小さいときから、人を頼りながらも今日まで生きてきた。最初はお金を持っている人から、富豪へと上りつつも私の人生は方向が進んでいく
ロシアという大きな国。そこが私の祖国であり、元とも言える。貧困な国のイメージがあるが、まさにそのとおり。生きるためには、道を踏み外すか歩き方を変えるだけである
マリア・ビレン。母と父から譲り受けた、大切な名。たとえ売春行為しても………その名前を変えるのはだけは無理であった
今日もこの大地に観光客が来る。現地の人よりも大きめなコートや防寒着を着て、手には暖かい手袋をしている観光客が
私はいつもどおり、ロマンチックな噴水場で待つ。この場所は恋人たちにとっては、デートスポットなのだ
辺りを見ればカップルがイチャイチャしている………
だが
「ほぅ、さすがはロシアだ。噴水の水まで凍ってらぁ」
突然の静寂。今まで何処にいた、こんな奴。私や周りの人もそう思った。男は目立つように、噴水の頂で、見渡している
あんな目立つような格好なのに、『目だって』いない。なおかつ、わずか一言で人々を引き寄せるあの言動
「ん? おら、さっさとイチャコラタイム初めてもいいぜ。俺のことは気にせず」
声をかけられた。もちろん、私ではなくカップルの人たちにだ。人に声をかけられたぐらいなのに、男性はガタガタ振るえ女性は見ほれている
まるで、勇ましい……いや、猛々しい。その姿はまさに、男の理想像でもあった。上から私たちを見下ろす彼はこのグループのボスに思える
男は噴水から降り、何かを匂っている
「あ、あの……!!」
そんな彼に、奥歯をガタガタ震わせ目がキョドッている普通の男が話しかけた。女とい一緒にいるのに、男は『彼』を優先した
男は左手を胸にあてて、右手の手に平を上に向けて差し出す
「お、お名前は!!!!!!」
人が手に胸を当てる行為は、よく演劇やミュージカルでよくある……が、実際の意味は尊敬と謙虚さをアピールする行為
そして、なぜ手のひらを上に向けるか? たしかに、礼儀座法では正しい。私は瞬時に理解した
これは『降伏』のポーズだと
犬が『降伏』のポーズを取るには、お腹を仰向けにする。『私は害がありません。武器も持ってません』
『彼』も理解しただろう。ニヤリと笑い、男に近づく。すると、思いがけない行動に出た
「白峰 虎之助だ。職業は宇宙飛行士だ」
『ギュッ』
「!?!?!?!?!?!」
自己紹介よりも意外な行動。それは、『握手』をしてきた。友好関係を表す。男はさらに驚きを隠せず、ついには『彼』の手を両手で包み笑い出した
そして泣き出す。その光景は今思えば、可笑しいと思う。男二人が握手をして、片方は狂うほど泣いているのだ
けれど、相手が良すぎた。なぜなら、『強い』からだ。まだ実力もしらないけれども、この威圧、風貌、そして未知。全てが『強い』とわかってしまう
「お、俺も握手してください!!」
「俺も!」「私も!!」
「わ、私はマイケル・ジャスボン!! 職業サラリーマンです!!」
「ちょ?! そんな詰め寄るな!? お、おい!!」
まるで、アリの大群ね。男女己の立場を忘れ、一直線に『彼』に近づいた。触れ、話し、分かり合えた瞬間に誰もが感動を覚えた
ロマンチックな雰囲気が台無しね………それも『彼』の力なのかな
「つつ……あぁ~、なんか疲れた。なんでだ?」
もうあの大群はいない。最後は皆でお礼を言い、それぞれ帰っていった。『彼』は呆けながらも、笑みを浮かべる
しかし、この極寒の大地ロシアでよく防寒着も着なく地べたに横たわれるんだろうか。不思議だが、この人だから納得してしまう
初めて会うのに、なんでだろうか……
「ふふ…」
「お、嬢ちゃんやっと笑ってくれたね」
え……
話しかけられた。しかも、笑ってくれたね…とは、見ていたというの?
「さっきから全然笑ってくれなかったから、俺も困ったんだが……綺麗じゃねぇか」
「ッ///! そ、そんなことは」
急に言われた。『綺麗』と…。今まで私の相手をしてきた奴らは、お世辞にその言葉を連呼してきた
己の興奮を高めるため、なおかつ私を手にしたいため。正直、言われても嬉しくなかった。むしろ、冷めてしまう
しかし、この人に言われた途端そんな気持ちではなかった。体が温かく、まるでもっと褒められたい動物の気分だ
自分でも顔を見なくてもわかり、それは赤く赤面している。そして『彼』の笑みが喜びに感じる
「んで、名前は?」
「へ…?」
「だから名前だって。俺だけ名乗るなんて、なんか恥ずかしいじゃんかよ」
「は、はい! マリア・ビレンです」
「なんかお高そうな名前だな。んで、職業は」
「職業ですか? えと………」
ここで、売春行為などと言ったらどう思うか…。簡単だ、私に落胆するだろう。そして、まるで虫を見るような目で私を見るだろう
嫌だ………嫌われたくない。この人にだけは…惚れたとかではない。こういう人には嫌われたら、人間性が終わりだと感じる
「……じ、事務員…です」
「へぇ~。頭使う職業っぽいな。いやいや、うちの知り合いで頭良い可笑しい爺さんがいるんだけどよ、人間ああなってはいかんな。うん、だいたいああいうボケは嘘を付くからな
だから、お前は嘘をつくな」
「!!」
目つきが変わった。それだけで、空気も変わりだす
「俺から見ればお前はいい奴そうだ。だから、悪い奴がやる嘘をつくな」
「うそでは…ないです」
「いいや、嘘だ。お前が職業言うとき、微妙に心肺が遅くなり突然早くなった。そして目線を下にそらす行為。顔の筋肉が余計に動く。嘘だな」
何処まですごいんだ、この人は。わずかな動作を見逃さず、超人的な洞察力だ。心肺と言っていたが、たぶん聞こえているだろう
あぁ、凄い………もし、私もこの人のように強かったら、生き方はかわってたのかな
「すみません!!!!! 私は観光客を狙い、売春行為を行っておりました!!!! お金がほしく、この身を全て男共に捧げて数年が経ちました!!! 私はあなたより弱い存在です! だけれども………嫌いになら「なるわけないだろ」ない…へ?」
「売春? それがどうした。生き抜くためには、仕方ないことだろ」
歩み寄ってくる。『彼』は拳を出して、見せてきた。遠くからでもわかるけれど、近くでみるともっとわかる
そして、目の前で見るとかなり変わってくる。まるで、『生きる』ために存在する拳に見えるのだ
「つーかよぉ、自分で弱いとか言うんじゃねぇ。慰めてほしいのか? なら、本音の慰めをしてやるよ…。強いよ、強い強い強い。何万回、何億回、何兆回でも言ってやろうか。強いんだよ、お前は。身をていして、己を生かす行為は強くて、なおかつ美しい」
「で、でも!!」
「だから、これからも強くなれ! 俺がお前を誇ってやるよ」
瞬時に、私は泣き崩れた。あの人の擦り寄り、存分に泣いてしまった。そんな『彼』は、私をやさしく包んでくれて、頭も撫でてくれた
「泣き止んだか」
「はい…」
「言いたいことはあるか」
「ありません」
「なら……なんで付いてくるんだよ!!!!??」
「虎之助がいるから…かなぁ」
彼の背中を追い、自然に笑顔が出てくる。呆れながらも、酷いことを言ってこないのは、やさしさなのだろう
「…………強くなりたいか」
「強くなりたいよ。虎之助となら」
笑顔を見せると、今度は深いため息をしだす
「よしっ! なら、俺につかまれ!! いい所に連れてってやるよ」
「言われなくても、何が何でもしがみついていくよ!」
背中に抱きつき、私はこの大地を去った。さよなら……私。『アタシ』は、虎之助と強くなるよ
おまけ
「あのさ、なんで虎之助はあんな噴水場にいたわけ?」
「あ? あれか。あれは…」
『爺さん!! マジでこの場所に伝説の『マンモス』がいるんだな!!』
『当たり前だ。マンモスがなぜかしらんがロシアのなぜかしらんがこの街で理由はしらんがこの噴水場に居るのだよ』
『ははっ、なら善は急げだ。待ってろ、肉ぅーーー!!!!!』
『……………さてと、エイプリルフールを誰か彼に教えてくれないでくれよ…私の命が危ないから』
「という情報を得たんだよ!!! そしたら、何処にも居ないじゃねぇか!!! って、ことで」
「あぁ………エイプリルフールか」
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