マクギリス率いる革命軍との戦いの前夜、アリアンロッド艦隊総司令、ラスタル・エリオンはある指示を、部下へ出していた。
―――ダインスレイヴ。
厄祭戦後期に開発され、ナノラミネート・アーマーを容易に貫く威力とその精度、そして技術さえあれば短期間でモビルスーツ部隊に配備が可能なほどの生産性などにより、ギャラルホルンにより禁止兵器として認定された旧世代の遺物。
先日、イオク・クジャンが独断で使用したその兵器であるが、想像以上の成果にラスタルは革命軍との戦いにこの兵器を採用する事を決めたのだ。
無論、秩序を重んじるギャラルホルンが自ら禁止兵器と認定するダインスレイヴを使用するべきでは無いだろう。
しかしあの男、マクギリス・ファリドがギャラルホルンを支配する事となれば、後の世界では想像を絶する損害が出る。世界の秩序を守るためならばどのような手段を使ってでもそれを防ぐ事が正義に繋がる。ラスタル・エリオンにとって秩序こそが最も重要であり、手段とは結果を捨ておいてまで重視する物ではないのだ。
無論、勝てば官軍といえど、建前は必要である。そのためにラスタルは革命軍へ己のスパイを送り込んだ。
奴らに忍び込んだスパイがダインスレイヴを撃ち、アリアンロッド艦隊は禁忌を以ってその報復を行う。
戦いの手筈を整えたラスタルはジュリエッタに作戦の最後の布石として、一つの命を出した。
「ジュリエッタ、バルバトスを止めろ。それで本作戦は盤石となる―――」
「准将、お伝えしたい事が」
「どうした?何があった、石動」
石動の伝えた情報に、マクギリスは僅かばかり眉をしかめた。
革命軍のモビルスーツ隊の中にダインスレイヴを搭載したグレイズが紛れ込んでいた事が発覚したそうだ。
まあ、当然そんな目立つ物を運び込んでおいてバレないはずが無いので石動の元に伝えられたのだが……
「なるほど、ラスタル・エリオンの送り込んだスパイか……」
マクギリスは、ラスタルの意図に察しがついた。スパイにあの兵器を持たせて潜り込ませたという事は戦いの最中にダインスレイヴを撃たせ、こちらに禁止兵器を撃たせた罪を被せるつもりなのだと。
―――だが、奴がその程度の相手ならばここまで手こずる事は無かっただろう。
おそらく奴が行おうとしている事はこちらに先制攻撃を行わしてからの、ダインスレイヴによる報復攻撃。
「そのスパイはまだ泳がせておけ、戦闘の際には拘束しろ。抵抗すれば射殺して構わん、どうせ口は割るまい」
「承知しました、ではそのように―――」
「それとだ、石動」
「ダインスレイヴ隊の配備を行え。配備を行うのはお前の部隊を始め、信頼出来ると考える部隊だけにな」
「!……はっ仰せのままに、准将」
―――ラスタル・エリオン。お前が私に禁忌の兵器を撃たせたいならば、使って見せようじゃないか。お互いに同じ力を扱うならば、勝敗を決するのはお互いの純粋な実力のみだ。
部屋を後にする石動を後目に、マクギリスはそっと笑みを浮かべるのだった。
「それでも……私は、散って行った部下達の為に……やらなければならないのだ!」
イオク・クジャンは敬愛するラスタルからの忠告を受けつつも、葛藤していた。
己の部下の仇撃ちの為に行ったタービンズの掃討作戦。敵の悪あがきにより、あの作戦に参加した部隊に多くの犠牲が出た。
今の自分は、悔しいがどうしようもなく未熟だ。ラスタル様の指示を見て、逆賊マクギリス・ファリドを撃つのを見る一番いいのだろう。
―――しかし、相手はあのマクギリス・ファリド。ラスタル様にどのような悪辣な手段を用いて来るか分かった物では無い。
いや、分かっている。ラスタル様ならば必ずやマクギリスを打ち取るであろう、しかし奴らの手で散って行った仲間の為、怨敵マクギリスにこれ以上部下達を殺させないために、私はもう一度だけ部下に指示を出すのだ。
「お前達。ラスタル様に伝えなくていい、ダインスレイヴをもう一度配備するのだ!」
「イオク様!?しかし、エリオン公に……」
「言うなッ!」
部下の手を払い、イオクは叫んだ
「奴らにラスタル様が敗北するはずが無い事は、私も承知だ!」
「しかし……これ以上、お前達が奴の手で散って行くのはどうしても認める事が出来ないのだ……」
「私は、この戦いの後にどのような罰を受ける事になっても構わない……!この戦いでこれ以上の犠牲者を出さない為ならば……!」
涙を流すイオクに部下は整列し、敬礼を行った
「いえ、罪を償うならばあなたに従う私達も共にです。私達の手でこの戦いに終止符を撃ちましょう!」
「お前達……頼んだぞ!」
ラスタル・エリオンがイオクを呼び出して数時間後の話である
「調子はどうだ?ミカ」
「問題無いよ、オルガ」
強襲武装艦・イサリビ。アリアンロッド艦隊との最終決戦の為にマクギリスの支援物資で改修されたバルバトスの姿を見て、オルガは微笑んだ。
「これが新しいバルバトスか」
「うん。バルバトスルプスレクスダインスレイヴだって」
当然ながら、その両手にはダインスレイヴが装備されていた。
この後両陣営めちゃくちゃ開幕ダインスレイヴした。