ダンジョンに半神の男がいるのは間違っているだろうか 作:夕暮夜風
神々が降臨した1000年前からつい15年前までオラリオ最強を誇った探索系ファミリア。
15年前古代モンスター陸の王者、海の覇王を倒したものの、隻眼の黒竜に敗れて主力団員が全滅しロキとフレイヤの陰謀によりオラリアから姿を消したファミリア。
『行ってきます、おじいちゃん』
1人の少年が墓石の前で手を合わしていた。
短な一言。言ってしまえばそれだけの事だ。
だがそんな言葉とは裏腹にこの短い言葉にはたくさんの思いがあった。
一つは旅立てば暫くは帰って来れないため、祖父の墓石に別れを告げる事。
もう一つは祖父に空から自分の姿を見守ってて欲しいと言うこと。
そしてもう一つのが、自分の夢を必ず叶えるという決意だ。
少年はその短い言葉を言い終えるや墓石から背を向け歩き出す。
少年が目指すは、これから先仲間と苦難を乗り越え英雄になる地。
【迷宮都市オラリア】
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今少年はダンジョンの中を駆け抜けていた。
皆が思う、心地よく走り抜けるーーとは全くの逆の意味で。
つまりそれが何を意味するか。それは彼 【ベル・クラネル】 の命の危機を表している。
「うわあーっ!」
その悲痛な叫びと共に少年は転んでしまう。
自分の生を諦め、無気力な目でモンスター“ミノタウロス”を見つめる。
『ウモオオオォォォォォォオオオ!!!!』
無慈悲に振り下ろされる一撃。
その手には“自然が作り出した”武器が握られていた。
咄嗟に少年は目を瞑るが、それでこの攻撃を喰らわずに済むわけがない。『おじいちゃん、いまからそっちに向かいます』心の中でそう告げるも いつまで経っても その 攻撃が少年ベル・クラネルを襲うことは無かった。
「少年、立てるか?」
低いが透き通るような声が響き渡る。
その声に釣られ目を開くと先程までミノタウロスがいた場所に1人の男性が立っていたことに気が付く。
真っ白な髪に燃えるような真紅の瞳。
周りから見れば少年と男性を兄弟と思う人もいるだろう。
しかし助けられたのに気が付くや少年を糸の切れた人形のようにその場に倒れてしまう。
「……」
白髪紅目の男性は後ろに立っていた人狼の男を見るや『…勝手にしろ』と言われ一先ず少年ベル・クラネルを運ぶ事にした。
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皆が寝静まっているであろう 風すら凪いだ静かな夜。
何も無い部屋に2人の男がいた。
片や彼の大きさと比べると大きめのベッドに入り眠っている少年。
片や椅子に座り本を読む真っ白な髪の毛が特徴の青年。
唯静かに時だけが経つ中、その部屋に一人の声が響き渡る。
「…んっ、此処は…?」
見慣れぬ天井、柔らかい感触、暖かな重み。
目が覚めた少年は見知らぬ景色を右往左往上下と見渡すと男性がいる事に気が付く。
それは3階層で己を救ってくれた男性だった。
「どうやら目が覚めたようだね おはよう。身体の調子はどうかな?」
低い声だが聞き惚れてしまうような心地の良い声。
その声の主をしっかり見据え少年は返事をする。
少し慌てて。
「は、はい!本当にありがとうございます!」
存外元気そうに返事をする少年に少し驚きを見せるもののすぐさま穏やかな笑みを少年に送る。
「聞きたいことは沢山あるけど、それは明日にしようか。今日はゆっくり休んでくれ少年。」
そう告げると青年は腰掛けていた椅子から立ち上がり扉へと向かって歩いて行く。そして扉を開け立ち去る間際にもう1度少年の方を振り向き口を開く。
「よく、頑張ったな…」
そう告げ部屋から出ていく青年を少年は見送った。
少年からして見れば何故そんな事を言われたのか分からなかったが今晩は青年に言われた通り言葉に甘えて眠りにつく事にした。
時同じくして部屋から出た青年はある女性に呼び止められた。
「ノクト、彼の容態はどうだ?」
「…あぁ、リヴェリアか。彼なら今目を覚ましたが寝かせたよ、ダメだったか?」
ノクトと言われた青年はリヴェリアと呼ばれた美しい翡翠の髪色をし特徴的な耳を持つ女性にそう告げた。
『そうか…なら話は明日だな』と言いリヴェリアと呼ばれた女性は去って行った。
それに答えるかのように『あぁ…』と答えノクトと呼ばれた青年もその場から立ち去り、外へと向かった。
向かった先は酒場。
豊饒の女主人と言われ沢山の冒険者に愛される酒場だ。
その酒場に入るや沢山の者達に声をかけられる。
『遠征おつされさん!』『遠征終わったばかりで早速酒か?』そんな言葉を彼に投げかけるが 当のノクト本人は 軽くハニカミながら頭を下げカウンターにある席へと足を運んだ。
するとエルフであろう女性から声がかかる。
「ノクトさん、今日も来たんですか?」
「少し悩み事があってな… 今日は安酒でいいよ。」
『わかりました』と言いエルフの女性はお酒を準備しに厨房へと向かう。そして困り果てて死にそうだと言う顔を浮かべる青年を見て 厨房から周りの女性と比べると2回り程大きな女性が出てくる。
「どうしたんだい?何かあったなら沢山酒飲んで忘れな」
そんな言葉を彼に投げかけるも『明日はファミリア内で大切な話があるから酔えないし、大切な事だから忘れるわけにも行かないんだよミア母さん…』と若干面倒くさそうに答える青年に無言でパスタやピザと言った食材を彼に提供する。『いつも悪いな…』そんな言葉をつぶやく青年を他所にミア母さんと呼ばれた女性は『払うもんは払ってもらってるし構いやしないよ』と言うと乾いた笑みを青年は浮かべる。
「そう言えば遠征の打ち上げ明後日だろ?ジャンジャン金を使って行きな、楽しみにしてるよ!」
そう言ってミア母さんと呼ばれた女性は青年の背を力強く叩くと厨房に戻って行った。それと同時に入れ違いでエルフであろう女性がお酒と共に戻ってきた。
「お待たせ致しました。良ければお話聞きましょうか?」
お酒を彼の目の前に置くと カウンターから席側に周り青年の横にある椅子に腰掛ける。
「ファミリア内の事情だからあまり詳しくは話せないけど、気になる少年がいてな。彼をファミリアに入れれないか考えているんだ。」
そうエルフの女性に告げると目の前に置かれた安酒を軽く一口飲む。
それとほぼ同時にエルフの女性が口を開く。
「その少年とは一体どんな…」
その質問に答えるかの如く、安酒(エール)から口を話し机に置く。
それは遡ること8時間前。
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下層 17階層にてまだレベルの低い団員達に経験値を稼がせる為 モンスター達と戦っていた。
今回の遠征は未到達階層の攻略が主な目的だったが それではまだレベルの低い者達は経験値を稼ぐことが出来ないためである。
その為17階層でモンスターを狩ってる時 事態は急変、恐ろしいことが起こった。
ミノタウロスの大軍
それが新人達が闘っている所に向かってこようとしているのを発見してしまった。 最初に口を開いたのは小人族の男性だった。
あどけない見た目とは裏腹に既に40を超える男性。【勇者】の二つ名を持つこのファミリアが団長 フィン・ディムナ。
「下がれ!ガレス、リヴェリア、ノクト、アイズ、ティオネ、ティオナ、べートはミノタウロスを駆逐してくれ!その他の者達は三級冒険者の保護しろ!」
その言葉と共に名前を呼ばれた一同は目の前に牛の軍勢を目掛けて駆け出す。そしてその他の者は経験値を稼ぐ三級冒険者を守り辛うじて逃れてきたミノタウロスを確実に仕留めていく。
「うわ〜べートだっさ〜」
「うっせえ!お前もさっきから逃げられてるじゃねえか!」
「ティオナ、そんな馬鹿に構わないで真面目にやって…」
「…べートさん静かにして」
「なんで俺だけ責められんだよ!?」
そんな私語をしつつも一同は向かってくるミノタウロスの群れを狩っていく。そんな中黙々とミノタウロスを狩っていた青年、ノクトが気が付く。(ミノタウロスが減っている…?) それは倒しているから当たり前だが、そうではない。まだ倒していないはずの“倒すべきミノタウロス”が減っているのだ。
「フィン!!ミノタウロスの様子がおかしい! ガレスここは任せる、べート付いてこい!」
『はぁ?!ちょっと待てよ!』と悪態を付きつつべートはノクトの後に続く。
そしてガレスと呼ばれたドワーフの男も異変に気づいていたらしくその事をフィンに告げる。そして話し合い考えること20分弱 フィンは突然顔色を変えガレスやティオナに告げる。
「このままだと他のファミリアにも被害が及ぶ可能性もあるし三流冒険者と鉢合わせる可能性がある! 一級冒険者はみんな逃げたミノタウロスを追ってくれっ!!!」
そう、ミノタウロスと呼ばれる“モンスター”が“逃げ出した”のである。
この時初めて、フィン達を初めとしたファミリアの団員が 恐らくダンジョン始まって以来の珍事に遭遇する。
本来モンスターとはそのメカニズムは不明だが必ず人を襲うようになっている。
そんなモンスターが 逃げ出したのだ。
『うわあぁぁぁぁっー!!!』
皆がその事に驚いているのと同時に悲鳴がダンジョンの中を翔る。
距離からして上層の方であるとフィンが気付くと同時にもう一つの事に気がついた。
ー親指が疼く
フィン・ディムナは危険を感じると親指が疼くと言う 卓越した第六感を持っていた。
そして先程逃げたミノタウロス。上層から聞こえた悲鳴。
つまりこれが意味することはーー
「遅かったかッ!全員急いで上層へ向かうぞっ!」
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フィン達が叫び声を聞くほんの数分前。
ノクトとべートは上層まで駆け上がってきた。
「クソッ、こいつらどんどん上に行きやがる!」
「口じゃなくて手を動かせべートッ!」
逃げていくミノタウロスの群れを2人で討伐をしていく。
そして見る限り周りからミノタウロスが居なくなったのを確認し戻ろうとすると悲鳴が聞こえた。その声の方向へ急いで向かう。
するとそこには白い髪の毛と赤い瞳を持つ少年がミノタウロスに追われていた。
それと同時に疑問を覚えた。ーー逃げたはずのミノタウロスは全て倒したはずだ、なのに何故…?
しかし今は考えている暇などない。このままでは少年はミノタウロスに殺されてしまう。
「おいおいおい!ヤベェだろ!どうすんだよ?!」
もう1人の青年がそんな事を口にするのと同時にミノタウロスに追われていた少年は躓き転んでしまう。
ダメだ死んでしまう。人狼の青年の頭にそんな言葉が過ぎるのと同時にもうひとりの青年 ノクトがミノタウロス目掛けて走り抜ける。
己よりも大きな剣を片手に持ち その剣を横薙ぎに振るいミノタウロスの首を刎ねるとそのままの勢いで剣を振り上げその身体も切り裂き真紅の液体が宙を舞う。
そしてミノタウロスが黒煙となり消えていくのを確認すると青年に声をかける。
「少年、立てるか?」
その声を聞くと少年は意識を無くし倒れてしまう。
そしてその少年を見た後にべートの方を軽く見る。
するとべートはノクトが何をしたいのかを察したらしく『勝手にしろ!』と言い残しフィン達に合流せんと先に下の階層へと向かって言った。
それから暫くしてフィン達が5階層まで来るのを確認しフィンと話し合い気を失ってる少年をホームに連れ帰ることにした。
ファミリアホームに戻るやすぐさま青年は空き室に彼を寝かせその間ずっと付き添っていたが彼は目を覚ます事はになったのは付き添い始めて8時間経った頃だった、目を覚ました後も、事が事なだけにもう一度寝かし、ノクトは部屋から出た。
その際リヴェリアとすれ違い少年の安否を答えたがそれ以外誰と会うこともなく外へと出た。
そして彼が寝ている間からずっと考えていたのだ。
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彼は何故ミノタウロスから逃げる事が出来のか
ミノタウロスから逃げるとなればそれなりの実力が必要になってくる。そしてそれなりの実力があるのなら噂くらいは耳にするが彼の事を見た事も聞いたこともない。そして何よりも不思議な事に彼からは神の力を一切感じないのだ。
ー冒険者なら必ず持つもの 神の恩恵。
戦うことで経験値を得て強くなる。
そして何よりミノタウロスのレベルは2
レベル2と言っても下層最強と言われ 単独で倒すとなればレベル3は必要だろう。
何よりもレベル2の冒険者は二つ名を与えられる為必ず1度は耳にする。だが先程も言った通り彼の事を青年は全く知らなかった。
その為本来ならご法度であろうが寝ている間に彼の背中を覗かせてもらうと、そこには なにもなかった…。
冒険者なら必ずあるものが なかったのだ…
つまり神から与えられる恩恵無しで彼はミノタウロスから逃げていたのだ。
それが意味することは…
「こいつは化けるな…」
その言葉を呟くと自分でも気が付かないくらい小さく口角を上げ笑ってしまった…
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エルフの女性にその少年の話をしノクトは『その少年を鍛えてみたいんだ』と答えるとエルフの女性は『ノクトがそこまで言うとなれば将来楽しみですね』と言いそれから暫く他愛ない事を話していた。
時刻を見ると既に日付を変えていた為お金を置いて急いで帰ることにした。
そしてすれ違う街の人達に『ノクトだ!』『ノクト様よ!!』『オラリアの英雄!!』
そんな言葉が飛び交うも急いでいる彼の耳には 何も届かなかった…
そしてこんな遅くに帰ると案の定 般若の如きオーラを出す リヴェリアが“ロキ・ファミリア”のホーム【黄昏の館】の入口に立っていた…
初めは軽い思いつきだったんですけど思ったより構成が頭の中で出来てきてしまったので書いてみることにしました。
処女作の為まだまだ至らぬ点が多いですが頑張りますっ!
それと主人公ノクトくんの紹介は次話で!
そして何よりもゼウスファミリアのお話もまた次話で!
そしてベル君にはロキファミリアに入ってもらうためヘスティアの出番ンガア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!
今回は短いですが次話はこれの倍以上長くなっておりますのでよしくお願いします!
あ、最後にヒロインはフィオナさんです!!