『兄貴!! 今日こそアンタをボコボコにしてやるぜ!』
『兄さん、テメェだけは生かしてはおけない』
『ねぇ、兄さん。終わりにしましょ』
目の前で、三人の人影が俺に呼びかける。いや、人なのか動物なのか…はたまた、違うのか。けど、俺の知り合いなのはわかる
これはなんだ? いや、理解できる。『夢』であると。何年ぶりだろうか、こんな夢を見るなんて
『ははは、ははははははははははははは!!!!!!!!!!!!!!』
この笑い声は俺だ。狂ったように笑い、笑い、笑い続ける。顔を手で覆い、もう片方の手は腹をささえる
絶望? いや、違う。これは嬉しいんだよ。久しぶりにこいつらに再会できたんだ…なら、楽しまなくちゃな
『来い、今度こそ喰ってやる!』
「………チッ。もう終わりかよ」
いつの間にか目が覚めていた。両目をパチクリ動かし、顔を横に向ける。ここは俺の部屋だ。ただ生活に必要なベッドと着替えが置いてある殺風景な場所
ムクリと起き上がり、窓のカーテンを開ける。眩しい光が俺に当たる。一瞬目を隠してしまったが、もう一度見開く
まだ、目がなれないな。つか、音が聞こえるんだが
『ドドドドド』と、音が聞こえる。まるで機械が動いているよう―――――
「やぁ!! お目覚めかね!! 虎之助くん!!!」
「ヘリから声かけてんじゃねぇ爺!!!!!!!!!!!」
窓をぶち開けるとそこは、軍人用のヘリからモーニングコールのようにニュートン博士がメガホン持ちながら起こしにきた
「やぁ、随分遅い目覚めだね。もう午後だよ」
「知ってるわ。ちょっと睡眠を楽しんだだけだっつーの」
上着を着ながら、長い廊下を歩く。右斜め後ろにはニュートン博士が付いてくる。どうやら暇なようだ
この人は暇になったら、俺に会いに来るらしい。いい迷惑過ぎるんだよ
「そういえば、マリアくん…だっけかね。彼女は無事『バグズ手術』が成功したよ」
「当たり前だ。そうじゃなきゃ、俺が困る」
「さすがは君が連れてきた人材だ。強者…いや『最強』に惹きつけられた子だよ」
お世辞に聞こえるが、それは本当のことだろう。爺さんはニコニコしているが、不気味にも見える…が、どうせ楽しんでいるだろう
あの後マリアをここに連れ込み、すぐさまこの変態に任せて、ここ数日会っていない。噂じゃ、妖精のような可愛い子が入ってきたと男性陣は言っているが
そんな事を考えながら、今日呼ばれた会議室に着いた
「そうそう、私はちょっと野暮用があるから、先に始めといてくれないかね」
「おい、俺一人で始められるかよ。中に誰かいんのか?」
「大丈夫だ。もうすでに私が二人呼んどいたから。その子たちに、話を聞きたまえよ。それじゃ」
と、またも不気味な笑顔を残して奥へといってしまった。仕方なく、俺は堂々と会議室に
入っていく
「あ、トラ」
「虎之助!」
なんともまぁ、美少女たちが迎えてくれたではないですか
「「むっ」」
めんどくさい方向によぉ
お互い顔を見合わせて、不機嫌さを出す。どうやら、仲良くないご様子で。たまに、その間で火花が散っているが気にしない
なぜなら、めんどくさいからである。別に俺は人に優しくしようとは思えないし、元々他人の喧嘩に興味はない
「あれ、どうやらマリア『さん』はトラとお知り合いのようだ、ね!!!」
「そーだよぉ。アタシは、虎之助と知り合い、でもあり!! 『親密』な、仲なんだよ!」
女同士の喧嘩は、なんで毎回こんなんだろうか? どこの世界でも、あまり変わらないな。単語を強調し、まるで牽制しあってるようだ
「それで、ウッド『さん』は虎之助とどういう仲なのかなぁ~???」
「あたしは、『昔』からトラと一緒に居るのだよ。そりゃ~、『昔』からね。そちらは…あぁ、トラに付いてきたミジンコちゃんだったね」
「良く言ってくれるね…その口閉じたほうがいいよ、小娘」
「ババアはすっこんでろ」
言葉というのは、便利だな。喧嘩になっても、大抵は言葉で解決してしまう。動物でも、威嚇するときは大声あげて威嚇する種も多い
「というか、なんなのかなぁその前髪。え、おしゃれ? その一部分だけ黄色なんて流行ってるの?」
「あぁん? 資料見させてもらったけど、アンタ売春してたらしいじゃん? あぁ、だからマリア・ビッチなんだな。納得、納得」
『ブッチン!』
人間の血管が切れる音とは、ここまでハッキリ聞こえるんだな。二人の顔は真っ赤になり、別に照れているわけではない
怒りである
このまま続けば、めんどくさくなるだろう。そして、多分この会話を聞き続けるであろう
仕方ない……。今まで唖然と立っていたが、席に座る
声の威嚇というのを、見せてやるか
「ビッチ」「駄シャレ女」
「ミジンコババ」「田舎もん」
「精○喰ってろ」「雑草でも喰ってろ」
『黙れ』
「!?」
「ッ!!」
突然の声。だが、これは呼びかけたのではなく、静まるために命令したのだ。そもそも威嚇というのは下から声をかけるのではない
堂々と猛々しく、勇ましく、上から目線で言うことだ。それはすなわち、『命令』だ。『お願い』と『命令』と違うように
二人とも驚いているが、その声をあげない
「何話しているかわからんが、とりあえず黙れ。ウッド、お前は挑発に乗らない奴だろ」
「ご、ごめん…」
「マリア、お前も年上なら年上らしく冷静になれ」
「すみません…」
「たく、そもそもお前らはなんでそこまで喧嘩するんだ。喧嘩っつーのは、飢えている奴等がやる行為であって、口喧嘩ってのはしょうもない事なんだ『じょうじ』よ。わかったか?」
「うん」「わかってるよ」
「トラ!!!!!!!」
「虎之助!!!」
「あぁ、わかってるよ」
『ドォン!!!!!』
当たり前のように、俺の背後に立っていた。ウッドとマリアは気づかなかったらしいな……なるほど、これが当たり前なのか
空気で重くなるほど、人は周囲を警戒しない。誰かに怒られると集中できない
「チッ、爺さんの差し金かよ。どんだけ、俺は騙されるんだ!?」
「怒鳴ってないで、まだあと十数体も居るから」
「天井がいつの間にか開いてる…多分、そこから入ってきたと思うよ」
『じょうじ』
『ぎぎぎ』
「あぁ、もう。朝飯はこいつ等で決定だ!!! お前らは下がって――――」
後ろに振り向くと、そこには誰も居ない。強者の背中に隠れる、弱者は誰も居なかった。まさかと思い、前を振り向くと堂々と立っていた
弱者が。その頂点の、女性が
「あんまり舐めないでほしいねぇ。あたしは、もうトラの背中には隠れない弱者じゃないからね」
「ゴキブリを見たときは、驚いたけど…。けど、虎之助が見てくれるなら何故だか平気なんだよ」
この世界に来て、俺は今一番驚いているだろう。なぜなら、奴らには弱者の影がすでに無くなっていたからだ
ありえない、嘘だろとも思った。けれど、目の前には弱者ではなく強者でもない……一体なんなんだ
「よしっ! いっちょやりますか!」
「守るために強くなるんだ!」
『ブシュッ』
二人は手に注射のようなのを持ち、すぐさま首に刺した。すると、中の液体が体中に入っていくのがわかる
ウッドの頭から触覚のようなのが生え、指の長さが変わる。マリアは腕の滑稽が変化して、太く硬くなっているが、それはまるで美しい色を出している
「そんじゃ、まずは君からいこうかな」
『じょ』
『ザシュ!!』
人差し指を害虫の頭に入れた。なんともまぁ、可笑しいように見えた。あんなんで死ぬわけがない…が
「あの害虫を皆殺しにしたあと、自害しろ」
『じょ、じょじょじょじょ!!!!! ぎぃぃーーーー!!!!!!!!』
『じょうじ!?』
『ドォン! バァン!!!』
同族が殴り合っている。それしかわからなかった
『じょうじ?』
『ぎぎぎ』
そして、あちらの方を見てみると何匹かが何かを探している。探してはいるが、見つからない
『ドォン!!』
突然の轟音。一匹の害虫の頭が軽く吹っ飛んだ。その様子をみて、ゴキブリたちは立ち止まっている
俺は嗅覚を頼った。見えない相手というのは何度か戦っており、その対処法を知っている。すると、すぐさま見つかった
これは……
「はぁ!!!」
『ドォン』
マリアだ。見えないと思ったが、あれは見えないのではなく『隠れている』。随分な迷彩色だとわかるが…凄いとも思う
こんな会議室で隠れるなんて…。そもそも、どうやってだ? マリアがわかれば、ちょっとだがその姿はクッキリ映る
『バグズ手術』…。今まで、人体実験だと軽く見ていたが、恐ろしい技術だ
口から唾液が流れ込んでくる。何故なら、俺は空腹だからだ。これなら、今度はこいつらが俺を満足させることができるかもと
「エメラルドゴキブリバチ。ゴキブリを操ることができ、ゴキブリ体内で子供を育てる魔性のハチ。なるほど、ウッドくんは使いこなせているようだが…」
博士は、その隣の女性を見る
「ニジイロクワガタ。これは観賞用で飼育されている虫だが、まさか『光の反射』を操って姿を隠すなんど……実に面白い。虎之助くんの周りの『人』は」
そこで、映像が終わった
おまけ
「うめぇ! もう朝飯くってないから、死ぬ所だったぜ!」
「うわぁ…何度見ても、慣れないなぁ。トラの食事」
「そう? なら、何処か行ってくれない。アタシは虎之助が喜ぶ姿を見たいから」
「なっ!? このデシャバリババアが!」
「やんの、田舎育ちの小娘!」
「うまうま!」
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