妖虎の漢花道物語   作:貧弱戦士

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第二喰

 

 

「どうだ、君の口に合うものか?」

 

「フン、糞美味いぜコノヤロー。この最高級の牛肉………値段は20万ぐらいとみたぜ」

 

「ほぉ、どうやら食に関しては詳しいんだな。この、クエの刺身も美味であろう」

 

「高級料理店に出るもんがぞろぞろ出るな」

 

「………………」パクパク

 

「君はマナーがいいんだな。いやはや、害虫を食った時はジャングルから来た田舎者かと」

 

「俺にとって生きているものは、みな食材よ。あんたもな、はは」

 

「ふふふ………こんな愉快な食事は久しぶりだ」

 

「俺もそう思うぜ。奇遇だな」

 

「あぁ、奇遇だ。ははははははは!」

 

 

 

なんだ、このカオスな食卓は。どうも、ヴィクトリア・ウッドです。ただいま、あたし…いや、あたし達は食事をしています

 

10m以上長いテーブル。その上の上品な白い布をかぶせており、綺麗な蝋燭を置き、まるで夢のような料理が置かれ続けている

 

横には飲み物を持っている、結構イケメンな執事さんとメイドさんが静かに命令を聴くまで目を閉じている

 

トラは誕生席に座っている。その遠くの向かい合わせで、あの老人………もとい、この『企画』の最重要人が居る

 

二人とも牽制しあっているが、どうやらお互い子供の喧嘩と思っており笑顔が絶えない

 

 

 

「つか、爺さんよ…。さっき俺が食ったのを害虫とか言ったが、どういう事だ。『あれ』は人間じゃねぇのか」

 

「ほぅ、面白い質問するね」

 

「つか、あんなキモイのが人間なわけないでしょ!?」

 

 

 

咄嗟にツッコミを入れてしまった。先ほどトラが喰ったあの生命体は、どうみても人間の滑稽ではない

 

全身黒光り、体は筋肉でほぼ出来ている。それに、あの生命体はあたし達を殺そうとした。なんもためらいもなく

 

 

 

「わからんぞ、ウッド。あれはあれで………そう、新人類かもしれん」

 

「いや、あんなのが次の人類なら泣けるわ」

 

「はっーはっはっはっ!! 本当、君たちは愉快だ。あれが新人類なら、私はすぐさま対策を取っているだろう」

 

 

 

盛大な拍手をしてくれながら、老人は笑い声をあげる。どうやら、そこまでツボに入ったんだろう

 

 

 

「と…私も意地悪ではないんでね。説明に入らせてもらおう」

 

 

 

手にリモコンを取出し、何かのボタンを押した。すると、天井から機械音が聞こえる。穴が開き、そこから大きなモニターが出てきた

 

老人はもう一度ニヤリと笑った。反応が楽しみであろう…電源がつくと、そこには、先ほどの生命体が映っていた

 

 

 

「先ほど、君と戦った生命体の資料だ。姿からすれば、人間の滑稽と似ているが、それは形だけなのはわかるな?」

 

「だが、相当強いな。まるで原人みたいな、ヤツだったよ」

 

「原人………ふふ、たしかに今はそうだな。そもそもこいつ等の正体は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          ゴキブリである」

 

「嘘っ!? ゴキブリなの!?」

 

「ほぉ~、にしてはいい味してたじゃねぇか」

 

 

 

だって、あんな骨があるのか無いのか、筋肉があるのか無いのかわからん素早い奴があの生命体なわけ!?

 

あたしは頭で悩んでいる横で、トラは関心にその資料を見つめる。牙を見せながら

 

 

 

「事の発端は、『テラフォーミング計画』のおかげでコイツ等は誕生…いや、『進化』してしまった」

 

「それって、人類を火星に住まわす……ことですか」

 

「さすがだ、ウッド君。君は察しがいい」

 

 

 

『テラフォーミング計画』

 

この地球は住みにくくなった。それは、我ら人類が増えすぎたためだ。環境問題、エネルギー問題という、次から次と問題が起り続ける

 

何れは地球は崩壊し、無くなると言われている。だが、それを防ぐためになんの『根拠』かわからない、『誰が言いだした』かもわからない

 

火星に住めると立証された。そう、人類がだ。500年前に、火星は住めるとわかり人類はある事を実行した

 

火星の地中に大量の二酸化炭素が存在し、火星を温めることでそれを流出させ、人類に耐用の気温にするのが目的だ。科学者たちはそれを実行するために、ある特殊な『苔』とゴキブリを火星に送った

 

地表を黒く染めると、太陽光を吸収して温めることが出来る………かもしれない、と言っている

 

 

 

「よくわかるな、この資料………さすがwi○iだぜ」

 

「インターネットの情報を頼るな!!?」

 

「私も一から資料作るのめんどくさいのでね。参照してもらったよ」

 

「あんた学者だよね?」

 

「いかにも、アレクサンドル・グスタフ・ニュートンという博士は私しかいないが?」

 

 

 

アレクサンドル・グスタフ・ニュートン。どうやら、この人が今のバグズ二号の責任者だ

 

その知能はすでに人間の枠を超えていると言われており、世界に誇る科学者である

 

 

 

「落ち着けウッド。んで、ニュートン博士」

 

「何かね」

 

「こいつ等は、『まだ』火星に居るのか? しかも、うじゃうじゃに」

 

「ふふ、喰いたいのか? 白峰 虎之助くん」

 

 

 

そういえばと思い、トラをの顔を見てみるとそこには………

 

『猛獣』が腹を空かしているのか、喉を鳴らして牙がさらに長く太く鋭くなっている

 

 

 

「最高の食材だよ!」

 

「トラ………」

 

 

 

トラの目が輝いている。いや、さらに鋭くギラついているのわかんないけど。これだけはわかる

 

とても嬉しがっているのを

 

胸が高鳴りだした。鼓動の速度も速くなる……トラがこんなに嬉しがるなんて、初めて見たから

 

トラが嬉しいなら、あたしはもっと嬉しい。トラが楽しいなら、あたしはもっと楽しい

 

『あの日』から、ヴィクトリア。ウッドという存在は白峰 虎之助という変わり者に救われた

 

 

 

「あたし、行きます」

 

 

 

だから、待っててトラ。すぐ狩ってくるからさ

 

 

 

「バグズ二号の計画に、乗らせてもらいます」

 

「…何言ってんだウッド? お前みたいな弱い奴が、あんな害虫に勝てるわけないだろ」

 

「話が早くて助かるよ。では、まずは適正検査からだ」

 

 

 

ニュートン博士に付いていき、この部屋から出ようとした

 

トラは唖然としていて、その顔は笑えてくる。だから、あたしが帰ってきたときは盛大な笑顔を送ってくれないかな

 

トラが『食材』を欲しいなら、あたしは何が何でも持ってくるから

 

 

 

 

 

 

「おい、待てよ」

 

 

 

急にトラが声を発した

 

次に思いがけない事を言ったのだ

 

 

 

「俺も連れて行け。火星によ」

 

「ッ!?」

 

「ほぅ………これは」

 

「いいだろ、爺さん? 俺みたいな戦闘民族? が、居たら助かるだろ」

 

「トラ、これは君には関係ない事だ! それに『食材』なら、あたしが取ってくるから…」

 

「そういうことだ、虎之助くん。帰りはそちらの扉から出てくれ。また、壁を壊されたらたまったもんじゃないよ」

 

 

 

こちらに勢いよく向かってくる。先ほどの『野獣』の顔が嘘のように、今度は怒っているのがわかる

 

 

 

「俺にもその適性検査やらせろや」

 

「ふふ…」ニヤリ

 

 

 

ニュートン博士が不気味な笑顔を描いた。すると、突然あたしの目の前にガラスの壁が出てきた

 

 

 

『ガシャン』

 

「えっ………」

 

「その言葉を待ってたよ。では、君専用の適性検査をしようか」

 

 

 

あの部屋にはトラしか居ない。先ほどの執事もメイドもいない

 

それにこのガラス、先ほどの害虫の部屋にあったやつだ…………

 

 

 

「どういう意味『じょうじ』ん?」

 

 

 

いつの間にか部屋は、奴等に占領されていた

 

 

 

『ドォオオン ! ! !』

 

「トラァァーー!!!?」

 

 

 

害虫の一匹が、トラの顔面に拳を入れた。爆発音のようなのが出て、煙が出ている

 

その様子をみてニュートン博士は、口角をあげる

 

 

 

「先ほどの害虫と一緒にしないほうがいいぞ? そいつらもクローンなのだが、さらに私たちの手を加えて狂暴で戦闘力も遥かに上回っている奴らだ。だが、本場のゴキブリにはかなわないだろう…」

 

「嘘っ……ねぇ、トラ嘘だよね? やられるわけないよね…トラッ!!」

 

 

 

ガラスにへばり付き、トラの様子を見守る。あたしの顔はぐしゃぐしゃになり、目から次々と涙が溜まる

 

 

 

「おい……害虫野郎」

 

『………』

 

「トラ………?」

 

「凄い…! 『素晴らしい』の枠を超えている!」

 

 

 

 

 

 

 

「なに、ウッド泣かしてんだよ」

 

 

 

目が何時もよりギラついている。けれど、瞳の色は変わっていた。充血しているのである

 

怒りすぎて

 

 

 

『じょ…!?』

 

『ドサッ』

 

 

 

攻撃してきたゴキブリは気づかずに、首をもぎ取られた。綺麗にではなく、乱暴に

 

 

 

「…………………あぁああああああああああああアアアアアアァアアアァァ嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼■■■■■■■■■■■!!!!!!!」

 

『じょうじ!!!!!!』

 

『じょーー!!!』

 

『じょうじ! じょうじ!!!』

 

『ぎぎっ!!』

 

 

 

本能の『威嚇』だ。『動物』の場合威嚇するときには、声をあげる。そして、自らの牙・爪・声の大きさ・体格を見せる

 

『虫』の場合はどちらが大きいかを競う

 

まるで、あの部屋だけが別次元に感じるのはあたしだけだろうか

 

トラの体は赤くなり、顔中には血管が浮き上がっている

 

これも威嚇の一種であろう。ゴキブリたちも応戦するように、筋肉が膨れ上がる

 

だが………

 

 

 

『ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!』

 

『じょ……ッ!?』

 

『ぎぎ……』

 

『じょうじ……』

 

『じょ、じょうじ』

 

 

 

 

 

『コロシテヤロウカ、ガイチュウドモ』

 

 

 

背後に大きな動物が見えた。たぶん、それはあたし以外にニュートン博士、あの害虫にも見えただろう

 

それに幻聴も聞こえた。静かに頭から、低音の声が響いた。殺す……いわゆる、トラにとっては喰う価値がないのだ

 

そして、害虫どもは……

 

 

 

「なるほど、恐怖で『死んで』しまったか。強い恐怖に逃れるために、己の呼吸を止めて窒息死か」

 

「死んだって…。そんなの、なんで」

 

「君もわかるだろ。悪夢を見たら目が覚めるまで、永遠と悪夢。なら、それを終わらせるには『死ぬ』しか選択肢はないからだ。実際、死んだ夢をみたら人間は目覚めるだろう」

 

 

 

すると、ガラスの扉が開いた。あたしはトラの元に向かい、背後から抱きついた

 

 

 

「トラ…よかった」

 

「心配すんな。照れるだろうが」

 

 

 

顔をそっぽ向けて、そのへらず口は変わらないでいる。先ほどの威嚇はなんだったのか……いや、今はいいだろう

 

 

 

「合格だ。おめでとう、虎之助くん」

 

「チッ、やはり図ったな」

 

「人聞きが悪い。もともと、私はウッドくんも欲しいが…それ以上に君を欲しくなったのだよ」

 

「じゃあ、わざと…!?」

 

「君は察しが良いのか、悪いのか…。では、入ってくれるかね? 白峰 虎之助くん」

 

「…………あんな奴らが相手なら、ウッドなんか一瞬で死んでしまう」

 

 

 

トラはあたしの頭に手を乗せて、優しくなでてくれた

 

 

 

「ッ///…」

 

「なら、答えは決まったね」

 

「あぁ。喰らってやるよ、テメェのその計画に」

 

 

 

そして、人類は最大最強の助っ人を手に入れた




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