Final Fantasy XV 〈Salvation〉 作:日鏡 夜幻
ーー
「さて彼は行ったか」
ノクティスが光になって消えたのを確認したエクレールの隣に、とある男が現れる。彼もかつて運命に翻弄されつつも、それを打ち破ろうと足掻いた者。そして一人の少女の魂の救済をもぎ取った英雄でもある。
女神の横に立つ彼からは以前の様な棘々しさは感じられない。おそらく巫女のお陰であろう。
「可視世界に干渉できないからといって、彼を使うというのは些か問題があるのでは?」
「……どうだろうな。だが、彼を救うには使命を与えるしかない。私には代償無しの救済を与える様な、女神の『奇跡』は起こすことはできない」
それを聞いた男は、たしかに、と呟くと背負っていた大剣を目の前に突き刺す。
「良いのか?それは大事なーーーー」
女神をも斬り伏せたその大剣は、彼が幾年もの時を過ぎても使い続けた分身ともいえる代物。
「大したものではない。我々にはもう『剣』は必要ないだろう?」
彼らの闘いはとっくに終わっている。過去となった自分達は、こうやって視ていることだけで充分だ。
「ーーーそうだな。次の世代に任せよう」
大剣は姿を消し、可視世界へと落ちていった。
ーー
時を同じくして。
『王に使命が与えられた……目覚めなさい、神凪よ』
光が、聖女を包み込む。
その姿は命を落とした時のまま、時間が止まったのかのように何も変わっていない。ーー永い、永い眠りについていたようだ。ただ、一つだけ……彼の感触が先程まであったような。
「貴女様は……一体……」
『私に与えられた時間はそう多くありません。手短に言います。真の王が目覚めた。彼の元へと向かい、側で支えなさい』
すると先程まで覚えていた浮遊感が消え、落下していく感触を覚える。
「ノクティス様が……?でも私は死んで……」
『大丈夫よ、私の血を、お姉ちゃんの血を引いているんだから!』
頭に響く声と同時に、笑顔を見せる少女の姿が見えたような気がした。
ーー
……目が覚めるとそこは、とある道路の真ん中だった。車に轢かれなかったのは幸いだったと言えるだろう。いや、これも女神の加護みたいなものか?
「っと」
取り敢えず道路の脇に避けよう。さすがに車に轢かれたら死んでしまう。
「……俺、生き返ったんだな」
死んでしまう、と考えたところで、自分が生を得ていることを実感する。たしかに腕や体を触れると実態が存在する。ちゃんと足もついている。
ノクティスの姿はクリスタルから出てきた三十代の姿ではなく、だいたい二十前半の姿だった。
「……あっついな」
小さく呟いたノクティスは、道路を真っ直ぐに歩き始めた。
ーーーかつて親友達と愛車を押してあるいた、この道を。