妖虎の漢花道物語   作:貧弱戦士

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第七喰

「暇だ」

 

 

 

暇すぎる。暇で暇だから、暇なのである。それは単純明快、彼の『暇』が訪れた。この世界では軽く驚く程度

 

だが、彼は『暇』。それは普通の人の倍と考えてもいいだろう。なんたって彼は『最強』。このうえなく飢えているのだ

 

今日は時間を潰すために、研究所をウロウロ出歩いている。素気ない顔で、両手をポケットに入れ威風堂々と偉そうに

 

 

 

「こないだ遊びにいったばかりなのによ……! あぁ、マジでイラつくぜ!!」

 

「きゃっ!?」

 

 

 

反射的に大声を出してしまい、横切るはずの女の子が倒れてしまった。衝動―――女は大声に驚いて、そして瞬間に倒れた

 

尻から倒れたわけではなく、そのまましゃがみ込んだのだ。まるで『忠誠』を誓っているように

 

 

 

「すまん、許せ」

 

「い、いえ……! あっ、資料が」

 

「俺が取るから、お前はゆっくりしてろ。瞼の下に薄いクマがあるな、最近徹夜した証拠だろう。手にインクやらパソコンでも打ち続けて多少へこんでいる。そのまま休め」

 

「は、はい!」

 

 

 

わずかな観察だけで、ここまで見抜くことができるのは虎之助だけだろう。女はそのまま一息つくように、こんどは尻をつけてペタンと座り込んだ

 

虎之助は一枚、一枚丁寧に資料をかき集める。一枚、二枚―――と、ある紙を取り目を奪われる

 

それは写真付きの個人情報が書かれている。虎之助はくまなく詳細を読み、器用に散らばった資料を片手でかき集める

 

右手に集めた資料が数十枚、左にはたった一枚の資料

 

 

 

「なぁ、女。この資料は一体なんだ?」

 

「あ、その資料はニュートン博士が独自に調べた人材です。私にもわかりませんけど、どうやらこれからスカウトに行くようですよ」

 

「ほぅ……なら、こいつもその人材なんだな」

 

 

 

虎之助が唯一興味をもった資料を、女の人に見せる。中身を確認して、頭をコクリと上下に動かした

 

 

 

「よし、ならこいつは俺がスカウトしてくるぜ!! ニュートン博士に言っとけ」

 

「は? ちょ!? そんなわざわざ行かなくても」

 

「じゃあな」

 

 

 

一言だけいい、無責任にも大切な資料を持ちながら颯爽に素早く去って行った。女は考えた……一体、あの顔とあの内容でどう興味が湧くのかを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この世界は残酷で穢れている―――――

 

なぜか――――――――

 

それは―――――――――

 

 

 

 

 

人間が存在するからである

 

 

 

 

 

人間という生命体が存在するだけで、世界は混乱し関係は壊れは自我を失う。そう、俺は今も過去も現在もそう考える

 

 

 

「ででけ、デブ!!」

 

「消えろ強姦魔!!!」

 

「地球のゴミ!!」

 

 

 

人間に罵倒されるのも慣れてきた。いや、別にそういう性癖なわけではなく…もう、どうでも良くなった

 

俺の周りには何もない、精神的に外面的に現実的に全てが無い。机には悪口という子供が考えそうな落書きと、背中に当たるごみクズ

 

静かに勉強するのが何が悪い?

 

 

 

「こら、お前たち」

 

 

 

だが、やはりサポーターという補助役は必要なのであろう。教壇で大声をあげる、青年のような先生…大人である

 

ゲームでも大人という役割は『支える』というキーワードが多い。主人公やそれを取り巻くキャラを支える

 

だが……

 

 

 

「生ゴミに燃やすごみ当ててどうするんだ」

 

 

 

俺はキャラでもなく、人間でもないらしい

 

先生は似合わない笑顔を浮かべ、生徒は全員大声をあげて笑いだす。そんなに面白いのか?

 

またも俺の背中でゴミを当てられる。痛くない、けれど……胸が痛い。頭が痛い。厭になってくる

 

黒板に書いてあるのを全てノートに書き、それでも俺は何もわからないまま書き続ける

 

だから言ったろ? 世界は残酷え穢れている……そして、敵が多いと。はは、頭の中でこう考えるなんて俺も末期だな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おじゃましまーーーーーーーすッッッッ」

 

『ガシャン!!!!』

 

 

 

突然、窓が全開に開かれた。いや、壊された。そして、声も聞こえた。吞気なセリフと裏腹に、その内は鋭いナイフと思える

 

一瞬誰も気づかなかった。いや……気づきたくなかったんだろう。こんな変な『生き物』が自分のクラスに入るなんて

 

皆は表情が固まりながらも、首を動かし窓側を見る

 

 

 

「おっ、テメェが『蛭間 一郎』だな」

 

 

 

どうやら、この『生き物』は俺に用があるらしい。冷静に俺も顔を向けて、そう気取っているが

 

目が合った瞬間

 

 

 

『ボキッ!!!』

 

 

 

力を入れすぎて、ペンが折れてしまった。指が震ええる、腕が震える、体が震える、脳が震える

 

こいつは、俺しか見ていない。視線を俺だけに向けている。奴はゆっくりと窓から降り、そのまま俺に向かう

 

ふざけんなよ、なんなんだこの『世界』は!!!!!!! 

 

声をあげてしまうほど、俺は爆発した。恐怖と憎悪が交る

 

 

 

「なるほど……フム………」

 

「ッ!!」

 

 

 

見られている。だが、可笑しい……別にみられるなんて慣れているはずなのに、こんな気持ち悪いなんて

 

『観察』だ

 

わかってしまった。こいつは俺を『観察』している。二度見よりたちが悪い

 

 

 

「へぇ…やっぱ虐められているんだな、テメェは」

 

「ッ!? そう…だが」

 

「たしかに外面的に虐められそうな風格だな。納得、納得。ははははははははははは!!!!」

 

 

 

嫌味を言われているが、言い返せない。たしかに正論だ。正論すぎて、俺は何も言い返す言葉も浮かばない

 

奴は高笑いしながら、視線を上に向けた。何が可笑しいんだ

 

だが、教室の空気は変わった。何人は気づいているはずだ、もうここの『支配者』は誰だか

 

 

 

「はは…そ、そうですよね。可笑しいですよね!!? あはははは、あははははははは!!!」

 

「せ、先生……」

 

 

 

一気に自分の立場が無くなったんだろう。先生は奴に従うように、己も笑い出す。だが、プライドが許さないだろうな

 

自分も同じ立場に立てないと、面子が丸つぶれ。先生は気づいてない、こいつの『怖さ』を

 

 

 

「ははははははははははははははは!!」

 

「あは、あはははははははははははははは!!!!!」

 

「はははははははははははははははははは!!!!!!」

 

「あはははははははははははははははははははは!!!!!!」

 

「はーっはっははははははははははははははははははは!!!!!!」

 

「あーっはっははははははははははははははははははははは!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うるせぇ」

 

『ザシュ』

 

 

 

奴の爪が先生の首を切り刻み、そのまま綺麗に床に落ちた。その落ちた音は教室に響きだした

 

血は、周りの生徒たちにかけられ放心状態。ここで映画だと女性は叫ぶだろうが、叫べない

 

先生のようになりたくない。そう心に堅く決心している、自分ルールだ。そして、教室の生徒たちが声も発せず出来た暗黙のルール

 

 

 

「あぁ~あ、服が汚れちまったよ。これスゲェ気に入ってるんだぜ? 酷いよな?」

 

 

 

俺に投げかけてきやがったッ!!!!!

 

どうすればいい? どうすれば、正解が出せる。わかるわけがない、こんな化け物の質問なんか、わかるわけがない

 

体中に危険信号、脳内ではアラームが。この化け物相手にどうすればいい。俺は……俺は……生きなきゃなんねぇんだ!!!

 

 

 

「知るか」

 

 

 

「まぁ、そうだな。洗えばいいし」

 

 

 

会話が……出来た

 

 

 

「はは、やっぱ俺が見込んだやつだ。この俺にそんな声をかけるなんて」

 

 

 

生きていることが、とても嬉しいと思う瞬間だ。心臓がバクバク動いているが、それでも俺は正常だ

 

すると、奴は俺に手をさしのばしてくれた

 

 

 

「そのめぐまれた体格…骨が太く、鍛えてないはずなのに筋肉が発達している才能。そして、虐められものなお孤高であり続ける気高さ。合格だ、俺の仲間になりやがれ」

 

「ど、どういう……」

 

「ハイ、決定だ。お持ち帰り」

 

 

 

奴の手が俺の顔を覆いかぶせ、そのまま気を失ってしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ん、ここは……」

 

「おう、お目覚めか。蛭間 一郎」

 

 

 

 




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