妖虎の漢花道物語   作:貧弱戦士

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第五喰

『兄貴!! 今日こそアンタをボコボコにしてやるぜ!』

 

『兄さん、テメェだけは生かしてはおけない』

 

『ねぇ、兄さん。終わりにしましょ』

 

 

 

目の前で、三人の人影が俺に呼びかける。いや、人なのか動物なのか…はたまた、違うのか。けど、俺の知り合いなのはわかる

 

これはなんだ? いや、理解できる。『夢』であると。何年ぶりだろうか、こんな夢を見るなんて

 

 

 

『ははは、ははははははははははははは!!!!!!!!!!!!!!』

 

 

 

この笑い声は俺だ。狂ったように笑い、笑い、笑い続ける。顔を手で覆い、もう片方の手は腹をささえる

 

絶望? いや、違う。これは嬉しいんだよ。久しぶりにこいつらに再会できたんだ…なら、楽しまなくちゃな

 

 

 

 

 

『来い、今度こそ喰ってやる!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………チッ。もう終わりかよ」

 

 

 

いつの間にか目が覚めていた。両目をパチクリ動かし、顔を横に向ける。ここは俺の部屋だ。ただ生活に必要なベッドと着替えが置いてある殺風景な場所

 

ムクリと起き上がり、窓のカーテンを開ける。眩しい光が俺に当たる。一瞬目を隠してしまったが、もう一度見開く

 

まだ、目がなれないな。つか、音が聞こえるんだが

 

『ドドドドド』と、音が聞こえる。まるで機械が動いているよう―――――

 

 

 

「やぁ!! お目覚めかね!! 虎之助くん!!!」

 

「ヘリから声かけてんじゃねぇ爺!!!!!!!!!!!」

 

 

 

窓をぶち開けるとそこは、軍人用のヘリからモーニングコールのようにニュートン博士がメガホン持ちながら起こしにきた

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ、随分遅い目覚めだね。もう午後だよ」

 

「知ってるわ。ちょっと睡眠を楽しんだだけだっつーの」

 

 

 

上着を着ながら、長い廊下を歩く。右斜め後ろにはニュートン博士が付いてくる。どうやら暇なようだ

 

この人は暇になったら、俺に会いに来るらしい。いい迷惑過ぎるんだよ

 

 

 

「そういえば、マリアくん…だっけかね。彼女は無事『バグズ手術』が成功したよ」

 

「当たり前だ。そうじゃなきゃ、俺が困る」

 

「さすがは君が連れてきた人材だ。強者…いや『最強』に惹きつけられた子だよ」

 

 

 

お世辞に聞こえるが、それは本当のことだろう。爺さんはニコニコしているが、不気味にも見える…が、どうせ楽しんでいるだろう

 

あの後マリアをここに連れ込み、すぐさまこの変態に任せて、ここ数日会っていない。噂じゃ、妖精のような可愛い子が入ってきたと男性陣は言っているが

 

そんな事を考えながら、今日呼ばれた会議室に着いた

 

 

 

「そうそう、私はちょっと野暮用があるから、先に始めといてくれないかね」

 

「おい、俺一人で始められるかよ。中に誰かいんのか?」

 

「大丈夫だ。もうすでに私が二人呼んどいたから。その子たちに、話を聞きたまえよ。それじゃ」

 

 

 

と、またも不気味な笑顔を残して奥へといってしまった。仕方なく、俺は堂々と会議室に

入っていく

 

 

 

「あ、トラ」

 

「虎之助!」

 

 

 

なんともまぁ、美少女たちが迎えてくれたではないですか

 

 

 

「「むっ」」

 

 

 

めんどくさい方向によぉ

 

お互い顔を見合わせて、不機嫌さを出す。どうやら、仲良くないご様子で。たまに、その間で火花が散っているが気にしない

 

なぜなら、めんどくさいからである。別に俺は人に優しくしようとは思えないし、元々他人の喧嘩に興味はない

 

 

 

「あれ、どうやらマリア『さん』はトラとお知り合いのようだ、ね!!!」

 

「そーだよぉ。アタシは、虎之助と知り合い、でもあり!! 『親密』な、仲なんだよ!」

 

 

 

女同士の喧嘩は、なんで毎回こんなんだろうか? どこの世界でも、あまり変わらないな。単語を強調し、まるで牽制しあってるようだ

 

 

 

「それで、ウッド『さん』は虎之助とどういう仲なのかなぁ~???」

 

「あたしは、『昔』からトラと一緒に居るのだよ。そりゃ~、『昔』からね。そちらは…あぁ、トラに付いてきたミジンコちゃんだったね」

 

「良く言ってくれるね…その口閉じたほうがいいよ、小娘」

 

「ババアはすっこんでろ」

 

 

 

言葉というのは、便利だな。喧嘩になっても、大抵は言葉で解決してしまう。動物でも、威嚇するときは大声あげて威嚇する種も多い

 

 

 

「というか、なんなのかなぁその前髪。え、おしゃれ? その一部分だけ黄色なんて流行ってるの?」

 

「あぁん? 資料見させてもらったけど、アンタ売春してたらしいじゃん? あぁ、だからマリア・ビッチなんだな。納得、納得」

 

『ブッチン!』

 

 

 

人間の血管が切れる音とは、ここまでハッキリ聞こえるんだな。二人の顔は真っ赤になり、別に照れているわけではない

 

怒りである

 

このまま続けば、めんどくさくなるだろう。そして、多分この会話を聞き続けるであろう

 

仕方ない……。今まで唖然と立っていたが、席に座る

 

声の威嚇というのを、見せてやるか

 

 

 

「ビッチ」「駄シャレ女」

 

「ミジンコババ」「田舎もん」

 

「精○喰ってろ」「雑草でも喰ってろ」

 

 

 

『黙れ』

 

 

 

「!?」

 

「ッ!!」

 

 

 

突然の声。だが、これは呼びかけたのではなく、静まるために命令したのだ。そもそも威嚇というのは下から声をかけるのではない

 

堂々と猛々しく、勇ましく、上から目線で言うことだ。それはすなわち、『命令』だ。『お願い』と『命令』と違うように

 

二人とも驚いているが、その声をあげない

 

 

 

「何話しているかわからんが、とりあえず黙れ。ウッド、お前は挑発に乗らない奴だろ」

 

「ご、ごめん…」

 

「マリア、お前も年上なら年上らしく冷静になれ」

 

「すみません…」

 

「たく、そもそもお前らはなんでそこまで喧嘩するんだ。喧嘩っつーのは、飢えている奴等がやる行為であって、口喧嘩ってのはしょうもない事なんだ『じょうじ』よ。わかったか?」

 

「うん」「わかってるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トラ!!!!!!!」

 

「虎之助!!!」

 

「あぁ、わかってるよ」

 

『ドォン!!!!!』

 

 

 

当たり前のように、俺の背後に立っていた。ウッドとマリアは気づかなかったらしいな……なるほど、これが当たり前なのか

 

空気で重くなるほど、人は周囲を警戒しない。誰かに怒られると集中できない

 

 

 

「チッ、爺さんの差し金かよ。どんだけ、俺は騙されるんだ!?」

 

「怒鳴ってないで、まだあと十数体も居るから」

 

「天井がいつの間にか開いてる…多分、そこから入ってきたと思うよ」

 

『じょうじ』

 

『ぎぎぎ』

 

「あぁ、もう。朝飯はこいつ等で決定だ!!! お前らは下がって――――」

 

 

 

後ろに振り向くと、そこには誰も居ない。強者の背中に隠れる、弱者は誰も居なかった。まさかと思い、前を振り向くと堂々と立っていた

 

弱者が。その頂点の、女性が

 

 

 

「あんまり舐めないでほしいねぇ。あたしは、もうトラの背中には隠れない弱者じゃないからね」

 

「ゴキブリを見たときは、驚いたけど…。けど、虎之助が見てくれるなら何故だか平気なんだよ」

 

 

 

この世界に来て、俺は今一番驚いているだろう。なぜなら、奴らには弱者の影がすでに無くなっていたからだ

 

ありえない、嘘だろとも思った。けれど、目の前には弱者ではなく強者でもない……一体なんなんだ

 

 

 

「よしっ! いっちょやりますか!」

 

「守るために強くなるんだ!」

 

『ブシュッ』

 

 

 

二人は手に注射のようなのを持ち、すぐさま首に刺した。すると、中の液体が体中に入っていくのがわかる

 

ウッドの頭から触覚のようなのが生え、指の長さが変わる。マリアは腕の滑稽が変化して、太く硬くなっているが、それはまるで美しい色を出している

 

 

 

「そんじゃ、まずは君からいこうかな」

 

『じょ』

 

『ザシュ!!』

 

 

 

人差し指を害虫の頭に入れた。なんともまぁ、可笑しいように見えた。あんなんで死ぬわけがない…が

 

 

 

「あの害虫を皆殺しにしたあと、自害しろ」

 

『じょ、じょじょじょじょ!!!!! ぎぃぃーーーー!!!!!!!!』

 

『じょうじ!?』

 

『ドォン! バァン!!!』

 

 

 

同族が殴り合っている。それしかわからなかった

 

 

 

『じょうじ?』

 

『ぎぎぎ』

 

 

 

そして、あちらの方を見てみると何匹かが何かを探している。探してはいるが、見つからない

 

 

 

『ドォン!!』

 

 

 

突然の轟音。一匹の害虫の頭が軽く吹っ飛んだ。その様子をみて、ゴキブリたちは立ち止まっている

 

俺は嗅覚を頼った。見えない相手というのは何度か戦っており、その対処法を知っている。すると、すぐさま見つかった

 

これは……

 

 

 

「はぁ!!!」

 

『ドォン』

 

 

 

マリアだ。見えないと思ったが、あれは見えないのではなく『隠れている』。随分な迷彩色だとわかるが…凄いとも思う

 

こんな会議室で隠れるなんて…。そもそも、どうやってだ? マリアがわかれば、ちょっとだがその姿はクッキリ映る

 

『バグズ手術』…。今まで、人体実験だと軽く見ていたが、恐ろしい技術だ

 

口から唾液が流れ込んでくる。何故なら、俺は空腹だからだ。これなら、今度はこいつらが俺を満足させることができるかもと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エメラルドゴキブリバチ。ゴキブリを操ることができ、ゴキブリ体内で子供を育てる魔性のハチ。なるほど、ウッドくんは使いこなせているようだが…」

 

 

 

博士は、その隣の女性を見る

 

 

 

「ニジイロクワガタ。これは観賞用で飼育されている虫だが、まさか『光の反射』を操って姿を隠すなんど……実に面白い。虎之助くんの周りの『人』は」

 

 

そこで、映像が終わった




おまけ

「うめぇ! もう朝飯くってないから、死ぬ所だったぜ!」

「うわぁ…何度見ても、慣れないなぁ。トラの食事」

「そう? なら、何処か行ってくれない。アタシは虎之助が喜ぶ姿を見たいから」

「なっ!? このデシャバリババアが!」

「やんの、田舎育ちの小娘!」

「うまうま!」


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