※ユーリの性格は丸くなってます。ゲスなユーリが見たい方はオススメしません
ユーリは歩いていた。童実野町にある巨大ドームの建築物「海馬ランド」、そこで行われているデュエルアカデミアの実技試験を受けるためだ。軍服に見えそうな紫の制服を着崩して、初めて見る街並みを眺めながらゆっくり歩いていた
町を観光しながら歩いてるところを見れば受験時間に余裕で間に合うように歩いてる風に見える……が、実際は全然違う。大遅刻である。彼の受験番号である2番の実技試験はすでに終了しているのだ
なら受験を諦めたのかといえばそうでもない。そもそも彼の遅刻した理由は、事故により発生した電車の遅れが原因だ。しかも彼が住んでいたところは電車をいくつも乗り換えなければ童実野町に辿り着けない。だから彼は遅延届けがどうしても必須で、ゆえに大幅に遅刻していた
だけど、彼はむしろこの事態をゆっくり観光しながら受験会場に行ける言い訳に使えるチャンスとすら考えていた。近くの露店で買ったバニラアイスを食べながら彼は歩く
まるで危機感がない。ユーリが受験するデュエルアカデミアは、デュエルモンスターズの専門学校にして、最難関のエリート校。そんなところに挑むというのに、彼には気負いなど全く感じなかった
何故か?ユーリには確信があったからだ
自身の確かなデュエルの腕前と、生まれた時から苦楽を共にしたデッキと相棒……それらの組み合わせの前には、例えどんな障害だろうと壊せるという確信が
いよいよ海馬ランドの近くまで辿り着いたユーリは、手に持ったアイスをどう処理しようか迷った。そして、彼だけに聞こえる声を聞いたユーリは、実に楽しそうにアイスを空に放り投げ……アイスは宙で消えた
他の人からすれば急にアイスが消えたようにしか見えなかったが、当然ユーリには見えていた。食べかけのアイスを一口で口に入れ咀嚼する、己の半身とも言える竜の姿を
受験会場の受付が片付けられようとしていたところを、ユーリは話しかける
「すみません、受験番号2番のユーリです。電車が遅れて遅刻してしまって、遅延届けなら──」
「ちょっと待った────!!!」
ありますが。そこまで言おうとしたユーリの言葉を遮ったのは、背後の柵から草まみれで現れた学ランの少年。階段もなければ整備された道すらない場所からショートカットして海馬ドームに辿り着いた彼は、笑いながら言った
「セーフだよね?」
ユーリはこの時彼を、遊城十代を見て思った
「へぇ……」
面白そうなやつだ、と
『グルゥ♪』
そんな主人の楽しそうな気持ちに同調して、竜は喜びの声で唸った
『受験番号110番、遊城十代』
海馬ランドの中で実技試験を行うアナウンスが流れる
「お、俺の番だ。そんじゃ、いっちょやるか!」
「キミ」
「?」
試験に向かおうとする十代を呼び止めたのは、白ランを来た受験番号1番…つまり筆記試験1位である三沢大地だった
「何故、僕が2番なんだ?」
先ほど、三沢は十代に「今年の受験生で2番目くらいに強いな」と言われたのだ。繰り返すが、三沢は筆記が1位で実技も問題なくクリアしている。そんな彼を2番目と言った十代の真意…
「1番は、俺だからだ!」
単純な話だ。十代は、自分が1番強いと信じているのだ。三沢が強くても、自分なら絶対勝てる。根拠もない、だけどなんだか納得しそうな答えに、思わずユーリは笑ってしまう
「フフ…じゃあ頑張って勝ってきなよ、十代」
「おう!見とけよユーリ!」
十代は同じ遅刻仲間として、ユーリは十代に対する興味から、すでに2人は意気投合していた
手を振りながらデュエル場に向かう十代を見て、水色の髪で背丈の低い丸藤翔は不思議そうに呟く
「……なんて筆記試験で僕より9番いいだけなのに、あんなに自信が持てるんだろ。羨ましい」
どうでもいいなとそれを聞き流していると、ユーリに三沢が話しかけてきた
「しかし、まさか2番くんも遅刻してくるとは、僕も思ってはいなかったよ」
「ユーリだよ、ボクの名前は。1番の優等生くんのご期待に添えられなくてゴメンね」
「いや、別にそんなことは思っちゃいないさ。……しかし、キミに優等生と言われると、何か背中がむず痒いのだが……」
「気のせいじゃない?」
そんなやりとりをしている間に、十代と最高責任者であるクロノスのデュエルは始まっていた。十代は「HERO」モンスターの1体である「E・HERO フェザーマン」を召喚してカードを1枚伏せるが、次のクロノスのターン、「黄金の邪神像」と「大嵐」のコンボで「
「ああ、やられちゃったよ!」
「厳しいな。「
確かに、客観的に見れば十代に勝機など無いに等しいだろう。ユーリも普通に考えて、これは十代に勝ち目はないと思っている
そう、思っていた
「教えてやるぜ。HEROにはHEROに相応しい、戦う舞台ってもんがあるんだ!!」
「ハネクリボー」というモンスターを召喚して、「
「フィールド魔法「スカイスクレイパー」を発動!」
そして、摩天楼がそびえ立つ。変容したフィールドの月夜をバックに仁王立ちするのは、十代のフェイバリット「フレイム・ウィングマン」
「「フレイム・ウィングマン」で「
ビルの間を駆け、火に包まれた「フレイム・ウィングマン」は流星のように巨人に直撃し、クロノスをライフを最後まで削りきった
「ガッチャ!楽しいデュエルだったぜ!またやろうな、先生!」
「マ、マンマミーヤ…」
遊城十代は、見事逆転勝利してみせた。戻ってきた十代に、ユーリが楽しげに話しかける
「おかえり十代。まさか本当に勝ってきちゃうなんてね」
「なんだよ?ユーリは俺が負けると思ってたのかよ」
「だって、実際負けそうだったし」
「へ!あそこで逆転できたのも、俺の実力あってだぜ!」
「でも、本当にすごいっすよ。あんな強い人に勝っちゃうなんて」
翔が机から体を寄せて十代の実力を褒める
「へへっ、カッコよかっただろ〜!」
「うん!」
「おめでとう。最高教育責任者に勝てたのならば、キミの合格は間違いないだろうな」
「おうよ、ありがとな」
十代の勝利を讃える中、最後のアナウンスが流れる
『受験番号2番、ユーリ』
「…どうやら、次はボクみたいだね」
「頑張れよ〜ユーリ!筆記が良くても実技で負けてちゃ、合格できないぞ〜!」
「問題ないよ。ボクは強いからね」
それだけ言うと、ユーリはデュエル場に向かって歩き出した
クロノス・デ・メディチは激怒した。必ず、我が名門エリート校に遅刻者などという堕落しきったドロップアウトを入学させまいと決意した
クロノスはイタリア名家の出身である。卒業した自分の教え子が感謝する未来を想像し、気色悪い笑いを浮かべながら暮らしてきた
しかしドロップアウトに関しては、人1倍に敏感であった
クロノスはアカデミア校長である鮫島の意向により、遅刻者である遊城十代、そしてユーリとデュエルすることになった。クロノスとしては入学させたくもないドロップアウトたちを徹底的に叩きのめすために、試験用ではない自身のデッキで本気で遊城十代とデュエルをした
……が、結果は逆転負け。ドロップアウトボーイに負けたという事実にクロノスはそのまま寝込みたくなったが、まだユーリというドロップアウト要素が残っていることには、このままおめおめと逃げるわけにはいかなかった
デュエル場に着いたユーリを見据えて、クロノスは言う
「デュエルアカデミアは、由緒正しきエリート校なノーネ!例え筆記の結果が良かろうと、実技がオンボロのダメダメでーは、まるで意味がないノーネ」
「何が言いたいのかなぁ?さっき十代に負けたクロノス先生」
「ウッグッフロッグ!きょ、教師に敬意を払えーヌ不真面目ドロップアウトボーイにーハ、このクロノス・デ・メディチが直々に教育してやるノーネ!」
「いいね。そういうの悪くないよ…クロノス先生」
獰猛に、獲物を見つめるユーリの目にクロノスは心底ビビった。スネークに睨まれたフロッグめいてクロノスはビビった。だが、最高教育責任者という肩書きが、クロノスから恐れを除いた
クロノスは専用のデュエルディスクのデッキから、ユーリは十代が使うような古いタイプのデュエルディスクのデッキから、5枚のカードを引き抜く
試験が始まった
「「デュエル!!」」
ユーリ LP4000 手札 5枚
VS
クロノス・デ・メディチ LP4000 手札 5枚
「先行はワタシからなノーネ。ドロー!ワタシは「トロイホース」を召喚するノーネ!」
デュエルディスクにカードを置くと、「トロイホース」と呼ばれる大きな木馬のモンスターが
トロイホース
レベル4 ATK1600
「さらにワタシーは、魔法カード「
「…へえ、「
「(リリース?なんのことなノーネ?)流石は筆記試験次席、何がくるのかは、分かったようなノーネ」
「2体分の生贄って!」
「ええ、ひょっとして!」
十代と翔が声を出して驚く。三沢も声に出してはないが表情が物語っていた
「「トロイホース」を生贄にささーげ、現れるノーネ!「
「トロイホース」が爆発し、その煙幕の中から巨大な影が姿を現す
剥き出しの大きな歯車、重厚で歴史を感じさせる装甲、片方だけ漏れる赤い眼光。「
レベル8 ATK3000
目の前で威圧感の放つ「
「伊達に最高教育責任者じゃないってことかな。特殊召喚する事のできないレベル8モンスターをこうも簡単に召喚するなんて」
「ワタシはこれでターンエンード!」
クロノスの上々な出だしに主席の三沢も感嘆の声を上げる
「さっきのデュエルの時もそうだが、流石だな。普通、八星モンスターの召喚するならば、特殊召喚する方が1番手っ取り早い。だが「
「どうしよう。2番の人、このままじゃ負けちゃうよ」
「なーに、心配いらねえって」
心配する翔に、十代が自信満々に答える
「俺には分かるぜ。あいつ、強いぜ。もしかしたら、俺と同じくらい強いかもしれねえ」
「ええ!?キミと同じくらい!?」
「ほう……だが、根拠のない憶測に興味はない。このデュエルで、彼の実力を見極めさせてもらおうか」
十代はワクワクしながら、翔は心配しながら、三沢は観察しながら、自分のターンを行うユーリを見る
「ボクのターン、ドロー。フフフ…じゃあ、いきなりだけどいかせてもらおうかな。ボクは「
ユーリがモンスターを召喚する。それは非常に不気味な植物モンスターだった。今にも折れそうな茎から細長い4本の長い爪を生やした手が2つあり、そんな弱々しい茎からは想像もできないような大きな2枚の葉で出来た、カスタネットのような形状の凶暴な口を持つモンスター
ハエトリグサと呼ばれる食虫植物を思い浮かべるモンスター、「フライ・ヘル」がフィールドに現れた
レベル2 ATK400
「ひえ〜!気持ち悪いっす!」
「「
だが、その凶悪な風貌とは似つかわない貧弱な攻撃力に、クロノスは口に手を当てて笑う
「ププププ。何を出すのかと思えーバ、そんなザコモンスターを召喚するなンーテ!さっきのドロップアウトボーイの弱小ヒーローの方が、まだマシなノーネ!」
「あいつ、また俺のヒーローをバカにして!」
クロノスの言葉に同意して、多くの見学者たちがユーリを嘲笑う。やれ筆記だけのザコとか、やれやる気がないなら帰れとか、ユーリへの非難が飛び交う。比較的大人しめの生徒も、期待外れだったと勝手に落第の評価を押す
しかしユーリは分かってないと言わんばかりに周囲の人間を見渡す。底知れぬ瞳の奥の闇に多くの人間が黙る。ユーリをバカにしていたオベリスクブルーの万丈目も、背筋が凍る感覚を錯覚した
「フフフ、さっきその弱小ヒーローに負けてたのって、一体どこの誰だったっけぇ?」
「ヌッフゥ!!」
ニヤニヤ笑いながらユーリは反論する。そして全員黙ったのを見計らって、ユーリはモンスターを動かす
「確かにボクのモンスターの攻撃力は低い……でも綺麗なバラにはトゲがあるように、弱々しい植物たちには恐ろしい本性が潜んでいるのさ!」
「フ、フン!御託はたくさんなノーネ!できるものなら、やってみるがいいノーネ!(もっともただのハッタリに決まってるけどーネ、ムフフフフフ)」
「ならそうさせてもらおうかな。「フライ・ヘル」のモンスター効果発動!」
ユーリが指示を飛ばすと、「フライ・ヘル」はその大きな口から何かを弾丸のように発射して、それを機械の巨人に命中させた。命中したそれは頭部だけの「フライ・ヘル」を縮小させ目をつけた容姿をしていて、「
レベル1 ATK3000
「な、何事なノーネ!?何故、「
「捕食カウンターを乗せたからさ」
「ナヌゥ?」
ユーリが指差した先をクロノスが見てみると、確かに「
「「
「たかだかレベルを下げて何になると言うノーネ!シニョールのモンスターの攻撃力は400、ワタシの「
それを聞いて、クロノス先生の言う通りと頷く…が
「じゃあ本当に有利か確かめさせてやるよ!「フライ・ヘル」!「
「え!?」
何をバカなことを。そう言う暇もなく「フライ・ヘル」が勢いよく「
だが「フライ・ヘル」はその拳を喰い破りながら「
「オォー!ノォー!!我が「
「「フライ・ヘル」にはもう1つ効果があるのさ。「フライ・ヘル」は自身のレベル以下のモンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時に、そのモンスターを破壊する。当然、効果で破壊するからダメージなんて期待できないけどね」
「だからその効果を発動するためーニ、ワタシのモンスターのレベルをわざわざ下げたというわけなノーネ!」
「その通り。さらに「フライ・ヘル」は効果で相手モンスターを破壊した時、破壊したモンスターの元々のレベルの数値分、「フライ・ヘル」自身のレベルを上げる」
「ナヌー!?と、いうことーハ……」
レベル10 ATK400
「レベル10!?」
「レベル11と12のモンスターじゃないと、あのモンスターを倒せないぞ!」
「「
他の受験者が歓声をあげる。受験者とは別の、デュエルアカデミアの見学者である天上院明日香は目を丸くしていた。隣にいる丸藤亮もユーリを見下ろす
「信じられない。「
「厄介なモンスターだ。あのモンスターで攻撃されれば、例え「サイバー・エンド」でも容赦なく破壊するだろうな。自分のターンにより高レベルのモンスターで攻撃するか、低ステータスなのを利用して効果で破壊するのがいいだろう」
「あら、あなたがそこまで警戒心を抱くなんて、珍しいわね」
「……そうだな」
「?」
丸藤亮は予感していた。彼のデュエルは、サイバー流の天敵とすら言えるのではないかと
そして別の場所では、十代が大はしゃぎしていた
「スッゲー!クロノス先生の「
「でも、あんなのズルイっすよ。あんなモンスターで攻撃された後じゃあ、もうどんなモンスターを出しても勝てないじゃないっすか」
「いや、一概にそうとは言えないな」
「え?」
反論する三沢の言葉に、疑問符を浮かべる翔
「彼はモンスターの効果を「ダメージステップ開始時に発動する」と言っていた。このダメージステップ開始時、実は裏守備モンスターとバトルする場合、まだ裏側表示のままなんだ。ダメージステップ開始時にレベルを参照して効果が発動するのであれば、低い攻撃力も含めて迂闊に攻撃できないはずだ。それに……」
「さ、さっぱり分かんねぇ」
「もっと分かりやすく教えてくれないっすかね」
三沢の難解な解説に十代は頭を抱え、翔は頰をポリポリ掻いて説明の簡略を求めた。さすが100番代、1番の解説を1つも理解できてない
「…つまり、「フライ・ヘル」でセットモンスターを攻撃した時は、レベルが分からないから効果で破壊できないということだ」
「…あ、そっか!」
「「フライ・ヘル」の攻撃力は低いから、セットモンスターに攻撃したら返り討ちにあっちまうってことか」
そんな三沢の講義を遠目で見ていたユーリは、分かりやすく拍手をする
「正解♪」
「グヌヌヌヌヌヌヌゥ…!!」
「弱いモンスターだからって油断しちゃダメだよ、せ・ん・せ・い♪」
「ムキーッ!とても腹が立つーニョ!!」
指を揺らして煽るユーリに苛立つクロノス。そして見学に来ていたアカデミアの女子生徒のほぼ大半が、ユーリの意外にお茶目な姿にハートを撃ち抜かれていた
「ボクはこれでターンエンド」
「このまま負ければ、教育者としての面目が立たないーノ!ドローニョ!」
ドローカードを見つめ…クロノスはほくそ笑む
「ニョホホホホ、ワタシの「
「チッ、面倒なカードを…」
「これの効果により、シニョールの「フライ・ヘル」の攻撃力を400ポイント上げ、代わりにエンドフェイズまで効果を無効にするノーネ!」
レベル10 ATK800
「これでそのモンスターも、ただのザコモンスター!そしてワタシはフィールド魔法「
フィールド魔法が発動され、周囲の景色が変わっていく。先ほど見た十代の「スカイスクレイパー」とか違う、まさに「歯車街」といえる
「「
「!!」
「よってワタシーは、六星モンスターの「
歯車の街から、番犬が飛び出す。鋭利なフィルム、強靭な鉄の体、そして恐ろしく尖る牙が、そのモンスターの恐ろしさを際立てた
レベル6 ATK2000
「しかーし、まだこれで終わりではないノーネ!ワタシは魔法カード「大嵐」発動!」
「大嵐」の効力で嵐が吹き荒れ、唯一フィールドに存在する魔法・罠カード「
「ええ、せっかく発動したフィールド魔法を、自分で破壊しちゃった!」
「何考えてんだ、クロノス先生?」
「いや、ここで意味もなく自分のカードを破壊したとは思えない!ならばその理由は……」
次々と破砕していく街。そして瓦礫の山が積み上げられた時、その中から黄色い光が走る
「「
瓦礫が崩れ、その中から巨大な竜が姿を現す。街の端材を組み上げて造られた機体は鉄と鉄が擦れることで軋み、動く度に重厚な鉄の唸りが肩を揺らす
レベル8 ATK3000
「
「「
「クロノス先生、こんなモンスターを隠し持っていたのか!」
「こりゃあ幾ら何でも負けただろ」
クロノスのフィールドには攻撃力3000の「
いや、例外は存在した
「うおー!あんなモンスターがいたなんて!俺とのデュエルでも出してくれれば良かったのにー!!」
「ちょっと、言ってる場合じゃないっすよ!このままじゃあの人、負けちゃうっすよ!」
「何言ってんだよ。ユーリの目はまだ諦めちゃいない。なら、まだデュエルが続くってことだろ!」
「んな無茶なー!」
十代には理解していた、まだユーリが諦めていないということを。そしてそれは正しかった。確かにユーリは、このデュエルを負けたつもりなど毛頭ないのだ
「覚悟するノーネ!「
指示に従って「
ユーリ LP1800 手札 5枚
「「
歯車を唸らせ、「
ガブリ!
…「
レベル1 DEF600
「な、モンスターに噛みついてるノーネ!いや、どこにそんなモンスターがいたノーネ!」
「ボクは手札の「
「手札から発動するモンスター効果なんーて……ならばそのモンスターも破壊してやるまでーノ!」
クシャリと、紙でも切り裂くかのように番犬の牙は「セラセニアント」の命を容易く断ち切った
「戦闘、または効果で墓地に送られた「セラセニアント」のモンスター効果……」
「無駄なノーネ!「
「え?」
それを聞いて、ユーリはピタリと動きを止めた。かなりレアな光景である
「………チッ、これなら効果を使っとけば良かった」
「…?何か言ったノーネ?」
「いえ、何も」
心象を悪くしないためにも、ユーリは軽く返した
「運がいいとはこのことなノーネ。それでも、次のターンで完璧にトドメを刺すノーネ!ターンエンード!」
ターンがユーリに移る
「ボクのターン、ドロー。…ま、当然引くよね」
先ほどクロノスがほくそ笑んだように、ユーリも引いたカードを見て……悪い顔で笑ってみせる
「ボクは手札から速攻魔法「
「また見たことのないカードなノーネ」
「「
発動された「
レベル1 ATK3000
レベル1 ATK2000
「また小賢しい小細工の下準備なノーネ?その程度では、「
「安心しなよ。これは小細工のための下準備じゃないよ」
「ニョ?」
「……アンタを倒すための下準備さ!!」
そう言って、ユーリはドローしたカードをデュエルディスクにセットし、発動する
「魔法カード「融合」を発動!」
「ナニュー!?ゆ、「融合」、なノーネ!?」
「おお、ユーリも「融合」を使うのか!」
「十代、見てなよ。ボクの融合を……手札の「
スピノサウルスを形取った植物モンスターが、花が頭部の双頭の蛇めいた捕食植物が、眩い渦の中で1つに混じり合う
「魅惑の香りで虫を誘う二輪の美しき花よ。今1つとなりて、苗床を踏み越えて、獲物を喰らい尽くせ!!」
渦が消えた時…大地が割れる
太くしなやかなツタ。ツタの先端の2つにはハエトリグサのような腕があり、邪悪な口から甘い香りの液を垂らす。そしてツタを絡めて重ねてできた体の中央に、ラフレシアと呼ばれる巨大な花肉弁が花開いていた
「融合召喚!レベル7!「
その見た目から当初は人喰い植物と恐れられたラフレシア…だがユーリの後ろで蠢く巨華のバケモノは、花弁の中央で鋸歯をウネウネと動かし、まさに人喰い植物といえる姿であった
レベル7 ATK2500
予想くらいはできたはずだ。ユーリが使用するモンスターは「フライ・ヘル」だけでも想像がつく食虫植物のカテゴリだ。なら、それなりにキツイ見た目のモンスターだって出てくるはず
「うわああああああ!!!」
「きゃああああああ!!!」
「ノォ─────ゥ!!!」
だが、融合召喚された「キメラフレシア」は傍目から見てもグロすぎた。「キメラフレシア」よりも気持ち悪いモンスターなんていくらでもいるのだ。だけどこれは、そういうレベルではなく……人はそれを“生理的”に受け付けなかった
ちなみに最後の悲鳴はクロノス先生だ。間近で見てる分、その精神的ダメージはとてつもない
「気持ち悪いノーネ!!おぞましいノーネ!!ショッキングなノ───ネ!!」
「…あのさぁ、いくらなんでも怒るよ?失礼じゃない?」
軽く青筋を浮かべてユーリは静かにキレる
「十代。十代は別にボクのモンスター、気持ち悪いなんて思ってないだろ?」
せめて少しくらいは同意は欲しかったから、ユーリは十代たちの方を向いた。十代と三沢は引きつった顔をしていて、翔は完全に怯えた様子で椅子の下で隠れていた
「い、いやぁ、俺もこれはちょっと……あ、でもカッコいいモンスターだとは思うぜ!」
「そうだ。使いたいカードなんて自分で決めればいいんだ。他人の目を、気にする必要はない…」
「ヒェェェ……ナンマンダブ、ナンマンダブ…!!」
「…………」
まさかの十代も受け付けなかった。一応「キメラフレシア」を見てしっかり褒めてくれてるものの、三沢は「キメラフレシア」から目を逸らして話してるし、翔に至っては論外である
「……はぁ、もういいよ。さっさと終わらせてくるから」
もはや呆れて何も言えないユーリは、この不毛な扱いを止めさせるためにデュエルの再開する
「バトルといこうか。「
ユーリが攻撃宣言を行うと「キメラフレシア」は身体中から生えている触手を伸ばして「
「「キメラフレシア」のバトルの攻撃宣言時に効果発動!バトルを行う相手モンスターの攻撃力を1000ポイント下げて、「キメラフレシア」の攻撃力のターンの終わりまで1000ポイント上げる!」
「な、なんて強力な効果なノーネ!?」
「やれ、「キメラフレシア」!「
拘束し締め付け、動けなくなった「
「ギャ──!!」
クロノス・デ・メディチ LP1500
「うぅ…し、しかーし、ワタシのライフはまだ残っているノーネ。そしてシニョールのモンスターも攻撃し終わった以上……」
悪夢が終わったとクロノスは安堵するが、ユーリは笑顔で否定する
「何勘違いしてるの?」
「ニョ?」
「まだ、ボクのバトルフェイズは終了してないよ」
呆けてるクロノスを無視して、最後の手札を発動する
「手札の「
「プラッツェ!?まさかそのためにカウンターを!?」
「ボクが意味もなく捕食カウンターを置いたわけがないじゃないか。当然ボクが選ぶのは……「
「ヒィィィ───!!!」
「スキッド・ドロセーラ」の効力を得て、「キメラフレシア」は獲物を睨め付けるように「
「さあ、これでラストだ!「キメラフレシア」で「
「キメラフレシア」の口のある触手で「
「「
残った触手を1本に束ねて、「
「マーンマ、ミーアァァァ───!!!」
ユーリ LP1800
VS
クロノス・デ・メディチ LP 0
「ふぅ、やっとこの面倒な試験も終わったよ」
「
席の方へ戻ると、十代が手を上げてユーリを呼んでいた
「やったなユーリ!お前すげぇよ、クロノス先生のモンスターを全部倒しちまうなんて!」
「別にあれくらい、なんてことないよ」
ちょっと油断してしまったところもあるしとは、口が裂けても言うつもりのないユーリであった
「なぁユーリ!デュエルしないか?俺、お前のモンスターをもっと見てみてえよ!」
「へえ。ボクの「キメラフレシア」を見た後で、そういうこと言うんだね」
ちょっとした仕返しのつもりで言ったのだが、十代の考えはユーリの予想の遥か斜め上直線である
「そりゃあユーリが使うモンスターは変わってるけどさ、俺、お前が他にどんなモンスターを使うのか考えると、ワクワクが止まんねーよ!」
「………プッ」
予想外の切り返しに、ユーリは思わず吹き出す
「?何かおかしかったか?」
「いや……やっぱ十代は変わったやつだなって、思っただけだよ」
「へへ、そうか?いやぁ、へへへ」
「いや、今の言葉をどう聞いたら褒めてるように聞こえるんすか」
ユーリは常に1人だった。周りより変わっていて、周りより強かった。ゆえに1人でいることが多かった。今までユーリのデュエルを見た人は、揃ってユーリを避けるようになっていた
だからだろう、十代の反応がとても新鮮だった
「十代、ボク、そろそろ帰るからデュエルはできないよ」
「えー、ダメか?」
実に残念そうに十代はユーリを見る
「───だから、デュエルアカデミアに着いたら、1番最初にデュエルをしよう」
「!!あぁ、その時を楽しみに待ってるぜ!」
それは、お互いに合格は間違いないという信頼の表れだった。今日初めて会ったのに、なんだかユーリは悪い気がしなかった
ユーリが外に出た後、明日香は亮と話し合っていた
「すごいわね、今年の新入生」
「ああ、そうだな。…遊城十代に、ユーリか……」
万丈目は、十代とユーリを敵視していた
「ふん、所詮は俺様の敵ではないが…警戒するに越したことはないか」
黄色いリボンで結ったポニーテールの少女は、ユーリの後ろ姿を見て鼻を鳴らした
「……フン」
「…遊城十代か。ハネクリボーの精霊もついてたし、やっぱり面白そうな奴だったね。そう思うだろ?「スターヴ・ヴェノム」」
『グルゥ』
そしてユーリは、遊城十代との再開を望んだ
本当なら本編終わった後の外伝的なので書こうと思ってたのですが、どうしても息抜きで別の小説を書いてしまう。続きだとロクにアイデアが湧かないのに、新しいものだとスラスラ書けてしまうこの不思議感よ
続き?うちにはそんなのないよ