確して、政府はゴジラ退治にフリーゲート艦での爆雷攻撃を決行した。
ラジオ、テレビにより実況を伝えて、国民は皆安堵した。誰もがそう思った、いや、思いたかった。
水爆に耐え放射能を吐き散らす、そんな化物は果たして爆雷等で参ってしまうのだろうか?
将してゴジラは再び現れた。まるで仇を見るように睨みつけるのだ我々人間を、そしてゆっくり向かってくるのだ、洋上の遙かからこの東京を目指して。
日本にはゴジラ対策本部が設けられ、山根博士も招かれた。
ゴジラの生命を断つ方法を尋ねる。だが山根は古生物学者の立場から、水爆の洗礼を受けてなお生命を保つゴジラを殺すことは不可能だとしたうえで、ゴジラを殺す方法よりゴジラの生命力の研究を行うべきだと主張する。一方で、博士には、芹沢大助という、尾形とは中学からの友人で、今は化学者の愛弟子がいた。だが、恵美子に婚約していたのだが、戦争により片目が潰れ頬も痛々しく焼け爛れた彼は婚約を破棄し、その日から研究室に篭り密かな研究に耽るようになった。
ある日、新聞記者の萩原が彼を訪れたことから、彼は恵美子にだけ実験室を見せた。絶対に他言しない約束のもとで……。
ゴジラは遂に東京へ上陸した。数百もの武装警察官が撃ち出す機銃弾もものかは、品川駅を押し倒し、当時の最新鋭の新幹線をも引き千切り鉄橋を踏み潰して海へ去って行った。
対策本部は遂に海岸線に五万ボルトの鉄条網を張り巡らし、都民は疎開を始めた。自衛隊も動員され防備についたのであった。
ゴジラは再び東京に上陸した。五万ボルトの高圧電流も物の数ではなく、鉄条網を寸断したゴジラは、口から強烈な白熱光を吐きながら、あらゆる建物を、燃やし尽くし、溶かし、踏み倒し、押し潰した。戦車や重砲の攻撃などものともせず、東京都内に侵入してきた。議事堂を破壊し、テレビ塔を圧し折りその底知れぬ力を人間達に見せつけた。
人々は、たゞ、茫然とゴジラの暴れるに任せるしかなかった。たった一夜にして、東京は見るも無惨な姿に変わり果てた。焦土と化した中には人々の住んでいる筈の家は見えなかった。いや、家だけではない。傷付き、放射能をその身に浴び正に地獄と化していた。
そんな中、恵美子は遂に芹沢の秘密を尾形に打ち明ける決心をした。ゴジラを征服する唯一の方法、それは、芹沢が完成した、水中の酸素を一瞬にして、破壊し尽くし、凡なる生物を窒息死させ液状化させる、酸素破壊剤オキシジェンデストロイヤーの使用しかなかったのである。尾形と恵美子にそれを要求された芹沢は苦しんだ。彼が、孤独に研究を進めていたのは、現代の人間に対する不信感から成るものだった。一度蓋を開けてしまえば世界中がこの恐るべき発明に飛びつく。そうすれば、この発明はたちまち破壊兵器として用いられるだろう。恵美子でさえもこの秘密を破ったではないか。だが、彼は、遂にその秘密の資料を火中に投じ、たった一個のオキシジェンデストロイヤーを抱え、ゴジラの潜む海、太平洋へ山根博士や、尾形達と共に行く決心をしたのだった。
彼は、潜水服に身を包み、海中へと入っていった。オキシジェンデストロイヤーの安全弁を抜いた彼は、尚もそこにあったのだ。その効果を確かめると、自らの命綱と送気管を立ってしまった。
船上に在りて目の当たりゴジラの断末魔の悲鳴に歓喜した人々も、秘かな恋心さえも自ら捨て、人間を信じきれなかった故に、自らと共に発明を闇に葬り去った芹沢に敬虔の黙祷を捧げるのであった。山根博士は静かに呟いた、「あのゴジラが最後の一匹とは思えない。もし水爆実験が続けて行われるとしたら、あのゴジラの同類がまた世界のどこかへ現れてくるかもしれない……」と。