Final Fantasy XV 〈Salvation〉   作:日鏡 夜幻

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 ーー

 王都インソムニア

 

 王都城の地下にはルシス国にとって脅威となるような敵や兵器を保管しておく地下牢が存在する。レギス・ルシス・チェラムが崩御した王都陥落の際に罪人達はそこから逃げ去ってしまっていたが、地下牢としての機能は充分に果たしていた。

 

 その中でもとりわけ頑丈な牢の中に、禍々しいオーラを放つ一体のモンスターが収監されていた。

 

 

『バンダースナッチ』

 

 

 ハンマーヘッドの北東部に生息する巨大かつ凶暴な恐竜みたいなモンスターだ。その強さはそこらのモンスターとは全く比較にならないくらいで、歴戦のハンターでもなかなか手を焼くレベル。

 

 このバンダースナッチはメルダシオ協会とルシス国が協力して捕獲したもので、現在は鎮静剤や麻酔によって強制的に眠らされている状態。

 

 それでも溢れ出しているオーラが禍々しいのには理由があった。

 

 

「こいつが先日捕らえたバンダースナッチ……確かにこれはおかしいな」

 

「はい。つい先日のことなので詳しい検査や調査はまだなのですが、通常の個体とは全く異なっていることは目に明らか。それにこの個体はハンマーヘッド北東部に生息するバンダースナッチの平均レベルを大きく上回る強さ……おそらくこの現象のせいかと」

 

 モニカの目線の先にはバンダースナッチの口元から溢れ出る黒い霧。

 

 その黒い霧は口から溢れ、外気に触れる徐々に消えていくが、バンダースナッチの中から出てくるのが止まるようには思えない。

 

「報告によるとこのバンダースナッチはマルマレームの森に生息する個体と同等、またはそれ以上の強さを誇っており、派遣したハンターや兵士達もかなりの痛手を負わされています」

 

 マルマレームの森に生息していたバンダースナッチはノクティス達が旅の途中に倒しており、その時の強さ以上というのをモニカから聞かされたグラディオラスは黙り込んでしまった。

 

 ハンマーヘッド付近にあのレベルのモンスター……かつて夜に発生していたシガイならともかく、モンスターでこれほどの強敵が出現するのはあの地域にとって危険すぎる。

 

「現在はメルダシオ協会の方から腕の優れたハンターを選出し、周辺のモンスターを調査中とのことです」

 

「分かった。俺はもう少しこいつの様子を確認する。モニカはもう戻ってくれ」

 

「はい。失礼致します」

 

 モニカが出て行った事を確認したグラディオラスはバンダースナッチを見下ろしながら、この黒い霧について考えを巡らせる。本来ならこういった考え事はいつもイグニスに任せているのだが、彼はアコルドのへと出かけているため相談することができない。一応、連絡はしてあるのだが未だに返信はないため、向こうでの用事が忙しいのだろう。

 

 だがグラディオラスでもこの霧の正体はなんとなく予想がつく。

 

 シガイを生み出す原因となっていた物質または生命体。

 

『プラスモディウム変異体』

 

 これに関する研究はニフルハイム帝国が最も進めていた。むしろそれを利用してシガイを生み出していた元凶がニフルハイム帝国なのだから、プラスモディウム変異体に一番詳しいのが帝国なのは当然の事。

 

 ルシス国はこの変異体については大した情報を持っていない。王都陥落以前にシガイ対策の研究は行っていたはずだが、それも王都陥落後にほとんど消失してしまった。

 

 それにノクティスが世界を救い、全てのシガイを消し去ってからはプラスモディウム変異体のことなど研究する必要などなかった。

 

「平和になった事が裏目に出た……ってところか」

 

 グラディオラスは険しい目つきで自身の義手に一度目をやり、バンダースナッチに背を向けるのだった。

 

 ーー

 

「ハァッ……ハァッ……!」

 

 バタリと、息切れとともに標の真ん中にノクティスは倒れこむ。顔や服には未だに猫の血がついているが、もう乾いてしまっている。それを拭う気力も湧かないくらいに疲労してしまっていた。

 

 敵に有効な武器があるとはいえ、ポーションやエリクサーも持っていないため少しでもダメージを負うことを避けなければならない。

 

 敵の攻撃を回避することに神経を使いつつ、剣で敵に一撃を入れて行く。連続で攻撃することは敵の追撃を許すことに繋がってしまうので、基本的には一撃離脱。敵の数も相まってかなりの時間をかけてしまった。

 

 気力、スタミナともに底をついてしまうほどには疲労が溜まっていた。

 

 

「ぐ……」

 

 早くこの場所を移動しなければ……ノクティスはそう思い立ち上がろうとするが体が言うことを聞かない。先程の襲撃で標が役に立たない事は実証済み。再び黒い霧を纏うモンスターが現れたら今度はやられてしまうかもしれない。

 

 とりあえずは街に……ハンマーヘッドまであと少しの筈なんだ。シガイが出る気配もないし、今は無理にでも行動を起こした方が良いんじゃないのか?

 

 ノクティスはそう考え、ゆっくりと体を起こして標の外へと出て行く。

 

「……大丈夫そうだな」

 

 道路にはモンスターがいる気配はない。ここを真っ直ぐ1時間ほど歩いていけばハンマーヘッドのはずだ。魔力の残量とリスクを考えて、シフトブレイクの応用でショートカットをする余裕はないか……

 

 心細いが電灯も一応ついてるし視界は悪くない。標の時みたいに完全な不意打ちをされる心配もない。集中力を保つのにも、もうそろそろ限界が見え始めている。

 

 この世界に戻って来たのがおそらく昼ごろ。そこから飲まず食わずで闘い続けてやっと夜。外的ダメージは少ないとはいえ、精神的にかなりの疲労が蓄積されてしまっている。

 

 モンスターが出てこないのなら、ここから先は空腹と喉の渇きとの勝負だ。

 

「……みんな今頃どうしてんだろな」

 

 意識すると腹が減るので、気をそらす意味も込めてかつて共に闘った親友たちのことを思い浮かべる。

 

 女神に見せてもらった場面では、グラディオは玉座の間で何か指示を出していたように見受けられた。もしかするとコルの代わりに将軍にでもなったんじゃねーのか。その後ろの方でイグニスも控えていたな……そういえば、あの時のイグニス、普通の眼鏡をかけていたような気がする。何か良い治療法でも見つかったのかもしれないな。

 

 

 ハンマーヘッドに着けばシドやシドニーもいる。そこで連絡を取らせてもらえばみんなにもすぐ会えるはず。

 

 

 そういった希望を密かに心に抱えながら、ノクティスは道路を歩き続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーしかし

 

 

 

 

 

 

 ーーーそこに広がっていたのは、

 

 

 

 

 

 

 ーーー紅蓮の炎で焼き尽くされるハンマーヘッドの姿だった。

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