Final Fantasy XV 〈Salvation〉   作:日鏡 夜幻

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 虚無を漂うだけのノクティスに光が差し込む。

 

 それは暖かくて眩い、この世を全て照らす神の光。

 

 崇高なるその光を浴びたノクティスは体が何かによって満たされていくのを感じていた。これは……何だか懐かしいような……でも違和感もなにもない……

 

 

「……あんた……は……?」

 

 

 現れた光の中に、輝かしい存在が玉座に鎮座していた。その姿は筆舌に尽し難く、まるで神話に登場するかのような女神……

 

 

「我は女神エクレール。この世界の秩序と安寧を守る存在だ。ノクティス・ルシス・チェラム、真の王よ」

 

「女神……エクレール」

 

 聞いたこともない名前だ。ただ、六神でもない神……そしてこうして死後に現れるような神が、こんなにも美しいとは。

 

 ノクティスは目の前の女神の姿にただただ呆然とするしかなかった。

 

「この度の王の務め、見事完遂したことを褒めてつかわす。そして……済まなかった。望まぬ運命を背負わせてしまったことを」

 

 女神エクレールはその美しいブルーの瞳を下へと一瞬向ける。神は神でも全く話を聞こうともしなかった水神リヴァイアサンや巨神タイタンとは違って、非常に憂い深い神なのだろう。

 

「なに、時間なら多くある。少し昔話でもしようじゃないか」

 

 女神の前に玉座がもう一つ現れる。それは王都インソムニアの王都城にある玉座と酷似した代物だった。

 

「腰掛けよ真の王。そして私と話をしよう」

 

「……」

 

 浮遊感のなくなった中、ノクティスは虚空を歩いて玉座へと腰掛ける。心なしか、死の直前に座ったあの玉座の感触が思い起こされた。

 

 ……なんだか今、右手の方に温もりが……?

 

「この世界の創生について聞いたことはあるか?」

 

「世界の創生……いや、詳しいことはあまり」

 

 旅の途中で創星記なるものを見つけ、目にしたことはあったが、その表現も曖昧なものが多く、世界の創生の根本的な部分などは知らない。

 

「ではそこから語るとしようか。

 

 

 ……ノクティス・ルシス・チェラム、私はお前の遠い祖先にあたる存在だ」

 

「はぁ!? ……」

 

 思わず言葉遣いが荒くなってしまう。当たり前だろう。女神と名乗る存在が、自身の祖先などとカミングアウトされたのだ。にわかにも信じがたい。

 

「そうなるのは無理もない。だが真実だ。お前達王族だけが使えるもの、それは何だか分かるか?」

 

 女神は薔薇色のその神を揺らし、ノクティスに問いかける。

 

 王族のみが使えるもの。そんなものはあれしか存在しないだろう。

 

「魔法……か」

 

「その通りだ。本来その『魔法』なるものは、神に選ばれし者しか使えんのだ」

 

 かつて神の奴隷として選ばれた者達が、その使命を遂行するために与えられた力……それが魔法。

 

「私はこの世界で魔法を使えた数少ない一人だった。創生の時代はこの世界も魔獣で溢れていてな、それらを駆逐し平穏な国を作るのにはこの力を使うしかなかった」

 

 つまり彼女も神によって使命を与えられた存在だったのだろう。神ですら、何かに縛られた存在……そう聞いて、ノクティスは目の前の女神を少し哀れに思ってしまった。

 

「フッ……そう哀れな人生でもなかったさ。私は愛する人達を取り戻し、人々を救うことができたのだからな。だからこうして、その救うことができた人々を守るために女神として存在しているのだ」

 

 満足気に軽く笑みを浮かべた女神エクレール。だがすぐにその目は悲しげなものへと変わる。

 

「だが、我々は小さなミスを犯してしまった。これはおそらくだが異界の者達……我らが世界とは異なった軸の者達の仕業と思われるのだが、悪しき混沌『シガイ』を発生させる星の病が徐々にこの世界に広がってしまったのだ」

 

 といっても私は既に死んでいたから、直接手を下すことはできなかったが。とエクレールは付け加える。

 

「その星の病……今は『プラスモディウム変異体』と呼ばれているようだが、それらを完全に消し去るには私から受け継いだ力を使ってもらうほかなかった」

 

「だからあんたの子孫である俺達が選ばれたと……でもどうして俺だったんだ?」

 

 真の王になったノクティスは114代目ルシス王であり、そこに至るまでにもっと相応しい人物がいた可能性も高い。

 

 王として優れていたとされる親父でさえ、真の王として選ばれることはなかった。

 

「六神から与えられたとされるクリスタルと光耀の指輪、あれらは我ら神話時代のルシ達(ルシス)の想いが結晶化し、具現化したもの。クリスタルは私の、光耀の指輪は私の妹の想いだ」

 

「女神の想いの具現化……」

 

「しかし原初のクリスタルはただの魔力結晶でしかなかった。私達、ルシスの魔力と想いを全て注ぎ込んだ結晶体があのクリスタルの正体だ。私の子孫であるルシス王家はその力を扱える唯一の血族。そのルシス王家が幾年もの時を重ね、星の救済のための想いを注ぎ込むことでやっとシガイ達を打ち倒す力を秘めることができた」

 

 ルシス王家の役目はクリスタルに力を蓄えることで、魔法障壁や魔法の使用やその他の効力はその代償だったのだろう。寿命が短くなるのはそれらの副作用。

 

「また、レギス・ルシス・チェラムの貢献も大きい。彼の献身的かつ、類い稀な才能によるクリスタルの扱いのおかげで想いが溜まるのが一世代早まった」

 

 君にとっては皮肉なことにな……と女神は付け加える。一世代遅かったならば、俺はこんな使命を負わなくても良かっただろう。

 

「……この運命が次の世代に持ち越さなくて良かったと思っている。あんなことは早く終わらせるべきだった」

 

「そうか……いずれにせよ君は運命に従うと」

 

「ああ。犠牲は多かったが、それでも何とか終わらせることができたんだからな」

 

 アーデンを消し去り、世界に朝を取り戻した。結果論ではあるが自分が選ばれて成功したんだ。やり直しのきかない世界だからこそ、運命に従うのは当たり前だったともいえる。

 

「私や妹、仲間の想いが込められた力を使い、君は世界を救った。お陰で世界には光が戻り、かつてのイオスへと戻りつつある」

 

 

 フッ……と、暗闇が晴れ、周囲が青に包まれる。

 

 これは……空か?

 

「下を見てみろ。王都インソムニアがあるだろう」

 

「……っ、王都……」

 

 ビルが建ち並び、コンクリートが多くひしめきあうこの街は間違いなくノクティスが生まれ育った王都インソムニアだった。

 

 ニフルハイム帝国との戦争の爪痕は未だ残っているが、その修繕の為に人々が重機を使って働いているのが見受けられる。王都城の正面にある広場は、イフリートとの闘いでかなり損傷しており、そこは未だ手付かずのようだ。

 

「王都インソムニアはクリスタルの恩恵で再び魔法障壁によって守られている」

 

「クリスタルはルシス王の力を介さないと魔法障壁を作れないんじゃないのか」

 

「本来はな。ただ、真の王による世界救済の際、その想いがクリスタルに宿った。それは『王都インソムニア』を如何なるときも守りぬく」

 

 ノクティスが心に持っていた、世界を救い、人々を守るという想いはクリスタルに還元され、その力を発揮し彼の大切な人々を守り続けているのだろう。

 

「あれは……グラディオか?なんであんな所に」

 

 王都城の玉座がある部屋に、見覚えのある姿を見て、ノクティスはそちらへと意識を向ける。すると周囲の景色がその部屋へと吸い込まれていき、近づいていく。

 

「声は聞こえないぞ。今の私には世界の姿を視ることしかできないからな」

 

「いや、これで十分だ」

 

 よく見ればグラディオの近くにはイグニスがいて、彼も同様にグラディオと同じ方を向いている。

 

「そろそろ次の場所へ移らせてもらう。なに、また『いつでも』見れるさ」

 

 

 

 そして景色がまた移り変わった。

 

 

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