「『バグズ手術』?』
聞きなれない、単語だ。虎之助はその一言を聞いて、疑問に思った。なぜなら、バグズというのは火星の任務名で、手術というのはウッドが言っていた事である
適性検査から一週間の時が経ち、ウッドと虎之助は別行動を取っている
ウッドは火星に行くために自主トレを行い、知識を得るために資料を読み返したりしている
そして、我らが主役の白峰 虎之助は…
『じょうじ』
「今お話し中だろうが!!!」
『ドォン!!!』
『……………オホン。話の続きをしてもいいかね』
「ならこっち来いよ。マイクからだと、聞こえない場合もあるっつーの」
『私に死ねと?』
特設ドーム。広さは学校の体育館ぐらいで、高さは100mあるドーム型の特殊施設。その中で虎之助はストレスを発散するように害虫達と戦っている
いや、この場合は遊んでいるの方が想像しやすいであろう。虎之助という人物がよくわかる
ドームから響く、ニュートン博士の声。中に入れば害虫か『虎之助』の餌食になると思い、外からマイクで話しかけている
『では、続きを……もともと、このような害虫を相手にするには、この軟弱な人類では相手にならない。火星に行って、全滅するのがオチであろう』
「なら、なんで火星に行くんだ? 皆死ぬなら、意味ないっしょ』
『君の言う通り。私たちは奴等に勝てない…なら、どうするか? 答えは簡単だ。それは、害虫の『対策』を練ればいい。いや……なればいいのだよ、奴らに』
「『対策』? それに、なればいいってどういう『じょうじ!』ことだっつーの!!『ドォオン』」
器用に虎之助は、ゴキブリ達を相手にしている
『そこで私が考えた、『バグズ手術』だ。この手術は人間を、昆虫へと進化させることができる』
「おいおいおい、そういう事かよ。要は、こいつ等が進化するように人類も進化ってか? 退化の間違いだろ」
『虎之助くんにとっては、そうだろう。けれど、私たち最弱の人類が昆虫の力を手に居れたら、それはまさに『進化』と『変化』だ。昆虫のDNAを人間に組み込み、より強大な力を得ることが出来る』
「ふ~ん。ま、俺には関係ないか。なんせ最強ですから」
『確かに君は私が知る限り『宇宙最強』だ。だが、この地球で『地上最強』はゴキブリ共ではない、私たち人類なのだよ。負けるわけにはいかないのだ』
「たしかに、あんなぽっと出のゴキにやられたらプライドもないな」
害虫の首を掴み、そのまま勢いよく地面に叩きつける。人類は『退化』していっている
その考えは元から虎之助、そしてニュートン博士も理解している。大昔の人類…もとい原人は超人の力を兼ね備えており、小さなマンモスを絞殺したと噂されておる
何故人類は衰退していってるか? 簡単である
環境が変わり続けているからだ
それも、楽な方へとだんだんと。昔は生死を分けた環境であったが、今では科学の力を進歩し、人類は体全体を使わなくなった
知識あるもの、代償として何かを捨てなければならない。それは、原人が築き上げた肉体を代償としてしまったんだろう
『そういうことだ。そして、『バグズ手術』には代償がある。それは己の命。手術の成功生存率 30% 半分も行ってない』
「30って……。絶対、成功とかじゃないのかよ。けど、そんなのを受ける…物好き……も………」
瞬間、虎之助の脳内である人物が浮かび上がった
それはいつも隣にいて、笑ってくれる褐色の女の子。虎之助が唯一心を許した少女の顔が
『乗ります』
「!?!?」
『バグズ二号』に乗るには、条件がある。それは生き残るために、『バグズ手術』を受けなければならないこと
そして、ここ一週間会っていない理由もだんだんと、虎之助の脳内で理解していく。ニュートン博士が、何故こんな事をいいに来たか
何故、このような食事を用意してくれたか。何故このような場所を提供してくれたか……
瞬時に理解した
ウッドの身に何かがあったことを
「……………オイ」
『じょ』
『ぎぎぎ』
『じょーじ!』
声を発し、辺りの害虫ともは反応した。戦闘態勢をとっているが、虎之助は解いている
そんなチャンスを狙おうと害虫は動き出す、見つめだす、騒ぎ出す。しかし、一切も動かない
指を動かしたら殺される、首を動かしたら殴られる、息をしたら切り殺される、目を動かしたら潰される
死の連想
ゴキブリたちは動かない。例え地震がきても、動かないであろう
虎之助は振り返り、害虫に呟いた
『―――――――――』
「ふふ、動き出したか」
「博士!! なぜ、この特設ドームを特殊部隊が囲んでいるのですか!!?」
「私にもわからん。だが、わからんからこそ最大の『対策』を取らねばならんのだよ」
「博士!?」
ドームに周りを、見渡す限りの部隊が囲んでいる。その中心にニュートン博士はマイクを投げ捨て、出方を待っている
『ドン……』
「おい、今音しなかったか?」
「バァーカ。これはジェット音もかき消す防壁だぞ? 聞こえるわけないだろ」
『ドォン…』
「いや、したって!」
「近くの訓練の音だろ。俺らは気にせず、これを見張ればいいんだよ…たく、博士も何考えているやら」
この後、一人の兵士はこう語った
『最初は近くの訓練の音かと思いました。周りの兵士も欠伸やら、眠たそうながらもドームを見張っておって準備は出来てました。音もだんだんとうるさくなり、ついには私以外の兵士にも聞こえるほどに』
『ドォン!! ドォン!!! ドォン!!!!』
「お、おい。なんか、どんどん大きくなってないか…?」
『ドンドンドンドンドンドン』
『ピキッ!』
「なっ!?!?!? ヒビが入ってきていぞ!!!」
『はい、突然大きなヒビが出てきたんです。すると……………私は目を疑いましたね。目の前で突然『爆発』が起こったのですから』
『ドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンン!!!!!!!!』
「え、えぇえええええええええ!?!?!?!?」
「フフフ……やはり、動き出したか」
『ドーム全壊です。あの男はパンチを入れただけで、全壊しましたよ。普通、入れた場所だけ壊れるはずなのに、全部壊しちゃいましたよ』
「ウッドは何処だ、爺さん」
「すぐそこの病棟だ。番号は410号室だ」
虎之助はニュートン博士が指さした場所に速攻で向かった。その規格外な様子を見て、兵士たちは唖然としている
ニュートン博士は兵士を退かし、ドームだった所を見る。途中で出て来たなら、まだ害虫が残っているはずだ
前衛部隊を指揮しながら、近づくと―――――
「!? これは………!!」
「410、410、410!!」
くまなく、その番号を探している。額に血管が浮かび、怒っているようだ
看護師や医師を探しても何処にも居ない。どうすれば………
「あれ、トラ。なんでここに居るの?」
「それはウッドを探し……………
え、生きてる?」
『スパァン!』
虎之助の頭に、スリッパが命中した
「生きてるわ!!! たく……なんでそんな慌ただしいのだ」
「え…でも、手術でご臨終でお墓にゴーじゃ……」
「ほぅ、トラの中ではあたしは天国か」
「地獄だろ」
『スパァン!!!』
ウッドはスリッパを手で持ち、また虎之助の頭に当てた。痛くはないのだが、何故か頭を押さえる
「成功だよ。もう、あたしは君の足手まといじゃないぞ♡」
「ウッド……………」
「だから、一人で突っ走らないでくれよ、心配だ「なんか……キモイよ」『ぶちっ!!!!』」
この後の虎之助は、静かにこの世を去った……
「………………やはり、あの音は彼が殴った音ではなかったようだな」
ニュートン博士にも、音が聞こえていた。しかし、それはとても奇妙だった。もし、虎之助だったら一、二発で壊せるはずなのに、あんなに殴る必要はあったのか
最初の疑問であったが、全壊したドームを見ると理由がわかった
その光景はとても醜いものだ……
『じょう!!!』
『じょうじぃぃぃぃぃ!!!!』
『ぎぎぎぎぎぎ!!!!』
『じょう!! じょうじ!!』
『ぎぎいぃ!』
「まさか……殺し合いの音だったとは」
『オマエラ、イキタキャコロシアエ』
ニュートン博士は注射器を見つめ、笑みを浮かべる
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