無個性より苦労してます。   作:ソウルゲイン

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第34話

 雄英体育祭が終えてから2日後の事、その日は雨が降り注いでいた。体育祭の疲れを癒やす目的で2日間の休校を与えられ、生徒達はゆっくりと休息を取る。

 俺も体育祭決勝トーナメントで切り離してしまった右腕が上手く機能を果たして居なかったが、この2日間の休みを利用してリハビリを重ね何とか通常の動作を行えるまでに回復をさせることが出来た。

 そして2日過ぎた後、俺は学校に向かう為に傘を差し本を片手に通学をしていが・・・・・。

 

「おい。あいつ見てみろよ」

「あいつは確か・・・・」

「ああ。雄英体育祭で滅茶苦茶凄いことやってた奴だぜ!」

 

 道歩く人からヒソヒソと声が聞こえる。全国ネットで放送されていた雄英体育祭見ていたであろう一般市民達が俺の顔の見るやいなや小言を垂れている状態。顔を広く知られてしまったようだ。本来ならば俺にとってこの状態はあまり良くは無い事なのだけど、不思議とヴィランなどに付け狙われる事は無かった。

 どうやら雄英体育祭での俺の目的で合った"実力を見せ付けることによるヴィランへの牽制"が上手く行った用であり、この休みの2日間は特に何事も起きずに安全に過ごすことが出来た。

 中にはそんなことをお構いなしに付け狙って来る奴もいると思っていたけど、世に蔓延るヴィランの殆どは禄に覚悟も無いチンピラばかり。身を危険に晒してまで向かってくるような奴は居なかった用だ。

 そんな訳で俺はごく至って平常で平和で静かに通学が出来てい・・・・・・。

 

「造理さ~んっ!」

「? ・・・・・・発目か」

 

 静かには通学出来なかった。突然、声をかけられて振り向くとそこには、雄英体育祭決勝トーナメントの二回戦で対戦したサポート科"発目 明"の姿があった。

 

「おはようございます造理さん!」

「・・・・あぁ、おはよ・・・・」

「造理さん! さっそく昨日の話の続きなのですが・・・・・・」

 

 俺の事はお構いなしに話をしてくる発目 明。実は彼女とは対戦の後に連絡先を交換していた。最初は断ろうとしたのだけど、彼女はサポートアイテムの知識が凄まじく俺も思わず感心してしまう程の物であった。故に俺は彼女と関係を持って居た方が後々の利益に繋がると判断し彼女に連絡先を教えたのだが、それで一つ困ったことが起きてしまった。・・・・それは。

 

「実は新しいベイビーに付いて考えついたのですが・・・・」

 

 彼女は異常なまでに良く喋る。

 体育祭が終わった後に連絡先を伝えたのだが、彼女はその日の夜に連絡をして来て引っ切り無しに、アイテム開発の話をしてきたのだ。俺も知識は豊富に揃えて居たから彼女の話は理解出来たし会話も成り立っていたけど、それを良いことに彼女はどんどんとエスカレートして行き、この休みの2日間の内に20時間も会話をしてしまった。

 ネットワークカメラでの会話だったからさほど苦労はしなかっったけど、それでも1日10時間の会話は精神的にもかなり辛かった物があり、少し寝不足気味であった。

 

「それでそのベイビーの素材なのですが・・・・」

「発目。もう学校に着いたからその話はまた後日だ」

「? おや、もう学校に着きましたか!?」

 

 彼女が長々と語っている内に俺達ふたりは雄英の校門を潜っており、校舎の前まで来ていた。

 

「では造理さん! またお話しましょう!」

「あぁ。・・・・出来れば今度はもう少し手短にな」

 

 発目と別れた俺はA組の教室に向かって行った・・・・・。

 

 

 

 

 ◇◇

 

 

「超声かけられたよ、来る途中!!」

「私もジロジロ見られて何か恥ずかしかった!」

「俺も!」

「俺なんか小学生にいきなりドンマイコールされたぜ」

「ドンマイ」

 

 俺がA組の教室に辿り着くとA組の奴らが賑わって居た。どうやらこいつらも登校途中で一般人達から色々ちょっかいを受けた用だが中には喜んでいる奴も居る。やはり雄英体育祭だけ合ってたった1日で一気に注目の的に成ってしまったようだ・・・・。

 すると。

 

「おはよう」

「「「「おはようございます!」」」」

 

 相澤先生がもの凄くさり気なく教室に入って来て、その途端クラス全員が席に着きピタッと静かに成る。この数日間で相澤先生の人間性を理解した皆は迅速に行動出来るように成ったみたいだ。

 

「相澤先生、包帯取れたのね。良かったわ」

「婆さんの処置が大ゲサ何だよ」

 

 ほんの2日前まではミイラ男同然の姿をしていた相澤先生であったが、今は包帯を取り素顔を晒してした。どうやらリカバリーガールの治療で怪我を一気に回復させたようだけど、たった2日間であれだけ回復させるのは大した物だ。

 

「んなことより今日は"ヒーロー情報学"だ。ちょっと特別だぞ・・・・『コードネーム』ヒーロー名の考案だ」

「「「「胸膨らむヤツきたぁああああ!!」」」」

 

 『コードネーム』ヒーロー名の考案。その言葉を聞いたクラスのほぼ全員から歓喜の声が上がる。・・・・しかし、相澤先生が直ぐに睨みを聞かせて全員が静かに成った。

 

「というのも先日話した"プロからのドラフト指名"に関係してくる・・・・」

 

 相澤先生の話は続く。プロからのドラフト指名・・・・それは所謂、プロヒーローがサイドキックを求めての指名だ。こう言った指名が本格化するのは経験を積み即戦力として判断される2年生3年生からの話であり、1年で来た指名は将来性に対する"興味"に近いものだと言う。卒業までにその興味がそがれたら一方的にキャンセルなんてこともよくある話だそうだ。

 

「で、その指名の集計結果がこうだ」

 

 

 ~A組指名件数~

 

 轟   4073

 爆豪  3526

 常闇  360

 飯田  301

 上鳴  272

 八百万 108

 麗日  100

 切島  68

 造理  51

 瀬呂  14

 

「例年ならもっとバラけるんだが、二人に注目が偏った」

 

 相澤先生の合図と供に後ろの電子黒板に集計結果が表示された。

 

「だ――――白黒ついた!」

「見る目ないよねプロ」

「3位の轟が一番か」

「優勝した爆豪が二番に成ってるぜ」

「て言うか造理が随分少なくねえか? 2位だったろ?」

 

 クラスの皆が騒いでいるが確かに俺の指名の数は低かった。トップを争う轟、爆豪は派手で強力な個性を兼ね備え、轟に至ってはナンバー2ヒーロー"エンデヴァー"の二世であることもありそれがこうじて指名が集まっていた。個性だけで判断すれば俺も負けては居ないが、俺の場合は先の二人とは決定的に違う所がある。それは・・・。

 

「(俺は厄介者扱いか・・・・?)」

 

 そう。俺の名はヒーロー達に知れ渡って居ると言う事だ。

 プロのヒーローであれば成り立ての新人以外ならば俺の素性は誰もが知っている事であり、当然俺が置かれている状況も理解している筈。雄英体育祭での俺の振る舞いも多少は影響しているのだろうけど、指名が集まらなかった一番の原因はプロのヒーロー達が俺の置かれている状況を理解し厄介者であると判断した結果。

 それでも俺を指名してきたのは余程の物好きか唯の愚か者だろうな・・・・。

 

「これを踏まえ・・・指名の有無関係なく、職場体験ってのに行ってもらう。おまえらは一足先に経験してしまったが、プロの活動を実際に体験してより実りある訓練をしようってこった」

 

 職場体験。つまりヒーローの現場を知るための課外授業のことだな。それでヒーロー名と言う訳か・・・。

 

「まぁ仮ではあるが、適当なもんは・・・・」

「付けたら地獄を見ちゃうわよ!!」

 

 突然ドアの方から、相澤先生の言葉を遮るように大きな声が鳴り響いた。そこに居たのは・・・・・。

 

「この時の名が世に認知され、そのままプロ名になってる人も多いからね!!」

「「「「ミッドナイト!!」」」

 

 18禁ヒーロー・ミッドナイトの姿があった。

 

「まぁそういうことだ。その辺のセンスをミッドナイトさんに査定してもらう。将来自分がどうなるか、名を付けることでイメージが固まりそこに近づいてく。それが『名は体を表す』ってことだ。・・・・・オールマイトとかな」

 

 相澤先生はそう語る。そして15分の時間が与えられ俺達A組一同はヒーロー名を考察しているのだが、俺は少し悩んでいた。"ヒーロー名"に関して何だが俺は特にそう言った物は気にしていなかった為、どう名付ければ良いのか検討が付かなかったのである。・・・・そして。

 

「じゃ、そろそろ出来た人から発表してね!」

「「「「!!!」」」」

 

 あっという間に時間が過ぎていった。どうやら発表形式だったらしく名前が決まった者から教卓に立ちボードに書いたヒーロー名を皆の前で発表するようだ。

 それで最初に発表したのは青山だったがヒーロー名とはほど遠い短文的な名前であり、直ぐにミッドナイトに略されて改稿されてしまった。続いて発表したのは芦戸だったが、発表したヒーロー名はどっかの映画に出てくるような名前。それはミッドナイトに直ぐに却下されてしまった。

 変なヒーロー名が続けて発表されてしまった為、何とも言えない変な空気が漂ってしまったが、続いて蛙水が可愛らしいヒーロー名を発表したお陰で何とか空気を変えて行った。

 空気が変わった事に寄って躊躇していた連中が次々と発表して行きクラスの半数以上が発表をし終え、ヒーロー名が決まって行った。

 

「良いじゃん良いじゃん! さぁどんどん行きましょ―!!」

 

 発表は尚も続く。途中、爆豪が『爆殺王』等と言うヒーロー名としてはどう考えても0点の名前にを発表し一悶着があったがその後は順調に決まって行った。

 

「思ったよりずっとスムーズ! 残ってるのは再考の爆豪くんと飯田君と緑谷君。そして造理君ね」

 

 残ったのは四人。飯田は自分の名前をヒーロー名にし、緑谷はあだ名に成っていた"デク"をヒーロー名にしていたが、俺はかなり悩んでいた。俺も飯田と同じように自分の名をヒーロー名にしようとも考えていたが、それでは味気ない。だから俺は真っ先に思い付いた名前をボードに書き教卓の前に立った。

 俺が書いたヒーロー名は・・・・・。

 

「錬金ヒーロー『ヘルメス』」

「ヘルメスって、ギリシャ神話に出てくるヘルメス神のこと?」

「少し違いますね」

 

 俺が書いたこの『ヘルメス』という名は錬金術師の祖として語られている『ヘルメス・トリスメギストス』から取ったもの。神秘思想・錬金術の文脈に登場する神人であり、伝説的な錬金術師である。

 他にも候補として『アリストテレス』や『ニコラ・フラメル』と言った伝承に記載されている錬金術師達の名前を文字って使おうかと思ったが、この『ヘルメス』が一番シンプルしっくり来たからこれに決めたのである。

 

「まあ、シンプルで呼びやすいから良いわね。合格よ!」

 

 こうして俺のヒーロー名は決まった。ついでに言うと最後に残った爆豪は最後まで決まらず結局、本名を使う事に成った。

 

 

「全員決まったわよ」

「有り難うごうざいますミッドナイトさん」

 

 無事にクラス全員のヒーロー名が決まった事で相澤先生が教卓に立った。

 

「職場体験は一週間。肝心の職場だが、指名のあった者は個別にリストを渡すからその中から自分で決めろ。指名のなかった者は予めこちらからオファーした全国の受け入れ可の事務所40件・・・・この中から選んでもらう」

 

 相澤先生からリストが渡される。ヒーローはそれぞれ活動地域や得意ジャンルが異なるからこう言った事は慎重に考えて選ばなければ成らない。俺は手渡された指名リストに目を向けた。すると内容は意外なものだった。

 

・エンデヴァー   ヒーロー事務所

・ホークス     ヒーロー事務所

・ベストジーニスト ヒーロー事務所

・エッジショット  ヒーロー事務所

・ミルコ      ヒーロー事務所

・クラスト     ヒーロー事務所

・ヨロイムシャ   ヒーロー事務所

・ギャングオルガ  ヒーロー事務所

 

 その他諸々・・・・・。

 

 顔には出さなかったが、この内容にはかなり驚いてしまった。

 上から見てみるとヒーロービルボードチャートJP、しかもトップ10入りをしている内の8人が俺を指名していた。他も見ても100位以内に入っているヒーローの指名が多くこの内容からすると、どうやら俺を指名してきたヒーローは愚か者ばかりでは無かったようだ。

 基本単身で行動をする忍者ヒーロー・エッジショットやラビットヒーロー・ミルコが俺を指名してきたのは驚いたけど、最も驚いたのは現在チャートで3位に付いているウイングヒーロー・ホークスだ。

 18歳でヒーロー事務所を立ち上げて、その年の下半期には十代で史上初のトップ10入りを果たしたヒーロー界きっての異端児。常にマイペースで居ながら不遜な態度も目立つ変わり者だが、何故俺を指名してきたのだろうか?

 

「(何か裏がありそうだな・・・・)」

 

 人気も実力も申し分ないが、俺はどうもこのホークスと言うヒーローが今一信用成らない。これはあくまで俺の直感なのだけど、こう言ったヒーローは裏で何かをやっているように思えて仕方が無い。

 故に俺はホークスは候補から除外する事にした・・・・。

 

「(となると、この中で選ぶべきヒーロー事務所は・・・・・・ここしかないな)」

 

 行く事務所を決めた俺は指名用紙に記入し相澤先生に提出した。

 

「早いな造理?」

「選ぶのは意外と簡単でした」

「そうか。・・・・ん? お前ここに行くのか?」

「意外でしたか?」

「確かに意外と言えば意外だ。だがお前が選んだなら特に何も言わない」

「それはどうも」

 

 俺が出した指名用紙を手にした相澤先生が少し驚いていたようだが、直ぐに納得したようだ。

 こうして俺は無事にヒーロー名と職場体験の事務所が決めたのだった・・・・。

 

 

 

 

 ~職場体験当日~

 

「コスチュームは持ったな? 本来なら公共の場じゃ着用厳禁の身だ。落としたりするなよ」

 

 あっという間に一週間が過ぎた職場体験の当日。俺達Aクラス一同はそれぞれがコスチュームを手にし、駅に集合していた。

 

「くれぐれも失礼がないように! ・・・・じゃあ行け」

 

 相澤先生の見送られ、各自が指名した職場体験のヒーロー事務所に向かうために出発をする。

 

「楽しみだなぁ!」

「お前九州か、逆だな」

「俺はこっちな」

 

 職場体験を楽しみにしている様子のA組一同。しかしその中で・・・・。

 

「・・・・・・・」

 

 飯田だけは何故か黙って居た。普段ならば人一倍口うるさく率先して話してくる飯田なのだが、ここに来て禄に喋ろうとしない。と言うよりも体育祭が終わってからここ一週間、飯田の雰囲気がどうもおかしかった。

 

「(インゲニウムの事件が関係しているのか?)」

 

 これは体育祭後にニュースで知った事なのだが、飯田の兄であるプロヒーロー・インゲニウムはヴィランの襲撃に合い再起不能に追い込まれたと言う。インゲニウムを襲ったヴィランは過去に17名ものヒーローを殺害し23名ものヒーローを再起不能に陥れた者。"ヒーロー殺し"等と言うあだ名まで付けられた凶悪ヴィランらしい。

 ヴィラン名は確か"ステイン"・・・・。

 

「飯田くん。本当にどうしようもなくなったら言ってね。友達だろ?」

 

 そんな飯田を心配するかのように声を掛ける緑谷。その隣で麗日も心配そうに面持ちをしていた。

 

「・・・・・ああ」

 

 そんな二人に唯一言、簡単に返事を返した飯田はそのまま行ってしまった。

 

「(飯田が向かった方角は・・・・・・保須か。)」

 

 保須と言えばヒーロー殺しが出没している地域だ。飯田の職場体験のヒーロー事務所が保須にあると言う事は・・・・何か良からぬ事をするつもりのようだな。飯田の奴。

 俺はそんな飯田を事を頭の片隅に留めて置きながら、自分が指名したヒーロー事務所に向かって行くのであった・・・・。

 

 ――ナンバー2ヒーロー・エンデヴァーヒーロー事務所に。




 ヒーロー殺し編に突入しました。。
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