「う…うう…ん?」
素肌を撫でる空気が驚くほどに冷たい。気がつくとそこは森の中だった。
「あれ…確か僕、」
おかしい…さっきまでのことなのに酷く曖昧になっている。
「…圏外…か…」
携帯も電波が届いていない。ここはどこだ?
いくら考えてもわからないのでとりあえず歩くことにした。
目が覚めた時から感じていたがここの空気はとても吸ってて気持ちが落ち着く。まるで故郷の山みたいだ。
「みたい…とかじゃなくて本当にそうだったりして…」
そう言えばさっきから見たこともない動物がいる。
「うわぁ…いまのリス?のしっぽが二つあるように見えた…」
不思議な所…もしかすると昔、母さんから聞いた幻想の国なのかもしれない。とりあえず誰でもいいから話せる人を探す事にした。
かなりの時間探したつもりだったが人は見つからなかった。
「だれもいるわけないかぁ…こんな森の中」
森の葉っぱの上に寝転び空を見上げる。思えばこんなことするのはとても久しぶりだ。
「あの頃はよく山で昼寝してたなぁ…」
もしここが幻想の国なのであればずっとここで暮らすのも良いかもしれない。少なくともあの退屈な日常よりは楽しいだろう。そんな事を考えている時だった。
「何してるの?」
急に後ろから声をかけられた。
「ふぇっ」
驚いて振り向くとそこには金色の髪に黒い服を着た女の子がいた。
「お姉さん…外来人なのかー?」
「…へ?」
外来人、どういう意味だろう?多分外に来る人であってるよね?文字通り外から来た人って意味なら…
「えっと、そうなるのか…な?」
「当たった!私はルーミア!よろしくね!」
「へぇーよろしくね!ルーミ…」
まて、こんな森深くに女の子1人なんておかしくないか?
無意識に身構えてしまう。
「そんなに身構えなくてもいいよ、とって食ったりなんてしないから!」
「う、うん」
その笑顔には裏がある様には感じられない。ここは信じても大丈夫だろう。それにしてもお姉さんって…僕はれっきとした男なんだけど…。
「おもてなしするからついてきてね」
と、言われたのでついていくことにした。
(それにしても優しい妖怪だな…)
人食いなんて嘘みたいだ。普通人喰い妖怪が見ず知らずの人間と出会ったら襲うか食べるかだと思ったけど、やはりこの世界はいい世界なんだなー。
「ここがルーミアの家だよー」
目的地に着いたらしい。そこは小さいがしっかりとした可愛らしい一軒家だった。
「あれ?あのお庭で話してる女の子達は誰?」
「わはー。みんなーお客を連れてきたよー」
ルーミアは僕の質問が聞こえなかったのか、それとも早く僕を紹介したかったのか、みんなの方に飛んで行った。慌てて僕も後を追う。
「みんなー紹介するね。えっと…」
そういえば名前を教えてなかった。
「あの、僕の名前は…」
「へぇー!ルーミアちゃんに外来人のお客さんが来るなんて珍しいね!私は大妖精!」
緑色の服を着た妖精ー大妖精ーが僕を無視してルーミアに話しかける・・・。
「えっと、ぼくは…」
「名前なんていいからさぁ、早く中に入ろうよ」
今度は男の子みたいな姿で頭から触覚の様なものが生えた妖怪?が僕の自己紹介を遮る。
「わはー。早く家に入ろっかー」
「え?あ、うん」
…妙だ。ルーミアの友達の妖精や妖怪達は何だかこちらに敵意がある様に感じる。思い違いだよね?とにかく部屋に入る。
「寒っ…」
部屋の中はとんでもないほど寒かった。
「ねぇ、何でこんなに寒いの?」
『・・・・・・』
全員何も返してくれない。さっきまでより明らかに態度が冷たい。
そのまま奥の部屋に入ると、大量の氷に囲まれたベッドが小さな部屋を占めていた。これが寒さの原因?なんでこんなことしているんだ?
だがその疑問は一瞬で解けた。氷の中心には妖精が横たわっていた。その妖精はまるで死んでいるかのように肌の色が薄い。心なしか苦しんでるようにも見える。
「…なんでこんなに辛そうなの…?」
『・・・・・・』
「…どうしてさっきから何も話してくれないの?」
『・・・・・・』
「ッ…だからなんで…」
「…少し前ね、幻想郷の結界がおかしくなったの…」
さっきから黙っていた大妖精が急に口を開いた。
「…結界?」
「それでね、幻想郷に外の世界の汚れた空気や水が沢山流れ込んできたの。」
…そういえば、この前、ある工場が汚水を川に垂れ流したというニュースを聞いた…
「私達は治ったの。なのになんでチルノちゃんは治らないの?」
チルノ。この妖精はチルノというらしい。
「ね、ねぇ、僕で良ければ何か手伝うけど…」
「…手伝う?」
「う、うん…僕にできることなんて少ないだろうけど…」
「そもそも誰のせいでこんなことになったと思ってるの?」
「…え、そんなの、」
いや、考えなくてもわかる。外の世界の人間のせいだ。でも…
「ち、違う!僕は何もしていな…」
「そうやって、外の人間はみんなシラを切るんだよ。だからイヤなんだ…外来人はね…」
頭から触覚の生えた子が冷たい目でこちらを見る。
「ねぇ?なんで?チルノちゃんが何かしたの?チルノちゃんはなんでこんなに苦しまなきゃいけないの?チルノちゃんになんの責任があるの…?違うよね…悪いのは外来人だよね」
そう言いながら妖怪達が近づいてくる。
「だからねー私たち決めたんだー。外来人は、コロスってさ…」
い、嫌だ…そんなの…
「嫌だぁぁぁぁぁぁぁっ!」
僕はすぐさまその場から逃げだした。考えなくてもわかる。何を話しても無駄だとわかった。もし捕まったら…
(逃げろ!もう二度と走れなくなってもいい!だから今だけ、死ぬ気で逃げるんだ!)
何か助かるアテがあるわけではない。それでも安全な場所を求めて僕はひたすら走り続けた。
「あーあ…逃げちゃったなぁ」
私ーリグルナイトバグーはその場に突っ立っていた。まさかあんなに叫んで逃げるとは思わなかった。
(それにしても、あいつはどこに逃げるつもりなんだろ?この幻想郷に外来人を助けてくれる奴なんて現状いないと思うんだけどなぁ…)
「2人とも、追うよ…」
「もちろん!」
「うん、そうだね」
ま、私達も逃がす気ないけどね。
「…絶対に許さない。チルノちゃんの苦しみ、倍にして味あわせてやる…」
大ちゃんの呟きが私の耳に届いた。
第2話は楽しんで頂けたでしょうか?大ちゃんがどう見ても病んでるのですがホントは明るい娘だってちゃんとわかってますよ!それでは次は第3話でお会いしましょう。