クロックリターン・プラネット   作:機械系ヒロインバンザイ

6 / 10
何度でも言うが、この作品はノリと勢いで書いている。原作を読み返して矛盾がないか確認したらなんかはほとんどしてない!



だから、設定の相違とか突っ込みたいところとか原作での時系列なんかは気にしちゃいけない。


ノリで書いてるので、今後原作にはない展開とかくだらないオリ敵とか出して無理やり原作の後の時系列を捏造する、かもしれない。


6話

区画・三重に侵入し、相対機動で一気に移動。かつて八束脛を初めて発見した場所へ急ぐ。そこへ行けば高い確率でアンクルに出会えるはずだ。

かつて通ったルートは覚えている。それをなぞるようにして突き進み、出くわす障害はリューズが鎌で切断する。

 

ーーー恐ろしい、とリューズは思った。

 

アンクルと戦うことが、ではなくこの場にマリーがいないことがだ。

アンクルは人を殺すことができない。機械化された全身義体でさえ人間性が残っているとアンクルが判断すれば命は助かるので心配する必要はないはずだが、それでも身代わりとなる人間がいないのは少し心細い。

 

ーーー世界は繰り返すほどに変化する。

 

記憶と全く同じ過程を辿っても、ほぼ確実になんらかの変化が生じる。それは何度も身を以て体験していた。

 

 

ーーー同じ日付なのに天気が違った。

ーーー安全な道を歩いていたはずなのにいきなり爆撃を受けた。

ーーー味方だったはずなのに突然裏切られた。

 

 

バタフライエフェクトという言葉がある。一つの小さな変化が連鎖的に他の事象に影響を与え、最終的な結果を覆すことはままあることだが、それは何も行動に変化が起きなくても『記憶がある』という差異だけで大きな変化を呼び起こしてしまう。記憶の通りに行動しようとするあまり無意識のうちに些細な挙動が少しだけ変化し、それが連鎖して周囲の受け取り方、行動が変わってしまうのだ。

 

ーーー特に、見浦ナオトならば。

 

見浦ナオトの聴覚はリューズを構成する微細な歯車一つ一つの動きを敏感に察知する。もし記憶通りに振る舞おうとしても、歯車の動きを察知され、それがナオトの行動に変化を及ぼしてしまうかもしれない。同じ行動をしたとしても、周囲の状況も同じになるわけではないのだ。

 

 

 

 

 

 

やがて、目的の場所に辿り着く。

ナオトの記憶では大穴が空いていたが、今はただ床が広がっているだけだ。薄暗くてよく見えないが、目立つ傷は何一つ見当たらない。

 

 

「…リューズ」

 

「はい、もちろん承知しております」

 

床を切り裂き、リューズはナオトを抱えて落下。300メートル以上もの高さをものともせずに着地すると、目の前には例の巨大兵器。電磁技術を用いて作られた忌々しい兵器、八束脛(ヤツカハギ)だ。

 

 

 

「やっぱ、でけえ。アンクルちゃん助けた後、これどうするかな…?」

別に秋葉原がどうなろうが知ったこっちゃないが、もしも東京が壊滅してパージされる、なんてことにでもなれば日本全体に掛かる負荷が大きすぎる。それに、全く無関係でいられる保証はどこにもない。

 

しかし、そんな考え事をしていられる余裕はあまりなかった。ナオトの耳が、近づいてくる小柄な自動人形(オートマタ)の存在を察知したからだ。

 

「じゃあ、手筈通りよろしく」

 

「承知いたしました。ーーーー相対機動(ミュート・スクリーム)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー実のところ、ナオトを囮にしたとしてもアンクルを相手に勝てる見込みはほとんどなかった。

何せ、以前とは周囲の環境が大きく異なる。床はアンクルの攻撃で容易く穴が空くし、衝撃で地下の大空洞に落ちかねない。

 

ーーー故に、先手必勝。

 

アンクルが戦闘モードに移行する前に虚数運動を開始し、完全な不意打ちで決着をつける。それが今取れる、最も勝算の高い戦法だ。

全力で加速し、一気に距離を詰め、視界にその姿を収めると同時に鎌を振るった。

 

 

 

ーーーバキン、と高い音が虚数時間に支配された空間に響く。

 

 

「……っ⁉︎」

 

戸惑う暇など無い。突如攻撃を中止し、慌てて距離を取る。攻撃を仕掛けた鎌が刃の半ばから折れていた。

 

 

(なるほど。この世界では不意打ちは効かないのですね)

 

アンクルは既に戦闘状態に移行している。それはつまり、リューズが相対機動を使用する前に絶対機動を使用していた、ということだ。

圧倒的な熱量が空間を歪め、虚数時間の支配を侵食する。どうやらこの世界では苦戦を免れないらしい、とリューズは悟った。

 

 

 

Intial-Yシリーズの中で特定の分野、とりわけ戦闘能力に関してはリューズは最弱である。

しかし、侮るなかれ。一つの能力ならばともかく、総合性能で彼女に敵う自動人形(オートマタ)など存在しないのだ。

 

 

 

 

ーーー戦闘能力の差は、人工知能で埋めるしかない。

 

いわばそれは、ステータスで劣るキャラクターでCPUのラスボスを打倒するようなもの。

この虚数時間では、リューズの行動が有利に進む。いかに熱量を増やして時空をこじ開けようと、それは変わらない。その空間操作の分、リソースが割かれるからだ。それに加え、今のアンクルは仮面で縛られた状態である。これだけを見るなら、圧倒的にリューズの方が優勢だ。

 

ーーーしかし、その差はアンクルの兵器としての戦力が容易く埋めてしまう。

 

その凶暴な鉤爪に触れたが最後、リューズのボディは粉々に四散する。まさしく一撃必殺。さらに空間操作の盾によってリューズの鎌は届かず、ただリソースを割かせるだけの牽制にしかならない。

 

ーーー永久運動機関(パーペチュアル・ギア)によって生み出されたエネルギーが大規模に空間を歪め、網となってリューズに襲いかかる。

 

完全な回避は不可能。どう逃げようとも、リューズの身体のどこか一部分は必ず捕まる。

虚数時間内において、ゼロコンマ2秒にも満たない時間で破壊された方の鎌を犠牲にした。折れた刃が潰され、振り回される。強引に床に叩きつけられる前に鎌を切り捨てた。

 

ーーーしかし、鎌を切り捨てたところで既に遅し。振り回される加速度によってリューズが吹き飛ぶ速度は短時間で時速250キロに達した。

 

「……ぐっ……」

 

床に激突する。衝撃吸収機構(ショックリムーバー)を総動員して床への衝撃を最小限にし、崩落を防ぐ。しかしリューズに加えられた力はそれでは収まらず、高速で床を削りながら転がり、十数メートル進んだところでようやく停止した。

 

衣服はズタズタで、人工皮膚も裂傷だらけだが、内部へのダメージはほとんど無い。あらゆる状況下で幾度も(・・・)似たような戦闘の経験を得ている(・・・・・・・・・・・・・・・)為、自分の内部の機構にも叩きつけられた床や壁にもほとんどダメージを与えずに衝撃を殺す受け身をリューズは会得していた。………リューズの超々高度な人工知能の為せる技だ。

 

しかし、身動きが一瞬でも取れなくなってしまったのは事実。この隙を見逃さず、アンクルはとどめを刺そうと鉤爪を振るうーーー

 

 

ーーー直前で、停止した。

 

鉤爪の先には人間(ナオト)。アンクルが殺せない対象だ。

 

(主人を囮に使うとは。わたしは本当に最低なガラクタです)

 

 

そう自嘲しつつ、しかしリューズはその隙を見逃さない。

 

 

ーーー勝敗はここに決した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつくと、全てが終わっていた。足元には倒れこむリューズの姿。服が所々破れ、人工皮膚にも細かな裂傷が見られるが、内部機構の歯車に問題はない。その人工皮膚の傷も形状記憶素材の特性で徐々に塞がりつつある。この様子なら、武装の鎌以外は修理は特に必要なさそうだ。

アンクルは以前と同じように仮面が破壊され、所々が故障して倒れていたが、修理不可能なほどの傷はない。今のナオトの腕なら、必要なパーツさえ手配すればすぐに修理できるくらいだ。

 

「……よかった」

 

アンクルは修理可能な範囲での故障に留められ、リューズも無事。そして本当に一晩で終わったため、補習も受けられる。これ以上の戦果があるだろうか?

 

リューズのゼンマイを回す。本来リューズのゼンマイは自動巻きで、ゼンマイが動いている限り人の手でゼンマイを巻く必要は無い。しかし、固有機能・相対機動(ミュート・スクリーム)によって虚数運動機関(イマジナリー・ギア)を起動させている間は例外だ。

 

 

(だいぶ無理をさせちゃってるよな…)

 

京都から三重まで移動し、さらに三重のターミナルからここまでの移動、そしてアンクルとの戦闘。この短時間でここまで固有機能を酷使した経験など一度もない。

 

(……本当はもう休ませてやりたいけど)

 

アンクルの仮面が破壊され、解放されたことは既に知られてしまったかもしれない。ならば、一刻も早くここから離脱しなければならないだろう。

 

(早く逃げないと、何か不味い気がする)

 

何せここにはあの巨大な電磁兵器が存在する。手遅れになる前に逃げ出すしかない。

 

「おはようございます。ナオトさま」

 

そして、悩んでいる間にリューズが覚醒。逃亡の準備は整った。

 

 

「ありがとう、リューズ。起きたばかりでまた悪いけど…」

 

「存じております。ーーー相対機動(ミュート・スクリーム)

 

リューズはアンクルとナオトを担ぎ、逃走を開始した。

 

ーーーアンクルの救出が終わったにも関わらず、彼女の表情には緊張が走っていた。

 

 

 

 

 

 




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