岸波白野の転生物語【Fate/編】   作:雷鳥

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これにてZero編は完結です。
ここまで読んで頂きありがとうございました!


【エピローグ】

 冬木市の深山町にある商店街、マウント深山。

 そこには一軒の小さくも街でそこそこ有名な喫茶店がある。

 

【喫茶月海原】と書かれた看板が目印の落ち着いた雰囲気の喫茶店。

 なぜそこが有名なのか。

 それは働いている従業員が美人な上に異国の女性が多いからだ。

 

 一人は喫茶店のオーナー代理を名乗る岸波桜。

 彼女の儚げで優しい雰囲気に癒されるおじ様も多く、若い子達は学生の身でありながらエプロンを盛り上げる豊満な彼女の胸に釘付けであった。

 

 一人はアサ子と呼ばれる中東系の美女。

 桜と一緒に厨房担当であまり表に出ないがそのエキゾチックな雰囲気と仕事の出来る女オーラに、同性からの人気が高い。

 

 二人はある意味喫茶店の裏方担当であり、給仕や会計、所謂ホールをメインに担当する女性が他に二人居る。

 

 一人は長身で胸も大きく肌と髪の色素が薄めの女性。

 目元を細めで少し不機嫌そうに見える彼女はラン子と呼ばれ迷惑な客に対しては問答無用でキックをかます。その姿に一部の男性から人気を得ている。店内には一日に一回は必ず『ありがとうございます!』という叫び声が上がる。

 

 もう一人は小柄で金髪の女性。

 店ではセイ子と呼ばれる彼女は器用ではないせいか失敗も多いが礼儀正しく、しかしどこか子供っぽい性格のためか子供に人気であった。

 

 ホールを担当する二人は姉妹のように仲が良く、同時に喧嘩も多く、更には摘み食いの常習犯のせいか、よく桜やアサ子に怒られてるのを店の人達は微笑ましく眺めていた。

 

 そんな喫茶月海原のオーナーは男性であり、来店する多くの男性客に嫉妬の視線を受けていた。

 名前は岸波白野。食材の買い付けから厨房、店の雑務と色々やっている。

 

 そんな喫茶月海原だが、その日はまるで図ったかのように知人達が集まっていた。

 

「やっほう桜、元気?」

 

 最初に店にやってきたのは髪を左右で結ったツインテールの黒髪の少女。

 快活を絵にしたような力強い目元を緩ませるのは現遠坂家当主である遠坂凛。

 

「こんにちは桜」

 

「やあ桜」

 

 その後ろから現れたのは桜と雰囲気の似た優し気に微笑む女性と、以前の様な覇気がほぼ消え失せ、どこか少し痩せたが以前よりも穏やかな雰囲気を纏った男性。

 

 元遠坂家当主の遠坂時臣と妻の遠坂葵であった。

 

「あ、いらっしゃい」

 

 やって来たお客が自分の家族だと知って桜の顔が自然と笑顔になる。

 桜が凛と再会したのは彼女がエーデルフェルト家で魔術の基礎課程を学び終え、姉弟子であり桜を妹分として可愛がっている現エーデルフェルト家の当主、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトと供にロンドンに訪れた時であった。

 その時凛とルヴィアゼリッタの間でひと悶着あったが桜が物理的に解決した。

 桜が白野と供に日本に戻って冬木に店を構えてからはちょくちょくこうして家族揃ってお店に来店する光景が増えた。

 

「桜、もう休憩に入っていいよ」

 

「あ、ありがとうございます兄さん」

 

 そしてそういう時は気を利かせた白野が彼女を休憩させて一家は一緒に食事を取る。

 

 数年前、絶望に居た少女が願ったもう一度家族と食事をしたい。

 その願いは一人の魔術使いによって、確かに叶えられていた。

 

「こんにちはー!」

 

 桜が休憩に入ってすぐに新たな団体がやって来た。

 元気良く現れたのは以前からでは想像できない程に身長が伸び、体重が年相応に増えたイリヤスフィール。

 元々活発だったが身体が弱い為に長時間の活動を控えていた彼女は、今では深山町一番の元気娘として今日も街の人を笑顔にしていた。

 

「もうイリヤったらいつまでも子供みたいに」

 

「ははは。元気があって良いじゃないか」

 

 イリヤスフィールの後に続くのは彼女の母と父。

 以前よりも母親としての面影が強くなり幼さが無くなり長い髪を三つ編みにしたアイリスフィール。

 その横に時臣と同じく以前とは別人のように覇気が無くなり穏やかな微笑を浮かべる切嗣。

 

「そうよイリヤもまだ十代なんだから。にしてもセイバー、相変わらず可愛いわね♪」

 

 あまり以前と変わらない容姿のユスティーツァが最後に来店してセイバーのメイド服を眺めながらそう呟く。

 

「うっ。またからかいに来たのですかユスティーツァ」

 

「いいじゃないの。というか、貴女はもう少し私や白野に感謝しなさいよ。タダ飯ぐらいの無職から社会人にクラスチェンジさせてあげたんだから」

 

 そもそもセイバーがこうして喫茶月海原で働く事になったのはユスティーツァが白野にお願いしたからだ。

 

『ウチのタダ飯ぐらいを働かせて欲しい。いやホントマジで。イリヤ()の教育によろしくない。他の二人はあの戦争でのセイバーへの態度で気が引けてるし』

 

 と、珍しく本気で怒った彼女の雰囲気に呑まれた白野は引き攣った笑顔で了承。次の日セイバーは物凄く反発及び反論したが。

 

『もう一人の貴女は働いているのに貴女は働かないの?』

 

『そう王様だから。ふ~んへ~。ところでイリヤがバイト代で買ったおやつは美味しい?』

 

『ねえねえ王様。周りが気遣って何も言わない中で縁側で一人お茶を飲む気持ちってどんな気持ち?ねえねえどんな気持ち?』

 

 と、散々に煽られた結果……セイバーはアホ毛が萎れる程に落ち込みながら『働きます』と宣言した。

 

 それからはユスティーツァが監視と言う名の休憩にやってきてはこうしてセイバーをからかう光景が日常となっていた。

 ちなみにアイリスフィールは専業主婦であり、切嗣は時臣のコネで穂群原学園の守衛兼設備管理をし、ユスティーツァはパート等でお金を貯めては旅行し、それを旅行記として纏めている。

 

「おやおや、どうやら珍しい時に来店したようだよソラウ」

 

「ええ本当ね」

 

「いらっしゃいませ。相変わらず仲睦まじくて何よりだ」

 

 衛宮一家の次に訪れたのはケイネス夫妻。

 以前よりもおでこの面積が増えた代わりに幸せそうな表情をしたケイネスが杖を付きながら歩き、以前よりも険が取れて女性らしさが上がったソラウが、彼を支えるように歩く。

 いつもの二人の姿に、ライダーの最後を告げた縁で話す仲になったランサーは小さな笑みを浮かべて対応する。

 

 ケイネスは一度ソラウと共に帰国、諸々の面倒ごとを片付けてソラウと共に日本に戻って来た。

 今は遠坂時臣のコネで穂群原学園で英語の教師をしている。

 

 見知った人間が集まった事で遠坂一家以外は旦那同士、奥様同士でカウンターの席についてそれぞれ楽しそうにお喋りしたり愚痴を言い合ったりしている。

 

 すると、また来店を知らせるベルがなって白野が振り返ると……微妙な笑顔になる。

 

「おや? せっかく友人が訪ねたというのにつれない表情だ」

 

「いらっしゃいませ。そっちは随分と機嫌がいいけど、何かあったのか綺礼」

 

 やって来たのは神父服の言峰綺礼。

 カウンター席の端っこに座った彼は白野の言うとおり随分と機嫌がよかった。

 

「いやなに。関わっていた仕事が片付いたのでね。もし気になるならテレビでも見てみたらどうかね」

 

 綺礼に促された白野が喫茶店に備え付けのテレビのスイッチを入れてニュースを見る。

 

『次のニュースです。××党の××議員が政治資金を横領していたとして――――議員は逮捕の際『あの男が! あの男が私を嵌めたんだ!』とまるで発狂したように喚く姿が――』

 

「くくく」

 

「相変わらず『博打』をやっているみたいで」

 

「いやいや私は何もしてないさ。ただ博打が好きな者達に場を整えてあげているだけだとも」

 

 聖杯戦争以降、言峰綺礼は『善人のまま悪事を行う』という目的の為、裏で一つの仕事をしている。

簡単に言えば復讐代行のようなものだ。

 もっとも、復讐するのは依頼した本人で彼自身が行う訳ではない。

 そしてこの男がただでそんな事をする訳が無かった。

 綺礼は仕事をする際に『復讐される側にも勝てる可能性』をわざと残している。

 その為綺礼に依頼した依頼人が逆に破滅したり殺されてしまう場合も有るが綺礼にとってはどうでもいい事だった。

 彼はただ場を用意してダイスと言う名のプレイヤー達を転がすだけ。

 出目の結果は関係ない。

 何故ならダイスの片方は確実に不幸になるのだから。その表情、感情こそが、彼への報酬であった。

 そして綺礼は何食わぬ顔で表の神父や父親としての役割を果たす。

 

 その事実を知っているのは綺礼本人から聞かされた白野だけであり、白野は以前『何故自分にそんな事を教えた?』と訊ねた事があった。

 綺礼は愉快気に口を歪めながら『いやなに。今の私があるのは君のお陰だ。そのお礼だと思ってくれたまえ』と答えた。

 答えを聞かされた白野は物凄く嫌そうな表情を返し、それを見て綺礼は満足そうに頷いた。確信犯だった。

 

 それでもなんだかんだで年が近い事もあり話を交わす二人の耳に、付けっぱなしのテレビから気になるニュースが流れた。

 

『はいはーい次は世界のオカルトを紹介するコアなコーナーです! 今日はこれ! なんと撮られたのはつい一週間前の物です!』

 

 そう言ってテレビに映ったのは高層ビルからビルに飛び移ろうとしている影の集団。

 影になって全身真っ黒で正体は分からないが、その内の一人、自己主張の強い角と尻尾を生やした女の子が、どうみてもカメラ目線なかんじでポーズを取っていた。

 

(……元気そうで何より)

 

 白野はあえてコメントはせずにはくのんとキシナミが元気に活動している事に安堵する。

 ザビと名乗っていたこの世界の白野は聖杯戦争後に協会や教会からの監視を受けていた。桜やランサー達の責任等をとる事もあり、目立つ行動を控えていた。

 

 代わりにはくのんとキシナミは彼等と生前共にいたサーヴァント達を引き連れて活動していた。

 姿形が違うと言う事で白野への監視の眼は日に日に弱くなっているが、逆に二人への監視は強まり、二人がこの街に戻ってくる事はなかった。

 

 しかしそれは三人の白野が話し合って決めた役割でもあった。

 ザビが『大切な人達を守り』。

 はくのんとキシナミが『目の前の誰かを助ける』。

 

 外の世界で二人が大勢の人を救ってくれているからこそ、白野は目の前の大切な人達の幸せを護る事を優先できたし、白野が彼等を守ってくれているから、二人も気にせずに活動できた。

 

 白野は目の前で広がるこの幸福で満ちた雰囲気に笑顔を浮かべながら、今日もただの喫茶店のマスターとして、この街の人間の一人として、一緒になってその幸せを噛み締めるのであった。

 




最後まで読んで頂きありがとうございます。
元々このお話は桜とイリヤの救済とfate編の白野のチート具合を披露するのが目的のお話でした。
ぶっちゃけ一番の敵は綺礼と切嗣だった(時臣とアイリの生還的に)
個人的には白野と切嗣にはもっと対話させたかったけどモチベ維持の為に断念した。
そのあたりはサーヴァントになった白野が切嗣に召喚されて第四次に参加するといった感じの短編なんかを書けたらいいなと思っていたりする(モチベ次第やね)
それでは最後まで読んで頂き、ありがとうございました!

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