未来からきたロボットと一心同体となって異世界に行くことになりました。   作:魅禍月

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前回のあらすじ


なぜか美少女がいました。
見た目はいいのにすごく…重たいです。
美少女の正体は、未来からやって来た人型ロボットでした。


遺言

「未来から来たんだよな?何をしに来たんだ?」

 

目の前の美少女に問いかける。

 

「はい。ご主人様の遺言をきいたからここに来たんです!」

 

意気揚々に答える。

 

遺言って死ぬ前に言い残す言葉だったような。

財産をどうとか、指示するアレだ。

 

 

「俺の遺言?どんな事を言ったんだ?」

 

 

話についていけない俺に配慮してくれたのか、丁寧に説明してくれた。

 

 

「ご主人様は90歳でお亡くなりになりました。それでですね、その時に遺言として残したのが『異世界に行ってみたかった』なんです。」

 

 

 

それは遺言というか、生前の願望というか。

それにしても、いったい未来の俺は何を考えてそんな事を。

 

 

「でも、なんでそれでここに来ることになるんだ?」

 

「え?ご主人様?頭でも打ちましたか?大丈夫ですか?」

 

 

 

可哀想な子でも見るかのような目で見つめてくる。

いやいや、おかしいから。なんにも繋がってないから。

 

 

 

「は?いやいや、全く繋がりが見えないぞ。」

 

「はぁ、ご主人様、このくらいわかってくださいよ。死人を異世界に連れていける訳ないじゃあないですか。だから、過去に戻ってご主人様を異世界に連れていくんですよ。これでわかりましたか?」

 

「エ、マッタクワカラナイデス。」

 

 

俺に予想ができないようなことを次々といってくるので、理解が追いつかない。

だが、1つだけ分かった。

このままだと、異世界に連れていかれる。

行ってみたいか行ってみたくないか、で聞かれたら行ってみたい。

だが、俺が望んでいるのはそんなんじゃないんだ。

 

 

「ちょっと待ってくれ。それなら、こんな昔に戻ってこなくてもいいだろ?なぜ、わざわざお前を造ってない今に?」

 

「あのですね。私はタイムマシンで来たのですが、まだ試作品の物なので、細かな設定ができないのです。だから、この時代に来てしまったのは偶然だったはずです。おそらくですが。」

 

「試作品のタイムマシンを使ってまで過去に来る必要があるのか?」

 

「ご主人様の希望には答えないといけませんので!...まぁ建前はこのくらいにして、本当はですね。詳しく説明するのは面倒なので嫌ですが、私には『ご主人様の願いできるだけ叶えようプログラム』みたいなのが存在しているんです。それが遺言に発動しちゃったって訳です。ビビッときちゃったんです。」

 

 

元気いっぱいで答えてくれた。

主人の希望に答えるのは、いいことだと思うけど、過去の主人に迷惑はかけないで欲しかったな。

 

 

「という訳で異世界に行ってもらってもいいですか?」

「嫌だ言ったら?」

「私が悲しみます。」

「じゃあ嫌だ。」

「なんでですかあああ!」

 

 

 

涙目で手をブンブン振って嘆いている。

仕草も表情も可愛い。

流石は俺、俺の好みが良くわかっている。

 

でも、少し強く造り過ぎじゃないかな。

バットの素振りでもしているような、空気を切る音が聞こえる。

はっきりいって、怖い。

 

 

「まあ、いいです。」

 

 

少しして落ち着いたのか、手を動きを止め、飴っぽいなにかを渡してきた。

包み紙がないので、躊躇ったが、不思議とベトベトしていなかった。

 

 

「この飴っぽいなにかってなに?」

「飴です。」

 

 

端的にただそれだけ言った。

普通の飴玉にしか見えないが、不思議な効果を秘密道具だったりするのだろうか。

見た目だけ見れば、少し大きめの空色をしているただの飴玉だ。

 

 

「半分にしてみせましょう。」

 

 

少しニヤリとしてそう言った。

言った直後、飴を空中に放り投げる。

飴はそこそこ上昇するものの重力に従い落下してくる。

落下して美少女の手に乗る瞬間、飴は真っ二つに切られた。美少女は自慢げに切られたそれをキャッチする。

 

漫画であるなら、でかでかとドヤアアアという文字が顔の隣に現れるようなザ・ドヤ顔といえる顔をした。

ちょっと可愛い。

 

いやいや、よく考えろ俺。

飴をどうやって切ったんだ。

未来で俺はこの美少女をなんでこんなに物騒なほど強化してるんだ。

目の前にいるのは禍々しい怪物とはかけ離れている美少女だっていうのに、どんどんSAN値を削られていく。

 

 

「半分差し上げましょうか?」

「ああ、ありがとう。」

 

 

顔がこわばっているのが、自分でのわかる。

少しでもこの恐怖を飴で紛らわせよう。

ちょうど、口が寂しくなっていたところだし。

 

美少女が自分の口に入れたのを見て、俺も口の中に放り込んだ。

 

 

「あ、ちなみにそれを食べると私と同じ身体に......って待ってくださいいい!」

 

 

口に入れたのを見て、叫びながら迫ってきた。

なんだ?無料でくれるんじゃないのか?

こういう手口の詐欺なのか。

 

 

「何やってるんですか!何やってるんですか!口に入れるの早すぎなんですけど!おかしいですよ。なんか色々とおかしいですよおおお!」

 

 

何やらぶつぶつ言いつつ、身体を揺らしてくる。

それも骨折するのではないか、というほどに強く。

金銭は要求されないようで助かったが、痛い。

その勢いで飴を飲み込んでしまった。

 

 

「まだ間に合います!きっと間に合いますから早く飴を吐いてください。」

 

「ごめん、飲み込んじゃった。」

 

「あぁ...あぁ...。」

 

 

 

絶望された。

完全に諦めてしまっている顔をしている。

口も開けたまま、動かない。

 

...ん?

口の中に飴がある!

こいつが飴を吐き出せばいいんじゃないだろうか。

 

 

「お、おい。俺は飲み込んだけど、お前の方はまだ無事だろ?それを吐き出せばいいんじゃないか?...あと、口を閉じろ。」

 

 

俺にしては冴えてる。

口を閉じさせたのは、単に怖かったからだ。

どうもこのロボットは攻撃力に特化している。

歯が鋭利になっていそうで怖かった。

 

 

「そうですね!」

 

 

一気に希望を取り戻したようで目を輝かせている。

そして、俺のお願いの通り、口を思い切り閉じた。

 

 

 

ガリッ。

 

 

口を閉じた瞬間に生まれた音。

なにか硬いものを歯で砕いた時に発生する音だ。

つまり、これは...。

 

残された微かな希望は無残にも散っていってしまった。


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