超速い慇懃無礼な従者   作:技巧ナイフ。

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どうも、お待たせしました。

ここ最近はテストがあったりレポート書いたりで大忙しでしたからね。しゃーなし!

今回はシスティちゃんが頑張るお話。いや、なんか2巻の内容だと彼女影薄いから出番を与えたくて……という理由で書きました。原作に沿いながらもオリジナル要素を組み込んだ『決闘戦』にしてみました。

それでは、楽しんでいただければ幸いです。






第19話 従者がすべきこと

 魔術競技祭の熱気は観客、生徒共にピークを迎え、視線は全て競技場の中心で対峙する2人の生徒が独占している。

 

 1人は二年次生一組の男子生徒、ハインケル。

 1人は二年次生二組の女子生徒、システィーナ。

 

 行われる競技は競技祭の大トリである『決闘戦』。先鋒、中堅、大将の3人がそれぞれ魔術決闘をして、勝ち星の多い方にポイントが入る。

 

「お嬢様、頑張れ」

 

 システィーナの背中に信一は思わず呟いていた。

 

 二組から見れば先鋒のカッシュは敗れ、中堅のギイブルは勝って1-1となっている。そして、言うまでもなくこの大将戦が勝利の鍵なのだ。

 これは『決闘戦』という1つの競技だけでなく、魔術競技祭そのものの優勝争いでもある。全てはシスティーナの女性らしい細い双肩にかかっていると言っても過言ではない。

 

「ん?」

 

 観客席にいる信一の呟きがシスティーナに聞こえるはずは無いのだが、彼女はこちらに笑顔で手を振っている。それに振り返すと、グッとサムズアップ。

 

 任せろ、という意味なのだろう。

 

 その姿がどうにもかっこよかったので、首から提げている射影機で撮像する。信一の目は真剣そのもので———お嬢様の勇姿は1コンマ1秒たりとも見逃さないぜ、という気概が満ちに満ちて溢れかえっていた。

 

 

 

 

 

「余裕だな、システィーナ」

 

 口上戦とばかりにハインケルは観客席へ手を振っているシスティーナへと言う。

 

「ん?」

 

 振り返ったシスティーナの表情はとても楽しそうだ。

 少なくとも緊張感を感じない。まるで自分が舐められてるようで、その姿にハインケルは神経を逆撫でされる思いだ。

 

「もう優勝したつもりでいるのかい? 学年首席の君に僕は勝てないと?」

 

 ハインケルは毎回テストで二年次生の首位争いをしている1人だ。

 基本首席のシスティーナに対抗意識があるのは当然。しかし、当の本人はこちらを見向きもせずに自分のクラスへ手を振っている始末。

 

 確かにそれは失礼だろうと、システィーナは若干浮かれていた自分を戒める。

 

「あぁ……ごめんなさい、そうじゃないの。ただ嬉しくて」

 

「嬉しい?」

 

 ハインケルにはシスティーナの言っている意味が理解出来ない。確かに優勝争いの場に立ち、しかも自分の勝敗が競技祭の全てになるのは誇らしいが、嬉しいという感情は勝ってから湧いてくるものだろう。

 

 にも関わらず、システィーナは今が嬉しいと言った。ますます苛立ちが増す。

 

「あ、誤解しないでね? 別に貴方を軽視してるわけじゃないの」

 

「じゃあどういう意味なんだい?」

 

「みんなが心の底から優勝したいって思ってるのが、ってことよ」

 

「それはどこのクラスも同じはずだと思うが?」

 

「そうね。でもウチのクラスは全員がそう思ってる」

 

 システィーナはもう一度自分のクラスを振り返る。勝てるかどうか、それは分からないというハラハラした面持ちを全員がしている。

 

「優勝()()()()()じゃなくて優勝()()()って思ってるのよ。それは全員が競技に出場したからこそ湧いてくるものでしょう?二組の優勝は二組の成績上位者の優勝じゃなくて、二組全員の優勝になる。 それが嬉しくてね」

 

「君は……」

 

「だから私は負けない。みんなの為に勝つんじゃない。みんなで勝つ為に貴方を倒す」

 

 まっすぐ目を見て告げられた言葉は確かにハインケルへと向けられている。

 ならば、と。ハインケルも口元に笑みを浮かべてシスティーナを見据える。

 

「今日、僕は君に勝つ。そしてこれからも、勝ち続ける!」

 

 2人は互いに左手を向け合う。それと同時に実況担当の生徒が試合開始を高らかに告げた。

 

「《雷精の紫電よ》ッ!」

 

「《災禍霧散せり》!」

 

 ハインケルの一節詠唱で放たれた【ショック・ボルト】をシスティーナはすかさず【トライ・バニッシュ】で打ち消し、2人の間で散る魔力の残滓を中心に時計回りへと駆け出す。

 

 走る速度は男性であるハインケルの方が速い。そんなことはシスティーナにも分かっている。

 

 だからこそシスティーナは体を90度回して、ハインケルの虚を突いてお互いが描いていた円の中心へと走り込んだ。

 

「《大いなる風よ》!」

 

 ハインケルの想定より早く距離を詰めたシスティーナは十八番の【ゲイル・ブロウ】で牽制しながらさらに迫る。

 

「《雷精の紫電よ》ッ!」

 

 しかしハインケルも負けてはいない。彼は素早く身をベッタリと競技場に寝かせながら突風の拳を突き破るように【ショック・ボルト】を放つ。

 

「———んなっ!?」

 

 システィーナの驚愕が声となって漏れた。

 

 まさか【ゲイル・ブロウ】を打ち消すのでも防ぐのでもなく、直撃しても問題ないように伏せながら風の抵抗を受けない雷撃でのカウンターを放ってくるとは。

 

 さすがは二年次生の首位争いを行えるだけの実力者だ。

 どうやらハインケルは座学だけの頭でっかちではないらしい。

 

 うつ伏せという本来なら絶対にしない態勢でありながらも、彼の【ショック・ボルト】の狙いは正確無比。

 システィーナの胴体目掛けて寸分違わず飛んできている。

 

「《守人の加護あれ》」

 

 即座にマナ・バイオリズムを整えて【トライ・レジスト】を唱え、基本三属の耐性を制服に付与して雷撃を防ぐシスティーナ。

 防がれるのは分かっていたようで、既に立ち上がって次の呪文を詠唱しているハインケル。

 

 一進一退。勢力伯仲。お互いの技量を軽視せず、さらに1つ1つ丁寧ながらも豪快な応酬は競技場をさらに沸かせる。

 

「やっぱり凄いなぁ、お嬢様」

 

 走り、飛び、呪文を放つ。

 そんな戦乙女さながらの動きをするシスティーナの姿は凛々しいの一言に尽きた。その勇姿を信一は次々と最高のアングルを見つけて撮像する。運営委員の方からすごく睨まれているが知ったことではない。てかお嬢様を見ろ、と逆ギレ気味に一瞬睨み返す。

 

 だがそれも一瞬。残像の動きを一切緩めず、残像すら見える速さで最高のアングルを選択し続ける。

 

 

 ……超速い慇懃無礼な従者は伊達じゃない!

 

 

 心で叫びながら隣で『決闘戦』の中堅を務めたギイブルに問いかける。

 

「ギイブル的に見て、相手のハインケル君ってどのくらい強い?」

 

「……そうだね。あくまで私見になるけど、僕が彼と10回戦ったら7回は負けるんじゃないか」

 

「なるほど。かなり強いね」

 

 ギイブルは二組の次席。中堅戦では会話の言葉をそのまま呪文に改変して勝利を収めるという優秀な彼ならではのやり方で勝利を掴み取った。

 

 そんなギイブルの分析を聞いて関心する信一。彼は魔術の腕にそれなりの自信はあるが、だからと言って絶対に相手の実力を過小評価しない。それは美点であり、彼自身の次席という実力地位を確立する根源なのだろう。

 

「信一はどうなんだ?」

 

「 たぶんボロ負けすると思う。10回戦ったら12回分無様に負けるんじゃないかな」

 

「よく言う。あのよく分からない身体強化の魔術を使えば圧勝だろうに」

 

 不機嫌そうに鼻を鳴らしながらギイブルは冷たく言ってきた。

 よく分からない身体強化の魔術というのは恐らく【迅雷】のことだろう。

 

「あはは……グレン先生も言ってたでしょ? あれは体術アリなら強いけど、単純な魔術戦だけの勝負じゃ速く動けるだけのモノだよ」

 

「あの速さで翻弄しながら【ショック・ボルト】などの攻性呪文(アサルトスペル)で攻撃するっていう手があるじゃないか」

 

「残念ながらそんなハイレベルなこと劣等生の俺にはできないよ。マナ・バイオリズムを整えてる間にポンとやられる」

 

【迅雷】は完全に戦闘特化の魔術だ。殺し合いを避ける為に作られた魔術決闘でこんなものを使ったら、それを作った先達が草葉の陰から【ブレイズ・バースト】を叩き込んでくるだろう。

 

 このアルザーノ帝国魔術学院で教えているのは魔術の使い方であり、今行われている競技はその教えられたものを使って競うものだ。殺し合いに特化した【迅雷】の出る幕などない。

 

「話が逸れちゃったね。———率直に言って、ギイブルはお嬢様が勝てると思う?」

 

「勝てる勝てないじゃない。勝ってもらわなきゃ困る。せっかく優勝まであと一歩のところまで来てるんだ。魔術競技祭で優勝したクラスで競技に出場してたって言えば経歴に箔が着くしね」

 

「ブレないな〜」

 

「そんなこと聞いてくるなんて、君は彼女のことを信じてないのかい?大好きなお嬢様なんだろう?」

 

 相変わらず皮肉気な言い方は聞く者によっては腹立たしい。

 しかし信一は特に気にせず、さも当然とばかりに胸を張って答える。

 

「もちろん信じてるよ。ていうか、お嬢様が負ける訳ないじゃん」

 

 システィーナの勝利を寸分も疑ってない。それどころか微塵も負ける可能性など考えていない。

 信一にとって、こんな試合は出来レースを見ているようなものだ。そして、その出来レースの中でどれだけ輝かしく凛々しい彼女の姿を撮像するかが信一の使命となっている。

 

 

 

 ———そして競技開始から四半刻。

 

 システィーナとハインケル、両名の魔力は確実に限界が迫っていた。

 だが、出し惜しみをすれば負ける。その一瞬の隙を見逃さないだけの技量をこの2人は有している。

 

「《白き冬の嵐よ》!」

 

 黒魔【ホワイト・アウト】———相手の四肢から感覚を奪って行動不能に追い込む冷気の嵐をハインケルに放ち、その副作用として発生した白が視界を覆う。

 

「《大いなる風よ》ッ!」

 

 その冷気を【ゲイル・ブロウ】で払い除け、そのままシスティーナへと向かわせる。

 これが当たれば勝てる。しかし、システィーナがこれに当たってくれるなどというのは希望的観測でしかない。

 

「《紅蓮の炎陣よ》!」

 

 ハインケルの【ゲイル・ブロウ】を迎撃の為の【ファイア・ウォール】を唱え、放射状に広がる炎の壁が防ぎながら反撃の熱波が今度こそお互いの視界を奪った。

 

 

 ……たぶんハインケルはここで接近してくる。正面か、右か、左か。答えは三分の一。

 

 

 炎の壁に囲まれているシスティーナには相手が見えない。しかし、ハインケルからすれば彼女は炎の中に確実にいる。つまり、自由に動ける分この状況ならハインケルのほうが有利。

 

 

 ……やるしかないわね。

 

 

 密かに……それこそ信一やルミア、グレンにすら内緒で作り上げた改造呪文。威力は同じであるが一点にではなく広範囲に、持続時間を長くした【ゲイル・ブロウ】。

 グレンの授業を受け、先の事件で信一がボーン・ゴーレムを吹っ飛ばした時に思いついたものだ。

 

 正面、右、左。その三方向全てをカバーできる呪文を唱え始める。

 

「《拒み阻めよ・嵐の壁よ・その下肢に安らぎを》!」

 

【ゲイル・ブロウ】のような突風ではなく、全てを覆う嵐の壁。

 名付けるのなら———黒魔改【ストーム・ウォール】。

 それが炎の円陣を内側から突き破って扇状に放たれる。

 

「なっ……なんだ、その呪文ッ!?」

 

 システィーナが独自に改造した呪文だ。学院で習ったものしか知らないハインケルにこの正体は分からない。

 

 システィーナの【ストーム・ウォール】はハインケルに直撃。相手を吹っ飛ばすとまではいかないが、彼は顔を覆って身動きは封じられている。

 しかし、それだけで終わるハインケルではない。

 

「《雷精の紫電よ》ッ!」

 

「なっ!?」

 

 システィーナの姿が見えていないにも関わらず、彼女に向けて【ショック・ボルト】を放ってくる。

 先ほどもそうだが、ハインケルは追い込まれても冷静にその場で自分が持ち得る最善の呪文を選ぶことができる。

 

 まだ慣れてない【ストーム・ウォール】を放ったせいでシスティーナのマナ・バイオリズムは整っていない。

 つまり、ハインケルの【ショック・ボルト】を打ち消す手段はない。しかも彼の【ショック・ボルト】はまたも寸分違わずこちらに向かってきている。見えてない相手を顔を覆う前の記憶だけで狙ってこれなのだから舌を巻く。

 

 紫電は間違いなく彼女に当たる軌道を描いている。本来ならこれで負けだ。

 そんな紫電がシスティーナに当たる瞬間、彼女は———

 

 

 

 

「私の……私達の勝ちよ!」

 

 ———右に思いっきり体を傾けて()()()

 

「なん……だとぉ……」

 

 ハインケルの驚愕と苦悶に満ちた声が漏れるが、それに構わず左手を向け……

 

「《大いなる風よ》———ッ!」

 

 得意の【ゲイル・ブロウ】を唱え、突風がハインケルに直撃。彼は防ぐ手段もなく、【ショック・ボルト】を撃った姿勢から伏せることもできず場外へ吹っ飛ばさせれていった。

 

 

 

「「「「 うおぉぉぉぉぉぉぉッッ!! 」」」」

 

 今までで一際大きな歓声が競技場を埋め尽くす。この瞬間、魔術競技祭の優勝は二組へと決まった。

 

 歓声と拍手喝采の中、システィーナは吹っ飛ばしたハインケルの元に歩み寄る。

 

「どうして……? 最後の【ショック・ボルト】は完璧に入ったと思ったのに……どうして君は避けられたんだ?」

 

 ハインケルは自分のすぐ近くまで来たシスティーナを見上げ、問いかける。本来ならアレは当たるものだった。学生レベルで【ショック・ボルト】を避けるなど白魔【フィジカル・ブースト】で身体能力を強化しない限り不可能だ。

 

 しかしシスティーナは避けて見せた。それがどうしても理解できない。

 

 そんな彼の疑問に、システィーナはあっさりと答える。

 

()()……かな。貴方、不安定な態勢で【ショック・ボルト】撃つ時はほとんど胴体を狙ってたでしょ? だから今回もそうかなって思ったの」

 

「そんな……」

 

 しっかりと狙えない状況なら人体で一番面積の広い胴体へと向けて撃つのは定石だ。だが、それではある程度ブレてしまう。体を傾けてもそちらに逸れる可能性はゼロじゃない。———本来ならば。

 

「貴方の【ショック・ボルト】は正確無比。どんな態勢でもしっかりと胴体の真ん中へと撃ってきてた。だから避けられたのよ」

 

 ハインケルの【ショック・ボルト】は完璧だった。もっと言えば()()()()()。だからこそ、避けた先に飛んでくるなどということを微塵も考えずに済んだのだ。

 

「……ははっ。君に勝つ為の努力が仇になったわけか」

 

 ハインケルの口から乾いた笑いが漏れる。力が及ばなかったわけではない。

 

「僕は君に勝つことなんてできない……か」

 

「そんなことないわよ」

 

 項垂れるハインケルにそっとシスティーナが手を差し出す。

 

「貴方の技術を信じたの。貴方は私より上の部分があるから、その部分を理想的な場面で使うと想定することができた」

 

「…………………」

 

 もし、ハインケルの【ショック・ボルト】の腕がもう少し鈍ければ勝てた……というわけではない。

 ただ単にハインケルの強さを信じて、それでも尚勝つ為に動けたシスティーナが上手だっただけだ。

 

「今回は私が勝てた。でも次にやったら結果はわからない。貴方が私に勝てないなんてことはないわ。———だから今は、お互いの健闘を讃えましょ?良い勝負だった……てね」

 

 にこりと笑い、差し出した手をさらにハインケルへと近付けるシスティーナ。

 

「……なるほど。勝てなかったわけだ」

 

 その手を数秒呆然と見つめ、何かを理解したようにハインケルは掴む。

 

 次の瞬間、今までよりさらに大きな拍手が競技場を覆う。健闘を讃え合う若き魔術師の卵へ喝采が送られる。

 

「次は負けないよ、システィーナ」

 

「えぇ。また全力をぶつけ合いましょ」

 

 喝采の嵐は2人の呟きを隠していった。

 

 そんな2人を見ながら信一は誰よりも大きな拍手を鳴らしつつシャッターをきり続けるという実に器用なことをやってのける。

 

「ヒグ……グス…成長しましたね、お嬢様」

 

「なんで泣いてるんだよ、君は……」

 

 打ち倒した相手を見下すのではなく、健闘を讃える。人として理想的とさえ言える成長を果たした家族の姿に感涙が絶えない。

 その姿を見て、隣のギイブルはいかにも鬱陶しそうだ。

 

「ねぇ、ギイブル」

 

「……なんだい?」

 

「やっぱりお嬢様って最高だよね」

 

「………………………さ、整列しようか」

 

 目をキラキラさせて肯定してくれるのを待っている信一の姿に、これを肯定したら絶対にシスティーナのべた褒めを聞かされると察したギイブルは素早くその場を離脱。

 つれない彼の態度に、信一は不満気に頬を膨らましている。

 

 だがそれも一瞬。誰よりも大きな拍手を鳴らしつつシャッターを切り、さらに左耳の通信結晶を指で弾くというもはや手が増えたんじゃないかという動作をかます。

 

「———父さん。最終種目終わったよ。優勝した」

 

 そして足元に立て掛けていた刀の入っている布袋を見つめながら一言、誰にも聞こえない声で言った。

 

 

 

 

 

『それでは今大会で顕著な成績を収めたクラスに女王陛下が勲章を下賜されます』

 

 実況担当だった生徒の声と共に、ゼーロスとセリカに挟まれて立っていたアリシア七世が一歩前へ。それに合わせて盛大な拍手が鳴り響く。

 

『優勝した二組の代表は前へお願いします』

 

 それに合わせ、二組の担当講師が舞台へと上がった。

 しかし、今はグレンが不在。グレンの友人と名乗ったアルベルトとリィエルが2人でアリシアの前に立つ。

 

「アルベルト……?それに、リィエル……?何故貴方達が?」

 

 宮廷魔導士の2人とアリシアは言わずもがな、面識がある。二組の担当講師が上がるはずが、何故か目の前に立っている2人にアリシアは目を瞬かせた。

 少し、会場がざわめき始める。

 

 アルベルトとリィエルを知らない生徒達も、突如上がった2人を不思議そうに見ていた。

 

「……来たか」

 

 そんな中、セリカだけはニヤリと不敵に笑う。

 

「陛下、そやつが二組のグレン=レーダスという講師なのですか?」

 

「いえ……違いますけれど……」

 

 アリシアの動揺する姿に彼女の後ろで控えていたゼーロスが尋ねる。

 

「いい加減、馬鹿騒ぎもおしまいにしようぜ。おっさん」

 

「何……!?」

 

 突然、冷たい雰囲気を醸し出していたアルベルトから彼らしくない軽い口調で言葉が放たれる。

 それに驚愕するアリシアとゼーロス。

 

 しかし2人には構わず、突如アルベルトとリィエルが波紋を浮かべる水面のように歪む。

 

「どーも。さっきぶりですね、陛下」

 

 アルベルトはグレンに。リィエルはルミアへと姿を変えた。———否、姿を戻した。

 

 それを見届けた信一は、隣で整列しているシスティーナに問いかける。

 

「お嬢様、気付いてましたか?」

 

「もちろん。……そういう信一も気付いてたでしょ?」

 

「えぇ、まぁ」

 

 どんな事情があるかは知らないが、グレンとルミアは【セルフ・イリュージョン】で姿を変えていた。

 しかし、【セルフ・イリュージョン」は光の屈折を利用する術。

 だからこそ、システィーナはルミア扮するリィエルに手を握られた時気付いた。

 3年間も一緒に暮らしているのだ。手を繋いだことは数え切れないほどある。いくらルミアの姿ではないとはいえ、握られればすぐに分かる。

 

 現れたグレンにゼーロスは目を見開き、部下である親衛隊へとグレン達を捕らえるように指示を出す。

 その刹那、セリカが信一へとまるでメッセージのように目配せした。

 

 

 ……来るなら来い。

 

 

「お嬢様、すみませんが射影機を持っててください」

 

 信一は首から提げていた射影機を外し、隣のシスティーナの首にかける。

 そして布袋から鞘に収まった刀を二本とも取り出し、左右の手に一本ずつ握る。

 

「《疾くあれ》」

 

 バチイィィィ———ッ!

 

 呪文を唱えると、頭の中で雷が弾けるような音が鳴り響いた。

 

【迅雷】を起動し、舞台を見据える。整列してる生徒の中、左右に刀を持った状態で舞台まで間を縫って走り抜くのは難しい。

 だが、グレン達……つまりルミアを捕らえようとしてるので最速で辿り着きたい。

 

【迅雷】で一時的に解放された潜在能力が脳をフル回転させる。そして、すぐにその方法を思いついた。

 刹那、信一が足を置いていた地面が爆ぜる。

 

 ———タンッ!タンッ!タタンッ!

 

 信一は軽い足取りで自分の前に並ぶ()()()()()()を足場にして迅速に雷の如く舞台へと向かっていった。

 

 そして……スタンッ!

 

 王室親衛隊隊長ゼーロスとグレン達の間への割って入るように立つ。

 信一が来た瞬間、セリカが結界を張って他の親衛隊が阻む。

 

「シンくん!?」

 

「やぁ、ルミアさん。他の女の子に変身してきた時は驚きましたよ」

 

「やっぱりお前は気付いてたんだな」

 

「姿が変わった程度で家族を見分けられないんじゃフィーベル家の従者は務まりませんからね」

 

 軽口を叩きつつ、信一の目はゼーロスを見据えている。

 見る者を安心させるようないつもの笑顔。しかしその目は冷たく、見据えたゼーロスをまるで無価値な路傍の石ころとしか見ていないようだ。

 

 

 ……この人はルミアさんの命を狙った。なら———殺しても構わないか。

 

 

 王室親衛隊の隊長だろうが、奉神戦争を生き抜いた猛者だろうと関係ない。ゼーロスは家族の命を奪おうとした。

 であるならば簡単だ———

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 —————殺せばいい

 




はい、いかがでしたか?最後はちょっと駆け足になっちゃいましたね。ごめんなさい。

次の話で戦って、その次にまとめて2巻の話は終了。そっから3巻ですね。
というか、またオリ主の新技を考えなくては……。



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