Final Fantasy XV 〈Salvation〉 作:日鏡 夜幻
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「やっと標に……ついた……っ!」
ドッ……と、ノクティスが標の中の安全地帯に倒れこむ。全身は汗だらけ。大量のモンスターを蹴散らす際に使った魔法のせいで、焦げた臭いが服にも染み付いてしまっている。ソルジャーワスプが大軍で襲ってくるなんてマジでありえねー。
「だいたい、ソルジャーワスプってこの辺りに生息してないのになんで……」
記憶にあるのは、マルマレームの森やラバティオ登山道で出会ったこと。こんなだたっ広い開けた場所でこいつらが出てくるのは異常としか思えない。
ノクティスは脱いで収納していたローブを取り出すと、枕代わりにして標のど真ん中に寝そべる。キャンプ用具も何もないので、こうやって眠るしか術はないのだ。木を集めて焚き火をしても良いのだが、正直今は体の疲れを取ることを優先したい。
ここにやってくるまでにモンスターに襲われること四回。ソルジャーワスプなどの虫系モンスターや、デカいコカトリスの群れなど、この辺りで出ないような強敵が多く襲いかかってきた。
旅を通して強くなってなかったら、すぐにゲームオーバー、死んでただろーな。
「っといけね、魔法の錬成しとかねーと。近くにエレメントもあるし、多めに作っとくか」
女神の剣はモンスター相手に振るっても効果はない。使い道があるとすればシフトの為にぶん投げるくらい。マップシフトすることでかなり敵から逃げやすくなるから、役に立ってないことはないのだが。
道中、エレメントを見つけては細々と集めていたので、割と近い筈だったこの標に着くのに日が暮れてしまった。
……とりあえずラ系の魔法を多めに作っておくか。足止めにも使える。
「よし、こんなもんだな。これで明日、街に着くまではなんとか持つはず……っ、なんだこの音……」
静かな間の宵闇に不気味な音が鳴り響く。それはまるでシュワシュワと、何かが泡立つような音で。またノクティスの苦手な虫なのか、と思って寒気が少し彼を襲う。
いや、ここは標だ。モンスターはこの中には入ってこれない。
と思いつつも、虫に襲われるのはもうごめんなので、手元に先程精製した魔法を準備しておく。ちょっとでも顔を出しやがったら燃やし尽くしてやるよ。
身構えてゆっくり標の端の方へと近づいていく。
「………ニャオン……」
「んだよ猫か」
可愛らしい金色のトラ猫が顔を出した。その猫になんとなく親近感が湧いたノクティスは、手を差し出して猫を呼び寄せようとーーーー
「「「「ガルァァァァッ!!!!!」」」」
鮮血がノクティスの顔に舞い散った。
ーー
粉々に引き裂かれた猫の肉が、勢いで標の内側に飛び散る。一瞬だ。たったその瞬間にその猫は命を刈り取られてしまった。
ノクティスは生温かい液体が顔に付いているのを自覚しつつ、血だらけの塊の近くに膝をついた。
(……一瞬だったから、痛みも感じなかったはずだ)
少しの間黙祷を捧げる。ルシスの信仰にとって死は必ずしも悪いものではない。この小さな命は女神の加護によって天へと行けるはずだろう。
「許さねえ」
たっと一言呟いたノクティスの声は猛獣達に届く事はない。
しかしその猛獣達の獰猛な鳴き声を掻き消すかのごとく、標を取り囲む輪が爆発によって弾け飛んだ。
ファイラ。おそらく何体かは死んだはずだ。
猛獣の正体はトウテツの群れで、足音を忍ばせて標の近くに潜んでいたのだろう。ノクティスは周囲を見渡し、少し顔色を悪くする。猫の遺体を見たからではない、トウテツの群れの異様さに気が付いたからだ。
何匹かの死体がトウテツ達の足元に落ちている。
その正体は同じくトウテツである。つまり仲間内で殺し合っていたのだ。それだけがノクティスを驚かせたわけではない。
「なんだ……この黒い霧……まるでシガイじゃねーか」
トウテツ達の口元から溢れ出しているのは黒色の霧の様なもの。かつてノクティス達が死闘を繰り広げだシガイ達が消える時に出す様な黒い霧のようなものが、トウテツ達の口からも溢れているだ。
「関係ねーな。こいつらは全員殺っ……なっ!?」
「「「グルルル……ガァァアッ!!!」」」
背後から襲いかかってきた気配にギリギリの所で回避を行う。いや、少し掠ったか。
「標の中に入ってくるなんて聞いてねーぞ!」
サンダラを発動し、標の中に一時的に敵を足止めする。マップシフトで急いで近くの高台に避難を……
「「ガルァッ!!」」
こいつら……普通のトウテツより強い!
単純にスピードもパワーも平原などで出現するトウテツの比にならないくらいに高い。群れになってる今の状態なら鎧巨人ならすぐに圧倒できるくらいに強い。
岩場の高台の上に避難したが、速攻で駆け上がり追い討ちをかけてくる。くっ……魔力の消費量が激しすぎるな。
シフトブレイクを応用して脱出を試みるが、数が多過ぎて敵の包囲網を抜け切るには至らない。それにシフトブレイクじゃ魔力の消費のし過ぎで肝心なところでMPバースト(魔力切れ)を起こしかねない。
なんとかしねーと……!!
「セァッ!!」
女神の剣で襲いかかってきたトウテツの頭を叩き落とす。この剣じゃ可視世界のモノに干渉することはできないが、最初に使った時は触れた感触はあったんだ。ダメージは負わせることができなくても足止めくらいにはなるはず……
「ガルァァァァッ……ァァァァアアアアア………」
ブクブク……と泡が溢れるような音を立てて、はたき落されたトウテツの口元から黒い霧みたいなものがこぼれる。
……剣が効いてる……?
相変わらず物理的なダメージを負わせることはできていないが、トウテツが出していた怪しげな霧を消滅させる効果が出ていた。
……これならやれる。
トウテツが黒い霧を帯びていたのが功を奏した。むしろ普通のトウテツが群れで襲いかかってきていたら、女神の剣でダメージを負わせることができずに食い尽くされてしまっていただろう。
「ハァッ!!!」
ノクティスは渾身の力を振り絞り、トウテツに立ち向かっていくのだった。