いや、本当にすみません。学校の行事で手がつけられませんでした。
そんな学校の行事、なんというか……ゴミのような時間だった。
はい、今回から二巻に突入です。といっても今回は本編に入らず、この小説特有のグダグタとシスティちゃん&ルミアちゃんと会話する回ですがね。
ボディタッチもあるよ(ボソボソ)
あとルミアちゃん!誕生日おめでとう!!
第12話 父親からの手紙
「19998、19999、20000!!」
左右の手に持つ刀を気合一閃、空気を裂きながら振り抜き日課の素振りを終える。
あの事件から、信一は素振りの回数を2倍にした。
5年間、毎日10000回刀を振り続けても死にかけたのだ。だったら2倍にして今より2倍の速度で技術の研鑽を積むという、わりと安直な考えだが。
あの時、システィーナを危険に晒してしまった。それだけでなく、もう一度自身の家族を失うところまで来てしまったのだ。
刀を鞘に収め、次に腰のホルスターから大型のナイフを2本取り出す。レイクから奪ったナイフだ。
敵ながらあの男のおかげでナイフの有用性は身に染みた。それに、刀が折れた後でも武器があるというのは心強いものがある。
それをまた左右の手に持ち、レイクの太刀筋を鮮明に思い浮かべながら10000回振るう。順手で薙ぎ払い、その勢いで逆のナイフから突きを放ち、それを避けられたと想定して逆手に持ち替えまた突き刺す。
そんなハードな鍛錬が終わる頃には、信一の体は汗でびっしょりにらなっていた。
「ふぅ……しんどいな」
だが足りない。この程度では足りない。
レイク程度の敵は、読書の片手間に排除できるくらいに強くならねば、彼女達を守り切れるとは口が裂けても言えない。
しかし、あまり根を詰め過ぎると逆に動けなくなる恐れがある。それでは本末転倒もいいところだ。
信一は思考を切り替え、軽く水を被った後にフィーベル邸の郵便受けから新聞やら何やらを回収する。
「ん?」
その中に1通、手紙と何やら硬いものが入った封筒を見つけた。
差し出し人を確認すると……
「朝比奈零……父さんからだ!?」
5年間会っていない父親の名前が書かれていた。
「ふ〜ふふん♪ふふふふ〜ふ〜ふん♪」
フィーベル邸のキッチンにて、信一は機嫌良さげに鼻歌を歌いながら野菜を切る。包丁がまな板を叩くトントントンというリズムも相まって、1つの音楽が形成されているようだった。
その様子を銀髪の少女——システィーナ・フィーベルは柱の影からおっかなビックリ眺めていた。
……なんか今日の信一、機嫌が良い。
いつも笑顔ではあるが、その笑顔は優しく微笑んで相手を安心させるような笑顔だ。
今の信一の笑顔は、ただただ子どものような自分の事を喜ぶ笑顔。
その差は一目瞭然だった。
「あの……信一?」
「あ、おはようございますお嬢様。つまみ食いですか?」
「違うわよ!」
さすがに気になって声をかけてみるが、いつものようにからかってくるだけ。しかし、それすらも幸せの絶頂であるかのように心底楽しそうである。
「お茶ならそちらに用意してありますよ」
「あ、ありがとう……じゃなくて!!」
「ん?」
今日システィーナがキッチンに来たのはお茶を取りに来たわけでもつまみ食いしにきたわけでも、ましてからかわれに来たわけでもない。
「えっと……そのぅ……」
もじもじと指遊びをしながら目線を忙しなく泳がせるシスティーナ。
とりあえず信一は用意しておいたお茶を彼女の分だけ淹れて、目の前に差し出す。これ飲んで落ち着け、という意味だ。
それを察したシスティーナは一口飲んで深呼吸を1つ。
決意を固めた真剣な目で信一を射抜く。
「お願いがあるんだけど……」
「なんですか?」
信一は再び包丁での調理を再開しながらシスティーナに笑いかける。
お嬢様の願いならなんでも叶えてみせるぜ、という気概が溢れてくる優しい笑みだった。
「料理をね……教えてほしいの」
「料理ですか?別に構いませんが、何故?」
「そのぅ……」
ここでシスティーナの心に葛藤が生まれる。
前回の事件で身を呈して守ってくれたグレンにお礼として作ってあげたい、というのが本音だ。
しかし、信一のことだからそれを知ったらからかってくるに違いない。最終的には教えてくれるだろうが、からかわれるのは悔しい。
なので無難な理由をでっち上げることにした。
「ほら、私ってもう15歳じゃない?花嫁修行始めたほうがいいかなぁ〜って」
ザクッ!
システィーナの言葉を聞いた瞬間、信一の握る包丁が彼自身の指を深く切り裂いた。赤い血が滴る。
だが信一は特に気にした様子はなく、包丁でトントントンとまな板を叩いていた。そこに切るべき野菜はない。というか何もない。
「なん……ですとぉ…………ッ!?」
「いや!そんなことより指ぃーッ!」
急いで駆け寄り、信一の指に【ライフ・アップ】をかける。
その時彼の顔を見ると、(´⊙ω⊙`)な顔をしていた。
「お嬢様が……花…嫁……に………」
そして発せられる声は聞くもの全てに無償の同情をさせてしまうほど情けない。
さっきまでの笑顔が嘘のように動揺していた。
だがそこは腐ってもフィーベル家の従者。なんとか持ち直し、包丁を投げ捨てて鬼気迫る形相でシスティーナの肩を掴んで顔を近付ける。
「誰か結婚したい男でもできたのですか!?そいつはどこのどいつでどんな奴ですか!?一般人ですか!?魔術師ですか!?血液型は!?家族構成は!?」
主としてはもちろん、姉のように慕い、妹のように大切にしてきたシスティーナの婿になる相手だ。
最低でも世界中の軍隊から1人で彼女を守り抜くだけの武力と、世界中の政治家や弁護士が束になっても説き伏せられるだけの知力を持ち、なによりシスティーナを誰よりも愛する人格が備わっていなければ信一は認めないつもりだった。
無論、それを全て満たす者は人類に存在するわけなどないのだが……。動揺で我を忘れている信一は残念ながらそれに気付けない。
「お、落ち着いて信一……」
「これが落ち着いていられるわけないでしょう!!まずは旦那様と奥様に連絡を取ります!それから密かに俺がこの目でお嬢様に相応しい相手か見定め……斬りかかりましょう!」
どこからともなく取り出した刀を手に、鯉口を切って小さく刃を覗かせる。
もはや目的が偵察から暗殺に変わっていることに、やはり信一は動揺のせいで気付けていない。
そろそろ本格的に収集がつかなくなってきた暴走ぶりに、システィーナは最後の手段に出る。
「———信一」
「………っ!?」
システィーナは優しく信一の頭を自分の胸に抱き寄せた。
たったそれだけの動きで信一の暴走が止まる。
「私はどこにも行かないから。だから落ち着いて……ね?」
「……申し訳ありません。取り乱しました」
取り乱したというレベルではなかったのだが、そこはあえてツッコまずに頭を撫でてやる。すると信一の体が一瞬強張り、それから安心したように力が抜けてくる。
身をシスティーナに委ね、信一自身も甘えるように首へ手を回してきた。なのでシスティーナも少し腕に力を込め、彼の頭を抱き締める。
「———お嬢様」
「なに?」
システィーナは甘えん坊な弟を見るような慈愛に満ちた目で見下ろし、優しく答えてやる。
「顔面に骨が当たって痛いです」
「フンッ!!」
信一の脳天にシスティーナの肘鉄がめり込んだ。
本来女性としてある胸の膨らみが同年代より些か以上に乏しい彼女の胸部は、胸というより
信一は脳天に深刻なダメージを受けながらふと思う。
……胸板とまな板って、音の響きが似てるなぁ。
その考えが伝わってしまったのか、2発目がめり込んだのは言うまでもない。
「はあぁぁぁ〜〜〜……なんかすごい場面に遭遇しちゃった……」
なお、キッチンが騒がしくて起きたルミアは、えらく半端な場面———具体的にはシスティーナが信一を抱き締めた場面
「いや〜、ビックリしたよ。なんか家族間で禁断の恋が発展しちゃったのかと思った」
ルミアがにぱぁと見る者全てに無条件の幸福をもたらす笑顔で言った。
「もう勘弁してください、ルミアさん」
「お願いルミア。もう勘弁して」
それに信一とシスティーナは顔を真っ赤にして俯く。
場所は学院までの道中。今朝キッチンで起きた珍事を見事に誤解していたルミアに対し、信一とシスティーナは朝食の時間を費やしてなんとか事の次第を説明して誤解を解くことに成功した。
「お嬢様が変な嘘つくからあんな事になるんですよ」
「なによ。だからってあんなことで取り乱すあんたにも非はあるでしょ?」
「こーら。喧嘩しないの」
「「 元々はルミア(さん)が原因だからね(ですからね)っ!! 」」
2人は声を揃えて叫ぶ。なんだかんだ言って仲の良い主従であった。
「はぁ…はぁ……ごほん!それより信一」
「はい?」
咳払いをして気を取り直したシスティーナは腰に手を当てて振り向く。
「なんか今朝はやけに機嫌良かったじゃない。何かあったの?それにそのイヤリングも」
「あ、ホントだ。シンくん、そのイヤリングどうしたの?」
彼女達の言うように、信一の左耳には見慣れないイヤリングが付けられていた。小さな宝石の装飾が施されたものだ。
「これは通信結晶ですよ。実はですね……」
信一はゴソゴソと自分の鞄を漁って1つの封筒を取り出し、嬉しそうに2人へ渡す。
「父さんから手紙が来まして。その中にこれが入っていて、夜ならいつでも連絡してきて良いって手紙に書いてあったんです!」
渡された封筒にはフィーベル邸の住所が書かれていた。差出人の欄には間違いなく信一の父親の文字。システィーナは一度だけ会ったことがあるので、名前を知っていた。
対してルミアは、どこかで見たことある名前だなぁとデジャブを感じて首を傾げる。
「これ、読んでもいい?」
「どうぞ」
システィーナが封筒から大事そうにしまわれた手紙を取り出して開き、ルミアにも見えるように顔を寄せて読み始めた……が、
「「 読めない…… 」」
そこに羅列する文字はアルザーノ帝国で使われる文字ではなかった。
なにやら画数の少ない文字が2種類と、それ自体が意味を持っていそうな画数の多い文字が1種類で構成されている。
生まれも育ちもアルザーノ帝国の2人には判読不能だった。
返された手紙を受け取り、信一はもう一度流し読みしてから要約する。
「簡単にまとめると、『今度学院で行われる魔術競技祭に仕事で行けることになったから、終わったら会わないか』って感じですね」
「シンくんのお父さんのお仕事って、宮廷魔道士団の?」
「はい。女王陛下の護衛と書かれていま……あ……」
ここで信一は自身の失言に気付く。
5年ぶりに父親と会える事に浮かれてルミアへの配慮を忘れていた。
彼女は元王女。母親は言うまでもなく女王陛下だ。そんな彼女の前で親の話は厳禁だろう。しかも女王陛下の名前まで出してしまった。
「あの……申し訳ありません、ルミアさん」
「あはは、大丈夫だよ。気にしないで」
自分のデリカシーの無さに嫌悪感が沸いてくる。しかし、それを笑って流せるルミアの豪胆さには舌を巻くばかりだ。
少し重苦しい空気になってしまったのを察したシスティーナが、それを払拭しようと声を上げた。
「魔術競技祭といえば、ウチのクラスだけまだ出る種目決まってないのよね」
「そういえばそうだね。競技祭は来週だし、今日あたりには決めておかないと練習が間に合わなくなっちゃうかも……」
魔術競技祭はいわば魔術を使った運動会のようなものだ。魔術に触れる機会のない一般人や、帝国のお役人なども見にくる楽しいお祭り……というのは残念ながら建前に過ぎない。
例年では、クラスの成績優秀者を全競技で使い回して挑むものとなっている。
学年トップの成績を持つシスティーナは去年、その例に則って競技祭に参加したが、感想は『とてもつまらなかった』とのことだ。
しかし、今年は非常勤講師から正式に講師となったグレンの意向(丸投げ)で好きに決めて良いことになった。
この機を逃さず、システィーナはクラス全員で参加して勝利したい、もしくは勝てなくとも楽しみたいと考えている。
そんなシスティーナらしい考えに信一とルミアもできるだけの事はするつもりだった。
「ですが、難しいですよね。負ける確率の方が高いものに挑むのはそれだけで勇気がいりますから」
別に絶対発揮しなければならない勇気ではないのだ。だったら負けて無様を晒すより、傍観者でいたいと思うのは当然の帰結だろう。
残念そうに肩を落とすシスティーナに、信一は優しく微笑みかける。
「ま、それでも決めないといけないものですし。俺もルミアさんも、できるだけのことはしますからね」
「……うん、ありがとう」
少しだけ肩の荷が軽くなったように笑うシスティーナ。その表情に信一も安堵する。
続けて、システィーナにだけ聞こえるように顔を寄せる。
「あとお嬢様。ありがとうございます」
それは先ほど女王の名前を出してしまった時のお礼。
信一が自分を責めている時、システィーナが助け舟をだしてくれたことにだ。
だがシスティーナは、
「ん?なんのこと?」
なんのことだか全くわかっていない。
彼女にとって家族が困っていたらフォローを入れるのは当たり前のことに過ぎない。
空気を吸ったら吐く。それと同じくらい当たり前なことに対して、お礼の必要性など感じていないのだ。
そんなシスティーナだからこそ、信一は彼女を敬愛している。家族として。そして、主として。
はい、いかがでしたか?
ボディタッチ(笑)でしたが満足していただけましたか?
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