Final Fantasy XV 〈Salvation〉 作:日鏡 夜幻
燃え盛る炎はどこか既視感があって。ただ全てを焼き尽くす訳ではなく、憎しみや悲しみが強く篭った炎がハンマーヘッドの町を覆い尽くしていた。
「んだよ……!誰かいないのか!?」
ノクティスはシド達の経営する店へと向かうが、給油スタンドが近くにある場所だ、炎の燃え上がりもかなり激しく近づくことさえままならない。
たいして大きい町ではないハンマーヘッドだが、炎の勢いは納まるところを知らない。
ハンマーヘッドへ向かって歩き続けていたが、まさか明かりの元が炎だったとは。遠くからではボンヤリとしか見えなかったが、ある程度近づくと異変に気付いたノクティス。
そして彼はその元凶と出くわすことになった。
「ガ………ゴグァァァアアアアッ!!!!!!!」
「ぐっ…うっせぇ……!!!」
響き渡る轟音は炎の中心にいるモンスターのもの。燃え盛る炎に包まれていようと、その強固な皮膚には何のダメージも負っている気配がない。
炎に照らされるその姿はまるで命を喰らう邪竜。黒い鱗、鈍く光るその体表は強力な炎耐性を持ち、燃え盛る炎をかき分けて街を破壊していく。その行動から目的や意図を読み取ることはできない。ただただ目の前のものを破壊するだけの衝動に駆られているようだ。
その邪竜の名は『ジャバウォック』。
かつてノクティス達と死闘を繰り広げた、コールマークスタワー最深部に生息していた凶悪なモンスター。
姿形はバンダースナッチと酷似しているが、大きさはその比ではなく凶暴さも桁違い。その上、一時的に身体の動きを阻害する石化ガスを放つなどモンスターの中でも超危険級に属し、並大抵のハンターでは一太刀も浴びせることができずに死に至ってしまう。
「………っ!?」
「グ、ガァアァァァッ!!!ガァアァァァ!!!!」
炎越しに目が合った、そう思った瞬間にはジャバウォックはノクティスへ向かって襲いかかっていた。
破壊された建物の残骸などの障害を気にすることなく、ただ一直線にノクティスへと駆けていく。
(さすがに一発くらったら死んじまう!!)
即座にシフトブレイクで距離を取ってジャバウォックの死角に移動する。魔力残量を気にしている場合ではない、今はここから脱出することが先……
「ゴァ……アグウゥゥゥッ……!!」
すぐにノクティスを捜すため動き回ると予測していたのだが、どうやらジャバウォックの様子が変だ。
まるで何かにもがき苦しんでいるかのよう。
「あれは……!!」
ノクティスが目をつけたのはジャバウォックの口から溢れ出す黒い吐息。このモンスター特有の技でも繰り出すための準備かと思いきや、これは先ほど戦ったトウテツ達が出していたものと同じ。シガイが死ぬ際や現れる際に出す黒い霧だ。
……まさかこいつもあのトウテツみたいに凶暴化を?
トウテツ達も同じように黒い霧を吐いていて、普通よりも凶暴でレベルも高かった。たしかにこのジャバウォックは以前ノクティス達がコールマークスタワーで闘った個体よりも強烈な魔力を放っている。おそらく同じような現象が起きているのだろう。
「ってことはこの剣が使えるっていうことだな……!」
先ほどのトウテツは女神にもらった剣で攻撃すれば物理的ダメージは少なかったが、意識を奪うことは可能だった。
このジャバウォックも同じはず……!
未だにノクティスの姿は発見されていないので、気を逸らさせるためにもエレメント魔法を発動する。
今のノクティスにとって敵へダメージを与える方法はエレメント魔法による攻撃か、リスクを背負った女神の剣による直接剣撃のどちらかしかない。エレメント魔法に必要なエレメントも有限のため、そう易々と使い続けるわけにもいかない。
それでも、陽動の為に魔法を使わざるを得ない、そう思わせるほどに敵の放つオーラが禍々しかった。