呪いのビデオを見ちゃった・・・SDKが来る!俺は、SDKに追われて異世界まで逃げて来たよ!勇者、聖女、王様、魔王、神様。誰でもいいから助けてっっ!!!   作:LA軍

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ある日思い付きでばーっと描いた作品です。
軽い気持ちで読んでくださるとうれしいです。 


SDKに追われて異世界まで逃げて来たよ!勇者、聖女、王様、魔王、神様。誰でもいいから助けてっっ!!!(勇者編)

――呪いのビデオを見た。

 

  来る。

  やつが、きっと来る。

  

  どこまでも、どこまでも、どこまでも、

  

  SDKは来る!!!!!!――

 

 

 

 魔王領、最奥、エーベルンシュタット。

 魔王軍の最精鋭が守りを固める難攻不落の魔都。

 空には古代龍が舞い、陸は不死身のゴーレムが徘徊する。

 

 賑わう都の半数は、連れ去られた奴隷の叫びと、それを引き裂く魔族の饗宴で彩られる。

 

 そして、都の中心には空へと届けと言わんばかりの尖塔が連なる魔王城がそびえ。その地下には地上部分をはるかに超える地下帝国と言わんばかりの構造が蔓延る。

 

 その地下空間の最奥。星を貫かんばかりの地下深くに魔王の居室はあるという。

 

 人類は、魔王に脅かされていた。

 人を超える膂力と魔力。

 人を超える数と技術。

 人を超える知識と知恵。

 

 ありとあらゆる分野で人を凌駕する魔族は、この星を席巻しようとしていた。

 太古から魔族と戦い、平和を愛した人類の命運も途切れようとしていたその時。

 

 人の行く末を憂いた天上の者たちは、御使いを地上へと降ろす。

 天から遣わされた御使いが、魔族の軍勢を切り裂き、希望の礎ともなる因子を聖女に与えた。

 

 聖女は、魔族を退けた御使いと交わり、救世主を身ごもる。

 100日の攻防を経て、聖女を守り切った人類はその半数を犠牲にして希望を見出した。

 

 天の御使いは時は来たれりと、聖なる剣を地上へ突き立て、空へと帰還した。

 聖女は、御使いの子を誕生せしめ、勇者をこの世へ導いた。

 

 アルス

 

 聖なる王国から王は勇者に名を授け、一なる聖女の教えと、十なる魔術士の知恵と、百人の騎士から武術と、千人の信者から勇気を与えられ、彼のものは人類を救うべく彼の地へと旅立った。

 

 美しき戦士、

 勇敢なる僧兵、

 穢れなき聖女の妹、

 畏きエルフの長老、

 鋭き鉄を鍛えるドワーフ、

 

 異種族、異性を越え、絆を育んだ仲間たちと共に遂に魔都へとたどり着く。

 

 卑怯なる魔族の軍勢を退け、天の御使いの教えを受けて魔都の最奥へと侵入に成功したアルス。

 

 魔王城の地下深くに続く、転移魔法陣を前にして、彼は大きく息を吸い込んだ。

 

「みんな、ここからは俺一人で行く」

 

 勇者の宣言を、仲間たちが驚きの表情で迎える。

 当然、岩よりも固い絆で結ばれた仲間たちは、それを良しとしない。

 

 戦士は憤り、僧兵は悲しみで目を伏せる、聖女は慈愛の眼差しで見つめ、エルフは黙して語らず、ドワーフは苛立ちを隠さない。

 

「聞いてくれ。ここから先は更なる困難が予想される。きっと、誰かが死ぬよな目にあうだろう」

 

 そんなことは覚悟の上だと、仲間たちが口々に騒ぐ。

 勇者は泰然と構えて、仲間たちを信頼の眼差しでみつめる。

 

「だから、君たちに託す。地上の軍、地下の魔王軍親衛隊。彼らを引き付けてくれ」

 

 勇者は、非道とも言える策を持ち出す。

 

 仲間たちが魔都で暴れることで、魔王軍の精鋭を引き付けるのだ。

 そして、手薄になった魔王城の最深部に勇者が挑む。

 

 それは、仲間を信頼するとともに、勇者の優しい嘘だ。

 

 魔王軍の精鋭が動くことは間違いないだろう。

 それを数名で引き付けることは、決死隊のごときだ。

 

 しかし、

 

 しかしだ。

 

 その精鋭よりもはるかに強大な魔王を、勇者はたった一人で倒そうというのだ。

 

 それは、精鋭と戦うよりも遥かに危険で死に直結している。

 だから、勇者は?をついた。

 

 仲間を愛しすぎていた。

 

 誰一人掛けてほしくなかった。

 欠けた仲間を見たくなかった。

 

 だから単身挑む。

 

 最強、最悪の敵――魔王ズムフルトへと。

 

 そして、皆がそれを理解していた。

 勇者の優しい嘘とエゴに。

 だから、気付かないふりをして憤り、拗ねて見せた。

 

 しかし、内心は勇者の気持ちを汲んでいたのだ。

 

 勇者の期待に答えんと、ドワーフが雄たけびを上げ、エルフが古代魔法を解き放ち、僧兵が魔性を溶かす聖なる祈りの声を轟かす。

 

 そして、聖女は勇者を抱擁し、耳元で甘く呟く。

 そして、戦士は涙に霞む眼を閉じて、勇者と口づけを交わす。

 

 さぁ行こう!

 

 それぞれの決戦へ!

 

※ 

 魔都を震わせる爆音と破壊の狂騒曲がそこかしこに響く。

 一丸となった勇者のパーティが魔族の精鋭達を蹴散らしていく。

 

 その傍らで、捕らわれた人々を次々に解き放つ。

 奴隷たちは魔王軍から奪った武器を手に、勝ち目など考えずに遮二無二突貫し、勇者パーティと駆け抜ける。

 一人、また一人と奴隷たちは命を落とすが、その顔は晴れやかだった。

 

「皆、頼むっ」

 

 勇者アルス。

 いざ行かん!!

 

 転移魔法陣を起動させると、床に刻まれた魔法陣から青白い粒子が沸き上がり、勇者をほのかに照らし出す。

 眩しさに目を閉じると、周囲の空気が一瞬で冷え渡る。

 その先、開けた視界の先には、美しくも荘厳な黒曜石で作られた地下帝国が広がっていた。

 

 魔王城最奥部。

 

 古代龍と伍して戦う精兵と、亜神と比する近衛兵がいる。

 

 ――はずだった。

 

 シンと静まり返った広大な空間は、不気味なくらい静寂と空虚さに満ちていた。

 

「誰もいない・・?」

 魔都の騒動で全軍が出払ったというのだろうか。

 

 近衛兵すらいないという状況にアルスは驚きを隠せない。

 それと同時に仲間たちの安否が気になった。

 

 あれは、仲間たちを守るための嘘だった。

 

 しかし、それは現実となってしまったのだろうか。

 

 緊張と焦りのないまぜになった表情でアルスは魔王城最奥を突き進む。

 

 かくなる上は、魔王を打ち滅ぼし、仲間を凱旋するのみだ。

 魔王を倒せば、軍は瓦解する。

 

 仲間たちを守るためにも、今は一刻も早く魔王と対峙する。

 

 ステータスオープン!!

 

 心で念じると、目の前にステータス画面が表示される。

 

 この世界では誰もがステータスをもっている。

 このステータス画面で自分の強さ弱さを数値化してみることができる。

 同時に魔法やスキルの管理はここで行うのだ。

 

 個人差はあれど、スキルや魔法はステータス画面を通して使用する。

 

 しかし、その都度、ステータス画面を開くのは煩わしく、戦闘において大きな隙を生む。

 

 そのため、口頭で叫ぶだけで使用可能となるのが、スロットだ。

 ステータス画面をとおして、目の前に浮かぶスロットにスキルや魔法をセットすると、使用可能になる。

 

 一般人で2つ、訓練した兵士で4つ、騎士団長クラスなら6つとなる。

 そして、アルスはスロットを9つももっていた。

 

 それ故に勇者と言われることもある。

 

 目の前のステータス画面を睨み付け、ステータスをチラリと確認する。

 

 名前 アルス・ヒューライル

 性別 男

 種族 人間

 職業 王国臨時騎士

 称号 勇者

 

 筋力   1280 ×5

 敏捷   2040

 物理耐性 1058 ×2

 魔力   3044

 閃き    605

 魔力耐性 2033

 

スロット1:HP自然回復(リジェネーション)(超)

    2:MP自然回復(リジェネーション)(超)

    3:状態異常無効

    4:倍力 → 筋力×2

    5:剛力 → 筋力×3

    6:鉄壁 → 物理耐性×2

    7:テラファイア

    8:一刀両断

    9:緊急回避

 

 完全に物理万歳スキルで臨む。一部は広域殲滅用に魔法をセットしているが、場合によっては魔王戦では取り替えることもあるだろう。

 そして、アルスはスロット外の通常管理のスキル画面から、使用するスキルを呼び出す。

 スロットに納めていなくともステータス画面さえ開けば、スキルや魔法を使用することができる。ただ、その操作が若干煩雑なのと、隙が大きすぎて戦闘中などには向いていないという縛りがある。

 

 ポンと軽い音がして、スキルを選択する。

 

 気配察知(超)

 

 半径1kmの生物、機械、死霊等を察知する。その他にも、熱量や敵意なども感知する広域レーダーだ。

 それがスキル発動と同時に脳裏に浮かぶ。

 

 今アルスの脳裏には、魔王城の地下最奥部のほとんどが表示されていた。

 

「敵が・・・いない?」

 

 敵勢力を察知したなら脳内マップに赤い表示が現れる。

 

 しかし、その兆候はない。

 

 じっくりと時間を掛けてマップを精査していく。

 

「どこだ・・・どこにいる」

 

 マップ上の最奥部、玉座の間と思しき場所で赤い光点がある。

 

「いた!・・・魔王ズムフルトぉ!」

 

 赤い光点がチカチカと輝く位置を脳裏に刻む。

 そして、一気に接近しようとマップを閉じようとした。

 ――しかし、

 

「光が・・・消える?」

 脳内マップで唯一と言っていいほど存在していた赤い光点が消えていく。チカチカと、ジワジワと、ホソボソと、フッと消えた。

 

「何が・・・起きている?」

 あの光点が魔王であるという保証はない。しかし、敵勢力の存在しない敵の最重要拠点などあるのだろうか。

 いわば、敵にとっての最後の砦。

 ここに最大の勢力を配置していてもおかしくはない。

 

 魔王軍の将軍、英雄、そして亜神等のクラスがゴロゴロいると予想していただけに拍子抜けするとともに、嫌な予感がぬぐえない。

 罠にはまったような、あるいは、もっと致命的なミスをおかしているような。

 

「ん?」

 

 脳内マップを注視していたアルスは気付く。

 

 赤でもない表示。

 黄色だ。

 

 これは、中立を示す。

 他に青がある。

 それぞれの色に近いほど、敵味方の表示がわかるのだ。

 

 完全に敵対しているなら真っ赤な表示。

 完全に信頼しているなら真っ青な表示。

 敵でも味方でもないものは黄色の表示。

 他に機械や意識のない状態、あるいは動物などは緑で表示される。

 

 そして、今アルスが注視しているのは黄色だ。

 この表示、実はかなり珍しい。

 

 敵味方のハッキリしている世界。

 魔族と人間。

 とくに魔族と人間側には、アルスは有名に過ぎる。誰もが知っているため、赤と青に明確に分かれるのだ。

 

 まれに、世捨て人のような生活を送っている者や、変わり者に黄色がいるくらいだ。

 エルフやドワーフ等の他種族でも大抵はアルスを青と認識する。

 

「こんな地で・・・・何者だろう」

 

 違和感を感じたアルスは、ひとまず黄色の光点に向かう。

 一度は閉じようとしたマップだが、脳内に表示したまま前進する。

 

 敵の脅威が薄れた今、この方がタイムロスが少ないだろう。

 

 偶然にも魔王とその黄色の表示は比較的近いところにある。

 今も移動中なのか、マップ上を迷走しているようだが、その動きは遅い。魔族というよりも人間のような動きだった。

 

 ※

「これは・・・・・」

 

 アルスの眼前に広がる光景。

 そこに目を見張る。

 

 死、死、死。

 死体、死体、死体。

 

 まさに死体の山だ。

 いや、死体の絨毯というべきだろうか。

 

 玉座の間の前面に広がる「兵士溜り」。

 バリケードや様々な機械兵器、そして魔王を守るであろう最精鋭たち。

 

 それが全て動かぬ屍となっている。

 

 将軍クラスの3mはあろうかという鬼の死体を転がしてみる。

 

 ゴロリと仰向けになった死体は何の抵抗もなくだらしない様を晒している。

 その表情は・・・・・・

 

 苦悶、恐怖、絶望、理不尽、諦念、畏怖。

 

 そのどれもがないまぜになった表情だった。

 

 それはとても、

 異様な光景。

 近衛兵、将軍、宰相も含めて、魔王軍の最強の頭脳と戦力が壊滅している。

 

 未知の射出兵器らしき黒い鉄の武器から、火薬の匂いをした弾丸が全方位にばら撒かれている。

 大鬼にしか引けない巨大なクロスボウは天井、床を問わず、ありとあらゆるものに向かって発射した痕跡がある。

 勇敢な兵士たちは、何かを切り刻まんと一点に向け剣の衾を集中させたまま事切れている。

 

 そして、きらびやかな衣装をまとった死体は、

 

 あぁこの死体は、

 

 亜神だ。

 

 神の代理、人の超越者、神に最も近いもの。

 

 その亜神が、自らの目を貫き、視界を隠してなお何かに怯えた表情で死んでいる。

 

 ――亜神が、死ぬだと?

 

 死んでいるのだ。

 不死身とすら謳われ、神以外に亜神を滅することができない。亜神を倒すには封印するしかないと言われている。

 その亜神が死んでいるのだ。

 その数、8体。

 

「八家将・・・・か」

 

 魔族に取り入り、地上で好き放題を極めるため、人類に牙をむいた魔族の客将。魔王ですら制御できないとすら言われ。影の支配者ともされていた。

 実際、アルスも八家将相手にどこまで戦えるか自信はない。

 

 ただ、亜神が積極的に魔族に味方したという事実はない。

 自分たちに都合がいいという理由で魔族を利用していることは明らかだったので、人類側の厚遇を餌に懐柔する予定であった。

 そのために、彼らが喜びそうな神話級、国宝級のレアアイテムをしこたま準備していた。

 

 人類の存亡をかけた戦いだ。

 人間だけでなく、他種族も喜んで宝物をアルスに託した。

 

 それほどの相手だ。

 

 倒すことなど叶わない。

 ましてや・・・・殺すなんて、あり得ない。

 

 一体・・・なにが?

 

 マップ上に浮かぶ光点は近い。

 

 これらの死体となった精鋭達が侵入者に奇襲をかけるための隠し部屋が、そこかしこにある。

 その一室に、それはいるのだろう。

 

 死体をかき分けながら、隠し部屋に近づく。

 

「く、くるなぁぁ!!!」

 

 バンバンバンバンバンッ・・・

 

 隠し部屋から、溢れる殺気。

 耳を積んざつ破裂音と、火薬の匂い。

 

 未知の兵器!

 

 殺気を感じた瞬間、盾を構えたためそれは全て弾き返すことができた。

 それでも、腕に伝わる衝撃。

 

 鉄壁スキルを貫かないばかりの威力に驚く。

 

 この盾、赤龍の盾でなければ貫かれていたのではないか。それは言い過ぎか。

 

 脳内マップでは、光点は変わらず、黄色。

 

 この人物が攻撃してきたのは間違いないだろう。

 だが、殺気の対象はアルスではないようだ。

 

 では何に?

 

「出てくるんだ」

 

 感情を表に出さない。落ち着いた声で語り掛ける。

 

「・・っ!?人間?うそ・・・マジか?」

 

 隠し部屋の中で驚いた様子を隠すこともなく、彼が姿を現す。

 

 ※

 紛れもなく、人間だ。

 黒髪、黒い瞳、中肉中背、黄色い肌。

 

 東方の帝国出身らしい人物は、アルスを驚きの表情で見つめている。

「お、おいマジか。ここ魔王城だぞ?どうやって人間がここに来たんだ?」

 先ほどの怯えた表情をどこ吹く風、アルスを興味深げにみつめている。

 

 自分も人間だというのに、自分以外の人間がいることが心底不思議なようだった。

 

 そして、アルスはこの人物に心当たりがあった。

 

「魔王軍参謀長、ヤマト・ハヤシ・・・だな」

 

 その声は冷え切っており、同じ人間のよしみで気安くといった雰囲気はどこにもない。

 アルスの声と態度は明らかに敵対者に対するものだ。

 

 魔王軍参謀長。

 

 魔王軍の軍勢の頭脳のトップだ。魔王軍の動き、目標、今後の進路。

 全てこの男の元で計画されたものだ。

 

 砕かれた城塞、陥落した砦、蹂躙された市街、焼かれた村落、踏みにじられた無辜の人々、打ち破られた人類の軍隊。

 

 この男の手腕一つで魔族は破竹の勢いで人類を追い落としていったのだ。

 

 人類の敵、裏切り者、魔王の右腕、人類の殺したいリストNo.2だ。

 

「うぇ・・・・知ってんの?」

「当たり前だ!!」

 アルスの怒声にビクリと身をすくませるヤマト。

「貴様のせいで、いったい何人、何千、何万という人が苦しみ、死んだと思う!!」

「ひぃ・・」

「貴様自身、森林都市マルトを一人で虐殺したそうだな!」

 

 森林都市マルト。

 魔王軍侵略の契機となった事件。

 

 山深く、木々の豊かな地で、林業をもとに栄えた大都市。

 豊かな水流と豊富な木材、良質な鉱石を算出する一大都市は、この男ヤマトが何らかの方法で一夜にして人々を虐殺し尽くしたと言われる。

 

 事件が明るみになったのは、翌日訪れた商人が変わり果てた都市の姿と、そこに佇むヤマトを発見したことに基づく。

 

 すぐに捕らわれた彼は、精神を病んでいたが、後日牢を奇襲した魔族に拉致されて消息不明となる。

 しかし、後日、魔王軍参謀長として辣腕を振るい、特殊な発明、戦術を披露して魔王軍に貢献していることが確認された。

 

「貴様は最も許しがたい人間だ!」

「ま、まってくれ・・・マルトは違うんだ!あれは俺じゃない!」

「マルトは?あれは?・・・それ以外の魔王軍参謀長としての罪は認めるのだな!?」

 アルスの追求に、顔面蒼白になっている。

「や、あの、・・・だって、俺にどうしろっていうんだよ・・・」

 語尾がしりすぼみになり、何そうな顔で訴えるヤマト。

 

「来いっ!貴様の罪は、人類全体に裁かれるべきだ!」

「ひぃ・・・だって、だってよぅ・・・っていうか、あんた誰だよ!?」

 

 む。

 

「私を知らないのか?アルス。アルス・ヒューライル。王国臨時騎士だ」

 

「アルスって・・・・勇者アルス!!??」

「市井の人はそう呼ぶ。だが、そんな大それたものだとはおもっていない」

「いやいやいやいやいやいや!アンタ、あれだろ?単身で魔王第1師団を壊滅させたり、ホッカリー要塞を奪還したり、あとは・・」

 急にキラキラした表情でアルスの功績を語りだす。

 

「あと、あれだ。クラーケン討伐に、腐敗王の封印、・・・幼年の神龍を手懐けたってのも聞いたな」

 

 親し気に、背中に手を回し肩をバンバン叩く。

「そっかそっか、アンタがアルスか~・・・・や~安心安心!」

 

 なんだこいつは?

 

 うっとうしそうに手を払いのけると、アルスは厳しい口調という。

「私を篭絡しようとしても無駄だぞ。貴様には罪を償ってもらう」

 付き放つように言うが、ヤマトは一向に気にした様子はない。

 まるで、迷子が母親を見つけたかのように、安心しきった様子で纏わりついてくる。

「いや~・・・俺は最初っから、勇者にすべきだと思ってたんだよね。でも、魔王も結構すごい奴でさ。頼りになるかな~っとおもってたんだよ」

 

 魔王。

 

 そうだ、魔王ズムフルト。

 

「貴様、魔王を知っているのか」

「ズムちんだろ?知ってんぜ。親友だもんよ・・・あ、元親友かな」

「魔王と親友・・・やはり許しがたいな」

「そんな睨むなよ・・・」

 飄飄とした様子で死体の絨毯を気楽な様子であるくヤマトはやはりどこか異質だった。

 

 強さはまったく感じない。

 一兵士どころか、平民にすら負けそうなくらいの強さしか感じない。

 

 ヤマトに気付かれないように、ステータス画面を起動し、特殊スキル「鑑定」でヤマトを「観る」。

 

 名前 林大和(ヤマト・ハヤシ)

 性別 男

 種族 人間

 職業 魔王軍参謀長

 称号 呪われた異世界人

 

 筋力      6

 敏捷     12

 物理耐性    3

 魔力      0

 閃き   4950

 魔力耐性    0

 

スロットなし

 

 

「・・・・・・・・・なんだこれは?」

 これが人間か?

 スロットがなし、だと。

 それに異様に偏ったステータス。基本的なステータスは子供並みだ。

 閃きだけは、賢者クラスだが、他に見るべきものはない。

 

「・・・呪われた異世界人?」

 

 アルスの呟きを聞き取ったヤマトが神速で振り返る。

「ちょっ・・!バカ!!?ステータス画面ひらいてんじゃねぇよ!!!早く閉じろ!!?」

 異様な剣幕でまくし立てるヤマトに若干アルスが引き気味になる。とっくにステータス画面は閉じていた。

 

「言われるまでもない。・・・異世界人なのか?」

「ち・・・、そうだよ。俺はこの世界の外から来た、ただの凡人だ」

 

 ふむ、とアルスは少し興味を覚えて、ヤマトと語る。

「どうして、この世界に来た?破壊が目的か?」

「破壊~?んな意味ないことしねぇーよ。・・・まぁここに来たのは、偶然・・・みたいなものだ。」

「偶然とは?」

「聞いても意味ないぜ・・・元の世界で、ちょっとしたトラブルに巻き込まれてな、その途中で、トラック・・・荷車に曳かれたみたいでな、気が付いたら、神様とやらが、異世界に送ると言って来たのさ。まっぴらごめんだったが、まぁ、いつの間にか、この世界にいて、魔王軍に拾われたってだけだよ」

「よくわからんが、神が貴様を助けたのか?」

「さぁ、神様の考えはよくわからないけど、時々、異世界に人を送って変化を与えることが目的とか、そんな感じの事言ってたな」

 ギリっとアルスの歯が鳴る。

 

 神がこの男を遣わしたのか。

 

 わからない。

 人類を苦しめる事が神の目的だというのか。

「ヤマト・・・貴様はある意味、犠牲者なのかもしれないな。だが、罪は消えるものではない。覚悟はしておけ」

 

「・・・・・」

 軽く肩をすくめて見せるヤマトには反省の色は見えない。

「さて、魔王を倒す・・・貴様はどうする?・・・私を止めるか?戦うか?」

「はっ?」

 

 全く分からないという顔でヤマトが答える。

 

「ズムちん・・・魔王は、もう死んだよ」

「なに?」

「死んだ。SDKに殺された」

 

「バカな?魔王を殺せる存在がいるはずがない。亜神と相打ったのか?」

 アルスの様子にヤマトは表情を消して淡々と語るのみ。

「亜神も、将軍も、ロイヤルガードも、ゴーレムも、ここにいた奴隷たちも、み~~~~んな、死んだ。・・・俺以外な」

 クルっと回って、眼下の死体を指し示す。

 

 たしかに、ここには死体の絨毯がある。

 出来立てほやほやで、今にも動き出しそうな死体。

 

「だが、魔王は別だ。有象無象とは比べ物にならない。・・・私は魔王に死を確認する。貴様に騙される気はない」

「好きにしなよ。ズムちんはあの先さ・・・」

 少し、辛そうな顔でヤマトは巨大な扉の先を指し示す。

 

「そうか、行くぞ」

「は?え?・・・お、俺はいかないぞ!」

 後ずさるヤマトは頑として言うことを聞かない。

 

「黙れ、逃げようたってそうはさせない!」

「い、いや、逃げないって、アンタといくよ。マジマジ!だけど、そこには入らない・・・絶対入らない!」

「いい加減見苦しいぞ!来いっ!」

 

 ヤマトの襟首を掴むと、ズルズルと引き摺りながら、玉座の間へと進む。

「やだやだやだ!離せ~!!まだ、いる。まだいるんだ!・・・SDKがそこにいるんだ!!」

「えぇい!黙れ!」

 

「頼むよ!なんでもするから、放してくれ!・・・靴でも舐めるよ。ケツも貸すよ!金も女も奴隷も家も領地もあげるから!!」

「貴様、何を恐れている!?魔王は死んだのだろう。ならば、何を恐れる必要がある。それとも、魔王が死んだのは嘘か?」

 

 少し嗜虐心をもってヤマトを追い詰めるアルス。この男にはこれくらい許されるだろう。

「な、なぁ、あんた勇者だろ?人々の希望だろ?なら同じ人間の誼で俺も助けてくれよ!!」

「貴様は別だ!!!」

 

 まったく、うっとしい。

 

 ステータス画面から、気配察知を使おうとして、やめる。

 どうせなら、スロットに入れてしまおうと考え、ステータス画面からスロットの入れ替え作業を行う。

 

 ヤマトはステータス画面を恐怖の眼差しで見つめている。

「は、は、は、はやく閉じろ!!早く~~~!!!」

 

 名前 アルス・ヒュ呪ライル

 性別 男

 種怨 人間

 職業 王国呪呪騎士

 称号 勇者

 

 筋呪   12呪0 ×5

 敏捷   2040

 物理耐性 1怨58 ×煮

 魔力   3044

 閃呪    6貞5

 魔力耐性 2033

 

ス貞ット1:呪呪自然回復(怨ジェ呪ーション)(超)

    2:MP自然回復(リジ貞ネーシ子ン)(呪)

    3:状貞異常無効

    4:倍力 → 筋力怨2

    5:剛力 → 筋力×3

    6:鉄壁 → 物理耐性×2

    7:気配察知(超)

    8:鑑定

    9:緊急回避

 

 

 よし、気配察知と鑑定を入れておこう。

 どうも広域殲滅戦は発生しそうにない。

「ん?ステータスが・・・?」

 

「やばいやばいやばい・・・・・早く閉じろ!!!」

 

 うるさいな。

 アルスはうっとしげにしながらも、ステータスを閉じる。

 なにか、ステータス画面に異常が発生していたような気がしたが、まぁ大事の前の些事だ。

 

 気配察知(超)を起動する。

 

 玉座の間に意識を集中すると、内部の様子が脳内に表示される。

 

 やはり、玉座付近に赤い光点はない。

 

 青も黄色も緑もない。

 なかには、生きるもの動くものはなにもないようだ。

 

 魔王は死んだ。

 それは、本当なのかもしれない。

 

「ん?」

 

 アルスの脳内マップに小さな異変が起こる。

 最後に魔王がいたと思しき赤い光点の位置に、見慣れない符号が現れる。

 

 「呪」

 

「なんだ?初めて見るな・・・文字か?光点ではなく?」

 

 そして、「呪」の文字は次々と光点が点滅するように、文字を変化させる。

 

 「呪」「貞」「怨」

 

 チカチカチカチカと、文字が躍る。

 

 そこに何かがいるのだ。

 

「やはり・・・・魔王ズムフルト!!生きているな!!!」

 

 一際気合を奮い立たせると、アルスは意を決して扉を開く。

 

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

 ヤマトの絶叫は、扉の開く重々しい音にかき消される。

 

 ゴォォン!!!

 

 両開きの巨大な扉は、すさまじい質量で内部へと開いていった。

 

 そして、その先には豪奢な玉座にかける巨大な人影。

 

 4本の腕、3つの瞳、禍々しい角、浅黒い肌。筋肉質の体躯。

 魔王ズムフルト!

 

 

 

 ――の死体があった。

 

 

 

「魔王・・・か、く、ご?」

 勢い込んで部屋に飛び込んだアルスが眼にした惨状。

 

 玉座に沈み、苦悶、恐怖、絶望、理不尽、諦念、畏怖。そして、恨み。

 

 その表情で事切れた魔王。

 

 

 部屋の空気は冷え切り、まるで墓場のようだ

 

「ひ、ひぃ・・・いる。きっといるぞ・・・」

 

 ヤマトがブツブツとうつろな表情でつぶやく。

 うっとしげに、襟首を離すが、もう逃げるそぶりはない。

 油断なく視線を周囲に向けているだけだ。

 

 部屋の惨状は、こう・・・なんというのか。

 

 まるで泥棒に押し入られたかのようにあれている。

 

 玉座の間でもあり、司令塔でもあったのだろう。

 多数の通信魔石に、映像投射魔石、魔道投影機、遠視水晶などが所せましと並べられている。

 

 そして、そのことごとくが叩き割られている。

 とくに、映像を映す魔道具の類は例外なく、粉々に砕かれていた。

 

 物取りというよりも、証拠隠滅のような雰囲気だ。

 

「なにがあったんだ?」

 油断なく聖剣を構えるアルスは、そろそろと魔王の死体へと近づく。

 例え死体でも、首を切り落とさなければ安心できない。

 

 その後の首実検にも必要だ。

 

 玉座に近づくと、死してなお存在感を放つ魔王。

 

 その巨躯に恐れを抱きつつも、足元にたどり着く。

 

「魔王ズムフルト、その首もらい受ける!!」

 ちゃきり、と聖剣を構えると、大上段に振りかぶる、

「ひひぃぃぃぃ・・・・・貞、SDK!!!!!」

 ヤマトの絶叫が邪魔をする。

 

 

 

 そして、

 

 

 

 いた。

 

 

 

 ほぼ、ゼロ距離。

 魔王の巨躯に隠れていたとしても、気付かないはずがない。

 

 

 

 何がいた。

 何がいる。

 何かがいた。

 何かがいる。

 

 

 ツツと、額から冷たい汗が流れ落ちる。

 

 魔王の巨躯の影から、

 白い人影が、

 長い黒髪で表情を隠したソレが、

 

 

 ぬぅ、と。

 

 

 まるで昆虫のようなギクシャクとした動きで、

 床に届きそうな汚い黒髪をサラリサラリと揺らしながら、

 

 アルスに近づく、

 

 性別は女・・・・だろうか、

 ただ分かるのは、異質。

 

 敵ではない。

 

 そういう次元じゃない。

 あえていうなら、現象。

 

 あぁ、これが・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 死か。

 

 

 ※

「あぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 根源的な恐怖に支配されたアルスがソレに聖剣を叩きつける。

 ザクリと当たる手ごたえ、恐ろしいまでの切れ味の聖剣は、ソレを切り裂き床の感触を伝える。

 

 それだけだ。

 

 血も、

 服も、

 髪も、

 

 まったく変化なく、ただ、切り割いた感触だけが手に残る。

 

「え?んな?えぇ?」

 慌てて、剣を引き抜き距離を取る。

 スキル緊急回避を使用して、攻撃圏内から遠ざかるが、

 

 意に介した風もなく、気味の悪い昆虫のような動きで、ズルリズルリと近づく、動きは遅いというのに何故か妙に追いつめられる。

 

「何だこいつは!!??」

 

 スキル「鑑定」

 

「止せ!!!」

 ヤマトが叫ぶ。だが、もう遅い!

 

 

 怨念 貞SDK子

 呪い 忌

 呪怨 ビデオ 

 貞呪 怨念

 称号 異世界の呪い

 

 筋力   ゆjd8おjk2

 敏捷   7bじぇw088

 物理耐性 ねうぃれwhfじ

 魔力   d7whんdき0

 閃き   んsどhす呪んう 

 魔力耐性 fjsdhdsj

 

スロット1:呪殺

    2:念写

    3:映像転移

    4:呪い呪い呪い

    5:怨念怨念怨念

    6:ひひひはははははは

    7:あああああああああ

    呪:貞

    怨:ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ

 

 

「ななななな?なんだこれは?」

 アルスが叫ぶ。

 これは、ステータスじゃない。

 

 人じゃない。

 魔族じゃない。

 死霊じゃない。

 

 これは、アレは、

 

 なんだ!!??

 

 

 

 バンバンバンバンバンッ

 

 ヤマトの持つ未知の兵器から高威力の弾丸が発射され、アレに命中する。

 まるで聞いているように見えなかったが、ヤマトの目的は別にあった。

 

「はやく来い!!」

 いつの間にか玉座の間の外へ逃げていたヤマトがアルスへと声を掛ける。

 

 さっきの兵器での攻撃はアルスの意識を反らすためだったようだ。

 

「SDKは、扉を開けない。こいつを塞ぐんだ!時間稼ぎにはなる」

 

 何か知った風な感じで話すヤマトに違和感を覚えるが、今は素直に従う。

 

 ぎぃぃぃぃ・・・・・・

 

 開けた時とは逆に酷く重い扉は中々閉まらない。

 

 視界の外でソレが徐々に近づいてくるのが見える。

 

 やばいやばい・・・・

 はやくはやくはやく・・・・

 

 もう少しだ!

 

 すぐ目の前まで、アレがいる。

 

 その鼻先で扉を閉める。扉で引き潰さんばかりの勢いで!

 二度と出てくるな!

 

 徐々に小さくなる扉の隙間。

 ヤツが扉のすぐそこ、アルスと扉を挟んで数センチのところにいる。

 

 

 ヤツが顔を起こす。

 

 

 汚い黒髪がハラリハラリとはれて、青白い顔をわずかに覗かせて、

 その隙間から、

 

 

 目が、

 

 

 見えた。

 

「いぅぅ・・・・」

 

 ドロリと濁った眼、極限まで下向きに絞った巨瞳。黒く黒く、ネバネバとした黒。

 まるで井戸の底のような。

 

「アルス!」

 ヤマトが力を貸し、わずかに残った扉の隙間を閉めた。

 

「息をしろ!!忘れろっ!大きく深呼吸だ!・・まだ、まだ大丈夫だ」

 

「うぅぅぅ・・・・ぅぅぅぅぅ」

 

 なぜだ・・・・スキルが、状態異常無効だぞ・・・

 HP自然回復(超)だってある。

 多少のHP低下程度なら意に介さないはずだぞ。

 

「ガハァ・・・ガハ、ガハァ・・・」

「水だ。ゆっくり飲め」

 ヤマトから、水筒をひったくると飲みほさん勢いで口を付ける。

 

「プハっ・・・ハァハァ」

「落ち着いたか?」

 ヤマトがちらりと閉まった扉を見る。

 その先からは何の気配も感じないが、ソレがいるのがわかる。

「しばらくは大丈夫だ」

 ヤマトの言葉に反応したアルスがその胸倉を掴む。

「き、貴様!ぁ、あれは・・・なんだ!?」

「言っただろ・・・SDK」

「SDK・・・・ソレはなんなんだ?」

 

 ヤマトはつらそうな表情で、一言だけ答えた。

 

「俺の世界の呪い。俺を追って異世界まで来た・・・呪いだよ」

 

 呪い。

 

 ヤマトはそういう。

 

 しかし、アルスも呪いの類は知っている。

 この世界にも呪いはあるのだ。

 むしろ、普通にありふれている者でもある。

 アイテムや装備、スキルにも呪いに関するものは多い。

 

 そして、それは防ぐことも解除することも、また相手に掛けることもできる類のものだ。

 

 物理毒に対しての精神毒といった類のもの、という扱いだ。

 

「あれが、呪い?呪いだって?」

「・・・そうとしか言えない。ただ、この世界の呪い解呪の類では何の効果もない」

「バカな。あれは呪いなんて生易しい物じゃないぞ。・・・あれは、自然現象だとかそういった類のものだ。人や生きとし生けるものに手を出せるものじゃない。神の所業だろう!?」

 

「神・・・か」

 自嘲気味に笑うヤマトに視線の先には、8体の亜神の骸。

 

「わからないんだ。・・・あいつは俺を殺すためだけにこの世界に来た。だが、元の世界にもあいつはいる。いくらでもいるんだ。人がいる限り、ルールに則ってSDKは必ず殺す」

 諦めと、後悔をにじませるヤマト。

 

「魔王なら何とかしてくれるんじゃないかと思ったが・・・・時間稼ぎにしかならなかった。そして、」

 じっとアルスを見る。

「勇者アルス。あんたでもSDKには敵わない様だな」

 バカにした風でも、軽蔑した風でもなく。ただ、諦めをにじませる。

 

「ふざけるな!私が屈すると思うのか?・・・マルトを滅ぼしたのは、SDKなんだな?」

 察し良く、アルスはヤマトが虐殺したとされる森林都市マルトの出来事と、魔王城の惨状を結び付けた。

「ご名答。異世界に来た俺は、SDKから逃げきれたと思ったんだよ。転移先のマルトで平和に異世界ライフを楽しむはずだったんだ」

 

 遠い目をして、マルトを思い出しているんだろう。

 

「冒険者ギルドとか、モンスター、魔法にスキル。思い描いた異世界があった。そこでやり直せるはずだった」

 

 ギリリとこぶしを握り締める。

 

「だが、SDKは来た。俺を追って世界を跨いだ。・・・しつこいよな」

「それで、貴様の巻き添えでマルトは滅んだのか」

 コクリと頷く。

 

「テレビもビデオもDVDもない世界だぜ?どっから出てくるよ? 信じらんねぇよSDK」

「てれび? 何の話だ?」

「SDKが姿を現すには、テレビ・・・映像機器が必要なんだ。そこから湧いて出てくる。どこであってもな」

 

 アルスは玉座の間の映像を映す魔道具が破壊されている様子を思い出した。

「あれらを破壊したのは貴様か?」

「ん? あぁ、当然だろ。軍議の最中にSDKが出てきそうになったんだ。慌てて破壊したよ・・・無駄だったけどな」

 

 

 ※

「とりあえず、ここを離れよう。しばらくは時間を稼げるはずだ」

 ヤマトはあっさりと魔王城を見捨てる様子で立ち上がる。

「人類軍に投降するよ。刑場でも牢屋でも好きにしてくれ」

 未知の兵器をポイっと投げ捨てると、両手を頭の上に掲げる。

 

 よく変わらないが、彼の世界でいうところの降参の合図なのだろう。

 

「潔いな。極刑は免れんだろうが、魔王の首を取れなかった以上、貴様を連れ帰る必要がありそうだ」

「そうそう、俺は役に立つぜ?今度は人類軍の参謀を務めようか?」

「調子に乗るな!」

 コツンと軽くこづいてやる。

「いでっ・・・冗談だよ」

 

 軽い調子のヤマトに呆れながらも、ふと思いつく。

「なぁ・・・貴様が死ねばSDKはいなくなるのか?」

「・・・・多分な。ここにはビデオもテレビもない。俺にまとわりつく呪いがこの世界ではSDK唯一だろうな」

 

「そうか・・・」

 

 アルスは聖剣に力を籠める。

 この男は、生かしておいてはいけない。

 それだけはわかる。

 

 だが、どうするというのだ。

 

「俺を殺すか?・・・それもありだよな。ズムちんには悪いことをしたよ。・・・でも俺は死にたくなかったんだ。死にたくないんだ」

 懇願する風でもなく、ただ感想を淡々と述べる。

 

 

 

 なぁ、生きようとするのはわるいことなのかい?

 

 

 

 そう、目で語る。

 

 ふと、肩の力を抜く。

 聖剣から手を放すと、ヤマトを見る。

 

 ただの凡庸な人がそこにいた。

 不運な呪いに追われ、巻き添えで多数の人を殺し、魔王まで殺してしまった男。

 

 ふむ、魔王を倒した一点だけを見れば、英雄か。

 

 亜神までも滅ぼしている。

 

 人類の希望、勇者アルスに成しえなかったこと。

 それをヤマトは成しえた。

 

「まぁ、悪いようにはしないさ」

 

 アルスはヤマトに対して感じてものを再確認する。

 早々嫌いになれる奴でもない。

 

 ただの普通の人間だ。

 

 勇者の権限を使ってでも、命だけでも助けてやりたい気になった。

 

「帰るか」

 頭をポリポリかきながら、ヤマトに告げる。

「そうか?俺はどうしたらいい?」

「来るんだろ?」

 そういって手を差し出した。

「ロンのもちよ」

「時々わけのわからん言葉を使うな、貴様は?」

「ハハハ、現代っ子なもんでな」

「ますますわからん」

 首を振りつつ、そう悪い気分でもない。

 あとは、地上で戦う仲間に合流するだけだ。

 

 スキルですぐにでも、駆けつけられるだろう。

 スキル「転移」を使えば、記憶した場所まで一気に転移できる。

 仲間と別れた場所まで一っ跳びだ。

 

 

 

 そして、ステータス画面を起動した。

 

 

――やめろ!ステータス画面を開くな!!――

 

 

 ヤマトが頑なにステータス画面を開くのを拒否していたことを思い出し、

 

「なぁ?なんでステータス画面を・・・」

 

 名前 怨念ス・貞ュ呪呪怨ル

 性別 呪

 種怨 忌死

 職業 骸忌呪呪騎死

 称号 呪われし勇者

 

 呪殺   死屍呪忌 ×死

 目呪   貞霊死子

 呪い死体 あははは ×煮

 魔死   呪殺腐肉

 閃呪    S貞水

 井戸の底 ぃぃぃぃ

 

死貞ッ水1:呪呪怨念怨念(怨忌死呪ー貞DK)(怨)

    に:呪いビデオ死(SD貞死ー井戸子)(呪)

    散:腐乱井戸水死

    死:怨死 → 腐力怨2

    5:女腐 → 白い×3

    緑:目死 → 黒い髪死×2

    7:早く死ね(超)

    8:死肉

    苦:井戸の底

 

 そして、ステータス画面が砂嵐に包まれる。

 

「だから、言っただろ・・・ステータス画面を開くなって・・・・」

 

 砂嵐が収まり、映像が映し出される。

 

 井戸

 

 そこから、

 

 手が、

 

「映像機器がないって油断してたんだけど、ステータス画面ってさ、まるでテレビだよな・・はは」

 

 体が這い出る。

 

 白い服の、

 

 長い汚い黒髪に、

 

 SDKが、

 

 来る!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!」

 

 ステータス画面から――ゾロリと這い出たSDKは勇者の前に立つ。

 

「あ、ははは。勇者、聖女、王様、魔王、神様。誰でもいいから助けてっっ!!!!」

 

 ヤマトはその場から全力で駆け出して行った。

 勇者を見捨てて・・・




なろう主作品「ナチスファンタジー」もよろしくお願いします。

http://ncode.syosetu.com/n3024dw/


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