亜(トーア)の投球スタイルを模していると見て間違いないだろう。だが、完璧ではない。悪魔の様な洞察力で打者心理を読み切り、相手の思考を操ることが出来て初めて成立する異色の投球スタイル。あの出所の見難い良いフォームと縦と横の変化球で足りない部分を補っている。攻略の糸口は、そこにあるに違いない)」

 

猪狩(いかり)(まもる)、インコースを初球打ち! センター方向やや右寄りの上空へ高々と舞い上がったー! しかし、これはバットの根元もうひと伸びがありません。センター矢部(やべ)、落下点に入って余裕を持ってキャッチ。これで、ツーアウト!』

 

 恋恋バッテリーは強打者でもある猪狩(いかり)を、インコースのシュートで詰まらせて一球で打ち取った。しかし、ネクストバッター七番九十九(つくも)には、外角のストレートを綺麗にライトへ弾き返され、さらに慣れない外野の守備にあおいがもたついている間に、スコアリングポジションまで進塁を許してしまう。それでも次の八番五十嵐(いがらし)を持ち前の制球力と緩急で揺さぶり三つ目のアウトを奪って、このピンチを無失点で切り抜けた。

 試合は二回が終わって、恋恋高校が三点をリードした状況で三回の攻防へと移る。

 

九十九(アイツ)、妙に上手く打ったな」

「はい。あの七番一人だけが、瑠菜(るな)ちゃんのフォームに惑わされずタイミングを合わせて来ました」

「何かあるな。次の回からは、そいつを念頭に置いて攻めろ。甘く見れば高い代償を支払うことになる」

「――はい!」

「さてと」

 

 鳴海(なるみ)と話していた東亜(トーア)は、グラウンドへ目を戻した。

 上位打線の二番から始まる恋恋高校攻撃、先頭バッターの芽衣香(めいか)は、外角低めいっぱいのストレートに手が出ず見逃しの三振。三番の奥居(おくい)は、追い込まれてから鋭く落ちるフォークに食らいつくも内野ゴロに打ち取られ、そして四番、甲斐(かい)も――。

 

『空振り三振! インコース膝下へ鋭く曲がるスライダーにバットが回りましたーッ! 猪狩(いかり)、二つの三振を奪い上位打線を三者凡退で退けましたー! ンンーン、ようやくエンジンが暖まってきたようですッ!』

 

「対策に専念してきた三人を三者凡退......! 完全に立ち直ったみたいね、猪狩(いかり)くん」

()()()は、な。クックック......」

 

 本来の実力発揮し始めた猪狩(いかり)を難しい顔で見つめる理香(りか)とは真逆に、不敵に笑って見せる東亜(トーア)は、さり気なく横目であかつきのベンチへ目をやった。

 あかつきのベンチへ前では、瑠菜(るな)がイニング間のピッチング練習を行っている最中千石(せんごく)が、前回と同様にナインたちを自身の前へ呼び集めた。

 

九十九(つくも)、どうやってタイミングを合わせた?」

「はい。その説明する前に、まず――」

 

 九十九(つくも)は、ナインたちに訊ねる。

 

「自分ら、ピッチャーのどこ見とる?」

「どこって、やはりリリースポイントではないのか? 普通は」

「そうか? おいらは、あんまり意識してないぞ。来たボールを打つだけだし」

 

 四条(よじょう)の見解に八嶋(やしま)は、自分の意見を述べる。他にもそれぞれの意見が出たが、その大半がリリースポイント付近を注視していることが分かった。

 

「オレは、胸や」

「ボケている場合か、真面目にやれ」

「そうだそうだ、セクハラだぞー」

「最低です。問題を起こす前に退部してください」

「アホぅ、そう言う意味とちゃうわ! マネージャーもキッツいなぁ!」

 

 ツッコミを入れて、真面目なトーンで話しを戻す。

 

「オレが剣道もやっとるってことは、みんなも知っとるやろ?」

 

 ――ああ、とナインたちはうなづく。

 

「剣道の試合では、竹刀の切っ先に集中しとっても避けられへん。ものごっつ速いスピードで打ち込んでくるから目じゃ追い切れん、それやと遅いんや」

「で? それが野球とどんな関係があると言うんだ」

「せっかちやな~、それを今から話すところや。相手の身体の動きから予測して瞬時に反応するんや。肩や肘、手首、重心移動とかいろんなところからな」

 

 九十九(つくも)は一度、マウンド上の瑠菜(るな)に目をやった。

 

「自分らの話しぃで出所が見難いことは分かっとった。せやからオレは、速く動くリリースポイントでタイミングを測るのを止めて、別の場所から情報を得ることにした。遠くを見るように全身を見とったらリリースポイントよりも見やすく、目測しやすい場所が浮かび上がった、そこがオレに取って、あのピッチャーの左胸......恋恋高校の“R”のロゴマークが見えた瞬間やった。ピッチャーなら分かるんとちゃうか?」

「ああ。ボクたちピッチャーは、常に理想のフォームで投げることを追求している。どこか一カ所でもほんの僅かな狂いが生じれば、思ったピッチングは出来なくなる。体重移動、歩幅、体幹のブレ、リリースの瞬間は必ず一定の動きだ」

 

 オーバースロー、スリークウォーター、サイドスロー、アンダースローと様々な投げ方があるが、同じ系統のフォームでも最初からセットポジション、ワインドアップ、二段モーションと投手によって違いはある。しかし、どんなに特徴のあるフォームだろうと必ず定まる場所が何カ所か存在する。そこが定まっていなければ、球威のあるボールを狙い通りコントロールすることは出来ない。逆に言えば、その場所は打者がタイミングを合わせることの出来る場所でもある。

 

「なるほど、理に適っているな。だが、全員が全員九十九(つくも)と同じ感覚で打てるとは限らない。左右での見え方の違いもある。各々、自分に合ったポイントを見極めて対処するように。いいな!」

「――はい!」

 

 返事と同時に、イニング間の投球練習と守備練習が終わりを告げるアナウンスが流れた。千石(せんごく)は、名前がコールされて打席へ向かおうとしていた六本木(ろっぽんぎ)を呼び止める。

 

「思うような結果が出ない場合は、バスターを試してみるんだ」

「バスターですか?」

「そうだ。原点に戻り、予備動作を少なくコンパクトにスイングすることを心がけるんだ。相手への揺さぶりにもなる」

「はい、分かりました」

 

 六本木(ろっぽんぎ)を送り出した千石(せんごく)は、定位置の監督席に戻って腕を組んだ。

 

「(結局、千葉マリナーズが渡久地(とくち)東亜(トーア)を攻略した策しか授けられないとは......。しかし、この(バスター)も短期的な効果しか得られないだろう。だが、手段を選んでいられる状況ではない。我々は今、三点を追う立場であり。そして相手は、あの伝説の勝負師が率いるチームなのだから――)」

 

 三回裏、あかつきの攻撃が始まる。

 打席に入った六本木(ろっぽんぎ)はまず、自分のタイミングで瑠菜(るな)に対峙した。初球を中途半端なスイングで、ワンストライク。

 

「(本当にタイミングが合わせ難い。端から見ていると何の変哲もない遅いストレートなのに......。今まで幾つもの強豪・名門校と対戦してきたけど、この手の投手は初めて対戦するタイプの投手だ。よし、次は九十九(つくも)の方法を試してみよう)」

 

 九十九(つくも)と同じ右バッターの六本木(ろっぽんぎ)は、瑠菜(るな)の左胸のロゴが見えたところで足を上げてタイミングを測る。そして、確かめるようにストライクゾーンを通過したボールを見送った。

 

『決まった、ツーストライク! 六本木(ろっぽんぎ)、二球で追い込まれてしまいました。さあバッテリー、一球遊んで様子を見るか? それとも三球勝負に出るのでしょーか?』

 

「(なんだ今の、タイミングの取り方が少し違ったような......?)」

 

 理想的に追い込んだが、ただならぬ空気を感じとった鳴海(なるみ)は、簡単に勝負には行かず慎重な組み立てに切り替える。

 

「(――カーブ!)」

「ボール!」

 

『ここは変化球で誘いましたが、六本木(ろっぽんぎ)はバットを出しません!』

 

「(うん、さっきよりも見やすくなった。僕には、九十九(つくも)のやり方が合っているのかも知れない)」

 

 一旦打席を外し、ヘルメットをかぶり直して、改めて構える。カウント1-2からの四球目、バックネットへのファール。五球目、アウトコースから逃げるシュート。六本木(ろっぽんぎ)は、これを見極める。六球目は、一球前と同じコースのストレート。

 

『ファール! あかつきが全国に誇る守備の名手六本木(ろっぽんぎ)、球際の粘りと同様にこの打席でも粘りをみせますッ!』

 

「(タイミングは合って来たけど、捉えきれない。そうだ......)」

「(手元で動く瑠菜(るな)ちゃんのボールを、こんな簡単に見極めて当ててくるだなんて。やっぱり何かを掴まれているんだ。長引けば不利、ここはコレで決めよう)」

 

 ――ええ、と力強くうなづいた瑠菜(るな)の足が上がる。

 ここで六本木(ろっぽんぎ)は、バントの構えを取った。

 

「(セーフティバント!?)」

 

 ツーストライクからのまさかの行動にワンテンポ遅れて、葛城(かつらぎ)甲斐(かい)がチャージをかける。その直後、寝かせたバットを引いた。

 

「バスター!? ファースト、サード、ストップ!」

「げっ!」

「くっ......!」

 

 突っこんで来た二人は急ブレーキをかける。投球は、左対右の対角線上低めギリギリのストライクゾーンをかすめて抉るクロスファイア。食い込んで来るストレートに窮屈なバッティングを強いられるも、六本木(ろっぽんぎ)はコンパクトに引っ叩いた。打球は、前進してきたサード葛城(かつらぎ)の横を抜けて、ショート奥居(おくい)のグラブの中に収まった。

 

『ショートへのハーフライナー! 上手く捉えましたが、ここはショート奥居(おくい)の守備範囲内でした。ワンナウトー!』

 

 惜しくもアウトに倒れた六本木(ろっぽんぎ)は、ネクストバッターの八嶋(やしま)に耳打ちをしてベンチへ戻る。その行動を見て、東亜(トーア)が笑う。

 

「クックック......」

「どうしたの? 急に笑い出して......」

「さてね」

 

『さあ打順は一番に戻って、あかつきのスピードスター八嶋(やしま)が――アアーット!』

 

 左打席に立った八嶋(やしま)は、最初からバットを寝かせバントの構え。

 

「(今度は、最初からか。これは、千葉マリナーズが渡久地(とくち)コーチを攻略するのに取った戦法と同じだ。だけど、怖れることはない。この戦法を取るってことは、瑠菜(るな)ちゃんをまともには打てないって認めているようなモノなんだ)」

 

 鳴海(なるみ)はバントの構えに惑わされず、ヒッティング警戒のブロックサインを内野守備陣に送って腰を下ろす。

 

「(惑わされないでね)」

「(わかっているわ)」

 

『さあ注目の第一球――八嶋(やしま)、バットを引いた! ボール! バッテリーもここは警戒していました。ワンボール』

 

 難しい顔をして首をひねる八嶋(やしま)。その様子を鳴海(なるみ)は、少し不思議そうに見つめる。

 

「(なんだろう? もしかして、右と左じゃ勝手が違うのかな?)」

「(うーん、感覚で打つおいらには、やっぱりよくわかんないなー。考えるの苦手だし、いつも通り行こっと!)」

 

 普段の表情(かお)に戻った八嶋(やしま)だが、鳴海(なるみ)の方は逆に疑念を深めた。サインを出して、外角へミットを構える。八嶋(やしま)は、初球と同じくバントの構え。

 二球目、投球モーションに入ると同時にバットを引いた。バスターに備えて、ファーストとサードはその場に留まる。が、しかし――。

 

八嶋(やしま)、引いたバットを再び寝かせ、セーフティバント! バスターに備えていた内野陣の裏をかいた!』

 

 素早くマウンドを降りた瑠菜(るな)が打球を処理するも、持ち前の快足を飛ばして既に一塁を駆け抜けた。二打席連続の内野安打。ワンナウトから足の速い嫌なランナーを出してしまった。

 

「はっはっは、簡単にやられやがったなー」

 

 ベンチの中で、とても愉快気に笑う東亜(トーア)理香(りか)が、やんわりと咎める。

 

「もう、こうなること分かってたんでしょ? 指示してあげればよかったのに」

「あん? ちゃんと忠告してやったじゃねーか、甘く見るなって。一番に足があるのは分かってるんだ、頭に入れておいて当然だろ。バスターだと決めつけて動いた鳴海(アイツ)が甘いんだよ。さーて、どうするよ?」

「ハァ......まったく」

 

 まったく緊張感も焦りもない東亜(トーア)とは対照的に、あかつきの千石(せんごく)は何としてもこのチャンスをものにしようと知恵を絞っていた。

 

「(最低でも一点......いや、二点は欲しい。とすれば――)」

 

 ネクストバッターズサークルへ向かう三番七井(なない)と、ベンチで次の打席の準備を進める四番三本松(さんぼんまつ)に目を向ける。

 

「(七井(なない)を敬遠された後、三本松(さんぼんまつ)がゲッツーを打たされた。あれで主導権を持っていかれた。ここは、その流れを引き戻す絶好のチャンス。だが......)」

 

 千石(せんごく)は、頭を悩ませていた。

 次がクリーンナップのため、ここはランナーを確実にスコアリングポジションへ送る場面。欲を出して強行策に出て併殺打となれば最悪。しかし、得点圏へランナー送ると再び七井(なない)を敬遠されてしまう恐れがある。同時に送らなければ、三本松(さんぼんまつ)に「自分は、信頼されていない」と言う不信感を持たれかねないと言うジレンマを抱えていた。

 

「(......何を迷っている? 三本松(さんぼんまつ)を四番に据えたのは他でも誰でもない、この私ではないか......!)」

 

 腹を括った千石(せんごく)は、四条(よじょう)にサインを送った――。

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