ブラック・ブレット 【無限の剣製】   作:爆走ボンバー人間

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プロローグ

世界は絶望に染まりきっていた

 

少年の目の前に広がる光景はそれを表すのにふさわしいだろう

 

空は暗雲に包まれ光が無く、街や家は瓦礫と化し崩壊しており、全てが炎に包まれていた

 

そして自分以外の人間はほとんどが死んでいた

 

崩壊した建物の下敷きになった者、炎に焼かれた者、体が欠損し失血死した者

 

中には人の形の原型を留めていないモノもあり、鼻には炎で焦げ腐った臭いも

していたがこの炎のせいで既に嗅覚も麻痺していた

 

そんな地獄のような世界を少年はただひたすらに歩いていた

 

だがその歩みはおぼつかないものであり、よろよろとよろめいておりいつ倒れても

おかしくないものであった

 

体は五体満足で生きてはいるものの、体のところどころにはやけどや切り傷があり

頭部も負傷していた

 

さらにこんな光景ばかりが広がり、頼れるものもおらず体力も精神も疲労している

少年ははふらつきながらもこの地獄から抜けるために歩き続けるしかなかった

 

歩き続ける道の片隅にはまだ生きている者が少年に向けて手を伸ばし、うわ言の

ように「助けて」と言う

 

何人もの人が少年に懇願するそれは呪詛のようにも感じるほどのものであった

 

少年は向けられるその手を掴むことをせず、歩き続ける

 

なぜなら少年のその手には、既に掴んでいる手があるため他の手を掴む手はないからだ

 

少年の腕の中には、声を張り上げながら泣き続けている赤子が居た

 

だがその赤子は少年の家族でも親族でも何でもない赤の他人である

 

少年も何故自分がこの赤子を抱いているのか分からないが、自分の前で泣き続ける

赤子を放っておくことは出来なかったのだ

 

ゆえに、もう少年に他人に伸ばす手は残っていなかったのだ

 

差し延ばされる手から目をそらし、救いを求める声から逃げるように少年は歩き続ける

 

 

 

 

-----何故このような地獄が出来たのか

 

この地獄が出来た元凶、それは世界に突如現れ驚異的なスピードで人類を侵略し

始めた寄生生物『ガストレア』によるものである

 

ガストレアとは、ガストレアが内包する『ガストレアウィルス』によって遺伝子を

書き換えられた生物の事だ

 

非常に高い生命力を持っており、通常の武器では効果が薄く脳か心臓を潰すか一撃で破壊するほどの威力でなければ倒すことは困難だった

 

さらに厄介なのがウィルスの感染力である

 

生物であればガストレアにガストレアウィルスを注入されるとその生物も新たな

ガストレアに変貌させられるのだ

 

どれだけ倒してもその数は減る事を知らなかった

 

また、ガストレアには成長したものに合わせ『レベル』がありその中でも最高ランクでありガストレア達のリーダーのようなものが存在した

 

それが『レベル5』の黄道十二星座の名を冠する十一体のガストレア達である

『ゾディアック』と呼ばれる存在である

 

ゾディアックは現在の科学では倒す事が不可能だとされており、人類に対して猛威をふるった

 

そして人類はガストレアとの戦争に敗れたのだ

 

 

 

 

 

世界各地にも広がっているだろうこの地獄の中を少年と少年に抱かれた赤子は歩く

 

果てしなく終わる事を知らない光景と無限ともいえる時間を歩き続けたことでいつ

折れてもおかしくない少年に止めとされる出来事が起こる

 

 

少年の目の前にこの地獄の体現者であるガストレアが姿を現したのである

 

上半身はカマキリの姿で胴体より下は蜘蛛の胴体でそこにある円状の口からは

粘ついた液体を垂れ流していた

 

少年は膝を地面につけ動こうとはしなかった

 

恐怖で動けない、ということではなく目の前の死の存在に生き残るという事を諦めたのである

 

既に少年の目には生気も光もなく、濁った眼で茫然とガストレアを見つめるだけであった

 

ガストレアは少年に気付きその赤い眼光が少年を捕らえ、鎌を振り上げながら八本の脚を動かし少年に死を与えようとする

 

時を待たずにその命を刈り取る鎌を少年が受け入れた時

 

 

それは一瞬の出来事であった

 

どこからか飛んできた剣の雨がガストレアに降り注ぎ、脚を地面に縫い付け、

体を貫き、胴体に突き刺さった剣が爆発したのだ

 

巻き起こる土煙に巻き込まれ目をつむる

 

煙が晴れ、ゆっくりと開けた目に写るのは先程自分を殺そうとしたガストレアと

思われる肉塊の山と男の背中だった

 

その男は色素が抜けたような白髪に褐色の肌、黒い鎧のような服の上に紅い外套を

羽織っており、両手には黒と白の色違いの双剣を持っていた

 

そして本能的に感じた

 

目の前にいる男が自分たち人間とは何かが違う、と

 

だが少年には、その何も言わぬ男の背中が頼もしく物語の中にしかいないと思っていた----

 

 

 

 

 

 

------正義の味方のように見えた

 

 

 

 

 

 

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